デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
8款 財団法人理化学研究所
■綱文

第47巻 p.195-204(DK470037k) ページ画像

大正12年1月29日(1923年)

是日、日本工業倶楽部ニ於テ、当研究所理事会及ビ評議員会開カレ、栄一出席ス。

四月二日、当研究所ニ対スル国庫補助金増額ニ関スル法律第四十号公布セラル。


■資料

渋沢栄一 日記 大正一二年(DK470037k-0001)
第47巻 p.195 ページ画像

渋沢栄一日記  大正一二年        (渋沢子爵家所蔵)
一月二十九日 晴 寒
○上略 午前十時工業倶楽部ニ抵リ、理化学研究所ノ報告会アリ、大河内所長詳細ノ説明アリ、尋テ政府ヨリ補助ノ顛末ニ付、余ハ爾来ノ苦配ヲ略陳ス、十一時頃同会ヲ辞シ、王子ニ帰宅○下略


集会日時通知表 大正一二年(DK470037k-0002)
第47巻 p.195 ページ画像

集会日時通知表  大正一二年       (渋沢子爵家所蔵)
一月廿九日 月 午前十時 理化学研究所之件、定期評議員会(工業倶楽部)


自卅九回 至七十四回 理事会書類(DK470037k-0003)
第47巻 p.195 ページ画像

自卅九回 至七十四回 理事会書類   (財団法人理化学研究所所蔵)
                       (塩原)(水谷)
    第四拾六回理事会議事要録        (印) (印)
大正十二年一月二十九日午前十時日本工業倶楽部ニ開会、十時半閉会
出席 渋沢・大河内・団・高松・大橋・和田・内藤・塩原・森村各理事
議事 大河内所長議長ト為リ、本所資金トシテ壱万円ノ寄附ヲ申出ラレタル藤井栄三郎君ヲ評議員ニ推薦方○中略 ヲ決議セリ
                        以上

 - 第47巻 p.196 -ページ画像 

評議員会決議録 自大正十一年一月 至大正十五年十二月(DK470037k-0004)
第47巻 p.196 ページ画像

評議員会決議録 自大正十一年一月 至大正十五年十二月  (財団法人理化学研究所所蔵)
    大正十二年一月定期評議員会議事録
大正十二年一月廿九日午前十時卅分日本工業倶楽部ニ於テ開会、十一時三十分閉会
出席 渋沢○外評議員一〇名 其ノ他他ノ評議員ヲ代理人ト為ス旨通知セシ評議員二十五名
議事及報告
  出席評議員ノ推薦ニヨリ渋沢子爵議長ト為リ、別紙ノ大正十二年度業務計画及同予算案並ニ藤井栄三郎君ヲ評議員ニ推薦ノ件ヲ可決シ○中略
                        以上
(別紙)
  大正十二年度 自十二年四月 至十三年三月 業務計画並同予算案
    業務計画
本所ノ事業ハ昨年度以来著シク進展シ、且ツ予定計画ニ基キ昨年度着手シタル第四・五号館ノ建築設備ハ当年度内ニ完成スヘク、従テ諸般ノ経費漸次多キヲ加フルニ至リシガ、政府ニ於テモ国庫補助金増額ノ必要ヲ認メラレ、第四十六帝国議会ニ本所事業費トシテ今後年々二十五万円ヲ補助スルノ法律案ヲ提出セラルヽコトヽナレリ、依テ本年度予算ハ別表ニ示ス如ク、諸利息十一万七千五百円、政府補助金及其利息二十五万七千五百円、研究成績及特殊研究費等ノ収入見込額二万五千円、合計四十万円ヲ計上シ、事業費ヲ支弁スルコトヽセリ、而シテ年度内ニ仕払フヘキ建設費ハ約五十万円ニシテ、内二十万円ハ定期預金ヲ以テ、三十万円ハ仏国円国庫債券ノ償還ヲ待テ支払フ予定ナリ、猶建築及設備ノ進捗スルト共ニ、新ニ指導研究員ヲ任命シ、益事業ノ発展ヲ期セントス
  ○予算案略ス。


法令全書 大正一二年 内閣印刷局編 刊 【朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル…】(DK470037k-0005)
第47巻 p.196-197 ページ画像

