デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
3節 其他ノ教育関係
8款 早稲田大学
■綱文

第45巻 p.337-339(DK450133k) ページ画像

大正6年12月16日(1917年)

是日栄一、当大学校友会主催、総長大隈重信八十歳寿宴ニ臨ミ、祝辞ヲ述ブ。


■資料

集会日時通知表 大正六年(DK450133k-0001)
第45巻 p.338 ページ画像

集会日時通知表 大正六年        (渋沢子爵家所蔵)
十二月十六日(日) 午前十時 早稲田大学臨時校友会(紅葉館)


竜門雑誌 第三五六号・第七〇頁大正七年一月 ○大隈侯爵の八十寿宴(DK450133k-0002)
第45巻 p.338 ページ画像

竜門雑誌 第三五六号・第七〇頁大正七年一月
○大隈侯爵の八十寿宴 十二月十六日芝紅葉館に、早稲田大学校友会主催の大隈侯爵八十寿祝賀会あり、来会者千五百名、青淵先生また出席せられ、来賓を代表して一場の祝辞演説あり。数十年来、侯の友人として其功業を称へられ、且つ熱誠に其寿を祝せられたりと云ふ。


早稲田学報 第二七五号大正七年一月 全国校友主催総長大隈侯爵寿宴(DK450133k-0003)
第45巻 p.338-339 ページ画像

早稲田学報 第二七五号大正七年一月
  ○全国校友主催総長大隈侯爵寿宴
○上略
    ○祝賀寿宴
前陳の発起経過に依り愈々十二月十六日午前十時芝公園紅葉館に、総長大隈侯爵・侯爵令夫人及御一族を招待して祝賀寿宴を開く。
○中略
終つて拍手に迎へられて来賓……
男爵渋沢栄一氏
 侯爵閣下、御一族、満場の諸君、斯る御めでたい席に出まして来賓の総代として祝辞を述べますのは私の光栄此上もございませぬ。今日の御席は早稲田の校友大会が総長たる侯爵閣下の八十に上らせられた寿を祝すると共に、殊に大患に御罹りになつて速に御回復になつたのを併せ祝するのでございます。かやうに御めでたい事柄が打重なりました。御めでたい御めでたいが三つも四つも重なつたので、どれを祝して一番宜しいか私は殆ど祝し方に迷ふくらゐでございます。殊に此の好天気に校友諸君が斯く多数御集まりになつたことは最も祝するに足るものと思ひます。私は学者ではございませぬけれども理化学研究所の創設に骨を折つて居りますから、此の御めでたい事柄が如何であるかと云ふことを聊か研究的に申上げて見たいと思ひます。凡そ物を祝するは或は永久的、或は一時的、或は大、或は小種々ございます。侯爵閣下の御一身に就いて祝すべき事一にして止らぬ。しかし最も祝すべきは、長寿を保たれたと云ふことであつて是れは実に満場の諸君と共に大いに祝さなければならぬ。故に八十の高寿を保たれたのを此の校友大会に於て御祝し申上げると云ふことは、是れ先づ第一に致すべき事であらうと思ふ。しかし人誰か病なき能はんや。如何に侯爵の如き健康を御保ちなさるにしても、当秋の大患は斯く申す私なども実に如何あらうかと御案じ申したのであります。私も日々電話で早稲田の御屋敷に伺つて見ますと、まづ宜しい方でと云ふので、聊か安心をしたくらゐであるからして、満場の諸君も必らず憂苦に沈まれたことであらうと思ふのでございます。然るに今日斯くの如き健全の御様子を拝見をして、又八十の高齢に上られたのを見ては、一時的には御全快の深い御喜びを申上げると共に、永久的に御長寿を御祝し申さずには居られぬのでござい
 - 第45巻 p.339 -ページ画像 
ます。斯く考へますと、此祝し方に就いては或は永久的、或は一時的の差別があると申しても宜しからうと思ふ。
 さりながら人間の病気は癒るものも沢山ございます。又八十になる方も少なくはない。世の中を調べて見れば此の間も江州辺に百二十になつた人があつたと云ふ。侯爵も八十は余り御喜びにはならぬかも知らん。若し百二十五を死期とすると、是れから先き四十五年あります。故に此の長寿のみを以ても既に祝するに足るけれども、しかし侯爵に対する祝辞としては長寿だけでは祝辞とはならないかも知らぬ。侯爵の青年時代に就いては私は承知致しませぬが、明治の初より玆に殆ど四十八年、容易ならぬ御眷顧を受け、又御親しく致して居る為に、事業の方面こそは異なつて居りまするけれども、其の御意志は私の常に拝承して居る所であります。蓋し侯爵は旧藩に居られましたる頃からして、業に已に非凡の体格を具へられまして所謂輔世長民の大志を抱いて居られましたが、維新の風雲に際会して其驥足を伸ばされたのでございます。爾来朝に於て 聖謨を翼賛されたこと頗る大でありまして、更に育英の事業に御務めなすつたことも実に容易のことではない。今日の此の校友会ある所以蓋し玆に原因する、玆に於て始めて侯爵の寿を御同様大に祝さゞるを得ぬのでございます。私は実に今日来賓の総代として此祝辞を申上げ得られますことは身に取つて此上もなく喜ばしう思ひますのは、今陳情致す四十八年の知遇を受けて居るからであります。侯爵は政治界に、私は実業界に、勿論方向は違つて居りますが、侯爵の他山の石私を磨いて下さつたこと実に少なからぬのでございます。私の今日ある所以は侯爵に負ふ所甚だ大である。此の一言を以て祝辞に代へますのも、即ち今日の私自身自からをも祝するのでございます。孟子の言に、天下有達尊三、爵一、歯一、徳一、朝廷莫如爵、郷党莫如歯、輔世長民莫如徳とある。侯爵は此三つを具へてござる三徳の御方と申して宜しからうと思ひます。 (文責在編輯者)
との祝辞あり、後ち場を震ふ拍手に迎へられて……
総長大隈侯爵○演説略ス
との謝辞を兼ねたる演説あり。終つて平沼会長より侯爵に目録贈呈あり、後ち早稲田音楽団の奏楽に伴れて一同校歌を合唱し、更に渋沢男爵発声の下に侯爵の万歳を三唱、やがて奏楽裡に閉式を宣せり
○下略