デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
4節 教育行政関係
1款 教育調査会
■綱文

第46巻 p.263-268(DK460081k) ページ画像

大正2年6月30日(1913年)

是日栄一、教育調査会会員ヲ仰付ケラル。爾後開カレタル数次ノ当調査会ニ出席ス。


■資料

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第一七頁 昭和六年一二月刊(DK460081k-0001)
第46巻 p.263 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿)昭和六年十二月調 竜門社編
             竜門雑誌第五一九号別刷・第一七頁 昭和六年一二月刊
    大正年代
  年 月
 二 六 ―教育調査会委員―


学制八十年史 文部省編 第二一八―二一九頁 昭和二九年三月刊(DK460081k-0002)
第46巻 p.263 ページ画像

学制八十年史 文部省編  第二一八―二一九頁 昭和二九年三月刊
 ○第四章 近代教育制度の整備
    第十一節 教育行政と財政
○上略
 教育調査会 大正二年六月高等教育会議規則を廃し、「教育調査会官制」を公布した。教育調査会は文部大臣の諮問機関であつて、委員は二十五人以内の規定であつたが、同三年六月に三十人と改めた。総裁として最初は樺山資紀をあげたが、後に加藤弘之がこれに代り、さらに蜂須賀茂韶がそのあとを襲つた。副総裁には時の文部大臣が当ることとなつた。この教育調査会はじゆうぶんにその調査成果を答申し得ないうちに、第一次世界戦争後の情勢により、大正六年九月臨時教育会議が開かれて、教育全般の改善方策を提出することとなつた。
○下略


中外商業新報 第九六五五号 大正二年三月一五日 ○教育制度調査 貴族院の建議案(DK460081k-0003)
第46巻 p.263 ページ画像

中外商業新報  第九六五五号 大正二年三月一五日
    ○教育制度調査
      貴族院の建議案
研究会の木場貞長氏は、土曜会の久保田譲男の外各派幹部の賛成を得教育制度調査会設置に関する建議案を両三日中に提出する筈なるが、其目的は、有力にして権威ある教育調査機関を設置し、教育の主義方針と其制度を調査せしめ、国家百年の大計を定めんと欲すと云ふにありと


中外商業新報 第九七五六号 大正二年六月二四日 ○教育調査会近し 総裁西園寺侯説(DK460081k-0004)
第46巻 p.263-264 ページ画像

中外商業新報  第九七五六号 大正二年六月二四日
    ○教育調査会近し
      総裁西園寺侯説
今回の行政整理の結果新に設置されたる教育調査会は過般来該委員の物色中なりしが、此程全部詮衡を了へたれば、来る二十八日頃発表せらるべく、定員は二十八名にして、即ち総裁一、副総裁一、委員二十
 - 第46巻 p.264 -ページ画像 
六名なり、総裁には地位名望高き元勲を推戴せむ方針にて、先頃奥田文相より井上・松方・西園寺侯等に交渉を試みつゝありしが、又一説には菊池大麓男に内定せりとの噂あるも、多分西園寺侯を推戴すべく目下会議に附すべき重要なる諮問事項一・二あれば、来月初旬第一回の総会を召集すべしと聞く


中外商業新報 第九七六三号 大正二年七月一日 ○教育調査会人選発表 総裁は樺山資紀伯(DK460081k-0005)
第46巻 p.264-265 ページ画像

中外商業新報  第九七六三号 大正二年七月一日
    ○教育調査会人選発表
      総裁は樺山資紀伯
三十日左の如く任命発表ありたり
          正二位勲一等功二級伯爵 樺山資紀
教育調査会総裁被仰付
           従三位勲二等法学博士 奥田義人
教育調査会副総裁被仰付
             従二位勲一等男爵 九鬼隆一
     従二位勲一等文学博士法学博士男爵 加藤弘之
         正三位勲二等理学博士男爵 菊池大麓
               従三位勲一等 江木千之
             従三位勲一等男爵 渋沢栄一
                  勲四等 関直彦
             正三位勲二等男爵 高木兼寛
               正四位勲三等 岡田良平
               正三位勲二等 小松原英太郎
               正五位勲二等 箕浦勝人
             従四位勲四等子爵 水野直
               従五位勲三等 早川千吉郎
               正五位勲四等 改野耕三
              勲四等法学博士 桑田熊蔵
              勲四等法学博士 花井卓蔵
                  勲四等 村野常右衛門
                   同上 豊川良平
               正七位勲四等 中野武営
              正五位法学博士 高田早苗
                  従六位 杉浦重剛
                  正七位 三土忠造
                      鎌田栄吉
                      成瀬仁蔵
教育調査会会員被仰付(各通)