法令全書 大正一二年    内閣印刷局編 刊
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル大正五年法律第十六号中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
 御名御璽
  摂政名
  大正十二年四月二日
          内閣総理大臣 男爵 加藤友三郎
           農商務大臣    荒井賢太郎
法律第四十号(官報四月四日)
大正五年法律第十六号中左ノ通改正ス
第一条中「十年」ヲ「十七年」ニ、「二百万円」ヲ「四百十五万円」ニ改ム
      附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔参照〕
 - 第47巻 p.197 -ページ画像 
大正五年三月七日公布法律第十六号理化学ヲ研究スル公益法人ノ国庫補助ニ関スル件抄録
第一条 産業ノ発達ニ資スル為理化学ヲ研究シ、其ノ成績ノ応用ヲ図ルコトヲ目的トスル公益法人ノ一ニ対シ、政府ハ本法施行ノ日ヨリ十年ヲ限リ毎年二十五万円以内ヲ補助スルコトヲ得
前項補助金ノ総額ハ二百万円ヲ超ユルコトヲ得ス



〔参考〕官報 号外 大正一二年二月一四日 第三 大正五年法律第十六号中改正法律案(政府提出)(DK470037k-0006)
第47巻 p.197 ページ画像

官報  号外 大正一二年二月一四日
  第三 大正五年法律第十六号中改正法律案(政府提出)
                        第一読会
    大正五年法律第十六号中改正法律案
 大正五年法律第十六号中左ノ通改正ス
 第一条中「十年」ヲ「十七年」ニ、「二百万円」ヲ「四百十五万円」ニ改ム
      附則
 本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔国務大臣荒井賢太郎君登壇〕
○国務大臣(荒井賢太郎君) 理化学研究所ノ補助年限ノ延長ニ関スル法律案ノ理由ヲ簡単ニ申上ゲマス、理化学研究所ハ設立ノ日ガ尚ホ浅キニ拘ラズ、相当ノ成績ヲ挙ゲテ居ルト政府ハ認メテ居リマスル、然ルニ財界ノ変動其他種種ノ理由ニ依リマシテ、民間ヨリノ寄附金ガ予定ノ額ニ達シマセヌノト、ソレノミナラズ物価騰貴ノ影響ヲ受ケマシテ、建設費・設備費等ニ多額ノ費用ヲ要シマスガ為ニ、資金ニ不足ヲ生ジマシタ、何等カ経費補助ノ途ヲ取リマセヌト、研究ヲ継続シテ行クコトガ出来ナイト云フヤウナ状況ニ立至リマシタノデゴザイマスソレデ此際理化学研究所ニ対シマシテ、従来政府ガ二百万円ヲ十箇年間ニ割合ヒ補助ヲ致シテ居リマシタモノニ加ヘマシテ、更ニ二百十五万円ヲ今後十年間ニ割合ヒ補助シテ行カウト云フ、結局前回ノ補助ト併セマシテ四百十五万円ト云フモノニ補助額ヲ増加シ、尚ホ補助年限ヲ延長シタイ、斯ウ云フ理由ヲ以チマシテ本案ヲ提出シマシタ次第デゴザイマス、御審議ノ上、御協賛ヲ与ヘラレンコトヲ切望致シマス
○副議長(粕谷義三君) 之ニ対シテ右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選挙ヲ議題ト致シマス
  第四 右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選挙
○高見之通君 委員ノ教ヲ九名トシ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕
○副議長(粕谷義三君) 高見君ノ動議ニ御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ○下略
  ○右ハ二月十三日衆議院ニ於ケル議事ノ速記ナリ。
  ○議長奥繁三郎ハ是日辞任ノタメ副議長採決ス。



〔参考〕官報 号外 大正一二年二月二三日 第三 大正五年法律第十六号中改正法律案(政府提出)(DK470037k-0007)
第47巻 p.197-199 ページ画像

