デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正15年5月26日（1926年）

是ヨリ先二十二日、栄一、アメリカ合衆国在住田島準一郎ヲ飛鳥山邸ニ引見ス。是日、当委員会小委員会、丸ノ内日本工業倶楽部ニ開カレ、栄一出席シテ、同人提案ノ日系米国市民ノ日本精神作興運動後援ノ可否ヲ議ス。

集会日時通知表　大正一五年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
五月廿二日　土　午前九時　田島準一郎氏来約（飛鳥山邸）

日米関係委員会往復書類（一）　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
拝啓、時下益御清適奉賀候、然ハ日系米国市民ノ将来ニ関シ御相談申上度義有之候間、御多忙ノ際恐縮ニ候ヘ共来廿六日（水）午前十一時丸ノ内日本工業倶楽部ヘ尊来被成下度候、此段御案内申上候　敬具
　　大正十五年五月廿二日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　　　　　殿
　　尚乍御手数御諾否御回示被下度候

日米関係委員会集会ニ関スル控　（日米関係委員会所蔵）
日米関係委員小委員会
大正十五年五月廿六日午前十一時、於工業倶楽部
　　　　　　　　　　　　　　　（太丸ハ朱書）
　　　　　　　　　　　　　　　　○子爵　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　　○　　　藤山雷太
　　　　　　　早退一時十五分頃　○男爵　阪谷芳郎
　　　　　　　　　　　　　　　　欠　　　井上準之助
　　　午後一時二十分退出ノ予定　○　　　添田寿一
　　　　　○　埴原正直　　　　　欠　　　団琢磨
　　　　　○　矢田長之助　　　　欠　　　串田万蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　○　　　小野英二郎
　　　　　　公務上ノ差支ノ為メ　欠　　　山田三良
　　　　　　教授会定日ノ為メ　　欠　　　姉崎正治
　　　　　　　　　　　　　　　　○　　　頭本元貞
　　　　　　　　　　　　　　　　○　　　堀越善重郎
　　　　　　　　　　　　　　　　欠　　　一宮鈴太郎
　　　　　　　　　　　　　　　　幹事
　　　　　　　　　　　　　　　　○　　　増田明六
　　　　　　　　　　　　　　　　○　　　小畑久五郎
 - 第34巻 p.632 -ページ画像 

日米関係委員会集会記事摘要　　（渋沢子爵家所蔵）
　日米関係委員会小委員会
　大正十五年五月廿六日於工業倶楽部開催
　出席者
　　来賓　埴原正直氏・矢田長之助氏
　　委員　渋沢子爵・阪谷男爵・添田氏・藤山氏・小野氏・頭本氏
　　幹事　増田氏・小畑氏
　　　　協議事項概要
渋沢子爵座長　十二時開会を宣し、増田氏をして田島準一郎氏を子爵に紹介せる桑港総領事武富氏の書面を朗読せしめらる。問題は将来在米日系米国人に対して一般日本人は如何なる態度を取るべきやにあり、日系米国人は国籍上米国人であるが、米国人側よりは平等の待遇を受くることが出来ない、而して日本人よりは米国人として顧みられざる時は、彼等は特種人種として自暴自棄に流れはせぬか、去ればとて進んで彼等を保護する時は、排日米人に能き口実を与ふるの嫌ひあり、然し如何にしても彼等を棄て置く訳けに行くまいと思ふ、若し田島氏の事業が有効なものであれば、我関係委員会は之を援助すべきではないかと思ふ所より、今日皆様の御尊来を御願ひ致した次第であります、埴原大使に御尊来を辱うせしことを特に感謝致します
埴原氏　子爵の御憂慮なさるゝ所至極御最もにて全然同感であります
頭本氏　田島氏の発表せる宣言書中、敏感なる米国人の感情を刺戟するものあり、即ち米国の市民権を有する者にも大和魂を鼓吹するのであつて、大なる誤解を招く恐あると思ふ
添田氏　頭本氏と同感
埴原氏　外務大臣を訪問して本問題に付き懇談し、其結果を渋沢子爵まで報告致しませう
矢田氏　田島氏の運動にも同情すべき点あれば、尚ほ一層委はしく此問題を研究する必要あると思ひます
阪谷男　田島氏の宣言書は同氏が日本に帰られし後作製披露せしものにて、此事は武富総領事の知らざるものと思はる……
　　　午後二時過散会

