デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
2節 米国加州日本移民排斥問題
3款 日米関係委員会
■綱文

第33巻 p.508-514(DK330063k) ページ画像

大正9年6月24日(1920年)

是日栄一、カリフォルニア州中央農会専務理事千葉豊治及ビ男爵阪谷芳郎ト飛鳥山邸ニ会ス。


■資料

集会日時通知表 大正九年(DK330063k-0001)
第33巻 p.508 ページ画像

集会日時通知表 大正九年        (渋沢子爵家所蔵)
六月廿四日 木 午前十一時 阪谷男爵・千葉豊治両氏来約(飛鳥山邸)


(阪谷芳郎) 日記 大正九年(DK330063k-0002)
第33巻 p.508 ページ画像

(阪谷芳郎)日記 大正九年       (阪谷子爵家所蔵)
六月二十四日
○上略王子邸ニテ渋沢男爵及ビ千葉ト加州問題ヲ談ズ○下略
   ○是日千葉ヨリ提出サレタリト推定サレル数資料ヲ以下参考トシテ掲グ。



〔参考〕米国排日問題書類 第壱(DK330063k-0003)
第33巻 p.508-511 ページ画像

米国排日問題書類 第壱         (阪谷子爵家所蔵)
 - 第33巻 p.509 -ページ画像 
                    (別筆)
                    九年六月廿四日受
(鉄筆)
    宗教家ヲ米国ニ派遣スル件
宗教家ヲ加州ニ派遣スルコトハ、目下排日反対運動ヲナシ居ル加州ノ新教牧師団ト協力呼応スベク、又邦人ノ人心安定ノ為メ最モ必要ナレトモ、其人選宜シキヲ得ルコト肝要ナリ、其ノ人物ハ日米問題ニ対シ理解力ヲ有スルコト、米人間ニ知己ヲ有スルコト、英語ニ熟達シ至誠人ヲ動カス篤実ノ士タルコトヲ要ス
日米関係委員及ビ基督教会同盟ニ於ケル宗教家派遣ノ議アルヲ以テ、人選ハ其等団体ニ任スル方可ナラン
基督教青年会ノ代表者モ派遣者候補中ニ加ヘ人選スルコト宜シカラン
一、在日本米国基督教宣教師ヲ動カシ、彼等ヨリ米国側同派宗教家ニ排日反対正論ヲナサシムル様勧告セシムルコトモ、此ノ際多少功アル一方法ナリト思惟ス
                  (別筆)
                  九年六月廿四日受
(鉄筆)
    日米関係調査会及ビJapan Reviw誌ニ関スル件
加州ノ排日反対輿論ヲ作興スベク新タニ英字新聞雑誌ヲ発刊スルガ如キコトハ、今日ノ急ニ応スベキニ非ザルヲ以テ、現存雑誌ノ財源ヲ豊ニシ、其ノ発行部数ヲ増加シ、広ク配布スルコト最モ捷径ナリ、目下在米各大学在学邦人学生聯合団ノ発刊スルジヤパン・レビュー雑誌社ノ支局ヲ加州桑港中央農会内ニ設置シ、同会日米関係調査部ト聯絡シ加州ニ於ケル日米関係材料及日本本国ヨリノ記事ヲ多クシ、広ク米国西部沿岸ノ米人間ニ配布購読セシムル為メニ要スル拡張費用ヲ、補助又ハ寄附ニ仰カントスル計画ナリ、日米関係調査会ノ趣意及ジヤパンレビューノ目的、現状、将来ノ計劃左ノ如シ
    ヂヤパン・レビュー誌ノ目的、現状及計画
一、目的 日本ヲ米人間ニ照会スル機関
     太平洋岸ニ於ケル日本人問題ニ対シ努力シ邦人ノ立場ヲ主張スルコト
     在米学生ノ指導ノ任ニ当ルコト
     米人ト協力シテ将来東洋問題ニ関シ協調的解決ノ為メ努力スルコト
一、発行高 現三千部印刷、過半数ハ米人間ニ配布
一、財政 日本郵船会社ヨリ一ケ年ノ資金トシテ支払ハレタル広告料一千弗及ビ其ノ他広告料、二三篤志寄附及購読料等ヲ以テ漸ク支持シツヽアリ
一、記者及関係者
     直接雑誌ニ関係セル現在ノ人員ハ重ニ在米大学ノ学生ニシテ、永年米国ニ在学シ日本及米国ノ事情ニ精通セル人人ヲ以テ組織シ居ルコト、関係者ハ無俸給ニシテ些ノ実費ノミヲ支給シ居ルコト
一、将来ノ計画
 - 第33巻 p.510 -ページ画像 
     現在ノ紙数ヲ倍加シ、殊ニ日米問題ノ中心点ナル加州及太平洋沿岸ニ支部ヲ設ケ、主任者ヲ置キテ、専ラ邦人問題ヲ調査シ、事実ノ真相ヲ報シテ、一般ノ為メニ解決ノ途ヲ開クコト、尚発行高ヲ数倍シテ、白人間ニ努力スルコト

