デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
5節 外賓接待
15款 其他ノ外国人接待
■綱文

第39巻 p.569-571(DK390272k) ページ画像

昭和3年12月12日(1928年)

是日栄一、ドイツ国特命全権大使ヴィルヘルム・ゾルフ、近ク帰国スルニ付キ、同大使館ヲ訪問シテ送別ノ辞ヲ述ブ。


■資料

集会日時通知表 昭和三年(DK390272k-0001)
第39巻 p.569 ページ画像

集会日時通知表  昭和三年        (渋沢子爵家所蔵)
十一月廿五日 日 正午   独逸大使ゾルフ閣下送別会(東京会館)
  ○中略。
十二月十二日 水 午後二時 ゾルフ独逸大使ヲ御訪問(同大使館)


竜門雑誌 第四八四号・第一〇五―一〇六頁昭和四年一月 ゾルフ大使を訪問さる(DK390272k-0002)
第39巻 p.569-570 ページ画像

竜門雑誌  第四八四号・第一〇五―一〇六頁昭和四年一月
    ゾルフ大使を訪問さる
   昭和三年十二月十二日午後二時、子爵には独逸大使館にヴヰルヘルム・ゾルフ大使を訪問せられ、大要左の談話を交換せられた。
子爵 近々御出発のように承つて居りますので嘸御多忙の事とは存じましたが、御在任中御懇親に願ひました御厚意を陳謝し、特に去る十月一日開催せられました私の米寿祝賀晩餐会の席上、在留外国人諸氏を代表して身に余る御祝辞を御述下さり、且つ万歳を御発声下さいましたことを、重ねて厚く御礼申上げたいと存じましておして参上致しました次第で御座います。
ゾルフ大使 私はあの盛大な宴会に参列致しまして、祝詞を述ぶる光栄を得ました事を衷心より誇りとして居ります。又予て渋沢子爵は「日本の老偉人」であると云ふ輿論を承知して居りますが、彼時程沁々と其事を感じたことはありません。ほんとに終生忘れられぬ経験を致しました。
子爵 私も閣下の御厚意は死ぬまで、イヤ死んでも忘れません。私は組織だつた学問を致したものではありませんから、到底貴国の国民性などを批判する事は出来ませんが、千九百二年貴国を訪問致しました時に、エツセンのクルツプ会社に参り、大に款待を受けた事を思ひ出します。貴国の人々は学問と事業と能く調和せしめて組織的に事業を経営して居られるのは実に感服の至りで御座います。どうも我が邦の事業家は一方に偏する傾向がありまして、十分に調和が取れて居らないように思はれます。未だ模倣追従の域を脱しないといふ有様で御座います。貴国の様に長年の経験によつて鍛へ上げたのでなく、輸入的文明でありますから此有様も已むを得ぬ事と思ひます。夫れに就けても貴国人の科学的な事は羨望の至りで御座います。之れは決して諛言ではありません。
 - 第39巻 p.570 -ページ画像 
大使 日本の文明は駕籠から自動車に変つたような具合に世界に類を見ない飛躍的進歩をしたのでありまして、真に驚歎に堪へない次第であります。
子爵 閣下は我邦の文芸に深き趣好を有せらるゝ様に伺つて居りますが、何時ぞや神田鐳蔵氏の宅で浮世絵を見た時に御目にかゝつた様に記憶致して居ります。
大使 私は日本に長く居りましたが居れば居る程益日本を愛慕するようになりました。それで此度の帰国も甚だ辛く、何となく後髪をひかるゝ思ひを致して居りますが、心では泣いて居ります。私は日本人から種々学んだのでありますが、其中で「勘忍」の徳が最も著しいものであります。私共西洋人は忍耐が少く兎角喜怒哀楽を直ぐに表はし過ぎます。
子爵 御出発の御日取は御取決めになりましたか。
大使 本月十八日午前九時三十分東京駅発の神戸行急行で神戸に参り同地で香取丸に乗る予定で御座います。
子爵 御多忙の処を御邪魔申上げまして恐縮千万で御座います。此上あまり御煩はしては相済みませんからこれで御無礼致します、私は来年九十歳になりますので、再び御目にかゝる事はむづかしいと思ひます。閣下には益々御壮健で長く御活動ある様切に希望致します。海陸共に御無事で御帰国あらせらるゝ様祈上げます。
大使 左様なら、御免下さい。私は旅行の準備で、今朝五時迄起きて居りました。子爵は今夕外務大臣の御招宴には御出掛が御座いせんか。
子爵 医者からやかましく言はれますので夜分の会合には御断り致して居りますため、今夜も失礼致します。それでは御機嫌よう。
  ○ヴィルヘルム・ゾルフハ、昭和三年十月一日帝国劇場ニ於ケル栄一ノ米寿祝賀会ニ、東京駐在外交官ノ総代トシテ臨ミ、祝辞ヲ朗読セリ。


(ヴィルヘルム・ゾルフ) 電報 渋沢栄一宛一九二八年一二月二一日(DK390272k-0003)
第39巻 p.570 ページ画像

(ヴィルヘルム・ゾルフ) 電報  渋沢栄一宛一九二八年一二月二一日
                    (渋沢子爵家所蔵)
              Moji, Dec. 21th 1928
VISCOUNT SHIBUSAWA, TOKYO.
WITH DEEP APPRECIATION OF MANY COURTESIES SHOWN TO ME I SEND YOU WITH BEST WISHES FOR YOUR HEALTH ONE LAST SAYONARA AMBASSADOR SOLF
(右訳文)
               (別筆)
    電報翻訳       (昭和三年十二月二十一日入手)
  渋沢子爵閣下
                     大使 ゾルフ
貴国駐在中辱ふせる厚き御懇情に対し衷心より感謝す、出帆に際し最後のサヨナラを申上げる


渋沢栄一電報 控 ヴィルヘルム・ゾルフ宛昭和三年一二月二一日(DK390272k-0004)
第39巻 p.570-571 ページ画像

渋沢栄一電報 控  ヴィルヘルム・ゾルフ宛昭和三年一二月二一日
                     (渋沢子爵家所蔵)
 - 第39巻 p.571 -ページ画像 
    返電
 門司郵船支店
 香取丸
  ゾルフ大使閣下
   昭和三年十二月廿一日
                         渋沢
閣下の御懇篤なる御挨拶を深謝し、心から御機嫌やうと祈ります


(小畑久五郎)書翰 控 ヴィルヘルム・ゾルフ宛(年次未詳)(DK390272k-0005)
第39巻 p.571 ページ画像

(小畑久五郎)書翰 控 ヴィルヘルム・ゾルフ宛(年次未詳)
                     (渋沢子爵家所蔵)
             (COPY)
His Excellency
Dr. W. H. Solf,
  The German Ambassador,
  The German Embassy,
  Nagata-cho, Kojimachi-ku,
      Tokyo.
Your Excellency dear Ambassador,
  Your esteemed gift to Viscount Shibusawa in the form of a pamphlet entitled "The New International Conscience" was duly received. As Your Excellency is well aware, the Viscount has to read foreign documents through translation. Moreover, he has not been well during the last several weeks. For these reasons, it will take quite a long time for him to understand this Your Excellency's timely presentation. However, as soon as I can get near him, I shall report to him about Your Excellency's courtesy.
  Expressing hearty thanks on his behalf, I beg to remain,
            Yours most sincerely,
                (Signed) K. Obata.
                       Secretary.