デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
2節 米国加州日本移民排斥問題
3款 日米関係委員会
■綱文

第33巻 p.493-496(DK330052k) ページ画像

大正8年7月30日(1919年)

是日、当委員会小集会、東京銀行倶楽部ニ開カレ、栄一出席、在米日本人会代表神崎驥一ヲ招ジ、同会ヨリ提案セルアメリカ合衆国排日問題対策ヲ議ス。九月二十五日神崎飛鳥山邸ニ来訪ス。十月四日神崎兜町事務所ニ来訪ス。同十一日再ビ同所ニ来訪ス。


■資料

集会日時通知表 大正八年(DK330052k-0001)
第33巻 p.493 ページ画像

集会日時通知表 大正八年        (渋沢子爵家所蔵)
七月三十日 水 午後六時 日米関係委員会小集会(銀行クラブ)


集会日時通知表 大正八年(DK330052k-0002)
第33巻 p.493 ページ画像

集会日時通知表 大正八年        (渋沢子爵家所蔵)
九月廿五日 木 午前十時 神崎驥一氏来約(飛鳥山邸)
  ○中略。
十月四日 土 午後三時 神崎驥一氏来約(兜町)
  ○中略。
十月十一日 土 午後四時 ○上略神崎驥一氏兜町ニ来約


(阪谷芳郎)日米関係委員会日記 大正八年(DK330052k-0003)
第33巻 p.493-494 ページ画像

(阪谷芳郎)日米関係委員会日記 大正八年
                 (阪谷子爵家所蔵)
 八、七、三〇 銀行クラブ、晩、渋沢・藤山・堀越・田中・内田・神崎・笠井○重治・余・増田、神崎氏ノ明後年排日案《(明年カ)》ニ対スル運動方法ニ付考究、決定ニ至ラス、内田嘉吉氏ニ伝言ヲ託ス(氏ハ八月二日米国ニ行ク)田中(都吉)氏ノ内話ニ、埴原ハ日本人会ヲ余リ此仕事ヲ託
 - 第33巻 p.494 -ページ画像 
スルニ足ルヤヲ信セス云々
九月十七日再会
余ハ欠席ス


(阪谷芳郎)大日本平和協会日記 大正八年(DK330052k-0004)
第33巻 p.494 ページ画像

(阪谷芳郎)大日本平和協会日記 大正八年
                 (阪谷子爵家所蔵)
○八年七月三十日、日米関係委員会ニテ朝鮮問題ヲ、内田嘉吉・神崎驥一・笠井重治諸氏ニ談ス、藤山・堀越・田中(都吉)諸氏モ同席ス内田氏ハ八月二日米国ニ行ク、八月三日望月松太郎ニ談シ、マグレゴー氏ニ伝言ス