(鉄筆)
    Japan Reviw誌及ビ日米調査会共同調査及ビ通信部
同部ノ事業ハ専ラ沿岸ニ於ケル邦人ノ社会事情・経営事業・生活状態等ヲ調査シ、一面ニハジヤパン・レビューヲ通ジ、他面ニハ英字新聞ヲ通シテ、現下ノ排日気分ニ対応スル輿論ヲ形成スル為メニ努力スルコト
      ○
同部ノ事業ハ桑港ヲ中心トシテ、本部ヲ同所ニ設ケ、現在ノ邦人諸団体ト協力シテ実行スルコト
      ○
組織ハ当所ジヤパン・レビュー社及ビ日米調査会ノ下ニ置クコト
      ○
部員ハ(最底員数《(マヽ)》)米人通信員一名、邦人一名、事務員一名ヲ要スルコト
      ○
予算
  米人記者   六千弗
  邦人記者   三千弗
  事務員    二千弗
  事務所員   四千弗
   合計  一万五千弗
  当分部数増加費用 一万弗

                      (別筆)
                        九年六月廿四日受
(鉄筆)
(欄外)秘 米国加州排日協会ノ運動進行中ナル日本人排斥人民直接立法案成立防止運動費補助金支出ノ件(九年六月廿一日)
一、人民直接立法案ハ来ル七月二十日迄ニ五万五千九十人ノ賛成署名ヲ得テ成立シ、来ル十一月三日ノ総投票ノ際過半数ヲ得レバ法律トナルモノナルガ故ニ、期日既ニ逼迫シ居ルヲ以テ此際一刻モ猶予スルコトナク迅速ニ全力ヲ傾倒シテ、排日反対輿論ヲ喚起スベク運動セシムル必要アリ
一、加州排日協会ハ仮リニ人民直接立法運動ニ失敗スルコトアルモ、大正十年一月ヨリ開催スル定期加州々会ニハ之レヲ再ビ議題トシ、排日ノ目的ヲ達セントシツヽアルガ故ニ、排日反対輿論作興運動ヲ更ニ将来ニ継続スルコト必要ナリ
一、加州排日協会ハ排日土地法案成功スレバ、更ラニ一歩ヲ進メ、米国出生日本人児童ノ市民権ヲ否認スルベク、米国憲法修正運動ニ努
 - 第33巻 p.511 -ページ画像 
力スルコトトナルベキヲ以テ、米国ノ親日輿論作興運動ハ更ニ大規模ニ継続的ニナスコト必要ナリ
一、本運動ニ要スル費用
 在米日本人会及地方農業者ノ代表者最近協議会ヲ開キ、対排日運動費総額七万五千弗ヲ募集スルコトヲ可決シタルカ、其ノ費目ノ内訳左ノ如シ
 一、英文冊子刊行費  二万弗
 一、遊説者利用費   二万弗
 一、新聞紙利用費   二万弗
 一、法律研究費    壱万五千弗
   計        七万五千弗
 之レカ募集方法トシテ、十五名ノ委員ヲ挙ケ頻リト募集シツヽアルカ如クナレトモ、最近ノ情報ヲ綜合スレバ、右可決金額ヲ募集スルコト頗ル困難ナルカ如クナルノミナラズ、僅々一二ケ月ノ間ニ差シ迫リタル運動費ヲ、一般邦人間ニ募集スルカ如キハ策ノ得タルモノニ非ズ、之レカ為メニ運動ノ時期ヲ失スルガ如キコトアツテハ遺憾千万ナルヲ以テ、右可決金額ノ半額位ヲ支出補助ナサバ、此運動ヲ促進スルコト大ナルベシト思惟セラル
一、補助金支出ノ方法
 補助金ハ決シテ政府筋ヨリ支出シタル形跡ヲ表サヾルノ注意肝要ナリ
 補助金ヲ交附スベキ先ハ
  金二万五千円 在米日本人会代表牛島謹爾
  金二万五千円 加州中央農会代表千葉豊治
  金二万五千円 太田総領事手許
一、在米日本人会ニ交附スベキ二万五千円ハ、日米関係委員代表男爵渋沢栄一氏ニ一先ツ交附シ、夫レヨリ更ニ転送セシムルコト最モ可ナラン
                   (別筆)
                   牛島謹爾ニ電報シ一時立替セシムルコト
一、加州中央農会ニ交附スベキ分ハ、代表者目下帰朝中ナルヲ以テ之レニ交附シ、本人ヨリサクラメント日本銀行ヲ経テ送附スルコト
                  (別筆)
                  日本銀行頭取松本万亀ニ電報シ一時立替セシムルコト
一、太田総領事手許留置ノ分ハ、主トシテ河上清、H. H. Guy.等ヲ中心トシタル運動費トシテ
一、在米日本人会・加州中央農会ハ協力シテ排日防止ニ努ムベキコト勿論ナレトモ、運動ノ方面ヲ大体左ノ如ク別チテ応掌《(マヽ)》スルコト必要ナリ
  在米日本人会ハ主トシテ(一)英文冊子刊行配布、(二)遊説者利用、(三)新聞紙利用、(四)法律研究等
  加州中央農会ハ主トシテ各地米人地主・銀行家・州農園芸委員・日米人共同産業組合等ヲ中心トシ、地方的ニ排日反対論ヲ作興スルコトニ努ムベク、邦人農業者ノ人心安定、協同一致、軽挙盲動ナカラシメンコトニ努ムベシ
(欄外別筆)
 [堅ク他見ヲ禁ス、外務省ヘ申出ノ件
 - 第33巻 p.512 -ページ画像 

