デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
3節 国際団体及ビ親善事業
21款 太平洋問題調査会
■綱文

第37巻 p.545-548(DK370119k) ページ画像

大正15年11月5日(1926年)

是日、太平洋問題調査会第二回大会準備協議会、東京銀行倶楽部ニ開カレ、栄一出席ス。夜、同調査会主催太平洋学術会議ニ出席ノタメ来朝セル同調査会所属学者歓迎晩餐会、丸ノ内日本工業倶楽部ニ開カレ、引続キ出席ス。


■資料

太平洋問題調査会書類(一)(DK370119k-0001)
第37巻 p.545 ページ画像

太平洋問題調査会書類(一)        (渋沢子爵家所蔵)
拝啓
時下秋冷之候、益々御清栄奉賀候、陳者来十一月五日夕刻の歓迎晩餐会に先達ち、同日午后三時より四時半迄、丸ノ内銀行倶楽部に於て、来朝中のウイルバー博士と共に、明年度ハワイ会議に対する準備協議会を開き、種々緊要なる問題に就き、御相談申上度候間、御多用中恐れ入り候得共、何卒御来会被下度、此段得貴意候也
  大正十五年十月三十日
                太平洋問題調査会
                  理事長 井上準之助
    子爵 渋沢栄一殿


集会日時通知表 大正一五年(DK370119k-0002)
第37巻 p.545 ページ画像

集会日時通知表  大正一五年       (渋沢子爵家所蔵)
十一月五日 金 午後三時―四時半 布哇会議ニ関スル準備協議会
                 (銀行クラブ)
        午後六時     太平洋問題調査会催
                    (燕尾服勲章佩用)
                  ウイルバー博士夫妻歓迎晩餐会(日本工業倶楽部)


