公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2025.3.16
第36巻 p.615-619(DK360216k) ページ画像
大正13年9月18日(1924年)
是日、当協会第二回宣伝委員会東京銀行倶楽部ニ開カル。栄一出席シテ来ル十一月十一日平和記念日ニ於ケル宣伝及ビ婦人ニ対スル宣伝ニ就イテ協議ス。後、当協会第四十六回理事会同所ニ開カレ、同ジク出席ス。後、当協会理事井上準之助帰朝歓迎晩餐会ニ移ル。
国際聯盟協会書類(一) 【(謄写版) 大正十三年九月十一日】(DK360216k-0001)
第36巻 p.615-616 ページ画像PDM 1.0 DEED
国際聯盟協会書類(一) (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
大正十三年九月十一日
国際聯盟協会々長 渋沢栄一
(二字手書)
会長殿
拝啓、残暑の候愈々御清祥の段奉慶候、陳者来る九月十八日(木曜日)午後四時より丸ノ内銀行倶楽部に於て、第四十六回理事会を開催、別紙議案に就き御協議相煩度、右終つて過般御帰朝の井上理事歓迎晩餐会を開催可致候に付、御繁用中乍恐縮万障御繰合せ、御来臨の栄を賜はり度、右御案内申上候
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追て御出席の有無は、乍御手数折返し御回報被成下度願上候 敬具
(別紙)
協議案
一、沢田氏寄附金処分の件
外務書記官沢田節蔵氏は本協会の為め金千円也を寄附せられたり。《*》右金額は同氏の好意を記念する意味に於て、特別の使途に当てたし之を以て国際平和に関する権威ある論文を出版しては如何。
二、新渡戸博士講演旅行に関する件
新渡戸博士本年十一月末帰朝相成、一月初旬より同月末帰任までの《**》期間を聯盟協会事業宣伝の為めに提供さるゝ旨の申出あり、依つて一月中約二十日間東北より九州まで講演旅行を願ふ事としたし、場所によつては理事中一名御同行願ひたし、尚ほ博士の講演集を出版しては如何、右計画実行の為め講演会費予算に不足を生ずる場合もあるべし、依つて予備費中より三千五百円迄支出の件御承認を乞ふ
三、日支、日米関係に関する英文・仏文の解説を編纂の件
今回リヨンの聯合会に於ける吾代表は日支・日米関係につき詳細の解説《***》を作り、之を各国に配付する事の必要を痛感したる趣きにつき右様のパンフレツトを英文及仏文にて編纂出版したし、執筆者は相当知名の研究家に依頼しては如何、例へば日米問題については米田実博士の如し。
四、朝鮮支部の件
八月四日より六日まで内ケ崎理事京城に於て、本協会の朝鮮支部設置問題《****》につき各方面の人士と協議されたる処、朝鮮に支部を設くれば他日朝鮮人のみの協会が組織さるゝに至つても、聯合会は之を認めざるや否やの点につき疑を有するもの多く、結局右問題確定せざれば支部設立の運動をなし難しとの意見に一致したり。朝鮮の現状より見て先方の進まざる場合に、強いて支部設置を慫慂するは却つて好ましからざる結果を見るべく、殊に聯合会の態度は何れとも定め難き事情もあれば、朝鮮支部設置其他同地方に対する宣伝は暫く時機を待つ事としたし。
五、軍備縮小問題に関する本協会の態度に関する件
田川理事の報告につき審議されたし。《*****》
*欄外朱書
喜ンテ受領スルコトヽシ、其使途ニ付テハ充分考慮ノ上、方案ヲ立ツルコトヽ決ス
**欄外朱書
新渡戸博士ノ事業ヲ宣伝スルコトハ最必要ノコトニシテ、本企劃ハ真ニ結構ナリ、只博士滞留ノ期間短キニ付、順序ヲ過ラザル様場所ノ選択等、充分注意スルコト、費用モ若シ必要ナル場合ハ、多少ノ増加モ差支無キコトニ決ス