〔参考〕日米関係調査会趣意 千葉豊治著 第一―五頁(大正九年)(DK330063k-0004)
第33巻 p.512-514 ページ画像

日米関係調査会趣意 千葉豊治著 第一―五頁(大正九年)
                       (阪谷子爵家所蔵)
(謄写版)
(表紙)

   日米関係調査会趣意
                     (別筆)
                     九年六月廿四日受


    日米関係調査会趣意
日米両国間ノ最モ困難ナル問題ト思惟セラルヽ加州ノ日本人排斥問題ノ解決ハ、両国ノ政府対政府ノ交渉ヲ以テスヘキ性質ノモノニ非ス、又所謂排日者ト親日者トノ論議ヲ以テスヘキモノニモアラス、問題ハ加州ニ於ケル日本人農業者ノ存廃ニ関スル事多キカ故ニ、特ニ在留邦人農業者カ之ヲ自己ノ問題タル事ヲ自覚シ、進ンテ加州ノ米人農業者ト接衝協議ヲ重ネ、其在留邦人ノ在住国ニ対スル誠実ト、加州ノ土地及産業ノ開発ニ貢献シタル事実ヲ広ク米人間ニ闡明シ、其公正ナル輿論ニ訴ヘテ解決セサルヘカラサルモノナリト信ス、即チ本調査会ハ此必要ヲ痛切ニ自覚シタル同志ノ組織スルモノニシテ、排日運動ノ内容ト在留邦人ニ関スル事実トヲ正確ニ調査シ、必要ニ応シ其調査ノ結果ヲ発表シ、以テ一方米人ノ公正ナル判断ニ訴ヘ、他方在留邦人ノ将来ニ処スル策ヲ樹テントスルニアリ
  千九百十九年九月