最近ノ日米関係ト将来ノ運動方針(DK330052k-0005)
第33巻 p.494-496 ページ画像

最近ノ日米関係ト将来ノ運動方針  (阪谷子爵家所蔵)
      (別筆)
      八年七月三十日受
           神崎ヨリ(銀行クラブ集会ノ節)
(謄写版)
             在米日本人会神崎驥一
日米関係ハ近年漸次ニ緩和セラレ、排斥ノ気勢尤モ猛烈ナル加州ニ於テモ、大博覧会参加以来著ルシク融和セラレ、大戦以後ハ親交一層深キヲ加フルニ至レリ。此好機ニ乗シ加州在留同胞ハ多年ノ懸案タル土地法脩正運動ヲ開始シ、大体ニ於テ頗ル順調ナル進行ヲナシツツアリキ。然ルニ大戦停止ト共ニ俄然トシテ形勢一変シ、殊ニ上院議員フヰラン氏次期再選運動準備ノ為メ排日運動ヲ初ムルニ及ビ、人種問題其他ノ頻出セル諸問題ト関連シテ大勢甚ダ憂慮スベキ状態トナレリ。
本期加州々会提出ノ排日諸法案ハ、幸ヒ此度ハ揉消トナレルモ、今後ノ形勢必ズシモ楽観シ能ハズ、排日案提出者インマン、ダンカン両上院議員ノ次期再選ノ場合ニハ、再ビ同案ヲ提出スベシト豪語セシガ如キ有様ナリ。
玆ニ特ニ我等ノ考慮ヲ要スル一事アリ、夫ハ排日ノ理由原因ノ根本的変化トス。往時ニ於テハ単ナル労働者ノ排斥ヲ根底トセシモ、今日ニ及ンデハ両国国際間ノ微妙ナル関係ニ基因スルニ至レリ。就中地理的関係上太平洋沿岸諸州ニ於テハ、対日態度並ニ感情一種ノ憂フベキ傾向ヲ生ゼントスルモノアリ。最近人種案ニ対スル沿岸政治家及ビ言論機関ノ態度ハ顕著ナル一例トス。更ニ注意スベキハ、太平洋沿岸ノ米国輿論ニ及ボス影響ナリ。従来吾等ハ西部ノ勢力ヲ軽視シ、日米親善ノ策ヲ専ラ東部ニ施スニ努メタリ。然ルニ近時西部ノ急速ナル発展ニツレ、政治上、社会上、並ニ経済上ニ於ケル勢力甚ダ侮リ難キモノアリ。殊ニ東洋就中日本及支那関係諸問題ニ付テハ、西部ハ却ツテ米国輿論支配ノ実権ヲ握ラントスル有様ナリ。依之将来日米親善ノ途ヲ講ゼンニハ、努メテ先ツ西部ノ輿論ヲ良導啓発スルノ策ヲ立テズンバアルベカラズ。西部ノ勢力斯クノ如ク重要ナルニ、今日未ダ西部ノ輿論ヲ啓発スル、殆ンド何等ノ有力ナル組織的機関及運動ナキハ、寔ニ遺憾ノ事ナリトス。玆ニ於テ在米日本人会ハ、太平洋沿岸ノ中部ニ位シ殊ニ排日ノ中心地ニアル関係上、一層責任ノ重大ナルヲ自覚シ、積極的方針ヲ定メ、西部輿論ノ改善啓発ニ力ヲ致ス具体的計画ヲ立ツルニ
 - 第33巻 p.495 -ページ画像 
至レリ。運動直接ノ目標ハ次期州会ニ対スル準備ナリトスルモ、更ニ意義ヲ拡張シ、西部輿論ノ誘掖指導ニ資セントスルヤ固ヨリナリ。過去ノ運動方針ハ概シテ所謂盗人ヲ見テ縄ヲ綯ウノ類ニシテ、応急焦眉ノ策ニ過ギザリキ。即チ排日法案ノ提出ヲ見テ、周章狼狽殆ンド施ス所ヲ知ラズ、或ハ一・二法律家ノ運動ニ托シ、或ハ日米外交ノ折爼トナルガ常態ニテ、其結果ノ不利ナルヤ怪ムニ足ラズ。抑モ米国ハ輿論政治ノ国家ナリ。故ニ民衆ノ反対スル処ハ、少数政治家如何ニ有力ト雖モ、之ヲ抑圧スル能ハズ。而シテ民衆ノ指揮啓発ハ時日ヲ要ス。事ノ起ラザルニ先ンジ、予メ教導スル所ナカルベカラズ、殊ニ前述ノ如ク大戦停止後、日米両国ノ関係旧ノ如クナラズ、太平洋沿岸諸州ニ於テハ将来憂慮スベキ現象既ニ瞭乎トシテ明カナルモノアリ、今ニシテ此ヲ不問ニ附シ去ランカ、両国ノ親交ノ前途大イニ悲観スベキモノナシトセズ。
輿論啓発ノ方法多々アランモ、漸ヲ追ウテ進マザルベカラズ。在米日本人会ハ左ノ二方針ヲ採ル計画ナリ。
一、新聞及ビ諸刊行物利用策
 現今加州ニ八百余種ノ新聞雑誌アリ。加州輿論ノ指導ニハ此等ヲ利用スルニ優ル有効普及的ナル機関ナシ。
