デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
3節 其他ノ教育関係
8款 早稲田大学
■綱文

第45巻 p.325-326(DK450130k) ページ画像

大正5年11月5日(1916年)

是日栄一、芝公園内ニ建設セラレタル、大隈重信銅像除幕式ニ参列シテ祝詞ヲ述ブ。


■資料

竜門雑誌 第三四二号・第八八頁大正五年一一月 大隈侯寿像除幕式(DK450130k-0001)
第45巻 p.325 ページ画像

竜門雑誌 第三四二号・第八八頁大正五年一一月
○大隈侯寿像除幕式 芝公園東照宮の辺りに建設工事中たりし大隈侯寿像は、愈々竣成を告げたるに依り、十一月五日午後一時より除幕式を挙行したる由なるが、当日青淵先生にも来賓として出席し、一場の懐古談を為されたりといふ。


竜門雑誌 第三五二号・第八六頁大正六年九月 ○大隈侯爵銅像除幕式祝詞(DK450130k-0002)
第45巻 p.325-326 ページ画像

竜門雑誌 第三五二号・第八六頁大正六年九月
○大隈侯爵銅像除幕式祝詞 此項旧聞に属すれども玆に録す。旧臘芝公園内に建設せられたる大隈侯爵寿像除幕式当日、青淵先生の祝詞は実に左の如くなりき。
    祝詞
 大隈侯爵閣下及ビ令夫人御家族並ニ満場ノ閣下諸君
 今日此永久ノ記念タルベキ侯爵ノ銅像ガ竣工シテ其除幕式ヲ挙行セラルルニ当リテ、私モ一言ノ祝詞ヲ陳ルヲ得タルハ実ニ愉快ニシテ且光栄トスル所デアリマス
 本除幕式ニ祝詞ヲ開陳スルハ政治家モ学者モ種々多方面ノ人々ナルベキハ、侯爵ノ御人格ニ対シテ素ヨリ其筈デアルガ、私ハ実業家代表ノ心ヲ以テ明治初年ヨリノ商工業ニ付テ侯爵ノ指導誘掖ヲ受ケタル経歴ヲ、私ノ薄弱ナル記憶ヨリ喚起シテ其幾分ヲ陳ヘテ見ヤウト思ヒマス
 先以テ一言致シ置キマスノハ、私ハ元来銅像建設ノ事ハ現在ノ人タルト故人タルトヲ問ハズ極テ慎重ニスベキモノト思ヒマス、為メニ他人カラ相談ヲ受ケマシテモ成ルベキ謝絶スルノデアリマス、今日ノ社会ハ所謂猫モ杓子モ銅像建設ト云フ有様デ、或ハ銅像濫設ニナリハセヌカト疑フノデアル、併ナカラ是ハ一般ノ風潮ヲ批難スルノデアツテ、大隈侯ノ如キ偉人ニ対シテハ私モ全然今日アルヲ適当ノコトトシテ中心ヨリ欣喜スルノデアリマス
 元来偉人トハ単ニ或ル一技一芸ニ優秀ナルトカ、又ハ顕要ノ地位ニ居ラレタトカ云フノミヲ以テ唱導スルモノニアラズシテ、各方面ニ偉大ナル人ニ対スル尊称ト思ヒマス、之ヲ譬フレバ名山峻嶺ノ、或ハ危峰懸崖攀チ難ク或ハ幽谷深渓渉ルニ由ナキ処モアラウ、或ハ曠原平野一望千里ノ観ヲ為ス事モアラウ、蓋シ彼ノ盧山ノ如キ又ハ我ガ富岳ノ如キ、各種ノ偉大ナル特長アリテ始メテ真ノ名山ト称スベキデアル、試ニ大隈侯爵ニ親近ナル人々ニ就テ之レガ評語ヲ徴スレバ、尚ホ富士登山ノ人ノ其方面ニヨリテ景勝ヲ異ニスルト同ジク、政治家・軍人・学者・実業家各其長所ニ向テ啓発セラルルデアラウト思ヒマス
 私ガ侯ニ接近スルヲ得タルハ明治二年ノ冬ニシテ、回顧スルト殆ンド半世紀ノ昔デアリマス、当時侯ハ大輔トシテ財政経済ノ枢機ヲ握
 - 第45巻 p.326 -ページ画像 
ラレ、私ハ新タニ静岡藩ヨリ同省ノ租税司ニ奉職シ、幾クモナクシテ本省ニ転任シテ侯ノ属僚トナリ、其指揮ノ下ニ種々ナル省務ノ改良発展ニ従来シマシタ、其後私ガ官ヲ辞シテ銀行者トナルニ付テモ特ニ侯ノ援助ヲ得タルコトノ多々ナルノミナラズ、明治九年ニ於ケル国立銀行条例ノ改正ノ如キハ、実ニ侯爵ノ果断ニヨリテ始メテ既設ノ銀行モ其営業ヲ継続スルヲ得、随テ全国各地方ニ続々同業ノ創立ヲ見ルニ至リテ、我邦ノ金融界ハ由テ以テ其緒ニ就クヲ得タト云フモ敢テ過言デハナカラウト思ヒマス
 独リ金融界ニノミ援助ヲ与ヘラレタノデハナク、陸海上ノ運輸業・保険業、又ハ各種ノ工業ニモ都テ侯爵ノ指導ヲ受ケタノデアリマス就中蚕種若シクハ蚕糸業ノ如キハ明治ノ初年ヨリ大蔵省ニ於テ斯業改善ノ端緒ヲ開カレテ、爾来能者之ヲ承継シテ今日アルニ至レリト云フモ差支ハナカラウト思ヒマス、而シテ其発展ノ経路ニ於テ、欧米ノ当業者トノ関係ニ付テモ、後援ニ頼リテ我邦商工業者ノ権利ヲ伸長シタ事抔ハ随分特筆大書スベキモノデアリマス、要スルニ侯ノ如キ政治外交経済ノ各方面ニ通暁セラレタ偉人アリテ官辺ヨリ誘導啓発セラレ、幸ニ民間ニモ続々其事ニ当リ得ル人士ガ輩出シタルニヨリテ、僅々三・四十年ノ歳月ヲ経テ実ニ無ヨリ有ヲ生シタルガ如キ拡張ヲ為スヲ得タルハ、侯爵御自身トセラレテモ定メテ今昔ノ感アラセラルル事ト思フノデアリマス
 然シナガラ今日ノ我邦ハ只既往ノ進歩ヲ祝シテ之ニ満足スベキ時機デハナイ、現ニ其進歩ニ伴フ所ノ名誉ト共ニ、将来ニハ更ニ大ナル責任ヲ負担スベキデアル、故ニ私ガ今此銅像ノ除幕式ニ当リテ蕪言ヲ陳ヘテ侯爵ノ寿ヲ頌スルハ、単ニ侯爵ノ御無事御安寧ヲ祝スルニアラスシテ、弥々益々御健全ニシテ将来ニ御尽瘁アランコトヲ懇請スルノデアリマス、玆ニ私ハ富岳ノ一方面ヨリスル観察ヲ陳上シテ此式ノ祝詞ト致シマス
   ○此ノ祝詞ハ大正五年十一月五日芝公園内大グランドニテ挙行サレタル大隈侯爵寿像除幕式ニ於テナセルモノナリ。此ノ寿像建設ハ、大正二年本田義成等ノ主唱ニ依リ、北畠治房ヲ委員長トシ、池田謙三・牟田口元学等二十余名委員トナリ、広ク賛助ヲ求メテ計画セラレタルモノナリ。(早稲田学報第二六一号ニ依ル)