    調査事項及事業大要
一、加州排日協会其他ノ排日運動ヲ監視シ調査スルコト
一、米国官憲及公私団体ノ日本及日本人状態調査ニ協力スルコト
一、加州農芸及労働移民局・加州大学・加州農業協会、其他米人公私団体ト聯絡シ材料ノ交換ヲ計ルコト
一、日米人共同組合及事業組織奨励ノ目的ヲ以テ、各種産業組合及事業ノ内容ヲ調査スルコト
一、在留邦人ノ真相・人口移動・分布ノ状態・土地開発・産業的貢献生活状態等ノ調査ヲナシ置クコト
一、在留邦人ノ分布状態ニ改善ヲ加フル目的ヲ以テ、広ク新発展地ノ調査ヲナスコト
一、将来日米関係ニ有用ナル人物ヲ養成スル目的ヲ以テ、各大学在学生ヲ補助シ日米問題ヲ研究セシムルコト
一、在留邦人ノ真相ヲ理解セシメ、特ニ在留者ノ米国ニ対スル貢献ヲ宣伝スル目的ヲ以テ、英文冊子ヲ刊行シ広ク配布スルコト
一、米国ニ発刊セラル、新聞雑誌ヲ利用シ、米国新聞雑誌ノ検閲・啓発的反駁・正誤・否認及親日思想鼓吹ニ努ムルコト
一、米国ト在留民ノ状態及排日事情等ヲ内外邦人間ニ知ラシムル目的ヲ以テ、日本文報告書ヲ発行スルコト
一、本会ニ要スル費用ハ賛成者ノ寄附ニ依ルモノトス
 - 第33巻 p.513 -ページ画像 
    千九百二十年五月迄ニナシタル事業ノ主ナルモノ。
一、英文刊行物ノ発行配布
 "Japanese Immigration and the Japanese in California"
 "The Influence of America on the Reconstruction of Japan"
 "Japanese Farmers in California"
 ノ三種、桑港クロニクル、オークランド・エンクワイヤ、紐育サン新聞其他ニ寄稿
一、日本文刊行物
 米国ニ於ケル排日問題ニ関スル要綱冊子三種
 土地所有邦人児童ノ後見人及財産管理人ニ関スル注意書
 加州ノ米作其他邦字新聞雑誌ニ寄稿
一、加州政庁ノ邦人状態調査ニ関スル協力
一、京都同志社大学総長海老名弾正氏欧州ヨリノ帰途壱ケ月半米国西部大平洋岸ニ滞在ヲ乞ヒ、米人間ニ二十五回、在留日本人間ニ二十回ノ講演会ヲ開キタリ
一、「デモイ」ニ開催サレタル万国学生大会ニ出席スル加州大学生四名ニ補助金ヲ給ス
一、中部加州ノ邦人土地所有後見人召喚事件ニ尽力ス
一、「リビングストン」ノ排日緩和ニ尽力ス
一、在桑港日米関係委員及日米親善ノ為メ渡日シタル「ヴアンダリツプ」氏一行ニ、加州邦人事情及イニシエテーブ運動ニ対スル意見書ヲ提出ス
一、日米関係事項ノ新聞雑誌切抜彙集其他
               米国加州中央農会内
                 日米関係調査会
                   主任 千葉豊治
   ○千葉ノ起草セルモノニ、謄写版刷菊判十八頁ノ「米国加州ノ排日ト邦人金融問題」ト題スル一小冊アリ。本冊モ是日阪谷男爵ノ入手セルモノナリ。惟フニ、本件モ亦是日ノ話題タリシモノナラン、今左ニ其内容ヲ摘記スベシ。
      米国加州ノ排日ト邦人金融問題
    加州ニ於テハ、イニシアテヴ排日法ヲ計画中ナル一方、州官吏及裁判官ヲ動カシテ、日本人ノ土地購入、土地会社株式買入ノ登録ヲ妨ゲ、土地ヲ所有スル米国出生日本人ノ後見人ノ召喚検挙ヲ開始シ、後見人ノ職ヲ剥奪シテ日本人間ニ不安ノ念ヲ抱カシメツヽアル一方、在留邦人ノ金融ニ対シテ大ナル圧迫ヲ加ヘツヽアリ
        金融方面ヨリノ排日圧迫
    加州排日協会ハ各日本人所在地ニ支部ヲ組織シ、其地方ノ米人銀行ニ干渉シテ、日本人ニ対スル金融ヲ阻マシメツヽアリ
        故国預送金問題
    加州在留邦人ノ農作面積ハ三十八万英町ニ達シ、其生産額千九百十九年ニハ一億四千万円ニ上レルモ、内四割ハ地主ヘ、四割ハ労働者ヘ支払フモノニシテ、約二割ガ経営者ノ所得トナルモノナルガ、労働者所得ノ大部及経営所得ノ一部ハ常ニ故国預送金トナリツヽアリ
