デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
7款 帰一協会
■綱文

第46巻 p.599-603(DK460145k) ページ画像

大正4年9月20日(1915年)

是月十四日、栄一、渋沢事務所ニ於ケル当協会幹事会ニ出席、次イデ是日、上野精養軒ニ於ケル当協会評議員会及ビ第五回時局問題研究委員会ニ出席シテ、意見ヲ述ブ。


■資料

集会日時通知表 大正四年(DK460145k-0001)
第46巻 p.599 ページ画像

集会日時通知表 大正四年         (渋沢子爵家所蔵)
九月十四日 火 午後四時 帰一協会幹事会(事務所)


渋沢栄一 日記 大正四年(DK460145k-0002)
第46巻 p.599 ページ画像

渋沢栄一 日記 大正四年         (渋沢子爵家所蔵)
九月十一日 曇
午前六時半起床、入浴ト朝飧トヲ畢リテ○中略 成瀬仁蔵氏来リ○中略帰一協会ノ件ヲ談話ス○下略
   ○中略。
九月十四日 晴
○上略 午後五時事務所ニ抵リ、帰一協会幹事会ヲ開キ、中島・姉崎・成瀬諸氏ト要務ヲ協議ス、午後七時帰宅○下略


集会日時通知表 大正四年(DK460145k-0003)
第46巻 p.599 ページ画像

集会日時通知表 大正四年         (渋沢子爵家所蔵)
九月二十日 月 午後五時 帰一協会ノ件(上野精養軒)


渋沢栄一 日記 大正四年(DK460145k-0004)
第46巻 p.599-600 ページ画像

渋沢栄一 日記 大正四年         (渋沢子爵家所蔵)
九月二十日 曇
 - 第46巻 p.600 -ページ画像 
○上略 五時ヨリ上野精養軒ニ抵リ、帰一協会ヲ開キ、姉崎・中島・成瀬・佐藤ノ諸氏ト、戦後国民ノ覚悟ニ関スル意見ニ付、各自充分ノ抱負ヲ談ス
九時帰宅○下略


帰一協会会報 第六号・第二八一頁大正四年一一月 ○第五回委員会○時局問題研究(DK460145k-0005)
第46巻 p.600 ページ画像

帰一協会会報 第六号・第二八一頁大正四年一一月
    ○第五回委員会○時局問題研究
 九月廿日開会。出席者五名。
本会に於ては前回委員の意向に依り、姉崎正治氏の起稿に係る「国民の覚悟に関する宣言草案」に就き討議ありき