 従来加州ノ諸新聞ガ、概シテ排日記事ノミニ偏シタルハ、必ズシモ各新聞紙悉ク排日方針ヲ有スルガ為メニ非ズ、此種ノ記事以外ニ記載資料ノ供給乏シカリシニ由ル処尠シトセズ。故ニ組織的常設機関ヲ設ケ、各種ノ新聞雑誌ニ日本及ビ在米日本人ニ関スル記事ヲ随時随所ニ発表スル事トス。又必要ニ応ジ時々小冊子ノ発行ヲナスモ可ナラン。此ハ従来試ミザル方法ニテ、其ノ効果少ナカラザルヲ期スルモノナリ。固ヨリ独逸流プロパガンタヲ行ヒ、米国輿論ノ改変ヲ企ツルガ如キハ、吾人ノ断ジテ採ラザル所ナリ。只事実ノ真相ヲ紹介シテ、誤解曲説ヲ矯正シ、又正当公正ナル要求ノ主張ヲ忌憚ナク発表シ、且ツ日本ニ関スル智識ノ普及ヲ計ルニ努ムルヲ主要ノ目的トス。本計画ノ実行ハ努メテ社会ニ公表公開シ、従来蒙リタル誤解猜疑ヲ防グ必要アリ、日米人ノ提携協力事業トナスモ可ナラン。近来太平洋岸ニ伝フル各種ノ記事ハ事業ヲ牽強附会シ、或ハ誇張棒大スルモノ頗ル多ク、為メニ生ズル誤解妄想甚ダ大ナリ。正当ナル事実ノ報導ハ、当然ナル権利又義務ナリト信ズ。土地法修正運動ノ担当者ナイラン氏ハ、此ノ方法ノ有効ナルヲ認ムル一人ニテ、之ガ為メ大イニ尽力スベキヲ約セラレタリ。
二、親日米人ノ調査・啓発並ニ組織的連絡
 之ハ在米日本人会顧問弁護士ノ久シキ以前ヨリ提議セシ方法ナリ。在加州日本人ノ農作面積ハ三十六・七万英町ヲ越ヘ、其産出年額五千五百万弗以上ニ達シ、之等ニ関連シテ日本人ト密接ナル利害関係ヲ有スルモノ及ビ商取引其他各種ノ関係ヲ有スル米人頗ル多数ナリ彼等ハ各個人トシテハ日本人ニ好意ヲ有シ、日本人ノ後援者タルヲ辞セザルモ、個々分離シテ何等組織的気脈ヲ通ゼザル故、有事ノ場合集団的実力全クナシ。従来労働党ガ比較的少数者ヲ以テ、政党員ヲ支配シ有力ナル排日運動ヲナシ来リタルハ、集団的組織ヲ以テ政
 - 第33巻 p.496 -ページ画像 
治家ヲ威嚇操縦セシ為ナリ。従ツテ民衆ノ投票ヲ資本トセル政治家ハ、排日運動ニヨリ得ル所多ク失フ所皆無ナリシ故、少数正義ノ士ヲ除キ悉ク吾等ガ敵トナレルハ、寧ロ当然ノ結果ナリトス。然ルニ近時労働党ノ態度漸ク緩和シ来レル際、吾等ガ自ラ進ンデ親日米人ヲ集結シテ、対抗ノ途ヲ講ゼバ、少クトモ過去ニ於ケルガ如キ孤立無援ノ玩弄物的惨況ヨリ脱スルコトヲ得ン。平時ニ於テ彼等ノ政党関係等ヲ調査シ、刊行物或ハ講演等ニヨリ日本及日本人ニ対スル理解ヲ与ヘ置カバ、彼等ノ内ヨリ精鋭有力ナル後援者ヲ得ラルベキハ決シテ無望ノ事ナリトセズ、例ヘバ排日案提出ノ如キ場合、此等ノ有権者中ヨリ電報書簡其他ノ手段方法ヲ以テ、排日政治家ニ向ヒ反対ノ態度ヲ採ラバ、相当ノ反響ヲ起シ、過去ニ見タル無責任ナル排日法案ヲ防止シ得ルニ至ラン。殊ニ本年スコツト案通過ノ結果、加州政府自ラ日本人農業家関係地主ノ調査ヲ行フ事トナリ、又フヰーラン上院議員ノ運動ニヨリ、近来北加十四郡地主同盟起リ、日本人農業家ノ排斥ヲ企テツツアル際、吾等モ進ンデ適宜ノ方法ヲ講ズルハ、喫緊ノ事ナリト信ズ
要之新聞機関ヲ通シテ、広ク選挙区民ノ指導教化ヲ計リ、又直接利害関係アル米人ヲ組織的ニ連結セシメ、更ニ進ンテ政党員ト平素ヨリ交誼ヲ結ビ、以テ平時ニ於テ有事ノ備ヲナスニアリ、而シテ此ノ方法タルヤ、極メテ公明正大ナルモノナルガ故ニ、他方ニ於テ有害不利益ナル米人ノ反動反感ヲ醸成スル惧レ毫モアルナシ。
上記ノ運動ヲ行フ費用ハ、一定ノ額ヲ定ムル事困難ニシテ、所謂多々益々弁ズル事固ヨリナルモ、第一期運動ハ大凡十万弗ト見積リ、其ノ調達方法トシテハ、故国ヨリ日本金十万円位米国ニ於テモ同額ヲ募集セントスル計画ナリ。
本計画ハ、在米日本人会直接其ノ実行ノ衝ニ当ル方計ナリシモ、之ハ必ズシモ絶対条件ニ非ズ、本来極メテ重要ナル運動ナルガ故ニ、日米関係委員会ノ協賛ニ大イニ待タザルベカラズ。先ツ日本日米関係委員会ノ審議ヲ経タル上、之ヲ米国日米関係委員会ニ交渉シ、同会ガ在米日本人会ト協議研究ヲ重ネタル後、有効ナル運動方針タルヲ認メ賛同ノ意ヲ表スルニ至ラバ、日本日米関係委員会モ共ニ本運動ニ加ハリ、適宜ノ援助ヲ与フル相互的提案トナサバ、尤モ穏健ナル方法ト信ジ、提出側ナル在米日本人会ニ於テモ異議ナカルベシト察ス。