(太平洋問題調査会)理事会評議員会書類綴(DK370119k-0003)
第37巻 p.545-547 ページ画像

(太平洋問題調査会)理事会評議員会書類綴
                  (太平洋問題調査会所蔵)
    太平洋問題調査会
    第二回大会打合せ会
        時 大正十五年十一月五日午后三時半――午后四時半
        所 銀行クラブ
出席者 ワイルバー総長《(ウイルバー)》(米) シユリーカ博士(ジヤヴア) ハンデイ博士(ハワイ) クレゴリー博士《(グレゴリー)》(ハワイ) テイラー博士(濠) ウツドラフ教授(濠)
    渋沢子爵・井上準之助氏・阪谷男爵・沢柳政太郎氏・石井徹氏・黒木三次伯・高柳賢三氏・高木八尺氏・頭本元貞氏・斎
 - 第37巻 p.546 -ページ画像 
藤惣一氏・武田胤雄氏
井上理事長開会ノ挨拶ヲナシ、今回汎太平洋学術会議出席者中、吾太平洋問題調査会ニ関係アル人々アルヲ好機トシテ、ココニ明年布哇ニ於テ開カルヘキ総会ニツキテ、隔意ナキ意見ノ交換ヲ望ム旨ヲ述ブ
次ニ斎藤常務理事ヨリ、調査会成立後ノ経過ヲ報告ス
ウイルバー総長ハ、最初ニ二・三ノ諒解ヲ求メタキ件アリトテ、特ニ左ノ三点ヲ挙ゲテ諮ル所アリ
(一)ホノルルニ於テ、昨年挙ゲラレタル準備委員会温氏○中華民国人温世珍 鶴見氏等トハ既ニ通信シタルコトナルガ「英国外交問題研究会」ト交渉シ、明年ノ会合ニハ英国ヨリ代表者ノ派遣ヲ求ムルコト、ソノ他オランダ、フランス、メキシコ、南米(ペルー、チリー)ノ加盟ヲ求ムルコト、比律賓ハ米国ノ一部トシテ、朝鮮ハ日本ノ一部トシテ取扱フコト」コレ等ノ国ノ加入ニ対シテハ、異議ナキコトニ一致ス
(二)本会ニハ、啻ニ太平洋諸国ニ関スル知識ノ獲得トコレガ分布トノ二ツノ職能アリ、即チ太平洋沿岸諸国ニ起ル事情ヲ正確ニ知ランガ為メニハ、情報ノ交換ヲ必要条件トス、トテ「ニユーヨーク・タイムス」ノ記者ノ云ヘル所ヲ挙ゲテ其ノ重要ナルコトヲ述ブ
(三)明年ノ協議項目中ヨリ、各国ニ於テ興味ヲ以テ研究サレツツアル項目ハ
 (イ)日本側ニ於テ挙ゲタル人口問題・食糧問題
 (ロ)「ケーブル」ソノ他通信機関ノ問題
 (ハ)移民問題
 (ニ)スミス教授提案
   次代市民問題(日系市民問題ノ如キ)
 (ホ)太平洋沿岸諸国ニ用ヒラルル教科書研究
 (ヘ)明年ノ会議ニ於テハ現下ノ緊急協議スヘキ問題ト、文化歴史ニ亘ル永久的ノ問題ヲ共ニ研究協議スル事
(四)ハンデー教授ハ「調査会ハ、今回ノ汎太平洋学術会議」ト重複ヲ避クルコトヲ要スルモ、今回ノ会合ノ如キ、純理的科学研究ノ後ニ来ルモノハ、コレヲ諸関係国ニ適用スル社会科学トシテ、取扱フヘキモノニシテ、学術会議ノ終ル所ハ、調査会ノ始マル所ト云フ可キモノナリ、コノ意味ニ於テ明年ノ会議ノ計劃セラレンコトヲ望ム旨ヲ述ブ
(五)テーラー教授ハ「濠洲ガ 《(脱)》大ナル土地ヲ擁シテ、移民ヲ禁止セルガ如ク見ユルモ、耕作其ノ他使用ニ適スル土地、比較的少ナキ事実ナルコトハ看過サレヤスキ点ナリ」
(六)グレゴリー教授ハ「先日北海道ヲ旅行シタル時、人口過剰土地不足ノ問題ニ対シ、日本ニ於ケル実状ニシテ、充分ニ明ニセラレザル点ナキカヲ思ハシメラレタリ、此ノ如キ点ハ、他ノ太平洋諸国民ノ知ラント欲スル所ナリ」
(七)太平洋諸国ノ教科書ニ関スル問題ニ就テハ、沢柳博士ヨリ吾国ニハ既ニ英・独・仏・伊等ノ翻訳アルコトヲ述ヘラル
(八)阪谷男爵。提供サレタル重要ナル問題ハ、コレヲヨク記録シ置キ、コレニ対シテ解答ヲ要スヘキモノニハ、解答ヲ与フル様注意アリ
 - 第37巻 p.547 -ページ画像 
(九)井上理事長ヨリ之ニ対シ、グレゴリー教授ノ質疑ノ如キハ、人口・食糧問題ノ研究中ニ含マルヘキ旨ヲ答フ。
                     一九二六、一一、一三


東京朝日新聞 第一四五三五号 大正一五年一一月六日 太平洋問題調査会が……学者招待 実際問題に触れた意見の交換(DK370119k-0004)
第37巻 p.547 ページ画像