帰一協会会報 第七号・第一四―一八頁大正五年三月 ○宣言決定に至る経過の大要(DK460145k-0006)
第46巻 p.600-602 ページ画像

帰一協会会報 第七号・第一四―一八頁大正五年三月
○宣言決定に至る経過の大要
同年○大正四年九月二十日 評議員会及第五回委員会
 「国民の覚悟に関する宣言起草案」(姉崎正治氏試稿)の提出あり、それにつきて種々討議、その結果を集めて更に起稿を姉崎氏に委托当日の提出案左の如し。
 (第一案)国民ノ覚悟ニ関スル宣言草案 姉崎正治試稿
 開国進取ノ宏謨ヲ拡充シ、国運ノ伸張、国力ノ充実ニ努力スルハ、日本国民ノ本務ニシテ、国家文明ノ隆盛ハ、世界ニ於ケル日本ノ品位ヲ高ムル所以タルノミナラズ、国民ガ世界ノ進運ニ参与シ、万国彼此相倚ルノ実ヲ挙グル道亦玆ニ存ス。日本国民ハ、大正維新ノ精神ヲ振起シ、内ハ国民生活ノ大本ヲ確立シ、東洋文明ノ代表者タル実ヲ挙ゲ外ハ与国ト共ニ国際正義ノ擁護者トナリ、将来文運ノ発展ニ有力ナル貢献ヲナスベシ。
 此ノ目的ヲ達スル為ニハ、上下挙ツテ、国家ガ内外共ニ重大ナル時機ニ際会セルヲ自覚シ、官民心ヲ一ニシテ此ノ国是ヲ遂行スルニ努力セザルベカラズ。就中左ノ条項ニ就キテ、真摯ナル考慮研究ヲ遂ゲ、熱誠ソノ実行ヲ講ズルヲ要ス。
    (協和一致ノ要)
 一、国民万般ノ割拠的気風ヲ擺脱シ階級分裂ノ弊ヲ打破シ、政治・実業・学術・教育・宗教・文芸ニ亘リテ、上下協同シ、諸方面ノ力ヲ協ハセ、互ニ相激励シ、幇助シ、矯正シ、国家全般ノ進運ヲ期スルヲ要ス。
    (政治ト公論)
 二、立憲ノ大旨 地方自治ノ政ハ一国為政ノ大本ナリ。此ヲ以テ一般政治ノ問題ハ云フニ及バズ、社会万般ノ文物ニ関シテハ、万民ノ意見ヲ自由ニ発表セシメ、公論ヲ喚起シ、此ニヨリテ国民共同ノ思慮ニ基キ、人民ノ良心ニ訴ヘテ問題ヲ解決スベシ。
    (公共ノ精神ト人格ノ尊重)
 三、公共ノ精神ヲ発揮スルハ、人々各自ノ人格ヲ煉達シテ、ソノ覚悟ニ基クニ非レバ、強制関渉ト雷同盲従トノ弊ヲ生ジ、ソノ極ハ人民活気ノ銷沈ヲ来シ、又ハ鬱屈爆発ヲ招クニ至ルベシ。此ヲ以テ公私ノ生活共ニ自他ノ人格ヲ尊重シ、婦人ヲ軽視スル悪風ヲ破
 - 第46巻 p.601 -ページ画像 
リ、以テ国民生活ノ基礎ヲ鞏固ニシ、活気ヲ充実スルヲ要ス。
    (国粋ノ保存ト発達)
 四、国家伝来ノ文物美風ハ之ヲ毀損スベカラズ、大ニ之ヲ発揚スルノ必要ハ謂フニ及バザレドモ、単ニ形式ヲ保存スルノ弊ニ陥ラズ日進ノ時勢ニ適応シテ、国風長所ノ精神ヲ発揚シ、以テ国民生活ノ発達ヲ期シ、国家理想ノ実現ヲ期スベシ。
    (新事物ノ採用)
