デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和3年1月25日（1928年）

是ヨリ先、日本女子商業学校当局者、女子高等商業学校ヲ設立セントシ、是日、校長嘉悦孝子栄一ヲ訪レ、援助ヲ請フ。栄一、日本女子高等商業学校建設後援会発起人タルコトヲ諾シ、且ツ建設資金若干円ヲ寄付ス。

集会日時通知表　昭和二年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
四月十五日　金　午前九時　嘉悦孝子女史来約（飛鳥山）
　　　○中略。
十月廿七日　木　午前八時　嘉悦孝子女史外一人来約（飛鳥山邸）

渋沢栄一　日記　昭和三年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
一月二十五日　晴　寒気強カラス
午前八時起床直ニ洗面シテ朝食ヲ取ル、畢テ、嘉悦孝子来リ其経営セル女学校ヲ高等商業女学校ニ昇格スル旨ヲ告ケ且其賛成ヲ乞ハル、依テ同意ヲ表シ、其要望セラルル小額ノ寄附金ノ件ヲ承諾ス○下略

要用書類往復（四）　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　かやうなものを皆さんニ御送り申しました
拝啓　逐日暖気相加候処愈御清勝賀上候
陳者過般来日本女子高等商業学校建設ニ付不一方御同情ヲ蒙リ難有御礼申上候
右後援会ニ関シテハ已ニ夫々準備モ相整候間、至急発起人会ヲ開キ該会ヲ設立シ、会長其他役員ノ御撰定相願ヒ着々事業進行致度ニ付、誠ニ恐縮ノ至ニ候得共来十七日（土曜日）午後五時迄ニ日本女子商業学校ヘ御出相願度御依来旁得貴意度如斯候《（頼）》　敬具
　　追テ別紙趣意書規約案御送申候ニ付御覧置被下度、誠ニ御手数ニ候得共、当日御出否来十六日迄ニ御回示相煩シ度候
　　万一御差支ノ節ハ御意見御書添被下度御依頼申上候
　　　昭和三年三月十四日　日本女子高等商業学校後援会
（別紙、謄写版）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　案
　　　　日本女子高等商業学校建設後援会
　　　　　　趣意書
嘉悦孝子女史カ明治廿三年以来今日ニ至ルマデ四十余年ノ間、恰カモ一日ノ如ク倦マス撓マス女子教育ノ為ニ心身ヲ捧ゲテ婦徳ノ涵養ト文運ノ向上ニ尽力セラレタコトハ既ニ世ニ周ク知ラレテ居ルトコロデアリマス。女子ハ夙ニ女子教育ガ形式ニ流ルヽノ弊ヲ慨カレ、又女子カ家ヲ斉ヘ実社会ニ立ツニハ経済生活ニ必要ナル智徳ヲ備ヘナケレハナ
 - 第45巻 p.70 -ページ画像 
ラヌコトヲ唱ヘラレ独力ヲ以テ明治三十六年ニ日本女子商業学校ヲ設立シ、自ラ経営ノ局ニ当リ二十五年ノ星霜ヲ過キ二千五百余人ノ卒業生ヲ出スニ至リマシタ。其間女史ノ奮闘ハ実ニ敬服ノ外アリマセン。然ルニ我帝国ノ文化ハ日ニ月ニ駸々トシテ進ミ国民ノ生活状態ニモ大キナ変化ヲ来タシタノデ、女史ハコノ社会ノ趨勢ニ鑑ミ、婦女子ヲシテ之ニ適応セシメ、且ソノ地位ノ向上ト責務ノ充実ヲ期セシムルニハ一層教育程度ヲ高メテ益々智徳ヲ増進セシムルノ急務ナルコトヲ感シ種々考慮ノ末ニ日本女子高等商業学校ヲ設立スル計画ヲ立テラレマシタ。即チ現在ノ日本女子商業学校ニ更ニ高等専門ノ学術ヲ修得セシムル為ニ、日本女子高等商業学校ヲ増設セムトスルノデアリマス。女子ノ高学商業教育ニ就テハ官・公・私立孰レニモ其ノ施設ナク、我邦ニ於テハ這回ノ計画カ嚆矢トナルノデ当局ニ於テモ大ニ賛同シテ居ラレマス。本年ハ恰カモ日本女子商業学校創立二十五年ニ相当スルノデコノ記念スヘキ年度ニ於テ文部省ノ認可ヲ得、学校ノ設立ト校舎ノ増築ヲ実行シタイノデアリマスガ、ソレニハ少クモ金参拾万円ノ資金ヲ必要トスルノデアリマス、女史ガコノ目的ノ達成ニ畢生ノ力ヲ尽サルヽハ洵ニ同情ニ値スト申サネハナリマセヌ。依ツテ私共同志相集リ別記規約ニ基キ後援会ヲ組織シ、資金ヲ醵集シテ女史ノ計画ニ対シテ幾分ナリトモ援助シタイト思ヒマス
何卒本趣意書、規約等ニ賛成セラレテ女史ヲシテ宿志ヲ遂ケ国家社会ノ為ニ其ノ事業ヲ完成セシメラルヽヤウ切ニ御願ヒマウス次第デアリマス
　　昭和三年三月　日
（別紙二、謄写版）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　案
　　　　　　規約
一、本会ハ日本女子高等商業学校建設後援会ト称ス
二、本会ハ日本女子高等商業学校建設費ニ充当スル為寄附金ヲ集ムルヲ以テ目的トス
三、本会ハ事務所ヲ東京市麹町区土手三番町二十一番地日本女子商業学校内ニ置ク（電話九段二〇〇八　二〇〇九）
四、本会ハ日本女子商業学校ニ縁故アリ、又本会ノ趣旨ヲ賛助セラルル人ヨリ寄附金ヲ仰ク
五、寄附金ハ所定ノ申込書ニ依リ本会事務所ニ申込ムモノトス
六、払込ノ場所ハ事務所トス
七、本会ハ　　銀行ヲ以テ取扱銀行トス
八、本会ニ会長一名、顧問若干名、会計監督一名、理事長一名、理事四名、書記若干名ヲ置ク
　　理事長及理事ノ中一名ヲ会計主任トス
　　会長ハ発起人会ノ推薦ニ依リ其他ノ役員ハ会長ノ嘱托ニ依ル
九、本会ハ時宜ニ依リ演芸会、活動映画、バザー等ヲ開催シ其ノ収益ヲ以テ資金ヲ補充スルコトアルヘシ
十、本会ハ日本女子高等商業学校開校ノ月ヲ以テ終了シ、其ノ事務ヲ学校財団法人ニ引継クモノトス
 - 第45巻 p.71 -ページ画像 
　　　但時宜ニヨリ延期スルコトアルヘシ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上
（別紙三、謄写版）
　　　　　　発起人（順序不同）
　　　　　　　　　　　伯爵　　　　　内田康哉氏
　　　　　　　　　　　子爵　　　　　清浦奎吾氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　錬子氏
　　　　　　　　　　　子爵　　　　　斎藤実氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　春子氏
　　　　　　　　　　　同　　　　　　渋沢栄一氏
　　　　　　　　　　　男爵　　　　　近藤滋弥氏
　　　　　　　　　　　東京府知事　　平塚広義氏
　　　　　　　　　　　大阪市長　　　関一氏
　　　　　　　　　　　貴族院議員　　徳富猪一郎氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　星野錫氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　服部金太郎氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　井上敬次郎氏
　　　　　　　　　　　主婦ノ友社長　石川武美氏
　　　　　　　　　　実業之日本社長　増田義一氏
　　　　　　　　　　　医学博士　　　岡田和一郎氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　徳子氏
　　　　　　　　　　　同　　　　　　近藤次繁氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　憲子氏
　　　　　　　　　　　法学博士　　　天野為之氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　多喜子氏
　　　　　　東京女子医学専門学校長　吉岡弥生氏
　　　　　　　　　大妻高等女学校長　大妻コタカ氏
　　　　　　　　　　　井出病院長　　竹内茂代氏
　　　　　　　　　　　文部省書記官　木村正義氏
　　　　　　　　　　　三井重役　　　下田守蔵氏
　　　　　　　　　　　熊本市長　　　辛島知己氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　遠賀亮中氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　遠賀稲子氏
　　　　　　　　　　　子爵母堂　　　吉田貞子氏
　　　　　　　　　　　婦女界社長　　都河竜氏
　　　　　　　　　　　有信館長　　　中山博道氏
　　　　　　　　　　　商学士　　　　中村忠彰氏
　　　　　　　　太陽生命専務取締役　清水文之輔氏
　　　　　　　　　　　富士生命専務　寺田四郎氏
　　　　　　　　　　　医学博士夫人　入沢常子氏
　　　　　　　　　　　有馬組社長　　森清右衛門氏
　　　　　　　　　　　早大講師　　　笹原助氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　長野忠次氏
　　　　　　　　　　　商学士　　　　藤本恕一郎氏
 - 第45巻 p.72 -ページ画像 
　　　　　　　　台北高等商業学校長　武田英一氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　後藤杉久氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　志村釖七郎氏
　　　　　　　　　　　仏教大学講師　守屋貫教氏
　　　　　　　　　　　経済学博士　　田崎仁義氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　文子氏
　　　　　　　　　　　商学士　　　　坂本陶一氏
　　　　　　　　　　　医学博士　　　千葉真一氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　くに子氏
　　　　　　　　　　　市会議員　　　池田清秋氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　むら子氏
　　　　　　　　　　　中屋社長　　　鈴木正平氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　下村鹿次郎氏
　　　　　　　　　　　長田銀行頭取　杉原栄三郎氏
　　　　　　　　　　　　　　　　　　中島伊平氏
　　　　　　　　　　　法学士　　　　桑原八司氏