    ○教育調査会の実質
      堅実の態度を望む
教育調査会に対し有力なる某実業家は曰く、今迄政府は種々の調査機関を設立し、特に或る調査会の如き、同会関会の際其折の総理大臣迄出席し、其重要なる次第を述べ、我等も時代上痛く其の必要を感ぜし
 - 第46巻 p.265 -ページ画像 
一人也、而も行政整理の為め遂に之を廃止せり、元来行政整理とは制度の改悪に非ずして、整理しながら国政の改善を期するが趣旨ならん否か、今回設立せし教育調査会の如き時世の必要に相違なきも、善く其の所期を貫徹し得べきや否や、吾人は先づ政府者脳裡の根本決心を確めざれば、俄に賛意を表し難し

    ○調査委員推薦理由
      各方面より網羅
△福原次官曰く 今回文部省に於て教育調査会を設置せるが、元来教育は経済上及政治上に重大なる関係を有し、殊に将来完全なる教育の普及発展を図らんと欲すれば、独り教育を学校当事者のみに委する能はざるは勿論なり、されば三十日発表せられたる調査会委員には、貴族院・衆議院・枢密院・実業家・教育家等各方面の人士を網羅せし次第なり、先年の高等教育会には大学及直轄学校中より多数の委員を推薦せしが、今回は直轄学校とは全く没交渉にて一人も此中に含まざるが、這は毫も官立学校の意見を尊重せざるに非らずして、大学総長若くは大学教授の如き、文部大臣に直属し居れば、随時其意見を徴すること能ふべく、故に特に調査委員たらしむるの必要なかる可し、此理由に依り該調査委員を推薦せし次第也、尚ほ幹事として文部省高等官の中より一名選抜すべく、第一回の会議は開会すべし云々。


中外商業新報 第九七六三号 大正二年七月一日 ○渋沢男の教育談 学制と改正意見(DK460081k-0006)
第46巻 p.265-266 ページ画像

中外商業新報  第九七六三号 大正二年七月一日
    ○渋沢男の教育談
      学制と改正意見
学制改正如何の問題は公人として玆に之を述ぶるを得ざるも、若余一個人の抱負如何とあらば开は多少の宿慮なきに非ず△修学年限短縮 我国の学制は修学年限長きに失す、即ち帝国大学を卒業するには二十六才か乃至二十七・八才を要す、是れ学問の為に余りに人間実際の活動年月を削減することとなる、余自身に考ふれば、既に十五才より活社会に入り、其後欧米に漫遊し或は政府の吏僚となり明治六年より実業に従ひ今年は七十四才に達し、実業方面に在ること既に四十ケ年間也、自分等の時代と今日とは時勢の差別あるも、青年を余りに長く学窓に居らしめ活動力を殺ぐは人物経済上好ましからず、修学上に於ては羅甸語等を減じ学課を少くする方法もあらむ、其他学制に工夫を用ゆれば改善の余地あるべし、特に帝大卒業者等が数年実務に就かざれば独立し得ざる点をも顧慮せざるべからず△更に 現今も商・工業の高等学校ありとは雖も之れ其数僅少也、大学を卒業せずとも或る限度にて活用の附く人材を出すべき学制の方法も必要也、△実力を尊ぶ 帝国大学を卒業せし人にも無能あり、私学の出身者にて有能あるは今迄の事実慥に之を証す、然るに今迄は稍もすれば富豪の床に懸けある探幽の軸は偽せものなるも之を賞して稀代の逸品と持ち上げ、貧家の手にある真の探幽の軸は真ものなるも偽物ならんと風塵に委して顧みざるあり、官学・私学の出身者に対して世上実に此傾向あらざるか、要するに学を修め材を研き其の処を得たるものこそ尊けれ、官学崇拝
 - 第46巻 p.266 -ページ画像 
は宜しく改善すべきなり云々