 五、世界文明ノ進歩ハ、物質精神両面ニ亘リテ日ニ新事物ヲ生ジ、ソノ趨ク所測ルベカラズ、ソノ社会生活ニ及ボス影響モ亦深大ナル者アリ。此ヲ以テ在来ノ習慣ニ拘泥セズシテ、一国文運ヲ高メ人民生活ノ利益ヲ進ムルノ道ヲ講ズルヲ要ス。勿論新事物ヲ採用シ、新制度ヲ創設スルハ、綿密ノ思慮研究ト巧妙ナル適応トヲ要スルモ、在来ノ形式ヲ保守スルガ為ニ、新文明ノ利ヲ失ヒ、国家ヲ敗退者ノ位置ニ陥レザル覚悟ヲ要ス。
    (教育ノ実効)
 六、教育ハ国民生活ニ於ケル智徳養成ノ枢要ナリ、而シテ教育ノ実効ハ、制度設備以上更ニ人格ノ力ニ依ル。此ヲ以テ教育ニ対スル国家ノ大方針ハ、雄大ナル理想ニ基キテ之ヲ確立スルト共ニ、教育者各自ノ品格ト自由ト意見ト技能トヲ尊重シ、各ソノ長ヲ発揮セシメ、以テ教育ノ実効ヲ挙グルヲ要ス。
    (道徳ト文物ノ整調共同)
 七、国民精神ノ養成 社会道徳ノ涵養ハ、政治教育以外、更ニ宗教文芸学術ノ力ニ待ツコト多ク、実業殖産ノ道ニ依リテ民ニ恒心アラシムルコトヲ要ス。此ヲ以テ此等諸般ノ文物ヲシテ、各自由ニソノ効果ヲ挙ゲシムルト共ニ、一国精神ノ大本ニ適順セシムルヲ要ス。是レ一国文運ノ諧調ヲ成ス所以ニシテ、国家ノ品位、文明ノ内容ハ、此等文物ノ隆否ニ依リテ決セラルベシ。
    (国際道徳ノ信義)
 八、平時戦時ヲ別タズ、国際道徳ノ信義ハ、万国相並ンデ国ヲナス所以ノ大本タルノミナラズ、其ノ実行ハ、内国民道徳心ノ涵養ニ痛切ノ影響ヲ及ボス。国家ハ信義ニ悖ルモ、武力ニ依頼シテ自ラ立テバ足レリトスル如キハ、国家ヲシテ世界諸国ノ中ニ、孤立ノ悲運ニ陥ラシムルノミナラズ、又国内ニアリテ、人民ヲシテ一国防備ノ真義ヲ誤ラシメ、日本国民ノ武徳ヲシテ、涜武ニ陥ラシムルニ至ルベシ。此ヲ以テ国際信義ノ道徳ヲ発揚シ、教訓スルヲ要ス。
    (西洋文明ト東洋文明)
 九、近世文明ノ長処ハ組織的活動ニアリ、而カモ活動ヲシテ社会的ニモ、個人的ニモ、基礎アリ理想アル実力タラシムルハ、個人精神ノ修養ヨリ出ヅ。而シテ精神的訓練、自克自制ノ力、静慮反省ノ効ハ、東洋ノ徳風ニ待ツ事多カルベシ。日本国民ハソノ伝来ノ精神的修養ニ基キテ、有為ノ生活ヲ遂ゲ、組織的ニ社会ノ事業ヲ進ムル覚悟ヲ要ス。
    (国際和親ノ注意)
 - 第46巻 p.602 -ページ画像 
 十、現在ノ大戦ハ原因スル所遠ク、且ツ弘キモ、ソノ直接ノ原因ヲバルカン問題ニ発セリ。東亜ニアリテハ、バルカン問題ト同様ノ禍根ハ、支那ニアルベク、ソノ他国際ノ危機何レニ生ズルヤヲ測リ難シ。然レバ日本国民ハ、此等ノ禍根ニ対シテ、自国ノ利害以上、更ニ世界大局ノ和親ニ着眼シテ、東亜ニ於ケル惨禍ノ爆発ヲ予防スルニ力ヲ致サザルベカラズ、ソノ方策ノ如キハ、特別ノ研究考慮ヲ要スルモ、憂ヲ未然ニ防グノ覚悟ハ、今日ノ要務タルベシ。