官報  号外 大正一二年二月二三日
  第三 大正五年法律第十六号中改正法律案(政府提出)
 - 第47巻 p.198 -ページ画像 
                   第一読会ノ続(委員長報告)
    報告書
 一大正五年法律第十六号中改正法律案(政府提出)
 右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候、此段及報告候也
  大正十二年二月二十一日
        大正五年法律第十六号中改正法律案委員長
                      大林森次郎
    衆議院議長 粕谷義三殿
  〔大林森次郎君登壇〕
○大林森次郎君 只今上程サレマシタル大正五年法律第十六号中改正法律案ニ関スル委員会ノ経過並ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、其改正ノ要点ハ「十年」トアル年限ヲ「十七年」ニ改メマスルノト、尚ホ「二百万円」トアルノヲ「四百十五万円」ニ改メルノ案デアリマス、是ハ理化学研究所ノ補助ニ関スル案デアリマシテ、当初此理化学研究所ノ計画ハ御下賜金ノ百万円ト、政府ノ補助金二百万円、民間有志ノ醵金五百万円ト合計八百万円ヲ以チマシテ、其内百万円ヲ建築並ニ設備ノ費用ニ充テ、残リ七百万円ヲ基金ト致スノ予定デアリマシタ、然ルニ御承知ノ如ク財界不況ノ為ニ、民間有志ヨリノ醵金ハ予定ニ達シマセズ、即チ漸ク三百万円ニ止ツタノデアリマス、又一面ニ於キマシテ一百万円ノ予定デアツタ建築費ガ、物価騰貴、労銀ノ騰貴、其他初ニハ敷地ハ無償ノ積リデアリマシタモノガ、無償提供ノ土地ハ研究所トシテハ不適当デアルガ為ニ、已ムヲ得ズ適当ノ土地ヲ買入レルコトニナリマシタ、ソレ故ニ予定ノ価格ヨリ非常ニ沢山ノ金ヲ要シタ、即チ五百万円ノ多額ニ上リマシタ次第デアリマス、斯様ニ大ナル違算ヲ生ジマシタ為ニ、本案ヲ提出スルニ至ツタ次第デアルノデアリマス、而シテ此研究所ノ設立以来、今日ニ至ル迄ノ成績ハドウデアルカト云フ質問ニ対シテ、左様ナル研究ノ成績ト云フモノハ、短時日ノ間ニ思フヤウニ成功スルコトハムヅカシイト云フノハ申ス迄モアリマセヌガ、幸ニ研究ニ従事サレテ居ル所ノ諸氏ノ熱心ナル努力ニ依リマシテ、数多ノ発明モアリ、又既ニ特許ヲ得タモノモアルシ、尚ホ更ニ近キ間ニ有益ナル成績ヲ挙グルノ見込ガアル、要スルニ相当ノ成績ヲ挙ゲテ居ルト云フコトデアリマシタ、ソレカラ又此案ヲ見マスルト云フト、如何ニモ貧弱デアツテ、兎ニ角研究ヲ継続シテ往クコトハ出来ルカモ知ラナイケレドモ、十分ナル研究ヲ遂ゲ得ルコトハムヅカシイカノ観ガアルガ如何ト云フ質問ニ対シマシテ、当局モ亦之ヲ以テ満足スルノデハナイ、併ナガラ現在ノ財政ノ状態ニ鑑ミマシテ、差当リ此程度ニ止メタモノデアルト云フ答弁デアリマシタ、討論ニ入リマシテ、中原徳太郎君ヨリ、産業振興上必要ナルモノデアルガ故ニ、政府ハ宜シク積極方針ニ基キ、民間有志ノ寄附金ヲ奨励スルナリ、又財政ノ許ス限リ其方法形式ノ如何ヲ問ハズ、成ベク資金ヲ豊富ニシテ、満足ナル研究ヲ遂ゲ得ルヤウニ、政府トシテ十分ナル努力ヲサレタイト云フ希望ガアリマシタ、何レモ之ニ同意致シマシテ、委員会ハ満場一致原案ヲ可決シタ次第デアリマス、此段御報告申上ゲマス(拍手)
○議長(粕谷義三君) 本案ノ第二読会ヲ開クコトニ御異議ハナイト
 - 第47巻 p.199 -ページ画像 
認メマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
○議長(粕谷義三君) 仍テ第二読会ヲ開クコトニ決シマス
○高見之通君 直ニ本案ノ第二読会ヲ開キ、三読会ヲ省略シテ委員長報告通リ、可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕
○議長(粕谷義三君) 高見君ノ動議ニ御異議ハナイト認メマス、仍テ直ニ第二読会ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス

  大正五年法律第十六号中改正法律案
                    第二読会(確定議)
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議モナイト認メマスカラ、第三読会ヲ省略シテ、委員長報告通リ可決確定セラレマシタ――○下略
  ○右ハ二月二十二日衆議院ニ於ケル議事ノ速記ナリ。



〔参考〕官報 号外 大正一二年二月二七日 【議長(公爵徳川家達君)…】(DK470037k-0008)
第47巻 p.199-202 ページ画像

官報  号外 大正一二年二月二七日
○議長(公爵徳川家達君) 日程第三、大正五年法律第十六号中改正法律案、政府提出、衆議院送附、第一読会
    大正五年法律第十六号中改正法律案
 右政府提出案本院ニ於テ可決セリ、因テ議院法第五十四条ニ依リ及送付候也
  大正十二年二月二十二日
                衆議院議長 粕谷義三
    貴族院議長 公爵徳川家達殿
    大正五年法律第十六号中改正法律案
 大正五年法律第十六号中左ノ通改正ス
 第一条中「十年」ヲ「十七年」ニ、「二百万円」ヲ「四百十五万円」ニ改ム
      附則
 本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔国務大臣荒井賢太郎君演壇ニ登ル〕
○国務大臣(荒井賢太郎君) 提案ノ理由ヲ簡単ニ説明ヲ致シマス、本案ハ理化学研究所ニ対スル国庫補助ノ年限ヲ延長シ、及ビ其補助金額ノ増加ヲ致サウト云フ案デゴザイマス、理化学研究所創立以来日尚ホ浅キニ拘ラズ頗ル見ルヘキノ成績ヲ挙ゲテ居ルノデゴザイマスル、然ルニ之ガ資金トシテ当初ノ計画ニ依リマスレバ、帝室御下賜金百万円、政府ノ補助金二百万円、及ビ民間有志ノ寄附金五百万円、合計八百万円ヲ以テ之ガ資金ニ充ツルト云フ計画デアツタノデゴザイマスル然ル所財界不況ノ影響ヲ受ケマシテ、民間ノ寄附金ガ予定ノ額ニ達シマセヌ、漸ク三百余万円ヲ集メ得タニ過ギヌノデゴザイマスル、加之一方支出ニ於キマシテハ、当初設備其他建築費ニ百万円ノ予算ヲ見積ツテ居リマシタ所ガ、物価騰貴其他ノ理由ニ依リマシテ、是亦三百五十万円ヲ要スルコトニナリマシタ、カレコレ致シマシテ理化学研究所ノ資金ニ不足ヲ来タシマシテ、若シ何等ノ他ニ経費補充ノ方法ヲ講ズ
 - 第47巻 p.200 -ページ画像 
ルニアラザレバ、折角ノ研究ヲ継続スルコトガ出来ナイト云フヤウナ状況ニ立至リマシタ、依テ政府ハ今回国庫補助年限、即チ従来十箇年デアリマシタモノヲ、十七箇年ニ延長シ、補助金額ガ従来二百万円デアリマシタモノヲ四百十五万円ニ増加スルト云フ案ヲ提出イタシマシタ、之ヲ以テ理化学研究所ノ経費ノ補充ヲ致サウト、斯ウ云フ考デゴザイマス、慎重ニ御審議クダサレマシテ御協賛ヲ与ヘラレムコトヲ願ヒマス
