デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

4章 道徳・宗教
5節 修養団体
2款 講道館 1. 財団法人講道館
■綱文

第43巻 p.356-359(DK430051k) ページ画像

大正11年4月3日(1922年)

是ヨリ先、従来ノ柔道会ヲ講道館文化会ト改メントノ議起リ、是日、築地精養軒ニ於テソノ発会式挙行セラル。栄一出席シテ祝辞ヲ述ブ。


■資料

大正十年度講道館事業及会計決算報告書 (大正一一年)刊(DK430051k-0001)
第43巻 p.356 ページ画像

大正十年度講道館事業及会計決算報告書 (大正一一年)刊
    処務ノ要件
○上略
一、十二月十三日午後五時ヨリ、富士見軒ニ於テ、評議員会ヲ開キ、理事嘉納治五郎、監事和田豊治、評議員阪谷芳郎・本郷房太郎・平山金蔵・有働良夫・富田常次郎・佐藤達次郎・永岡秀一・潮田方蔵・本田親民・飯塚国三郎・本田存・有田秀造・山下義韶ノ諸氏出席、嘉納理事議長ト為リ評議ノ結果決議シタル事項ハ、一、本年度経常収入ヲ以テ其支出ヲ償フ能ハサルトキハ建物減価償却積立金ヲ廃スル事、若シ尚ホ不足ヲ生スルトキハ、本年ニ限リ寄附金勘定ヨリ繰入金ヲ為シ決済スル事、二、大正十一年度予算ハ議案ノ通リ可決ス但シ寄附金勘定ヨリ経常勘定ヘ繰入金ヲ為スコトハ十一年度ヨリ之ヲ廃止シ、止ムヲ得サルトキハ寄附金全部ヨリ借入金ヲ為シ、他日之ヲ償却スルモノトス、而シテ経常部ノ財源トシテハ、別ニ後援会様ノモノヲ組織シ、講道館員及有志者ヲ勧誘シテ寄附ヲ求メ、補充ノ途ヲ講スルコト、又当日議長ノ報告ニ係ル重要ナルモノハ、従来講道館ノ諒解ノ下ニ独立団体トシテ存立セル柔道会ノ名称ヲ明年度ヨリ講道館文化会ト改メ、会長ハ講道館師範之ニ膺リ、相互ノ聯絡ヲ保ツコトヽスルモ、会計ハ柔道会ト同様独立ノモノトシテ煩ヲ講道館ニ及ホサヽルコトヽシ、講道館柔道ノ普及発達ヲ計リ、兼ネテ其文化的精神ヲ発揮スル為必要ノ宣伝活動ヲ為スニ依リ、特ニ役員諸君ノ諒解ヲ得置キタシト云フニアリシ
○下略


集会日時通知表 大正一一年(DK430051k-0002)
第43巻 p.356 ページ画像

集会日時通知表 大正一一年         (渋沢子爵家所蔵)
三日○四月 月 午後四時半 講道館文化会創設ノ件(築地精養軒)


竜門雑誌 第四〇七号・第六一―六二頁 大正一一年四月 ○講道館文化会発会式(DK430051k-0003)
第43巻 p.356-357 ページ画像

竜門雑誌 第四〇七号・第六一―六二頁 大正一一年四月
○講道館文化会発会式 柔道より得たる体験的修養を文化的方面に応用貢献せんとする目的の下に、嘉納治五郎氏を会長とせる講道館文化会にては、四月三日午後四時半より、築地精養軒に於て発会式を挙行したが、当日は来賓高橋首相、床次・中橋各大臣を始め、青淵先生・宇佐美府知事、其他学界の名士百余名参会、定刻嘉納会長より同会組織の主旨を説明する所あり、其より来賓の祝辞に移り、最後に青淵先生より
 私は青年の時に撃剣を遣つた関係から此席に連なつた訳であるが、想へば五十六年前、私がフランスへ参つた折り、路傍の人から支那
 - 第43巻 p.357 -ページ画像 
人と言はれ、残念に思つて日本人であると申したら、アヽそれでは支那の属国かと嘲笑され、日本人と言はなかつた方が却つて好かつた位であつたが、それが今日では、世界三大国の仲間入をして華盛頓会議に出席するとは言ふものゝ、其内容は昔に優るとは思へない而して其根源は国民の不真面目にある事と思はるゝが、総ての武術は真面目である故、今柔道によつて会得した功果を一般世間に鼓吹し得ば、好薬餌とすることが出来ると思ふ、云々
の賛辞ありて、其より晩餐会に移り、八時散会せりと云ふ。