〔参考〕竹園賢了氏所蔵文書(DK460145k-0007)
第46巻 p.602-603 ページ画像

竹園賢了氏所蔵文書
佐藤氏
 国民の覚悟といふは寧ろ戦後に於ける覚悟にはあらざるか 故に先づ急なるものを先きにすべし。
 余の考によれば、克ちても敗けても独逸は、欧人の頭を大に支配すべし。
 戦は第一ノ舞台にて終るか、第二に入るか、第二に入れば大変なり第一の舞台にて終れば今後又戦あるべし。
 1 殊に日本は独乙に対しては攻戦的態度をとれる故之ニ対スル将来ノ国民ノ覚悟ヲ要ス。
 2 東洋ノ盟主タルベキコトニツキテノ覚悟。
 3 東西文明ノ融合ノ抱負ハ無カルベカラズ、之ヲ力アルモノトセサルベカラズ。
 4 凡ベテノ問題ヲ現今ハ党派ノ利害問題トナスナリ、之ニ対シテ帰一協会ハ訓戒ヲ与ヘザルヘカラズ。
 5 独乙ノ頑強ハ物質的研究ニ本ク、其ハ根柢的研究ニヨル故ニ、之ニ鑑ミテ斯カル研究機関ヲ発達セシムルヲ要ス。
 6 今ハ国粋保存ガ無サスギル故、寧ロ国粋保存ニ傾クヲ要ス。
 7 日本人全体ニ国家ニ対スル態度ガ冷淡ニ失ス。
 故ニカカル宣言ヲ何回モスル方宜シカラザルカ。
 8 国際公法ハ国ノ存亡ノ時ハ当テニナラザルナリ、正義ヲ以テ導クカ否カノミナリ、国際法ノ精神ハ変ラザルナリ
  要スルニ力アルモノヲボツボツ宣言スル方宜シカラサルカ。
中島氏
 平生ナラバ可ナルモ、大正ノ御世ニ当リ万事一変セントスル時ニ当リ、大ナルコトヲ出シ而シテ後小サキコトニ及ボスベシ。
 今日ノ時機ヲ利用シテ社会ニ大ニ出スガ宜シカラン。
姉崎氏
 雄大ナル宣言ニテモ此頃ノ人間ノ頭ニハ空漠ニ響ク、余ハ問題ヲ呈出スル心持ニテ起草セリ。
佐藤氏
 Militarismニ対スル覚悟、東洋ノ盟主タルベキ覚悟等ヲ強ク宣言スルヲ要ス。
中島氏
 穏カナルモノガ却ツテ宜シカラザルカ。
 - 第46巻 p.603 -ページ画像 
渋沢氏
 強キ宣言ハ強ク響ケドモ、却ツテ弊害ナキニアラズ。
佐藤氏
 問題ハ大ナル故始メハ説明ノツカザル如キ力アルモノヲ要ス。タトヘバ五ケ条ノ御誓文ノ如キ宣言書ヲ希望スルナリ。
    食事
渋沢男
 1 勝チサヘスレバ良イト云フコトガ世ノ主義トナリテハ大変ナリモシ独逸ガ勝ツコトアラバ我国ガタトヒ焦土トナルコトアリテモ挙国一致之ニ当ラザルベカラズ、何トナレバ独逸ハ正義ナラザレバナリ。
  成功スレバ仮令悪キコトニテモ可ナリト云フ如キ考ヲ懐カシムヘカラズ。善キコトノ成功セザルベカラザルヲ明カニスルヲ要ス、国家モ同様ナリ。故ニ国際間ニモ道徳アリ、此ノ点ヲカク宣言セザルベカラズ。
 2 自己サヘヨケレバ可ナリトノ風潮ガ社会一般ニ行ハルルニアラザルカ、此ノ点ヲモ注意スルヲ要ス。
  従来犠牲的観念ガ甚ダ強カリシガ、現今ハ著シク薄レタルヤノ観アリ、国粋保存ナラバ従来アリシモノヲモ保存シタキモノナリ。
  (徳川慶喜公ノ例)
佐藤氏
 大体ハ一般ニ麻痺セリ、故ニ強キモノヲ用ヒサルベカラズ。
姉崎氏
 恩義本位ナラサルベカラズ。
渋沢男
 云ヒタキコトハ多ケレドモ、力アルコトヲ云ヒ度シ、草案ヲ再ビ作ルコト
 十月十三日夜委員会ニテ再議スルコト。
 同二十日
佐藤氏
 万機公論ニ決スルノ精神ト犠牲ノ精神ヲ鼓吹スルコト。
 反独逸主義ヲ鼓吹セザルハ、学者ト陸軍々人トノ罪ナリ。
 第三項
 婦人ヲ軽視スル悪風云々ガ論題トナル、老若男女トデモ改ムベシトノ説アリ。多ク削リ去ルコトニ一致セリ。
 ○右ハ当日ノメモナルベシ。竹園ノ筆録カ。