○上山満之進君 理化学研究所ノ創立ニ付テハ多少ノ縁故ヲ有ツテ居ル私トシテ、其成績ニ付テハ常ニ気ニ掛ツテ居ルモノデアリマス、此意味デ極ク簡単ニ……今農商務大臣ノ仰セノ通リ当初ノ御計画ハ、帝室、政府及ビ有志ノ寄付、此三ツノ方面カラ資金ガ出来ル筈デアツタ唯今仰セニナツタヤウニ不足ヲ生ズルニ至ツタ原因ハ、財界ノ不況カラ寄付金ガ思フヤウニ集ラナイ、此事ガ一ツノ大ナル点デアルカラデアリマス、其点ニ付テチヨツト伺ヒタイノデアリマスガ、新タニ寄付金ヲ申込ム人ガ、財界不況ノ為ニ多ク得ラレナカツタト云フコトデアリマスカ、ソレモアツタガ既ニ申込ンダ人ガ予定ノ通リニ約束ヲ履行シナイト云フコトモアルノデアリマスカ、往々寄付金ニハサウ云フ余リ面白カラザル現象ガ起ルヤウデアリマスガ、サウシマスト甚ダ遺憾ガ深クナル、其点ダケヲチヨツト伺ヒマス、……モウ一応申上ゲマス財界不況ノ為ニ寄付金ヲ得ルコトガ出来ナカツタ、此点ハ能ク分リマシタガ、万一既ニ約束ヲシタ寄付金ガ思フヤウニ集ラナイト云フコトモ一ツノ若シ原因デアツタナラバ、理化学研究所ハ其誠ニ向ツテ努メナケレバナラヌ、ソレハ一体ドウ云フ風ニナツテ居ルノデアリマスカト云フコトヲ……何レ約束シタ人ハ立派ナ人デアリマス、ソレガ納ラナイト云フヤウナコトハ甚ダ遺憾ヲ深クスルノデアリマス、私ハ此案ニハ何モ反対ヲスルノデモ何デモアリマセヌ、賛成ヲシタイト思フノデアリマスガ、其点ダケヲ……
  〔国務大臣荒井賢太郎君演壇ニ登ル〕
○国務大臣(荒井賢太郎君) 御答ヲ致シマス、民間ノ申込額ガ三百十六万七千円余デゴザイマス、其中実収イタシマシタ額ガ二百八十九万余円デゴザイマス、左様デアリマスカラシテ申込額ノ大部分ハ実収ニナツテ居リマスノデゴザイマス
○山脇玄君 農商務大臣ニ伺ヒマスガ、先日来行政整理ノコトニ付テ大蔵大臣ニ伺フ所ニ依ルト、既ニ設ケテアル所ノ、既設ノ理化学研究所ノ増資ヲナサル所デハナイ、又減額マデモナシテ御居デノヤウデアリマスガ、唯今此案ヲ見マスルト、ソレカラ後ニ出来タ半官半民、マア民間ノ民事業ト云フテ宜カラウト思フ、ソレヘ持ツテ行ツテ二百万円以上モ補助ヲナサルト云フコトハ、ドウモ私ハ本末軽重ヲ誤ツテ居リハセヌカト思フ、モウ既ニ設ケテアル、而モ農商務省内ニ設ケテアル大切ナル機関ニ増額ヲセヌノミナラズ減費ノ影響ヲ及ボシ、サウシテ民間ニアル所ノモノニ補助スルト云フノハ、私ハ甚ダ諒解ニ苦シムノデアリマス、此辺ノ事情ヲ御説明ヲ承リタイ
  〔国務大臣荒井賢太郎君演壇ニ登ル〕
○国務大臣(荒井賢太郎君) 御答イタシマスルガ、唯今山脇サンノ
 - 第47巻 p.201 -ページ画像 
御質問ハ、多分政府ノ工業試験所辺リニ対スル経費予算ノ関係デアラウト思ヒマス
○山脇玄君 左様デアリマス