***欄外朱書
可決
****欄外朱書
研究ノコト
*****欄外朱書
審議未了
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(国際聯盟協会) 会務報告 第二五輯 自大正一三年九月一八日至同年一〇月二八日(DK360216k-0002)
第36巻 p.617 ページ画像PDM 1.0 DEED
(国際聯盟協会) 会務報告 第二五輯 自大正一三年九月一八日至同年一〇月二八日
(渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
二、第二回宣伝委員会
日時 大正十三年九月十八日午後三時 丸ノ内銀行倶楽部
出席者 渋沢会長、添田副会長、田川・林・下村各委員、加藤主事
協議決定事項
一、今年の休戦記念日に於ける運動方法に関する件
昨年と同じく講演会及少年少女平和大会を催すこと
その要目左の如し
(イ)講演会
十一月八日(土)夜
(ロ)少年少女平和大会
(1)日時 十一月九日(日)午後
(2)場所 日比谷公園音楽堂 雨天の節は府立商工奨励館《(東京)》
(3)催物 音楽、在留各国人の児童のその国の固有の人情風俗を示すに足る音楽又は舞踊、記念絵葉書発売、九頭竜女学校又は有隣園児童のページエント、外相・外交団代表・渋沢会長の挨拶、少年少女代表のお話、放鳩等
(ハ)東京市其の他の団体と共同主催とすること
(ニ)学生支部員の助力を求むること
(ホ)予算千五百円
二、本協会の会歌を作る件
各種会合、殊に学生支部等の会合に於て合唱すべき世界平和、国際聯盟の歌を作ること、費用二百円
三、婦人に対する宣伝の件
婦人の間に国際聯盟の知識及び精神を普及せしむる必要頗る大なるを認め、婦人団体其の他婦人運動の主脳者の会合を催し、本協会の婦人に対する宣伝につきその意見を徴すること
尚大阪に於ては、今秋関西地方宣伝の際、関西婦人聯合会の会合を催し協議することにつき、原則は大体承認せられたるも、具体的実行案については、更に考慮することに決定。
(国際聯盟協会) 会務報告 第二五輯 自大正一三年九月一八日至同年一〇月二八日(DK360216k-0003)
第36巻 p.617-618 ページ画像PDM 1.0 DEED
(国際聯盟協会) 会務報告 第二五輯 自大正一三年九月一八日至同年一〇月二八日
(渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
三、第四十六回理事会
日時 大正十三年九月十八日午後四時 丸ノ内銀行倶楽部
出席者 徳川総裁、渋沢会長、添田副会長、井上・林・岡・田川・山川・山田・秋月・姉崎・下村・頭本各理事、深井監督、加藤主事
加藤主事より八月一日乃至九月十七日の会務の報告あり(会務報告第二十四輯参照)承認、直ちに協議に移り左記の如く決定せり
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一、沢田氏寄附金処分の件
外務省書記官沢田節蔵氏は、本協会の事業援助の為め金壱千円を寄附せられたり、右金額は同氏の好意を記念する意味に於て、特別の使途に当つることゝし、同氏とも協議の上之を以て国際平和に関する権威ある論文を出版することゝせり、実行については沢田氏・姉崎理事・加藤主事に一任。
二、新渡戸博士講演旅行に関する件
新渡戸博士本年十二月中旬帰朝、一月初旬より同月末帰任までの期間を、聯盟協会事業宣伝の為めに提供さるゝ旨の申出あり、依つて一月中約二十日間、東北より九州まで講演旅行を願ふ事とし場所によつては理事其他一名同行、尚博士の講演集を出版することに決定。
右計画実行の為め、講演会費予算不足の場合には、予備費中より三千五百円支出すること。
