デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
1節 実業教育
18款 帝国実業講習会
■綱文

第44巻 p.568-570(DK440138k) ページ画像

大正11年2月(1922年)

是ヨリ先、大正二年一月、実業之日本社ニ於テ実業講習録ノ発刊ヲ企画シ、大隈重信ヲ総裁トシテ当会ヲ創立シ、栄一副総裁トナル。是年一月大隈重信逝去セルニヨリ、是月栄一、当会総裁トナリ歿年ニ及ブ。


■資料

中外商業新報 第九六〇〇号大正二年一月一九日 新刊紹介(DK440138k-0001)
第44巻 p.568-569 ページ画像

中外商業新報 第九六〇〇号大正二年一月一九日
    新刊紹介
△実業講習録(第一号第二号) 近年実業学校の増設に伴れて実業教育普及の傾向を生じたりと雖も、家庭の事情資力の関係等より入学し得ざる子弟の数は殆んど算へ切れぬ程なり、此等の子弟は身を立て世に処するに必要なる素養と準備とを有せざる為めに職業を得るに苦みつゝありたとへ職業を得るも素養に欠くる所ある為めに栄達の機会を捉ふること能はず、一生呉下の旧呂蒙にて畢らんとする不運に在り、是れ現社会の一大欠陥なるが、此の欠陥を補はんが為めに生れたる者を帝国実業講習会発行の実業講習録となす、同会は大隈伯・渋沢男を正副総裁に戴き、知名の実業家及び実業教育者を賛襄員とし、実業之日本社長増田義一氏主宰の通信学会なるが、其講習録は同氏多年の実験に鑑み簡明と切実を第一義とせり
 試に他の講義録と異なれる特色を挙ぐれば、(一)毎号二百頁以上(月二回発行)一ケ年にて完結する事、(二)甲種実業学校程度にて処世に欠くべからざる実際的学科のみを選べる事、(三)文章は出来得る丈け平易に噛み砕きて小学校卒業の学力ある人には誰にも分り易く書きたる事、(四)簿記の如き本来むづかしきものは殊に文章をたやすくしたるのみならず、一々実例について説明しあるを以て何等の知識なき人にも容易に分る、(五)一科に多数の頁を割き毎号読み切りにしたること、(六)毎号勉学日誌を附し又奨学資金を提供し会員の勉学を奨励したる事、(七)一科に多数の頁を割きたるを以て纏り早く、二・三箇月毎に一冊の本が出来る事、(八)見出しをつけて見易くしたる事、(九)英語の発音には特に意を用ゐ正確を期したる事、(一〇)上欄には詳はしき説明を附したる事、(十一)本講以外に第一流大家の訓話、経歴談、苦心談その他趣味ある雑録を掲載し乾燥無味を避けたる事、(十二)他の講義録にては講義録の外に雑誌を無代にて配付する所あれども、本講習録にては雑誌を添附せざる代り其紙数を講義録に廻して内容の充実に努めたる事、等に在るべし
由来甲種商業学校は実用的学科のみを選びあるの故を以て、其卒業生が実業界に歓迎を受けつゝあるは事実也、其講習科目を等しく《(マヽ)》本会の卒業生は亦等しく実業界の歓迎を受くることゝなるべし、(非売品会
 - 第44巻 p.569 -ページ画像 
費一ケ月五十銭、発行所京橋区南紺屋町帝国実業講習会)


中外商業新報 第九八七六号大正二年一〇月二二日 ○実業講習録の盛況(DK440138k-0002)
第44巻 p.569 ページ画像

中外商業新報 第九八七六号大正二年一〇月二二日
○実業講習録の盛況 独学して修養せんとするものゝ為に開設されたる東京京橋区南紺屋町なる帝国実業講習会にては、実業界に最も必要なる科目のみを撰択して実業講習録を発行せしが、今回新学期を開始し新会員の大募集をなせり、同会は大隈伯を総裁、渋沢男を副総裁、現代の大実業家を悉く顧問・賛助員とし今日最も信用あり勢力ある実業之日本社の経営に拘るを以て、全国実業家・父兄・教育家等の評判殊に宜しく昨今入会者日々数百名の多きに上る由