○国務大臣(荒井賢太郎君) 工業試験所ニ対シマシテモ必要ナ経費ハ見積ツテ居リマスル、併ナガラ行政整理ノ結果多少節約スル所ハ節約イタシマシタ、ソレニ依テ工業試験所ノ事務ハ其範囲内ニ於テ矢張リ相当ニ経営シテ行ケルノデゴザイマス、然ニ理化学研究所ハ今申上ゲマシタヤウニ若シ政府ノ補助ヲ此際増額イタシマセヌト折角唯今マデ研究イタシテ居リマシタ事柄ヲ中絶シテシマハナケレバナラヌ、研究ヲ継続シテ行クコトガ出来ナイ、ト云フ状況ニ立至リマシタ、サウ致シマスルト、唯今理化学研究所デ研究イタシテ居リマスルモノハ余程良イ成績ヲ挙ゲテ居ルモノガゴザイマス、例ヘバ日本酒ノ製造方法デアリマスルトカ、是ハ米ヲ使用シマセヌデ米以外ニ於テ日本酒ノ製造ヲ致シマス、或ハ米穀ノ害虫駆除方法デアリマスルトカ、或ハ乾燥ノ方法デアリマスルトカ、有益ナル発明ニ著手ヲシマシテ、殆ド完成シカカツテ居リマスルノデスカラ、是等ノ事業ノ為ニ此支出金ヲ……補助金ヲ増加イタシマセヌト、其研究ガ完成スルコトガ出来ナイノミナラス、其他各種ノ有益ナル事業ノ研究ヲ止メナケレバナラヌト云フ結果ニ至ルノデゴザイマスルカラ、是ハ是非政府ノ補助ヲ要スル、斯ウ認メマシテ此際緊縮方針ニモ拘ラズ、是ダケノモノハ補助致シテ行キタイ、斯ウ云フ考デ此法案ヲ提出イタシタ次第デゴザイマス
○山脇玄君 唯今ノ御説明デアリマスルガ、私共モ理化学研究ヲ広クスルト云フコトハ何モ異論ハナイノデ、ケドモ私ノ遺憾ニ思フノハ、折角数年来唯今大臣モ仰セラレマシタ通リ農商務省ニアル所ノ試験所ノ働キヲサセズニ置クト云フコトハ遺憾デアル、成程研究ハシテ居ル研究ハシテ居ルガ全ク用ヲナサヌ、之レニ百万円ノ資本ヲ投ジテヤレバモウ少シ大キナ試験ヲシテ実際用ヲ為スモノガ出来ル、如何ニモ遺憾ニ存ズルノデアル、成程今研究ハ致シテ居ル、大学辺リデ学術上ノ試験ヲヤツテ居ルノト同ジヤウニ、学術上ノ試験ハヤツテ居ル、農商務省辺リニ出来テ居ル試験所ト云フモノハモツト大キナ試験ヲシテ、サウシテ直グニ用ヲ為スヤウニシナケレバナラヌ、唯学術上ノ試験ダケデ置クノハ、如何ニモ残念デアルカラ、ドウカ此際一ツ行政整理ヲシテ、其金ヲ農商務省ノ試験所ニ百万円以上ニ増シテ欲シイト云フノガ私ノ希望デアルノデアリマス、其希望ヲ充タサレヌノニ、又民間ニアル所ノモノニ補助ヲスルト云フノハ、私ハドウモ少シ本末ヲ誤ツテ居リハセヌカ、民間ノ研究ハ勿論必要デアリマス、サウシテ幸ヒ是迄ニ完成シタモノニ補助ヲスルト云フノハ双手ヲ挙ゲテ賛成スルノデアルガ、一方ニ於テ自分ノ方ヲ止メテ、サウシテ他ノ方ニ補助スルト云フノハ甚ダ遺憾ニ思フ、共倒レノヤウナ結果ニナルヤウナコトニナリマスカラ申上ゲルノデアリマス、是以上別ニ理由ヲ尚ホ拝聴スル必要ハナイノデアリマス、是デ質問ハ打切リマス
○議長(公爵徳川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗読ヲ致サセマス
  〔瀬古書記官朗読〕
 - 第47巻 p.202 -ページ画像 
 大正五年法律第十六号中改正法律案特別委員
 子爵 辻治仲君  子爵 榎本武憲君    玉利喜造君
 男爵 古市公威君 男爵 平野長祥君 男爵 斯波忠三郎君
 男爵 岩倉道倶君    三宅秀君     安田善三郎君
  ○右ハ二月二十六日貴族院ニ於ケル議事ノ速記ナリ。