三、日支、日米関係に関する英文・仏文の解説を編纂の件
今回のリヨンの聯合会に於て、日支・日米問題が世界の人々に知られ居らざる事を痛感したり、依つて英文、及仏文の右問題に関する詳細の解説を作り、之を各国に配付する事とせり。
四、朝鮮支部の件
八月四日より六日まで内ケ崎理事、京城に於て本協会の朝鮮支部設置問題につき、各方面の人士と協議されたる処、朝鮮に支部を設くれば他日朝鮮人のみの協会が組織さるゝに至つても、聯合会は之を認むるや否やの点につき疑を有するもの多く、結局右問題確定せざれは、支部設立の運動をなし難しとの意見に一致したり朝鮮の現状より見て先方の進まざる場合に強いて支部設置を慫慂するは、却つて好ましからざる結果を見るべく、殊に聯合会の態度は何れとも定め難き事情もあれば、朝鮮支部設置其他同地方に対する宣伝は、暫く時機を待つ事とす。
五、軍備縮小問題に関する本協会の態度に関する件
田川理事の報告ありたるも、時間の都合上、本協会の態度決定の問題に至らざりき。
六、休戦記念講演会、少年少女平和大会、会歌、婦人に対する宣伝の件
第二回宣伝委員会の決定を報告、異議なく承認。
右にて理事会を閉ぢ、井上理事の歓迎晩餐会を催し、席上同理事より第八回聯合会総会参加の感想談あり、九時半散会せり。
国際知識 第四巻第一〇号・第六三頁 大正一三年一〇月 第八回聯合大会の感想 井上準之助(DK360216k-0004)
第36巻 p.618-619 ページ画像PDM 1.0 DEED
国際知識 第四巻第一〇号・第六三頁 大正一三年一〇月
第八回聯合大会の感想
井上準之助
山本内閣の大蔵大臣にして、我国際聯盟協会の理事井上準之助氏は其挂冠後即ち今春二月三日欧米漫遊の途に上られたが、最近帰朝された。
其途中、里昂市に開催された第八回国際聯盟協会聯合大会に、本
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協会を代表して出席されたが、本稿は其所感である。
本稿は巴里の杉村陽太郎氏から、左の書信と共に送られて来たものである。
別紙は過般、里昂市に開催の第八回聯盟協会聯合会大会に出席せられたる井上氏の感想を伺ひ、古垣鉄郎氏に於いて書き上げたるものに有之、右玆に及送付候間、可然御取計相成度此段申進候 敬具
尚本協会理事会は、九月十八日に井上氏の歓迎晩餐会を催した。
今回、国際聯盟協会聯合大会に出席して、感じたこと一にして止まらないが、其特に自分の意を深うしたのは、第一に、世界各国の国際的協力が如何に必要であるかと云ふ点である。最早世界各国は箇々別別に行動することは出来ない。相互に相連結し、一国の利害は立所に世界の利害平和に反応する様になつたことが、層一層感ぜられる。
次に、官僚外交より国民外交へ移りつゝある傾向である。今日迄外交は各国共所謂官僚外交で、国民の殆んど与り知らざる処であつたが世界の国民の接触が日に繁くなるに従ひ、其弊害が明かとなり其欠点も知れ、やがて国民自身の意志による、又は之を真に代表する外交でなければならなくなつた。今後国民の輿論を代表する此種の国際会合は益々多くなり、卒直真剣に討議することゝなれば、世界の平和と一国の利害とは調和せられ、完全なる国際協力の幸福を享けることが出来るであらう。既に外交が官僚より国民のものとなり、国民の意志が代表せられ、従つて各国民の輿論の集る処、其処に一箇の国際的輿論即ち世界の輿論とも称すべきものが出来上るに到れば、如何なる大国と雖も、従来の如き勝手極はまる利己主義を平然行ふことは出来なくなるであらう。
国際的正義と平和の増進の為、此種の会合が益々真摯なる努力を捧げ、以て世界人類の福祉を導かんことを祈つてやまない。