中外商業新報 第九七七五号 大正二年七月一三日 ○教育調査会議事規則(DK460081k-0007)
第46巻 p.266 ページ画像

中外商業新報  第九七七五号 大正二年七月一三日
    ○教育調査会議事規則
九日第一回教育調査会に於て、二・三字句の修正をなし可決したる同会規則左の如し
      △教育調査会議事規則
 第一条 会議は総裁に於て必要と認めたるとき又は会員三名以上の請求ありたるときは之を召集すべし
 第二条 会議は総裁・副総裁及会員を合せ其の半数以上出席するにあらざれば之を開くことを得ず
 第三条 議席は予め抽籖を以て之を定む
 第四条 会議は之を秘密とす
 第五条 総裁・副総裁共に事故あるときは総裁に於て会員を指名し臨時議長を代理せしむ
 第六条 発言せんとする者は議長の許可を受くべし
  発言は議席に於て起立して之を為すべし
 第七条 議事の整理上必要あるときは議長は発言を止め又は議事を中止することを得
 第八条 議長意見を陳述せんとするときは議席に着くべし
 第九条 建議案を提出せんとする者は案を具し二名以上の賛成者と連署して之を議長に差出すべし
 第十条 修正の動議を提出せんとする者は案を具し之を議長に差出すべし、但し簡単なるものは口頭を以て陳述することを得
 第十一条 動議は賛成者あるにあらざれば議題となすことを得ず
 第十二条 議事は出席会員の過半数を以て之を決す
  総裁又は副総裁可否の数に加はりたるときは之を出席会員と看傚す、可否同数なるときは議長之を決す
 第十三条 採決は起立に依る、但し議決により記名投票又は無記名投票を用ふることを得
 第十四条 会員は議長の許可を受くるにあらざれば退席することを得ず
 第十五条 会員病気其の他の事故に因り出席する事能はざるときは予め届出づべし
 第十六条 議長に於て必要ありと認めたるとき又は議決ありたるときは議案に付特に審査を為さしむる為め三名以上の委員を挙ぐることを得
  委員は議決に依り議長の指名又は会員の互選とす
  委員の互選を以て委員長を置く
  委員長は審査の経過及結果を会議に報告すべし
  委員会には本則の規定を準用す
 第十七条 教育調査会官制第八条に依り会議に出席して意見を陳述することを得る者、又は建議案若くは修正案の発議者は委員会に出席し意見を述べ又は説明を為すことを得

 - 第46巻 p.267 -ページ画像 

中外商業新報 第九七七八号 大正二年七月一六日 ○教育調査総会 暑中は休会に決す(DK460081k-0008)
第46巻 p.267 ページ画像

中外商業新報  第九七七八号 大正二年七月一六日
    ○教育調査総会
      暑中は休会に決す
第二回教育調査総会は引続き十五日午後二時永田町文相官邸に開会、九鬼・加藤・菊池・江木・渋沢・関・高木・岡田・小松原・水野・早川・高田・杉浦・三土・桑田・豊川・成瀬の各会員並に奥田副総裁、福原次官、田所・松浦両局長、武部・粟屋両幹事、鮫島秘書官等列席奥田副総裁会長席に着き、前回提案されたる教育基金五十万円の使途方法に就き審議せるが、各会員より夫々意見を開陳せるが、差当り先づ該基金の一部を(一)中学校長・女学校長並に師範学校長優遇費、(二)小学校教員肺結核予防費等に流用することに決し、右に関する特別委員七名を挙げ、会長より該委員に菊池大麓・江木千之・関直彦三土忠造・杉浦重剛・岡田良平・高田早苗氏を指名し、四時散会せり因に本会議は暑中は休会し、次回は九月頃開会すべしと