〔参考〕官報 号外 大正一二年三月一一日 【議長(公爵徳川家達君)…】(DK470037k-0009)
第47巻 p.202-204 ページ画像

官報  号外 大正一二年三月一一日
○議長(公爵徳川家達君) 日程第五、大正五年法律第十六号中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一読会ノ続、委員長報告
  〔左ノ報告書ハ朗読ヲ経サルモ参照ノタメ玆ニ載録ス、以下之ニ傚フ〕
    大正五年法律第十六号中改正法律案
 右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十二年三月七日
               右特別委員長
                  男爵 古市公威
    貴族院議長 公爵 徳川家達殿
  〔男爵古市公威君演壇ニ登ル〕
○男爵古市公威君 大正五年法律第十六号中改正法律案ノ特別委員会ハ本月三日ト七日ト両度ニ開キマシテ、審査ノ結果出席委員ノ全会一致ヲ以テ本案ヲ可決スベキモノト議決イタシマシタ、提出ノ理由ハ農商務大臣ノ説明ニ依テ諸君御承知ノコトデアリマスガ、要スルニ研究所当初ノ計画ニ齟齬ヲ生ジマシタ、一方収入ニ於テ資金ノ募集ガ意ノ如クナリマセヌノデ約二百万円ノ予算ニ比シテノ欠陥ヲ生ジ、又一方支出ノ方デハ物価ノ騰貴ニ依テ是亦二百数万円ノ予算ニ比シテノ超過ヲ生ジマシタ、尤モ総テ物価騰貴トハ申サレマセヌ、例ヘバ敷地ノ如キハ当初官有地ヲ借用スル考デアリマシタ、現在ノ敷地ハ四十何万円カデ購買スルニ至ツタヤウナ始末デ、予算ニ狂ヒヲ生ジタコトモアリマス、右ノ次第デアリマスカラ、既ニ昨年度即チ十年度ニ於テ資金トシテ保存イタシタ金額カラ経常費ヲ補ツテ居ルヤウナ次第デアリマス此儘ニ継続イタシマスト、四、五年ノ中ニ資金ヲ皆消費シテ仕舞ハナケレバナラヌ、即チ研究所ノ自滅デアリマス、是ハ重大ナ事柄デ、各国ニ於テモ、殊ニ此欧洲大戦以後競フテ理化学ノ研究ニ熱心シテ居ル場合、此研究所ガ衰微スル、次第ニ依ツテハ自滅スルヤウナコトガアツテハ一大事デアリマス、研究所ハ設立以来五、六年ニ過ギマセヌガ既ニ見ルベキ成績ヲ挙ゲテ居ルノハ御聞キ及ビノコトト存ジマス、頗ル将来有望デアル場合デアリマスカラ、何トカシテ是ヲ救済セネバナラヌト云フコトハ、是ハ誰モ考ヘル、然ラバ更ニ資金ヲ得ル手段ハアルカト云フト、今日ノ財界ノ状況デハ迚モ望ムベカラザルコトデアル玆ニ於テ政府ガ断然意ヲ決シテ、国庫ノ補助ヲ増加スルト云フコトニナリマシタノデアリマスカラ、是ハ最モ時宜ニ適シタ処分トシテ、大イニ賞讚シテ宜シイト考ヘルノデアリマス、偖テ案ニ依リマスト、二百十五万円ヲ増加スル、サウシテドウナルノカト申シマスルト、既ニ決定シテ居ル国庫補助ニ之ヲ加ヘマシテ、大正十二年度カラ二十一年
 - 第47巻 p.203 -ページ画像 
度マデノ十ケ年ノ間毎年二十五万円宛ノ資金ヲ研究所ガ得ルコトニナル、補助ヲ……ソレニ今二百万円ホドノ資金ガ残ツテ居リマス、是ガ約七分ニ廻ツテ居リマスカラ、是デ十四、五万円ヲ得ラレル、両方合セテ約四十万円ノ金額ガ得ラレル、大正十一年度ノ経常費ノ予算ハ四十万円デアリマス、先ヅ其金額ハソレデ得ラレル、此四十万円ト云フ金額ニ付テモチヨツト申上ゲテ置イテ宜カラウト思フコトハ、最初ノ計画デハ確カ資金カラ三十五、六万円ノ利息ヲ一年ニ得ル計画ニナツテ居リマスガ、ソレヲ経常費ニ当分充テルト云フ考デアツタノデアリマスガ、其当初ノ三十五、六万円ノ計画ニ比スルト云フト、四十万円ト云フ金ハマダ少ナウゴザイマス、今日ノ物価カラ考ヘテ……先ヅ是デ計画ヲ立テル、尤モ此外ニ既ニ研究所ニ於テ発明イタシマシタモノカラ収益ガアリマス、是ガ今日ノ所デハ約二万何千円カホド一年ニアル、是ハ遠カラヌ将来ニ十万円ニハ達スル見込デアル、サウ致シマスト五十万円ト云フ金額ニナルノデアリマス