（阪谷芳郎）日米関係委員会日記　大正一五年
　　　　　　　　　　　　　　　　　（阪谷子爵家所蔵）
十五、五、二六　工業クラフ午餐相談、牧師田島準一郎氏米国生レ日本人ノ教育方針意見ニ付テナリ但趣旨ハ日本魂説ニ傾キ反テ米人ノ反感ヲ買ハサルカトノ異論アリ渋沢・藤山・堀越・頭本・添田・小野・埴原・矢田（長之助）小畑・増田
（欄外）
　　五月廿九日　田島来宅、余同人ノ主張ニ異論アルヲ語ル、六月七日田島再ヒ来宅、埴原ト面会誤解ヲ釈ク、同人ノサン・エンド・スター教化運動ニ付三ケ年間一ケ年六
 - 第34巻 p.633 -ページ画像 
千弗ノ補助ヲ要ス云々、タツカー博士ヲ招聘、雑誌発行、旅費ノ為ナリ云々

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（武富敏彦）書翰　渋沢栄一宛　大正一五年四月一三日
　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
拝啓
本書持参人田島準一郎氏ハ、当地日本人聖公会牧師ニ有之、多年来教職ニ従事スル傍、近来日本人系米国市民ノ教養ニ資スル目的ヲ以テ、Stars and Sun ナル小中学校程度ノ日英両語ヲ以テ編纂セル月刊雑誌ヲ発刊シ居レル処、今回一時帰朝ノ趣ニ付テハ御多忙中恐縮ニ存候ヘ共、御差支ナキ限リ御引見相願度、此段御紹介得貴意候　敬具
　　大正十五年四月十三日　　　在桑港
 - 第34巻 p.634 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　総領事　武富敏彦在桑港日本帝国総領事

　　子爵　渋沢栄一殿

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（埴原正直）書翰　増田明六宛　（大正一五年）六月一八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
拝啓、陳者先般渋沢子爵ヨリ御協議ニ預候田島牧師ノ件ニ関シテハ、去九日米国大使午餐会ノ席ニ於テ同子爵ニ御目ニ懸リ候節、曩ニ小生ヨリ外務省ニ問合セ相試ミ候経緯ニ付子爵ノ御了解ヲ得置候処、本日斎藤通商局長代理ヨリ別紙写ノ通リ来書ニ接シ候ニ付、右子爵ニ御伝達相煩シ度此段御依頼申進候　匆々
　　六月十八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　埴原正直
　　　　　　　　　　　　（別筆）
　渋沢事務所　　　　　　一五、六、廿一落手　明六
　　　　増田明六殿　廿二日回答済
　　追て曩に拝借致候武富総領事の紹介状及田島牧師の趣意書刷物ハ斎藤氏より直接貴下宛及御返送候筈に付、右に御了承願上候
（別紙）
機密
拝啓、陳者桑港聖公会牧師田島準一郎氏ノ経営ニ係ル雑誌「スタースエンド・サン」ノ件ニ関シ、在桑港武富総領事ヘ電照致候処、別紙写ノ通回電有之候ニ付、委曲右ニテ御承知相願度、尚本事業遂行ニ付テハ本省ニ於テ異議無之候ヘ共、之カ援助方ヲ斡旋スルコトハ之ヲ避ケ度ク、右ハ全然関係ノ向ノ判断ニ委セ度キ意嚮ニ御座候　敬具
　　大正十五年六月十七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　斎藤外務省通商局長代理
　　　　埴原大使殿

（写）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　武富総領事
牧師田島準一郎ノ「スタース・エンド・サン」Stars and Sun雑誌ニ対シテハ、数代前ノ総領事以来毎年補助金ヲ給シ居レル関係アリ、昨今両年度共ニ内密補助ノ意味ニテ百弗、外部ニハ絶対ニ発表セサル約束ニテ与ヘ置キタル迄ニテ、趣意書中ノ指導援助トアルハ特別ノ意味アル次第ニ非ス、当地方ニテ此種事業ヲ為スモノノ常套手段トシテ、領事及知名ノ有志家等ノ名ヲ用ヒタルモノト解セラル、先頃同人帰朝
 - 第34巻 p.639 -ページ画像 
ノ際渋沢子爵・阪谷男爵其他ニ資金ノ援助ヲ求ムル主旨ニテ紹介ヲ希望シタルモ、本官ハ特ニ之ヲ避ケ、事業ニ付テハ紹介先ノ判断ニ委スル外無キ旨説キ聞カセタル上、単ニ同人ノ身分ヲ明ラカニスル意味ノミノ紹介状ヲ交付スルニ止メタル次第ナルニ付、右御了承アリタシ

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