デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和5年5月31日（1930年）

是ヨリ先、フランス共和国西南部ニ水害アリ。栄一理事長タル日仏会館ハ日仏協会ト連合シテ義捐金ヲ募集シ、是日マデニ集レル金三千五百九十六円、仏貨換算金四万五千余フランヲ外務省ヲ通ジテ同国政府ニ送ル。

東京朝日新聞　第一五七四五号　昭和五年三月五日
　　南仏大出水
　　　　溺死者流出家屋算なく
　　　　　　一八〇五年来の惨事
〔パリ電通四日発〕　フランス南部地方のアグー河はん濫してアルビ、ブリヴ、モントーバン、リモーヂニその他数十の都市にわたり、浸水地域数百平方マイルにおよび、カストル市では溺死者二十名をだした尚他にも家を失ひたるもの行方不明のもの溺死者等多数あり、ラヴールでは流失家屋百余戸をだし鉄道不通個所多く、タルン河は増水四十二フイート百年来の最高記録である、尚今回の洪水は一八〇五年以来の大洪水であると

東京朝日新聞　第一五七四八号　昭和五年三月八日
　　　　溺死者四百名
　　　　　　南仏の洪水
〔パリ聯合六日発〕　フランス南部地方に起つた洪水のため、現在までに判明した死者数は既に四百名に上つて居るが、減水するに従つてここかしこの家屋の捜査が行はれ、死体が続々発見されてゐるのでおびたゞしき数に上る見込である
　この洪水のために家を失つたものは一万に達し、ビスケー湾に近いボルドーから地方海岸のセツトに至る鉄道幹線の修理だけでも、二ケ月を要する見込である

東京朝日新聞　第一五七四九号　昭和五年三月九日
　　　　南仏の洪水
　　　　　　死者千名
〔パリ聯合七日発〕　今回の南フランス地方大洪水による死者は今や千名以上に達する見込であるが、今日までに発見された死体は僅か百名位に過ぎない、減水と共に盛んになつた盗難防止のため軍隊が罹災地に派遣された、仏国議会は七日満場一致をもつて第一回罹災民救済金一億フラン支出案を可決した、その他公共団体や教会でも義えん金募
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集を開始した

集会日時通知表　昭和五年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
五月廿七日　火　午後三時　木島孝蔵氏来約（飛鳥山邸）
　　　○木島孝蔵ハ日仏会館理事。

日仏会館書類　（四）　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（謄写版）
拝啓　秋冷の候益々御清適奉慶賀候、陳者本年三月仏国西南部に於ける水害罹災者救恤之為め義捐金送附方発議致候処、大方の御賛を得二回送金合計金参阡五百九拾六円相集り候に付、即ち外務省経由罹災者に分配方仏国政府に依頼致置候処、今般仏国外務大臣ブリアン氏より芳沢駐仏大使宛右義捐に対する仏貨金四万五阡弐百壱法七拾弐仙を領受したるに付、各義捐者に厚く仏国政府の謝意伝達方鄭重なる書面を以て依頼越有之候趣、外務省より移牒有之候間右様御了承相成度、此段御通知迄奉得貴意候　敬具
　　昭和五年十月六日
　　　　　　　　　　　　日仏会館理事長　子爵　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　日仏協会理事長　子爵　曾我祐邦
　　　　（宛名手書）
　　　　子爵　渋沢栄一殿

財団法人日仏会館第七回報告　（自昭和五年四月一日至昭和六年三月三一日）　第二一―二二頁刊
　　　　九、寄贈
○上略
一、昭和五年三月月初、仏蘭西ニ於ケル洪水ハ西南部ニ於ケル豊饒ナル地方十四県ニ浸水シ崩壊ノ家屋数千、死者三百余ヲ出シ洪水ノ惨害ヲ極メタリ、玆ニ於テ当会館ハ日仏協会ト共ニ不取敢弔電ヲ発シタルガ、往年大震災ノ際仏国ヨリ受ケタル有形無形ノ厚援助ニ酬ユル機会ニモアリ、友邦不慮ノ災厄ニ同情ヲ表スル為メ両会主催ニテ義捐金ヲ募集セシガ、幸ヒ大方ノ賛同ヲ得、同年五月末日ノ締切迄ニ合計金参千五百九拾六円ノ義捐金ヲ得タレバ、即チ再度外務省ヲ経テ罹災者ニ右分配方仏国政府ニ依頼セシニ、仏国外務大臣ブリアン氏ヨリモ再度芳沢駐仏大使ヲ経テ右金員ヲ受領シタルニ付、各義捐者ニ厚ク仏国政府ノ謝意伝達方鄭重ナル書面ヲ以テ依頼越アリタリ、因テ昭和五年十月六日附ニテ両会理事長ノ名ヲ以テ此旨各義捐者ニ通知シタリ
　　　○右ト同趣ノ記事左ノ誌上ニモ在リ。
　　　　「日仏協会第二十三回報告」第五―六頁。
　　　○日仏会館ニ関スル資料ハ本資料第三十六巻所収「財団法人日仏会館」参照