デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2017.12.19

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
6款 国際平和義会日本支部
■綱文

第36巻 p.156-157(DK360060k) ページ画像

明治44年11月7日(1911年)

是日栄一、アメリカ合衆国ニュー・ヨーク国際平和義会会頭ジョン・ウェズレー・ヒルト兜町ノ渋沢事務所ニ於テ会見シ、右平和義会ノ目的ニ関スル説ヲ聴ク。翌八日、ヒルニ書翰ヲ送リ、ソノ説ニ賛意ヲ表ス。


■資料

竜門雑誌 第二八二号・第五六頁明治四四年一一月 ○青淵先生とヒル氏(DK360060k-0001)
第36巻 p.156-157 ページ画像

竜門雑誌  第二八二号・第五六頁明治四四年一一月
○青淵先生とヒル氏 去七日青淵先生には、兜町事務所に於て米国紐育万国平和協会々頭、ジヨン・ウヱスレー・ヒル氏と会見し、種々意見を交換せられたるが、越えて十日博士主催の集会には是非出席を懇請せられたるも、青淵先生には先約ありて出席する事能はざればとて左の一篇を草し、博士に送附せられたり。
 因に博士は同日集会の席上、之を朗読して来会者に先生の意見を発表すると共に、先生に対し感謝の意を述べられたりと云ふ。
  千九百十一年十一月八日
                     渋沢栄一
    帝国ホテル
      ジヨン・ウヱスレー・ヒル博士殿
 拝啓昨日は御訪問を辱ふし、貴下が主宰せらるゝ万国平和協会の高尚なる目的に関し、御高話を拝聴するの機を得候は深く悦ぶ処に御座候。而して貴下が確実に万国平和を、殊に実業界に於て建設せんと御尽瘁相成居候次第は、老生に於て深く感服仕候。然るに昨日も申上候通り、来る十日(金曜日)午後の御集会には折角の御招ぎに候得共、不得止前約有之候為め出席致兼、深く遺憾に存候、就ては貴下の斯く熱心に且つ目覚しく尽力せらるゝ大業に対し、老生の所感を玆に数言申述べ度存候。凡そ万国の平和なるものに就ては、世界中何人も異論のあるべき筈なき事と存候、殊に商工業の発展に過去四十余年の歳月を献身したる老生の如きに至ては、斯の如き光輝ある貴下の活動に対して、高く双手を挙げて賛成せざるを得ざるの感相起候。戦争は場合に依り国民の進歩を助くる事あるべきも、斯の如き助に因りて為したる進歩は、是れ真正のものと云ふべからず真正の進歩は社会の万事に関聯して一般調和的のものにして、流血の不幸、人命の破壊を包含すべきものならずと信じ候。又貴協会は他の平和協会とは大に其趣を異し、単に坐して神に祈り、以て平和を得んとするに止まずして、奮起以て積極的の手段を実行し、永久平和の為めに、真正の基礎を築造せんと欲するものと存候。故に其目的とする所、其為す所は孔子の所謂王道として教へらるゝものに符合し、貧者は悲まず富人は驕らず、各階級を通じて満足し、各人
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其位置に安する幸福状態に社会を進歩せしめ、万民は平和を楽み、各々乱を忌み、身を修めて家を斉へ、家を斉ふて国を治むべしとの主義と、貴協会の目的とする所は正に之れ並行するものなりと信じ候。此故に老生は熱心に貴下偉大の運動を賛成し、誠実に此栄誉ある事業をして益々其成功を大ならしめ、以て汎く社会人類の洪益たらん事を祈る所以に有之候
 右申上度如斯に御座候 拝具
  ○次掲十二月七日、国際平和義会日本支部成立ノ条ニ用ヒタルニヨリ、会名ハ国際平和義会ヲトル。