、而シテソレデ大正二十一年度マデ行ク、後ハドウナルカ、後ハマダ此案デハ何モ極ツテ居ラヌ従ツテ此案ハ百年ノ計デハナイ、其ノ先ハ未必ノコトデアリマスガ、今カラ十年ノ中ニ於テ、今日マデノ理化学研究所ノ成績カラ推シテ見ルノニ、必ズヤ又相当ノ成績ヲ挙ゲテ、此有益ナルコトヲ益々世ノ中デ知ルヤウニナルダラウ、又一般ノ状況モ何時マデモ今日ノヤウナ、状態デ居ルモノモアルマイ、然ラバ他ニ資金ヲ得ル手段モアルダラウ斯ウ云フ考デアルノデ、未知数ノコトデ勿論アリマスルガ委員会ニ於テハ、先ヅ今日ノ処分トシテ、此急ヲ救フ、此辺ガ此程デ然ルベキモノト認メテ可決イタシタノデゴザイマス、尚ホ附加ヘテ申シマスレバ或委員カラ、元来、此理化学研究所ハ、公益法人デ基礎的ノ研究ヲセネバナラヌ、ダカラ妄リニ収益ヲ目的トシテ、而シテ応用ニ没頭スルヤウナコトガアツテハ、宜シクアルマイト云フ考ヘガアリマシテ、ソレニ対シテ、政府ハ勿論其考デアルト答ヘマシタ、ソレカラ一ツ希望トシテ、何分此研究所ガ相当ノ成績ヲ挙ゲルノニハ、人ガ必要デアル研究員ガ必要デアル、今日ハ専任ノ研究員ガ九人、兼任ノ研究員ガ十五人デアリマス、合セテ二十四人、兼任ニハ大学ノ教授ナドガ居マスモツト専任ノ研究員ガ欲シイデハナイカト云フ説ガアリマシテ、ソレニ対シテ政府ノ答ハ勿論サウデアリマスカラ、今度ノ予算ニハ専任研究員ハ約十五人ヲ置ク積リデ計算シテ居ル、併シ又委員会ノ論デ、十分ニ安心シテ研究ニ従事スル為ニハ相当ノ待遇ヲ厚クセネバナラヌ、其点ハ如何デアルカト云フニ対シテハ、研究員ノ俸給ハ月額百円乃至五百円、其範囲ニ於テ出来ルダケ厚クスル考デアル、委員会ハ其辺ニ注意ヲ加ヘテ、十分研究ノ目的ヲ達スルヤウニ、政府ニ於テモ注意スルコトヲ希望スルト云フ希望ガアリマシテ、ソレデ前申シタ通リニ、本案ハ可決イタシマシタ、右御報告ニ及ビマスル、委員会ノ決議ノ通リニ本案ノ成立スルコトヲ希望イタシマス
○議長(公爵徳川家達君) 本案ノ第二読会ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス
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○子爵西大路吉光君 直チニ第二読会ヲ開カレンコトヲ希望イタシマス
○子爵藪篤麿君 賛成
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ本案ノ第二読会ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス、全部ヲ問題ニ供シマス、原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス
○子爵西大路吉光君 直チニ第三読会ヲ開カレンコトヲ希望イタシマス
○子爵藪篤麿君 賛成
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ本案ノ第三読会ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス、第二読会ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認メマス
  ○右ハ三月十日貴族院ニ於ケル議事ノ速記ナリ。
  ○右補助金増額ニ関シ元農商務省商工局勤務柴山雄三ノ本資料編纂室宛書信次ノ如シ。(昭和十二年七月二十七日受信)
   理研資金増額要請ニ関シ御尋ネノ処、小生手許ニハ何等確タル資料存在不致候、小生ノ記憶ニテハ、政府ニ対シ増額申請書ヲ提出セラレタル様承知致居候、理研ノ創設並ニ保育ニ付キテハ渋沢先生ニハ一方ナラヌ御辛労ヲ煩ハシ候○下略
   右ニ拠レバ申請書ハ提出セラレタルモノノ如シ。
  ○右ニ関スル商工省所蔵書類ハ関東大震火災ニヨリテ焼失セリトイフ。(水谷清談)