        故国預送金ト正金・住友支店ノ態度
    対日為替ガ下落ノ傾向ヲ示セル折、両支店ハ預金利子ヲ引上ゲ、預送金ヲ吸収シタルタメ、本年二月中ノミニ於テ百万円ヲ超ユル預送金ヲ見タリ、
 - 第33巻 p.514 -ページ画像 
之ガタメ米人銀行ハ日本送金ニ警戒ヲ加ヘ、日本人事業家ニ対スル貸出ヲ差止メタリ
        故国銀行支店ノ営業振
    在米邦人間ニ金融機関ノ不備ナルニ加ヘテ、故国銀行支店ハ、単ニ預送金ノ吸収ノミヲ事トシ他ヲ省ミズ
        在留邦人営業銀行
    先年ノ恐慌ヲ無事経過セル邦人経営ノ二銀行アリ、サクラメント日本銀行及フレスノ勧業銀行之ナリ、共ニ在留民ノ事情ニ精通スルヲ以テ其邦人ノ事業助長ニ尽力中ナリ、タヾ資本金小ナルヲ以テ米国銀行法ノ規定ニヨリ一口ノ貸出ヲ払込資本金ノ一割ニ限定セラルヽ以上大口ノ金融ヲ行ヒ得ズ
        サクラメント日本銀行
    同行ハ邦人農業ノ中心地サクラメントニ位シ、殊ニ北部加州ノ新事業タル米作、サクラメント附近ノ野菜・果物耕作等ニ資金ヲ供シテ大イニ其発展ヲ助長シ、資本金十万弗以下ナリシモノ昨年末ニ二十万弗払込済トナシ、本年ハ貯蓄部増設ノ認可ヲ得テ三十万弗ニ増資スルコトトナリヲレドモ、最近ノ如キ資金ノ故国預送金ニヨリ悪影響ヲ被リツヽアリ
        邦人農業者ノ実情
    邦人農業者ハ過去二十年ノ辛苦経営ノ結果ト、欧洲戦後ノ農作物騰貴トニヨリ長足ノ進歩ヲナシ、昨年度ノ如キ加州中央農会及サクラメント日本銀行ノ仲介ニヨリ大口分ハ正金銀行支店及米人銀行ヨリ特別貸出ヲ需メ、内米作業者ニ融通セルモノノ如キハ一口十万弗ヨリ十八・九万弗ニ達セリ、此等ノ事業家ハ昨年巨利ヲ得、銀行ニ対シテハ克ク其返済ヲ完了シ、本年度ハ更ニ其事業ヲ拡張シ居レルガ故ニ、本年収穫期ニハ一層巨額ノ金融ヲ得ズバ収穫ノ完了困難ナル状態ナリ、一方米人銀行ハ邦人ニ対スル貸出ヲ中止シ、正金支店亦銀行監督官ノ干渉厳ナルガタメ本店ヨリ農業資金貸出中止ノ命アリタリトテ貸出ヲ渋リ、邦人経営銀行ハ資金逼迫ニヨリ、十分ノ金融ヲナシ得ズ、コノ儘ニ本年ノ秋期ヲ迎ヘバ或ハ農業者倒産ノ不幸ニ陥ルモノ無キヲ保セズ
        故国ヨリノ金融援助
    斯ノ如ク在米農業者ハ外ニ排日派ノ執拗ナル迫害ヲ受ケ、内ニ金融上ノ圧迫ヲ蒙リ、身神共ニ疲レ、歩調漸ク乱レントスル傾ナキニアラズ、モシイニシアテヴノ通過スルコトモアラバ、余裕アル者ハ故国ニ引上ゲ、踏止ル者ハ益経済的窮迫ヲ被ルガ如キコトナシト云フベカラズ
    千九百十三年加州土地法制定ニ際シテ、当時渋沢男爵等ハ日米同志会ヲ組織シ法学博士添田寿一ヲ加州ニ遣シテ、横浜正金銀行ヨリ特別貸出ヲ得、以テ邦人人心ノ安定ヲ見、爾来一般ノ発展ヲ見タル先例アレバ、此際在米同胞ノ嚮フベキ方針ヲ謬ラザラシメ、自暴自棄ニ陥ルコト無カラシムルタメ、故国ヨリ金融上並ニ事業上ノ援助ヲ得ンコトハ焦眉ノ急ナリト思惟ス
        金融及事業奨励案
    此方案トシテ
    第一案 在留邦人経営銀行ニ増資又ハ特別貸付ヲナスコト
        各邦人銀行ニ三十万弗乃至五十万弗ヲ貸付或ハ増資ヲナサシムルトキハ、該銀行ノ貸出一口金額モ相当額ニ上リ、又該銀行モ信用ヲ得テ預金額モ増加シ、更ニ積極的ニ発展シ得ベシ
    第二案 在留民ニ対シ横浜正金銀行及住友銀行支店ヨリ特別貸出ヲナスコト
    第三案 新ニ大規模ノ在外邦人企業奨励機関ヲ設クルコト
    而シテ特ニ一言スベキハ在留邦人間ニ数万弗乃至数千弗ノ投資余力ヲ存スルモノ少カナズ、タヾ排日ノ形勢ニ迷ヒ、且ツ在留邦人間各種ノ情実纏綿シテ資金ノ合同ヲ見ズ、為ニ帰朝シテ他ニ発展ノ途ヲ求ムル者サヘアリ、此際故国ノ徳望信用アルノ士之ガ提唱ヲナシ其実現ノ為ニ一臂ノ力ヲ藉サバ、在留邦人ハ翕然之ニ参加スベキナリ