デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
13款 社団法人国際聯盟協会
■綱文

第37巻 p.164-166(DK370031k) ページ画像

昭和2年7月19日(1927年)

是日、当協会理事会ヲ開キ、ソノ決議ニヨリ、即日会長栄一ノ名ニ於テ、スウィス国ジュネーブニ在ル、軍備縮小会議日本全権斎藤実及ビ石井菊次郎ニ対シ、激励ノ電報ヲ発ス。


■資料

国際聯盟協会書類(三) 【(謄写版) 昭和弐年七月十六日】(DK370031k-0001)
第37巻 p.164 ページ画像

国際聯盟協会書類(三)        (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
  昭和弐年七月十六日
                   国際聯盟協会々長
                      渋沢栄一
拝啓、ジユネーブに於ける軍縮会議に関し、斎藤・石井両全権に宛つる、別紙電報案審議の為め、来る七月十九日(火)正午、丸ノ内銀行倶楽部に於て臨時理事会を開催致候間、御多忙の砌り乍恐縮御繰合せ御臨席被成下度、此段御案内申上候
追而御出席の有無折返し御回報相煩はし度願上候 敬具
   ○別紙略ス。


(国際聯盟協会) 理事会 自大正一四年四月至昭和三年三月(DK370031k-0002)
第37巻 p.164-165 ページ画像

(国際聯盟協会) 理事会 自大正一四年四月至昭和三年三月
                  (社団法人日本国際協会所蔵)
    第七十回理事会議事録
                  昭和二年七月十九日正午
                  於銀行倶楽部
御出席
 徳川総裁 阪谷・添田副会長 岡・頭本・内ケ崎・山川・秋月・宮岡・新渡戸各理事 奥山主事 栗山外務書記官 野村海軍中将
 - 第37巻 p.165 -ページ画像 
協議事項
 軍縮会議に関し、斎藤・石井両全権に宛つる左記電報案を提案、直ちに電送することに決定。
   ○栄一欠席。
日本聯盟協会理事会ハ、両閣下ガ今回ノ会議ニ対シ、最モ公正ノ見地ニ拠リ、補助艦制限ニ努力セラルヽ段、衷心ヨリ感謝ス、同時ニ本協会ハ、両閣下ガ世界平和確保ノ為、三国保有補助艦ノ総噸数ヲ最少限度ニ制限シ、真ニ軍縮ノ実ヲ挙グルコトニ努力セラレ、結局軍備拡張ノ結果ヲ招来スルガ如キ協定ノ成立ハ、極力之ヲ阻止セラレンコトヲ望ム
(右英訳文)
EXCELLENCIES ADMIRAL VISCOUNT SAITO AND VISCOUNT ISHII GENEVE
CONFORMABLY RESOLUTION UNANIMOUSLY ADOPTED MEETING JULY NINETEENTH BOARD DIRECTORS LEAGUE NATIONS ASSOCIATION UNDERSIGNED HAS HONOUR TENDER YOUR EXCELLENCIES CORDIAL THANKS AND APPRECIATION FOR NOBLE ATTITUDE AND STRENUOUS EFFORT BRING ABOUT LIMITATION TONNAGE AUXILIARY SHIPS STOP THIS ASSOCIATION BEGS YOUR EXCELLENCIES CONTINUE EXERT INFLUENCE LIMIT GLOBULAR TONNAGE AUXILIARY SHIPS THREE POWERS TO MINIMUM COMMA BRING ABOUT ACTUAL REDUCTION ARMAMENTS AND OPPOSE EVERY WAY FORMATION ANY COMPACT OR UNDERSTANDING WHICH TENDS INEVITABLY TOWARD AUGMENTATION ARMAMENTS
                            SHIBUSAWA


