公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第42巻 p.169-170(DK420046k) ページ画像
昭和5年10月7日(1930年)
是日栄一、渡米ノ途ニ上ラントスル救世軍中将山室軍平ニ托シテ、救世軍大将エドワード・ジェー・ヒッギンスニ書翰ヲ寄ス。
渋沢栄一書翰控 エドワード・ジェー・ヒッギンス宛 一九三〇年一〇月七日(DK420046k-0001)
第42巻 p.169-170 ページ画像
渋沢栄一書翰控 エドワード・ジェー・ヒッギンス宛 一九三〇年一〇月七日
(渋沢子爵家所蔵)
倫敦市 白石
救世軍万国本営
エドワード・ジエー・ヒツギンス大将殿
一千九百三十年十月七日 渋沢栄一
拝啓、益御清適奉賀候、然ば今回貴地に開催せらるゝ救世軍将官会議に列席のため、山室中将近々出発せられ候由に付、同氏に托して玆に一書拝呈仕候
去る明治四十年、救世軍創立者ウイリアム・ブース大将御来訪の際は貴下も其一行に加はられ候様記憶致居候、当時老生は大将と会見致候のみならず、飛鳥山の拙宅に尊来を請ひ、親しく御講話を拝聴仕候、
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斯くて老生は大いに景仰の念を強め、大将の希望に依り、爾来日本救世軍後援者の一人と相成、微力を致来りたる次第に御座候
大正十五年故ブラムウエル・ブース大将御来遊の節、又近くは昨秋エヴアンジエリン・ブース女史御来航の節も、同様拙邸に於て御歓迎申上げ、朝野の有力者多数を招待して御講話を願ひ、一同謹聴裨益する所有之候、斯くて救世軍と老生の因縁は相当深く、一朝一夕のことには無之候
昨年貴下が第三代の大将に推戴せられ候以来、世界の救世軍は各方面に亘り顕著なる進展を遂げ候由承はり、之れ偏に貴下の御指導の宜しきと、天恩の貴下の上に在る為めと、慶祝罷在候
山室中将とはウイリアム・ブース大将御来遊の頃より懇意に致居候、当時若かりしに似ず真摯質実にして而も熱誠あるを見、将来必ず為すあるべきを信じ候処、期待に背かず、爾来精励事に当り、年と共に成績を挙げ来り候を見、救世軍のため、又山室中将のため、欣喜罷在候次第に御座候
日本の救世軍も堅実に進歩致し居候、日本には救世軍のなすべき事業多々有之、救世軍が宗教的並に人道的運動に成功し得べき機会殆んど無限に御座候、日本の救世軍は、山室中将を始め何れも、時代の要求に応じて更に大いに貢献せんため鋭意尽力致居候間、此点に就きては貴下に於て御高配無之やう願上候
今回の将官会議が、救世軍の更に有力にして偉大なる発展をなす階梯たらんことを確信し、衷心より其成功を祈居候
願はくば皇天の恩寵貴下並に令夫人の上にあらんことを奉祈上候右得貴意度如此御座候 敬具