デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
11款 日下奨学財団法人
■綱文

第47巻 p.296-309(DK470072k) ページ画像

大正13年6月(1924年)

是月、故日下義雄ノ遺志ニ基キ当財団法人設立セラル。栄一ソノ寄付行為第四章第九条ニ依リ理事及ビ評議員ニ任ジ、在任歿年ニ及ブ。


■資料

日下義雄伝 同伝記編纂所編 第三七三―三八九頁昭和三年三月刊(DK470072k-0001)
第47巻 p.296-302 ページ画像

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日下義雄伝 同伝記編纂所編 前付・第四―六頁昭和三年三月刊 【序 伯爵牧野伸顕】(DK470072k-0002)
第47巻 p.302 ページ画像

日下義雄伝 同伝記編纂所編  前付・第四―六頁昭和三年三月刊
    序
○上略最後に述べて、永く記念せんとするは、君の遺言書なり。君素と継嗣なし。其の病篤きに当り、近親故旧、皆家督の相続と遺産の処分とに関して、君の意衷を知らんことを冀へり。而も君独り黙焉として世を去れり。遺族諸氏亦之を奈何ともすべからず、日夕講究して休まざるの際、偶々第一銀行法律顧問法学博士高根義人君の保管書類中より、十数年前、君の外遊に臨みて作り置く所の遺言書一通を獲、玆に始めて君の真意を知ることを得たり。遺言内容の如きは、伝記中明炳にする所あり。而して予の言はんとするの一事は、君が遺産の大部分を挙げて、育英事業に投じ、之を東京帝国大学に寄附せんことを記するの他、復た一語の相続者に言及するものなかりしこと是なり。此の遺言書や、十数年前の作製に繋り、之が内容は勿論、其の存在すら、曾て漏らす所なく、君の世に在る間、洞然として相忘れたるものに似たり。然れども窃に謂ふに、後事を託するは人情然る所なり。況んや鉅万の富を擁して、児孫の継ぐべき者なき君の身上に於てをや。且君が生前に於て、東京帝国大学と相関係する所ありしを聞かず。而も遺書の中、之を寄捐すべきを記して、却て相続に触るゝ所無きに見て、君が学問育英のことを好むの素心と、君の高絜厲清なる心事と、寔に落々たる大星の如きものあるを覚ゆ。於戯、此一事を以てして、君の為人を察すべし。乃ち之を以て叙と為す。
  昭和二年十二月
                   伯爵牧野伸顕


