デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
3節 其他ノ教育関係
12款 東京帝国大学関係 3. 学士会館
■綱文

第45巻 p.500-504(DK450183k) ページ画像

昭和3年5月2日(1928年)

是日栄一、先ニ学士会館建築費トシテ金一万円ヲ寄付セシニ対シ、ソノ竣工ニ際シ山川健次郎・古在由直・阪谷芳郎・山田三良連署ニヨル礼状ニ接ス。次イデ九月十日、更ニ阪谷・山田連署ヲ以テ栄一ニ謝意ヲ表シ、記念品ヲ贈ル。


■資料

礼状往復(二)(DK450183k-0001)
第45巻 p.500-501 ページ画像

礼状往復(二)             (渋沢子爵家所蔵)
拝啓、時下益々御清穆奉欣賀候、陳者先般学士会館建築ニ関し御配慮願上候処、御熱誠なる御同情を賜り、右建築資金として御寄附被下候金壱万円誠ニ難有領収仕候、以御蔭建築工事も順調に進捗致し、今や全く竣成仕り、近々開館之運ひと相成り御芳志幾久敷深謝之至りに不堪候
 - 第45巻 p.501 -ページ画像 
先は乍略儀以書中御礼申述度如此ニ御座候 敬具
  昭和三年五月二日            山川健次郎
                      古在由直
                      阪谷芳郎
                      山田三良
    子爵渋沢栄一殿


礼状往復(二)(DK450183k-0002)
第45巻 p.501 ページ画像

礼状往復(二)             (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
             (別筆朱書)
              三年九月十日
                   学士会理事長 阪谷芳郎
                  建築実行委員長 山田三良
拝啓、時下益御清栄奉慶賀候、陳者予て御高配を蒙り居候帝国大学創立五十年記念学士会館は、以御蔭諸般の設備と共に去る五月全く竣成仕り、堂々百尺の偉容を旧南校敷地跡に現出し、開館以来諸種の集会並に会員の交驩に、連日来館者輻輳致居候段誠に御同慶之至りに奉存候、是れ偏に貴下の御熱誠なる御尽力の賜と感佩罷在候、就ては此際聊か感謝之微衷を奉し度、別包謹呈仕候間御受納被成下候はゝ本懐の至りに不堪候 敬具
  昭和三年九月十日     学士会理事長 阪谷芳郎
              建築実行委員長 山田三良
    渋沢栄一殿


学士会月報 第四五八号・前付第一〇―一一頁 大正一五年五月 領収之部(DK450183k-0003)
第45巻 p.501 ページ画像

学士会月報 第四五八号・前付第一〇―一一頁 大正一五年五月
    領収之部
一金六千円也    岩田宙造君
一金四千円也 子爵 渋沢栄一君
一金壱千円也    明石照男君
同         佐々木勇之助君
同         井坂孝君
同         平田譲衛君
○中略
合計 壱万九千八百弐拾六円七拾銭也
累計 金拾七万四千八百七拾五円弐拾銭也
   ○右ニ依レバ栄一寄付ハ分割シテ納入シタルモノノ如シ。



