デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
8款 財団法人理化学研究所
■綱文

第47巻 p.211-215(DK470041k) ページ画像

大正13年6月14日(1924年)

是日栄一、日本工業倶楽部ニ於ケル当研究所理事会ニ出席、次イデ開カレタル評議員会ニ於テ、農業ニ関スル研究ヲナスベキ旨提議ス。


■資料

集会日時通知表 大正一三年(DK470041k-0001)
第47巻 p.211 ページ画像

集会日時通知表  大正一三年       (渋沢子爵家所蔵)
六月十四日 土 午前十時半 理化学研究所理事会
                       (工業倶楽部)
        引続    同所 評議員会


理化学研究所書類(一)(DK470041k-0002)
第47巻 p.211-212 ページ画像

理化学研究所書類(一)          (渋沢子爵家所蔵)
    第五十回理事会議事要録
一、日時及場所 大正十三年六月十四日午前十時半日本工業倶楽部ニ開会、十一時閉会
一、出席 大河内・渋沢・大橋・高松・団・塩原・森村各理事、山川・古市両顧問
 - 第47巻 p.212 -ページ画像 
一、決議事項
  (イ)三土農商務次官ヲ評議員並ニ理事ニ推薦スルコト
  (ロ)大河内理事来ル九月三十日任期満了ニ付再選スルコト
  (ハ)職員ニ対スル大正十三年上半期賞与又ハ手当ハ前期ニ準シ適当ニ支給スルコト
                          以上
               議長 工学博士 子爵 大河内正敏
               理事 子爵 渋沢栄一
               理事 工学博士 高松豊吉


評議員会決議録 自大正十一年一月 至大正十五年十二月(DK470041k-0003)
第47巻 p.212 ページ画像

評議員会決議録  自大正十一年一月 至大正十五年十二月 (財団法人理化学研究所所蔵)
    大正十三年六月定期評議員会議事要録
一、日時及場所 大正十三年六月十四日午前十一時日本工業倶楽部ニ開会、正午閉会
一、出席  渋沢・大河内・大橋・田中(栄)・高松・団・大日本人造肥料会社・根津・長井・植村・小野・藤原・藤山・渋沢・塩原・森村・末延各評議員 山川・古市両顧問
      此外他ノ評議員ヲ以テ代理人ト為ス旨通知セシ者二十三名
一、報告事項
  ○(イ)(ロ)(ハ)略ス。
一、決議事項
 (イ)大正十二年度決算報告原案承認
 (ロ)大河内理事来ル九月三十日任期満了ニ付再選スルコト
 (ハ)三土農商務次官ヲ評議員並ニ理事ニ推薦スルコト
一、農業ニ関スル研究ノ件
 渋沢子爵ヨリ、目下邦家ノ現状ハ農業ニ関スル研究ノ忽ニスベカラサルモノアルヲ以テ、当所ニ於テモ此種ノ研究ニ必要ナル相当ノ施設ヲ希望スル旨陳述セラルヽ所アリシカ、大河内所長ハ、本件ハ渋沢子爵ト同感ニシテ、目下右ニ関スル意見書起草中ニシテ、既ニ肥料ノ製造、蛹油ノ利用法等農業ニ関スル数種ノ研究ニ着手セル旨説明セラルヽ所アリタリ
                        以上
           議長 子 爵     渋沢栄一(印)
           評議員 工学博士子爵 大河内正敏(印)
           評議員 工学博士   高松豊吉(印)