大正十一年度講道館事業及会計決算報告 (大正一二年)刊(DK430051k-0004)
第43巻 p.357 ページ画像

大正十一年度講道館事業及会計決算報告 (大正一二年)刊
    事業ノ状況
○上略
春来館長ハ従来ノ柔道会ヲ改メテ講道館文化会ヲ創設シ、柔道ノ文化的精神ヲ発揮スルコトニ務メ、或ハ刊行物ニ或ハ講演ニ依リ、人類共栄ノ基トシテ自他完成ヲ説キ、自己完成ノ要訣トシテ精力最善活用ヲ主張シ、柔道ノ原理ニ基ツキテ社会ヲ改善センカ為、各地ヲ巡回シテ世人ヲ警醒誘掖スルコトニ努メ、此ノ主義ニ共鳴スル者頗ル多シ
如此ニシテ地方青年者ノ講道館ニ入門ヲ希望スル者漸次増加シ、当年度ノ入門者総数ハ一千九百七十三人ニ達セリ、之ヲ細別スレハ、下富坂道場入門者一千〇六十二人、開運坂道場入門者六十三人、地方入門者八百三十七人、旅順大木六段扱十一人ナリ、且又地方ニ在テ相当実力ヲ有スル者ノ昇段方法ハ、従来柔道教師ノ推薦ニ依リ中央審査会ノ審査ヲ経テ昇進セシムルノ途開ケ居リタルモ、今回有段者会ノ成立セル場処ハ其推薦ニ依ルコトヲ得ルニ至リタル為、権威アル推薦機関ヨリ推薦スルノ途開ケタル次第ニテ、柔道修行者ニ取リテハ一層ノ便宜ヲ得ルコトヽナレリ、而シテ此年度ノ昇段者ハ、段外ヨリ初段ニ列シタル者一千百五十八名、初段ヨリ二段ニ進ミタル者五百二十七名、二段ヨリ三段ニ進ミタル者二百十九名、三段ヨリ四段ニ進ミタル者百二十九名、四段ヨリ五段ニ進ミタル者十名、五段ヨリ六段ニ進ミタル者四名、七段ヨリ八段ニ進ミタル者一名、合計二千〇四十八名ニシテ、有段者総数ハ七千七百九十一名ナリ



〔参考〕講道館書類(一)(DK430051k-0005)
第43巻 p.357-358 ページ画像

講道館書類(一)            (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
拝啓、向冷之砌益々御清祥奉賀候、陳者去月大震災の節本館事務所も道場も幸に火災を免れ候も、相当ニ損害を受け候ニ付、過般専門家に相見せ候処、応急修理を施す必要有之、且又震災の為収入予算ニ多大の影響を及ぼし居候ニ付、来る二十四日(水曜日)午後五時、麹町区八重洲町一ノ一中央亭(本店)に於て、評議員会相開き、右案ニ就き御協議申上度、尚外ニ種々御報告申上度事も御座候間、時節柄御多忙とは存候へ共、何卒御来会被成下度、此段御依頼申上候 敬具
 一、下富坂道場復旧工事費金一千三百円及開運坂道場並ニ本部事務所修繕費金七百円を、以上各建物ニ対する減価償却積立金を以て支弁し、其不足額は一時寄附金部より借入支《(弁脱)》スル件
 - 第43巻 p.358 -ページ画像 
 一、経常勘定ニ於て収入減少の為、同部繰越金を充用するも、尚ほ不足を生したる場合は、一時寄附金部より借入れ決算を為す件
  大正十二年十月十九日
 追而食事の準備致置度、折返し御来否御一報被下度希上候
                 講道館長嘉納治五郎
    (宛名手書)
    渋沢栄一殿