中外商業新報 第九八五〇号 大正二年九月二六日 ○教育調査総会 教育基金問題審議(DK460081k-0009)
第46巻 p.267 ページ画像

中外商業新報  第九八五〇号 大正二年九月二六日
    ○教育調査総会
      教育基金問題審議
教育調査総会は廿九日午後一時より文相官邸に於て開会、先づ教育基金利子五十万円の処分方法に就き審議すべく、高師校長俸給増加十四万円は過般の特別委員会に於て決定したれば、這は異議なく確定すべく、其他小学教員肺結核予防費・直轄学校改築基金・地方通俗教育補助費に関しては、二・三の反対者ありたれば、当日の総会にては多少の論戦あるべく、兎に角本総会に於て教育基金問題は解決さるべく、病気引籠中なりし奥田文相も亦推して出席すべしと


中外商業新報 第九八五四号 大正二年九月三〇日 ○教育調査総会 五十万円の審査(DK460081k-0010)
第46巻 p.267 ページ画像

中外商業新報  第九八五四号 大正二年九月三〇日
    ○教育調査総会
      五十万円の審査
教育調査総会廿九日午後二時より文部大臣官邸に於て関かる、文部大臣は病気の為め欠席せるも、其他の各委員出席し、予て特別委員会に附托して調査したる教育基金利子使用規程改正の件、即ち五十万円中十四万円は師範学校長俸給に、十万円は小学教員旅行費に支出し得べき件につき協議を凝したるが、多分委員会調査案の如く決定すべき模様なり


東京日日新聞 第一三二四五号 大正二年九月三〇日 ○基金使途決定す 教育調査会総会(DK460081k-0011)
第46巻 p.267-268 ページ画像

東京日日新聞  第一三二四五号 大正二年九月三〇日
    ○基金使途決定す
      教育調査会総会
教育調査会総会は二十九日午後二時より永田町の文相官邸に於て、樺山総裁、水野子、九鬼・渋沢・高木の各男、江木・岡田・小松原・箕浦・早川・改野・桑田・花井・豊川・中野・高田・杉浦・三土・成瀬の諸氏出席、先般特別委員に付託したる教育基金利子使途改正に関す
 - 第46巻 p.268 -ページ画像 
る件を附議し、先づ菊池委員長より委員会の経過及び結果の報告ありその内容は、文部省の諮問案は教育基金利子に相当する五十万円中既定勅令の支出以外更に中学校長・高等女学校長の増俸費並に師範学校長の俸給支弁及び増俸費、小学校教員肺結核患者退職費等に該基金より支弁せんとするにありしも、元来該基金設定の理由は一般普通教育の奨励にあるは勿論なれども、その眼目とする処は小学教育の補助奨励を目的としたるものなるを以て、師範学校長の如き小学教育の基礎たるものに対し之を支弁するは差支なしと雖も、他の高等女学校長・中学校長等の増俸費に充てんとするが如きは妥当ならずとの理由を以て、委員会は高等女学校長・中学校長の優遇法は別に講ぜしむるの条件を以て之を削除し、師範学校長俸給及び増俸費合計十四万円並に小学教員の肺結核退職費十万円を該基金より支弁せしむる事に決定せりと云ふにありしが、別段の異論も出でず、委員長報告通り可決確定し同四時散会せり、因に右十万円の小学教員肺結核退職費は現在小学教員の患者約九千人に対し、一年毎に一千人宛の退職者を出すと仮定し之に一人約百円宛の退職給を給与するの目算なりと云ふ



〔参考〕渋沢栄一 日記 明治四四年(DK460081k-0012)
第46巻 p.268 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四四年       (渋沢子爵家所蔵)
七月二十五日 曇 暑
午前六時半起床、入浴シテ朝飧ヲ食ス、後、新日本主筆樋口氏来リ、学制ノ可否ヲ談ス○下略