理化学研究所書類(一)(DK470041k-0004)
第47巻 p.212-213 ページ画像

理化学研究所書類(一)           (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    大正十三年六月定期評議員会 六月十四日午前十一時 日本工業倶楽部ニ於テ
      報告
一、研究状況
 燐酸肥料・クラリツト(濾水剤)・ウルトラジン(濾光用)
      議題
 - 第47巻 p.213 -ページ画像 
一、大正十二年度決算報告
一、大河内理事任期来ル九月三十日満了ニ付改選ノ件
(別筆)
 渋沢子爵ヨリ「吾邦農業ノ不振甚シク大ニ憂慮スル所ナリ、其原因ハ、要スルニ農業ニ対シ進歩シタル科学ノ応用無キ為メ、利益少ク従テ不振ヲ来セルニ付、化学又ハ物理ノ研究ニヨリ農業ノ振興ヲ計リ度」旨申出ラレ、大河内所長モ大ニ共鳴シ、同氏モ同様ノ意見ヲ兼テ抱キ発表セントシテ起草中ナル由談話セラレタル趣ナリ


理化学研究所書類(一)(DK470041k-0005)
第47巻 p.213-214 ページ画像

理化学研究所書類(一)         (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    農村振興ニ関スル科学的施設予算概算
臨時建設費       一、五二〇、〇〇〇
   一土地購入費     五〇〇、〇〇〇
     東京市ヨリ汽車又ハ電車ニテ一時間以内ニ到着シ得ヘキ地方ニテ約五万坪(坪十円)ヲ購入シ、試験農場・動物舎等ノ敷地ニ充ツルモノトス
   一建築費       五一〇、〇〇〇
     理研構内ニ研究室トシテ鉄筋コンクリート三階建延千二百坪(坪三百円)ヲ建築シ、又新ニ購入シタル土地ニ試験室動物舎・所宅・農夫舎等ニ充ツル為鉄骨バラツク木造建物等約一千坪(坪百五十円)ヲ建築スルモノトス
   一設備費       五一〇、〇〇〇
     研究用器具機械各種、交直流発電機・同配線・排気・暖房排給水・瓦斯・圧搾空気其他什器等設備
経常費          三四九、二〇〇
   一研究費      一七三、八〇〇
     俸給及諸給   一〇〇、八〇〇
      十研究室、一室平均八人、一人平均月額百五円
     事業費      七二、〇〇〇
      研究用諸材料、薬品・電気・瓦斯・燃料、旅費等一人一ケ月平均七十五円ノ割合
     雑費        一、〇〇〇
   一試験費      一五八、〇〇〇
     俸給及諸給    三八、四〇〇
      技師以下傭人等四十人、一人月額八十円
     事業費      五七、六〇〇
      試験用諸材料、薬品・電気・瓦斯・水道・燃料、旅費等一人一ケ月平均百二十円ノ割合
     機械費      六〇、〇〇〇
      試験装置及諸機械類
     雑費        二、〇〇〇
   一事務費       一七、四〇〇
     俸給及諸給    一一、七六〇
      庶務会計ニ従事スル書記以下四名、其他雑役ニ従事スル
 - 第47巻 p.214 -ページ画像 
傭人等十名、一人月額平均七十円
     事務費 四、六四〇
      諸消耗品・雑品・通信・印刷・営繕等
     雑費 一、〇〇〇
  ○右予算概算ハ作成セラレシモ其後ノ役員会ニモ提案セラレズ、其ノ実現ヲ見ズ。栄一ノ農村振興策ト大河内所長ノ意見トハ根本ニ於テ相違シ、大河内所長ノ唱フル所ハ、ソノ研究ニカカル小型内燃機関ヲ農村ニ於テ諸原動力トシテ応用セントスルニアリ。(水谷清談)