〔参考〕学士会月報 第四五八号・前付第三―六頁 大正一五年五月 学士会館建築設計要綱(DK450183k-0004)
第45巻 p.501-504 ページ画像

学士会月報 第四五八号・前付第三―六頁 大正一五年五月
    学士会館建築設計要綱
第一、敷地
 敷地は西方一ツ橋通に、南方錦町通りに面し、東方及び北方は直ちに隣地に接して南北長さ約九十米、東西奥行約三十五米、面積約三千平方米とす。而して南方三十二米道路には、九段及浅草間の電車軌道敷設せらるべきを以て、一方巣鴨三田間直通路に面すると共に他方日本橋及品川線にも連路し、交通至便の地たるべし。
 - 第45巻 p.502 -ページ画像 
第二、配置
 敷地は南面及西面主要道路に面するを以て、会館として市街地建築物としての美観を考慮し、路線に並行して外壁を設けたり。即ち主要玄関を西面の南方に設け、建物を南北両翼に分ちたる形として、南翼は錦町道路に南面し、北翼は一ツ橋通りに西面し、L字型の平面となせり。将来拡張の必要ある場合には、北翼の北端より東方に拡築し、匚字型の平面となし得るものとす。
 現在敷地としては東北部に空地を存するを以て、之をテニスコートに充て、西北部一ツ橋通りに面せる部分は之を自動車置場として使用するを便とす。かく北部に空地を存する事は、在来屡々起りたる神田方面の大火災より考慮するも、危険防止の上に幾分にても効果あるべきを信ずるものなり。
第三、設計
 本会館は通常各種実業家・資産家等の組織する単純なる社交倶楽部とは自ら異なり、本会々員全般の交驩・集会其他の中央機関たらんとするものなるが故に、其設計は内外とも堅実を旨とし、苟も浮華軽佻の風を避け、専ら実用に重きを置く事とせり。
 煖房・通気・採光・衛生・交通・通信等倶楽部的の諸設備に就ては出来得る限り之を完全にする事とし、家具調度品等は簡素にして堅牢なるものとす。
第四、構造
 建物階数小なれ共、階高割合に高きと二階に大なる室を有する関係上、骨組は全部鉄骨構造となし、之に鉄筋コンクリート壁及鉄筋コンクリート床を設け、以て完全なる耐火耐震性のものとなせり。
 外壁仕上は一部石又はテラコツタを張り付け、一部タイル張り又はモルタル仕上げとなす。
第五、間取り
 各階に於ける諸室の配置は大凡図面によりて明瞭なるべしと雖も、更に之が説明を附せん。
 (一)第一階
    西方二十七米道路に面して主玄関を設く。会員は主として之より出入するものとす。
    別に北端に事務用昇降口を設く。之に庇を附して雨雪の際自動車等より直接建物に出入し得るの便を図りたり。
    主玄関を入りて左側に受付あり、手紙・電報其他会員各般の用事を便する為め相当の設備を設く。携帯品預り室には会員其他出入者の外套・所持品等を保管するものとす。
    中央大広間の左側には昇降機及び大階段を設け、別にテニスコートに通ずべき庭出入口を設けたり。
    中央大広間の右側には談話室・ライテイングルーム・娯楽室及新聞雑誌室あり南面して最も好位置を占む。談話室は会館の中心なるを以て、喫煙・談話交驩に好適なる設備をなすべく、東南隅に入込みを設けてライテイングルームとなす。新聞雑誌室は談話室の西に接す。娯楽室には囲碁・将棋を配置
 - 第45巻 p.503 -ページ画像 
し新聞雑誌室には内外の新聞雑誌を備へて使用閲覧に便にす球戯室は中央広間の後方にありて、六個の玉台と二個の大台とを備へ、周囲に一段高き腰掛を配して休憩の便に供す。球戯室と直接連接して酒場室あり。談話室・球戯室・酒場室の三者を互に相接せしめ、使用上の便を計れり。
    館の北翼は主として事務用室及集会室に供す。事務用出入口は事務室に連つて北端に之を設く。各種の委員会・理事会等は臨時に集会室を利用するものとす。
 (二)第二階
    大食堂は南翼にあり、二百五十人の会食を催し得べし。其東端中二階に奏楽所を設け、別に予備室ありて余興其他の準備に便にす。
    大集会室は北翼にあり、講演会・演奏会其他の大集会に使用するものとし、約六百人の座席を設く。室の北端に舞台あり舞台の後方に控室と裏階段とを置く。
    広間は大食堂又は大集会室の附属休憩室として之を使用する事を得るの外、大集会室・大食堂と共に聯結して、六百人以上の大会食をなすの便に供する事を得べし。配膳室は之等に対して充分なる面積を有す。
 (三)第三階
    読書室は南翼にありて書庫を附属し、普通の図書は読書室内の書架に之を収納し、書庫内には貴重書籍のみを収蔵するものとす。
    多数の中集会室及び小集会室を設けて会員の使用に便す。西南隅の中集会室は之を相当装飾して時に貴賓の用に供す。
    尚ほ各集会室に於て、適宜会食等の便を計らんが為め、配膳室を準備し、地階厨房と連絡して二台の配膳用リフトを設けたり。
 (四)第四階
    専らホテルとしての設備をなす。寝室二十九あり、大部分をシングルとし、南面数室をスーツルームとなし得べからしむ地方会員をして最も愉快に便利に且つ経済的に滞京せしむるを本旨とするを以て、各室ともなるべく簡素にして然も設備に遺憾なからしめん事を期せり。寝室には寝台・衣服戸棚の外書机・安楽椅子・卓上電話等を備へ、室内洗面所に給湯給水の設備をなす。
    ホテルに関する事務は広間に面する帳場に於て之を取扱ひ、別に支配人の寝室を設く。
    中央大階段昇降機の外南北両翼の端に夫々裏階段あり。
 (五)地階
    地階の床は地盤より下る事僅かに一米余なるを以て、室の大半は地盤面上にある半地下室なり。通風換気に完全を期して湿霑の嫌なからしむ。
    会員の使用する室としては、常食堂及び理髪室あり。外にテ
 - 第45巻 p.504 -ページ画像 
ニスコート使用者の為めに、洗面所シヤワー等を設備す。又下足室を設け下駄・オーバシユース等を処理す。
    厨房・汽関室等の外、宿直室・小使室・湯沸室・電話交換室・火夫室・厨夫室・事務所用倉庫・予備室等を適当に配置せり
 (六)昇降機及階段
    中央大広間に面して客用昇降機一台を設け、其傍らに大階段を設く。別に南翼の東端及北翼の北端に各一個宛の裏階段を設けたり。
    地階厨房と各階配膳室との間に数台のリフトを設け、料理運搬の用に供す。
 (七)庭園
    東北の空地にはテニスコートを設け周囲に植樹をなす。