寄附金依頼ニ関スル来書　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（謄写版）
謹啓、愈御多祥に渉らせられ候段奉慶賀候
陳者日本女子高等商業学校建設後援会に就ては多大の御賛助を蒙り深謝仕候、去る三月十七日日本女子商業学校に於て発起人会を開らき別紙の通り趣意書及規約を議決し、会長に伯爵内田康哉殿を推薦し御承諾を得、又会長より左の通り役員を嘱托相成候ニ付御報告申上候、尚本会は直に事業ニ着手し目的の達成に力め候ニ付向後一層の御援助を仰き度、此段報告旁得貴意候　敬具
　　追て趣意書及規約御入用の節は其部数御申越被下度、早速御送可申上候ニ付申添候
　　昭和三年五月十二日
　　　　　　　　　　　　　　日本女子高等商業学校建設後援会
　　　　（宛名手書）
　　　　渋沢栄一殿
　会長伯爵　内田康哉殿　　　　会計監督　星野錫殿
　理事長　　桑原八司殿　　　　理事　　　大妻コタカ殿
　理事（会計主任）岡田徳子殿　理事　　　吉岡弥生殿
　理事　　　寺田四郎殿　　　　理事　　　天野多喜子殿
　理事　　　清水文之輔殿　　　理事　　　森清右衛門殿
　　　○昭和四年六月当校開校ス。