〔参考〕(水谷清)書翰 蓮沼宛 (大正一三年)八月一四日(DK470041k-0006)
第47巻 p.214 ページ画像

(水谷清)書翰  蓮沼宛 (大正一三年)八月一四日
                    (渋沢子爵家所蔵)
拝啓 昨今の暑さは格別ひどいです、理研事務所では昨日九十三度まで上りました
閣下初め御一同様には御変りありませんか、御見舞申上升、却説一昨日増田さんから御電話がありまして、大河内子の政務官問題に関し閣下よりの御伝言を拝誦致しました、大河内子は前内閣の時には農相に今回は政務次官に推挙された事は事実です、而も理研六分に次官四分の兼務でよいとの交渉であつたさうです、併し幸に大河内子は辞退されました、或は研究会との従来のいきさつから辞退されたとも云ふ人もありますが、内閣より理研の方か面白い、即ち理研の業務は大切であると云ふ平常からの御信念に由て辞退された事と小生は信します、何卒閣下に御安神下さるやう申し上て下さい
併し小生は前回も今回も若し大河内子が入閣せられさるへからざるやうな事となれは、已むを得ませんから其節は
 一、理研所長在職の儘たる事
 二、理研基金を尠くとも壱千万円以上に増加する事
の二条件を附し御承諾を願ふ積りてありました
当年理研は上下水道の掃除修繕其他震災に由る諸被害復旧の為八月一日より十五日迄一般研究室は休暇となりました、此休暇中に処理すへき事項は非常に多く、暑さも忘れて小生は元気に働て居ます、御収慮下さい、御大切に
  八月十四日                  水谷
    蓮沼様
  ○右書翰中「先生ノ御伝言」トアルハ、新聞紙上ニ現レタル大河内所長ノ政務官問題ニツキ、成ル可ク理研所長ノ異動ガナイヤウニトノ栄一ノ伝言ノ事ナリ。(水谷清談)



〔参考〕渋沢栄一書翰控 水谷清宛 (大正一三年)八月一六日(DK470041k-0007)
第47巻 p.214-215 ページ画像

渋沢栄一書翰控  水谷清宛 (大正一三年)八月一六日  (渋沢子爵家所蔵)
拝啓
爾来益々御清適奉賀候、然者過日東京の二・三新聞紙に大河内子爵に対し政務次官之勧誘激甚之趣散見いたし候ニ付、万一にも事実と相成候はゝ折角盛況に進展致居候理化学研究所の将来如何あらん乎と、殆ント安き心も無之に付、直接に申上候も如何にも欠礼と相考へ、貴下へ余所なから伝言致し、実況承合候処、子爵之決心ハ老生等之顧慮を
 - 第47巻 p.215 -ページ画像 
要する迄も無之、即時御断被成下候由、且貴状によれば、其前に於て農相の御就任をも既に御辞退相成候趣、実に堅牢之御意志と只々感歎敬服之外無之候、兎角目前之顕栄に眩惑して自己の本能と国家社会に尽すべき天職とを忘れて虚名に競奔するの今日に於て、此剛健質実之行動あるは真に近来の痛快事と、老生之欣喜譬ふるに物なき事に御座候、右子爵へ陳上候ハ却て失敬と存候ニ付、一書貴下にまて申進候、自然好機会も有之候はゝ老生乃心事御申上置被下度候、右可得貴意如斯御座候 敬具
 尚々本月十四日附蓮沼生へ御送附之御手教一覧、事実正確に承知いたし候ニ付、即此書状貴下へ進呈仕候儀に候也
  八月十六日               渋沢栄一
    水谷賢契
       貴下



〔参考〕(水谷清)書翰 渋沢栄一宛大正一三年八月二一日(DK470041k-0008)
第47巻 p.215 ページ画像

(水谷清)書翰  渋沢栄一宛大正一三年八月二一日
                     (渋沢子爵家所蔵)
拝啓 残暑之砌に御座候処益御健勝被為入大慶至極に奉存候
偖て過日は大河内所長の御一身上に関し御尊書を賜はり難有拝見仕候右は其儘所長の兌覧に供し申候処、所長は
老子爵に御心配相掛け済まなかつたと仰せられ候、予て御耳に達し申候通り、所長は就職以来日曜日をも廃し所長としての職務は勿論、御自身の研究に従事せられ其精励実に驚くの外無御座、蓋し理研の使命は国の政治よりも国家社会之為緊急なるものと信せられたる結果に候ハヽ今後と雖も決して軽卒に進退せらるゝ事は無御座候間、何卒御安意被成下度候、先は御挨拶旁右申上度如此ニ御座候 敬具
  大正十三年八月二十一日          水谷清
    渋沢子爵閣下