(謄写版)
拝啓、過日御通知申上候通、去る二十四日中央亭に開会したる講道館評議員会に於て、御手元へ差上置き候議案ニ付協議致候処、左記の通り決議相成候間、為念御通知申上候 拝具
 一、下富坂道場復旧工事費金壱千参百円及開運坂道場並ニ本部事務所修繕費金七百円ヲ、建物減価償却積立金中ヨリ支出スルコトハ之ヲ否定シ、寄附金部普通財産ヨリ経常部ヘ繰入金ヲ為シ支弁スルコトニ決議ス
 一、経常勘定ニ於テ収入減少ノ為、同部繰越金ヲ充用スルモ、尚ホ不足ヲ生シタル場合ハ、寄附金部普通財産ヨリ繰入支弁スルコトニ決定シ、寄附金部ヨリ借入ノ件ハ否決サル
    以上
  大正十二年十月二十六日
                  講道館長嘉納治五郎
    (宛名手書)
    子爵 渋沢栄一殿



〔参考〕大正十二年度講道館事業及会計決算報告 第一―二頁 (大正一三年)刊(DK430051k-0006)
第43巻 p.358-359 ページ画像

大正十二年度講道館事業及会計決算報告 第一―二頁 (大正一三年)刊
    事業ノ概況
此処数年来本館事業ハ年々着実ノ発達ヲ告ケ来リ本年ノ如キハ相当ノ成績ヲ挙ケ得ヘキ状勢ナリシニ、九月一日突発セル関東大震火災ノ為メ少カラサル影響ヲ受ケ、九月中ハ稽古ヲ休止スルノ已ムナキニ至リ十月ニ及ヒテ漸ク之ヲ開始シタルモ、尚ホ学生ノ帰来セル者少ク、登場ノ修行者旧ノ如クナラサリシハ已ムヲ得サル次第ナリ、然レトモ幸ニシテ火災類焼ノ禍ヲ免レタル為メ、建物ノ損害ハ、傾斜沈下等ヲ復旧シ、屋瓦ノ葺替、壁ノ修繕等ニ止マリ、相当巨額ノ復旧費ハ之ヲ要スヘキモ、市内多数ノ罹災者ニ比シテ先ツ幸福ノ位置ニ在リタリトイフヘシ、是ヲ以テ、災厄当時ハ道場ヲ開放シテ極力罹災者ヲ収容シ、或ハ憲兵ノ出張所ニ充ツル等、応分ノ便宜ヲ計ルコトヲ得タルハ、私カニ欣懐ヲ感スル所ナリ、従テ秋季大紅白勝負ノ如キモ例年ヨリ後レテ十一月ニ於テ挙行シタルカ、参加者ハ意外ニ多ク、有段者勝負ハ春季ト同シク二日ニ分チテ行ヒシ等、割合ニ柔道ノ上ニハ震火災ノ影響多カラサリシモノト認メラル
有段者会ハ各地ニ於テ組織サレ、此年度内ニ於テ中央有段者会長ノ許可ヲ得テ成立シタルモノ神戸・岡山・新潟・群馬・神奈川・秋田・宇都宮・富山・名古屋・和歌山・三重・栃木南部・広島・徳島・福島・大阪・山形・熊本・石川・小樽・台湾・沖縄ノ各府県ニ亘リ、現今既ニ三十二個ノ団体ヲ見ルニ至レリ
 - 第43巻 p.359 -ページ画像 
柔道文化的方面ニ於ケル教化ハ、講道館文化会事業トシテ宣伝ノ結果共鳴者続出シ、各地ニ支部分団ノ設置ヲ見ルコト多ク、自他共栄精力最善活用ノ趣旨ニ依リ漸次改風遷善ノ徴候ヲ呈スルニ至レリ
○下略