東京朝日新聞  第一四五三五号 大正一五年一一月六日
    太平洋問題調査会が……学者招待
      実際問題に触れた意見の交換
井上準之助氏を理事長とする太平洋問題調査会は、太平洋学術会議に多数の学者が出席してゐるうちに、同調査会に属する人も相当あるので、五日午後三時から銀行集会所にこれ等関係者の集合をなし
      ▽
 外人側、ウイルバー総長(スタンホード大学)・ハンリー教授(ハワイ)・グレゴリー教授(ハワイ)・テーラー教授(オーストラリア)シユリツク教授(ニユージーランド)・ウツドラフ博士(オーストラリア)
 日本側、渋沢栄一・井上準之助・阪谷芳郎・高柳賢三・石井徹・斎藤等の諸氏出席
      ▽
ハンリー教授から、学術会議のあつた傍、かうした実際社会的に影響ある会合を見るは、非常に良いことであると述べた後、来年ハワイにおいて開催する同調査会に提出する案について意見を交換し、日本側が人口問題・食料問題を主として論じたに対し、外人側は対移民問題を持ちださんとするものあり
 又太平洋に面する各国の教科書のうち、日本は進んでゐるから各国においても調査して、統一発達せしむる必要があるとの問題や、太平洋に面して属領を有する国で、加入してゐない国、即ちイギリスフランス、オランダ等を勧誘、加入せしむる必要がある
等の意見が出て大体採用される事になつた
      ▽
なほ午後六時からは、日本側主催で工業クラブに歓迎会を開き、昼間の出席者以外にも多数出席し、盛会にて九時散会した
  ○ナホ日米関係委員会主催歓迎会開カレタリ。本資料第三十四巻所収「日米関係委員会」大正十五年十一月三日ノ条参照。



〔参考〕(太平洋問題調査会)理事会評議員会書類綴(DK370119k-0005)
第37巻 p.547-548 ページ画像

(太平洋問題調査会)理事会評議員会書類綴
                  (太平洋問題調査会所蔵)
    太平洋問題調査会第五回理事会順序
        時 大正十五年十二月十六日(木曜日)正午ヨリ午后二時迄
        所 丸ノ内銀行集会所
一、前回記録朗読
二、報告
  (一)十一月五日午后六時ヨリ丸ノ内工業倶楽部ニ於テ、第三回汎太平洋学術会議出席代員中、本調査会ト密接ナル関係アル、スタ
 - 第37巻 p.548 -ページ画像 
ンフオード大学総長ウイルバー博士夫妻ヲ始メ廿五名ヲ招待シ歓迎晩餐会ヲ開ク、出席者、主客併セテ七十五名、井上理事長司会シ歓迎ノ辞ヲ述ブルヤ、ウイルバー総長来賓ヲ代表シテ謝辞ヲ述ベ、徳川公爵太平洋問題調査会及ビ来賓ノ為メニ乾盃シテ、盛会裡ニ会ヲ閉ヅ
  ○下略
  ○第五回理事会ニハ栄一出席セズ。



〔参考〕第三回汎太平洋学術会議第二要報 第一頁 大正一五年七月刊(DK370119k-0006)
第37巻 p.548 ページ画像

第三回汎太平洋学術会議第二要報  第一頁 大正一五年七月刊
    第三回汎太平洋学術会議第二要報
 汎太平洋学術会議の目的とする所は、太平洋地方にある諸国、其の他同地方に関係を有する諸国の科学者、相会して太平洋及太平洋地方に関する各種の科学的問題、殊に同地方諸民族の繁栄幸福を増進するに足るべきものにつきて攻究論議し、其の協力の下に此等問題の解決を敏速容易ならしむることを力むると共に、是等諸国の科学者間の交情を温め、延いて前記諸民族一般の平和の基礎を鞏固ならしむる上に貢献せんことを期するにあり
 第一回汎太平洋学術会議は、一九二〇年ホノルヽに於て開催せられ其の成績甚良好なりしに鑑み、一九二三年第二回同会議を濠洲学術研究会議主催の下に、メルボルン、シドニーの両市に開き、其の効果更に多大なりしを以て、爰に同会議をして永久的のものたらしめんとし之に関する規約案の起草は、次会の会長其の他の役員の選定と共に、一切之を次回主催国の学術研究会議、若くは之に類する機関に委任することゝなれり
 之より先、本邦に於ては、汎太平洋学術会議の甚有益なる事業たることを認めたるを以て、第一回会議には四名の代表者を送り、殊に第二回の濠洲会議には、各科を通して十名の代表者を派遣し、又予め政府の承認を得て、第三回会議を本邦に於て開催すべく内定したるを以て、之を濠洲会議の総会に於て発表し、本邦政府と我学術研究会議との名を以て、正式に招待の意を致したるに、同総会は全会一致を以て熱誠に之を迎へ、第三回会議を大正十五年本邦に於て開催することに決定せり
○下略