要用書類往復(五) 【拝啓、先日電話にて御申越の件段々に相後れ候へ共左ニ御返事申上候…】(DK440138k-0003)
第44巻 p.569 ページ画像

要用書類往復(五)           (渋沢子爵家所蔵)
拝啓、先日電話にて御申越の件段々に相後れ候へ共左ニ御返事申上候
一、帝国実業講習会ハ大正二年一月の創立にて当時ハ故大隈侯爵に総裁、渋沢子爵に副総裁を御願申上げ候
一、大正十一年大隈侯爵御薨去につき、翌二月後任として渋沢子爵ニ総裁を御願申上げ爾来今日に至り候、但し副総裁は欠員致し居り候
一、正副総裁の任期といふ規定ハ無之候
一、御参考まで別紙講習録見本冊子御覧に供候、この中に会則といふもの有之候へ共、右ハ会員との関係のみにて会の組織に関する規定無之候
一、尚会の事業についてハ時々御報告申上くべきが当然でありしと存し候へ共、ツイうつかりして何等御報申上けさりしハ不行届なりしと恐縮に存候、依て昨年及ひ本年上期の事業状態を一表○略スにまとめて御覧に供し候、閣下に御差上け被下度御願申上候
 会創立以来の卒業生が何人に上るかも何れ調査の上報告申上げ、幾分なりとも実業教育に貢献したることを御喜ひ願度と存候
 右御返事のミ申上げ候、尚御必要の件有之候ヘハ御遠慮なく御申附被下度、出来得るだけ調査可致候 敬具
                      都倉義一
    渋沢事務所
        御中
  昭和五年九月二十三日


実業講習録(見本) 増田義一編 第二―三頁刊 【逝いてもなほ我が実業界を守る渋沢栄一子爵の推薦】(DK440138k-0004)
第44巻 p.569-570 ページ画像

実業講習録(見本) 増田義一編 第二―三頁刊
    逝いてもなほ我が実業界を守る渋沢栄一子爵の推薦

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 渋沢栄一子爵は本会の前総裁として、多年会員の指導に任ぜられたが、その言葉は実業青年を益すること多大であるから、特に載せて諸君の熟読を願ふものである。 



 実業家にならうとする者は、商品のことは申すに及ばず売買や仕入のことから銀行会社の業務、その他一般商業上の知識は勿論、経済の学問にも通じてをらねばならぬ。又簿記にも熟練してゐなければならぬ。簿記は商売や事業の成績を照らす明鏡であるから、啻に事務を執
 - 第44巻 p.570 -ページ画像 
る人のみなず、大会社の社長・支配人・重役になるにも必要である。次に実業家に取りて大切なことは、数理の頭があるといふことで、よく物事を理解し、大抵の事は頭の中で算用するやうにしなければならぬ。それには平素意を用ゐて珠算や商業算術を勉強しておいた方がよい。また手紙を書くにしても、文字も文章も上手でなければならぬ。文字が乱雑であつたり、文章が下手で、何んなことが書いてあるのかさつぱり要領を得ないやうでは、成功は覚束ない。
 要するに諸君は、競争の激しい実社会に起つて大なる成功を収めようとするには、どうしても実業に関する一般の学問知識を修得しておかねばならぬ。
 我が「実業講習録」は、実業社会に活動するのに、最も大切なる学科並びに常識として心得べき普通学を選んで、親切平易に講述してあるから、正式な学校教育を受けることの出来ない青年諸君に取りては最大の福音であることは申すに及ばず、また学校に通学してゐる学生諸君に取りても好個の参考書である。されば将来実業界に立ちて、成功しようとする青年諸君の取るべき唯一の捷径は何であるかといふに寸陰を惜んで、本講習録を勉強することであらうと私は信ずる。この意味に於て、私は我が親愛なる天下の実業青年諸君に本講習録を推薦する次第である。