国際聯盟協会報告(二)(DK370031k-0003)
第37巻 p.165-166 ページ画像

国際聯盟協会報告(二)          (渋沢子爵家所蔵)
  昭和二年七月十九日
 聯盟割印          国際聯盟協会
    渋沢会長殿
拝啓
予て御報告申上候如く、軍縮問題に関し本日正午第七十回理事会を開催、徳川総裁、阪谷・添田両副会長、岡・頭本・内ケ崎・山川・秋月宮岡・新渡戸・田川各理事出席、栗山外務書記官・野村軍令部次長陪席、別紙○前掲の通り決議致し、会長の御名儀を以て本日斎藤・石井両全権に電送仕候間、此段御報告申上候 敬具
(謄写版)
拝啓
時下益御清栄の段奉大賀候
然ばジユネーヴに於ける軍縮会議の経過が、帝国の公正なる主張に拘はらず、兎角其本旨に反する傾向あるに顧み、十九日開催の第七十回理事会に於て、聯盟協会理事会より同会議に於ける帝国両全権に対し電報を発しては如何との議あり、出席全員の賛成を得候所、本問題の如き極めて重要なる会務なるを以て、評議員会に一応討議仕度と存候得共、事急を要し評議員会を召集し居りては機宜を失するの虞ありし
 - 第37巻 p.166 -ページ画像 
を以て、已むを得す臨機の措置として、別紙の如く打電候に付、右御諒承被下度、発電写○前掲ニツキ略ス封入此段御通報申上候 敬具
  昭和二年七月十九日
                国際聯盟協会々長
                    子爵 渋沢栄一
  国際聯盟協会評議員
    (宛名手書)
    渋沢栄一殿


国際聯盟協会書類(三) 【謹啓 過日、国際聯盟協会ヨリ在ゼネバ全権宛打電候一事ハ…】(DK370031k-0004)
第37巻 p.166 ページ画像

国際聯盟協会書類(三)          (渋沢子爵家所蔵)
謹啓
過日、国際聯盟協会ヨリ在ゼネバ全権宛打電候一事ハ、内外之注目ヲ惹起候事ト存居候所ニ、封入切抜×印《(朱書)》ノ如ク斎藤全権モ引用セラレ居リ候段御同慶ノ至ニ候、右記事ハ既ニ御覧カトハ存候得共、念ノ為メ貴覧ニ供シ奉リ候
  七月二十五日 ○昭和二年         添田○寿一
    渋沢会長
        閣下
   ○封入新聞切抜ハ次掲「東京朝日新聞」ノ記事ナリ。


東京朝日新聞 第一四七九五号昭和二年七月二五日 互に突張り合つてはまとまらぬも道理 協調互譲の精神を発揮が必要 ……斎藤全権語る(DK370031k-0005)
第37巻 p.166 ページ画像

東京朝日新聞 第一四七九五号昭和二年七月二五日
    互に突張り合つてはまとまらぬも道理
      協調互譲の精神を発揮が必要
        ◇……斎藤全権語る
〔ジユネーヴ本社支局二十三日発〕外出を見合せボー・リヴアジユ・ホテルに静養中の斎藤全権は、訪問の記者に対して左の如く語つた
 イギリス全権が帰つて来て、会つて見なければ会議の前途は全くわからぬが、悲観論が相当に行はれてゐるやうに観られる、最近の所謂日英妥協案によれば、水上補助艦イギリス、アメリカ各五十万トン、日本三十二万五千トンとなるが、あれは大体イギリス側の希望であつて日本としては軍備拡張を避け制限を実現すべく、イギリスアメリカ各四十八万五千トン、日本三十一万五千トン説を引続き主張してゐる、広い植民領土を有ち目の前に仏・伊の如き海軍国を有つイギリスの立場をも、又太平・大西両洋を擁してゐるアメリカの希望をも諒解できるし、一歩も譲れずといつた調子で、互ひに自国の主張だけを突つ張つてゐてはまとまりのつくはずはない、この際国際聯盟の精神即ちジユネーヴの空気であるところの、協調互譲の精神を互に発揮してもらいたい、帝国代表に対しては母国のいろいろな団体や、渋沢子爵《(×)》はじめその他の個人からも、忠告乃至希望の電報が来たが、吾人は国防の特殊の要求を考慮しつゝ、誠心誠意軍備拡張に流れず、軍備制限に立脚する協定を実現したいと折角努力してゐる、尚ほイギリスの新聞界において、日英同盟復活論や平和協定締結論が再燃したやうに思はれるが、かくの如き政治的協定には、本日まで何等触れたところなく、かつ権能も授けられたことはない