日下奨学財団法人書類(DK470072k-0003)
第47巻 p.302-304 ページ画像

日下奨学財団法人書類           (渋沢子爵家所蔵)
    日下奨学財団法人寄附行為
      第一章 名称及事務所
第一条 本財団法人ハ之ヲ日下奨学財団法人ト称ス
第二条 本財団事務所ハ之ヲ東京市日本橋区兜町一番地株式会社第一銀行内ニ置ク
 - 第47巻 p.303 -ページ画像 
      第二章 目的及事業
第三条 本財団ハ経済学ノ普及発達並ニ優秀ナル経済学者ノ養成ヲ図ルヲ目的トス
第四条 本財団ハ前条ノ目的ヲ達スル為メ左ノ事業ヲ行フ
 一、東京帝国大学ニ於テ経済学科ニ関シ同大学ノ認ムル講座ヲ設クル為メ、又ハ特ニ講座ヲ設ケスシテ時々同総長ノ必要又ハ有益ト認ムル講座ヲ開ク為メニ、其費用ヲ支出スルコト
 二、帝国大学卒業生ニシテ経済学科ニ関シ特別ノ研究ヲ為サントスル有望ノ士ニ若干ノ費用ヲ給スルコト
 三、帝国大学卒業生ニシテ経済学科ニ関スル研究ヲ為シ学者トシテ一生ヲ送ラントスル有望ノ士アラバ、之ヲ海外ニ留学セシメ又ハ研究ノ為メ旅行スル費用ヲ支給スルコト
 四、経済学ニ関スル問題ニ付キ有益ナル論文ヲ募集シ、其懸賞ヲ為スコト
 五、其他評議員会ニ於テ本財団ノ目的ヲ達スルニ必要ト認メタル事項
      第三章 資産及会計
第五条 本財団ノ資産ハ故日下義雄遺贈ノ別紙目録ノ財産及設立後贈与・遺贈其他ニヨリ取得スル財産ヨリ成立ス
第六条 本財団ノ事業年度ハ毎年四月一日ヲ以テ始メ翌年三月三十一日ヲ以テ終ル(但初年度ハ設立許可ノ日ヲ以テ始ム)
 本財団ノ支出スヘキ金額ハ前年度末現存財産ノ利子ヲ限度トシ、評議員会ノ決議ヲ得テ之ヲ定ム、但第八条ニ定ムル特別基金ノ利子ハ之ヲ除ク
第七条 本財団ノ設立当時現存スル財産ハ之ヲ換価シ、公債証書ヲ買入レ、其保管ヲ第一銀行ニ託スルモノトス
 所有公債証書償還ヲ受ケタル場合ニハ更ニ他ノ公債証書ヲ買入ルルモノトス
第八条 本財団設立当時現存スル資産ノ参分ノ壱ヲ以テ特別基金トナシ、複利ノ方法ニ依リ其利子ヲ以テ公債証書ヲ買入レ、五十箇年間之ヲ積立ツルモノトス
 前項ノ特別基金ハ五十箇年経過ノ後普通資産ニ組入ルモノトス
      第四章 役員
第九条 本財団ノ理事ハ五名トシ、左記ノ人々ニ嘱託スルモノトス
  一、東京帝国大学総長
  二、第一銀行頭取
  三、第一銀行取締役壱名
  四、渋沢子爵家ノ当主
  五、以上四氏ニ於テ適当ト認メタル東京市在住ノ法学博士壱名
 前項第一号乃至第三号ニ定ムル理事ニシテ其職ヲ去リタルトキハ其後任者ニ嘱託スルモノトス
第十条 本財団ニ評議員ヲ置ク、理事ハ当然評議員タルモノトス、評議員ノ員数ハ理事ニシテ評議員タルモノヲ合セテ拾名トス
第十一条 評議員ニ欠員ヲ生シタルトキハ残任評議員ニ於テ其後任者
 - 第47巻 p.304 -ページ画像 
ヲ定ム
第十二条 理事ハ本財団ノ事務ヲ執行シ、毎事業年度ノ終ニ於テ評議員会ニ前年度ノ事務報告ヲ為ス
第十三条 評議員会ハ毎事業年度ノ終ニ於テ理事之ヲ招集ス、但必要アルトキハ臨時之ヲ招集スルコトヲ得
 評議員二名以上ノ請求アルトキハ評議員会ヲ招集スルモノトス
 評議員会ノ決議ハ其投票ノ過半数ニ依ル
      第五章 附則
第十四条 本寄附行為ハ評議員四分ノ参以上ノ同意ヲ得且主務官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ変更スルコトヲ得ス
 本財団設立ノ際ニ於ケル理事及評議員左ノ如シ
              東京帝国大学総長
            評議員及理事    古在由直
              株式会社第一銀行頭取
            同         佐々木勇之助
              株式会社第一銀行取締役
            同         石井健吾
            同       子爵渋沢栄一
            同         高根義人
            評議員     子爵牧野伸顕
            同       男爵山川健次郎
            同       男爵阪谷芳郎
            同         山崎覚次郎
            同         杉田富
  大正拾参年六月一日
             右寄附行為者
               故日下義雄遺言執行者
                      高根義人


青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第二二頁 昭和六年一二月(DK470072k-0004)
第47巻 p.304 ページ画像

青淵先生職任年表(未定稿)昭和六年十二月調 竜門社編
             竜門雑誌第五一九号別刷・第二二頁昭和六年一二月
    大正年代
 年月
一三  六 ―日下奨学財団法人評議員・理事――昭和六、一一。


日下奨学財団法人書類(DK470072k-0005)
第47巻 p.304-305 ページ画像

日下奨学財団法人書類          (渋沢子爵家所蔵)
拝啓 愈御清祥奉賀候、陳ハ日下奨学財団法人設立許可相成候ニ付テハ、規定ニヨリ登記ヲ要シ、且登記申請ハ理事全員ヨリ之ヲ為スコトニ相成居リ候間、御手数乍ラ別紙委任状御調印ノ上、同封々筒ニテ折返シ御送付被成下度願上候
右不取敢御依頼迄如斯ニ御座候 敬具
  大正十三年八月二十二日         高根義人
    子爵渋沢栄一殿
(別紙控)
 - 第47巻 p.305 -ページ画像 
    委任状
拙者儀     ヲ以テ代理人トシ、左ノ権限ヲ委任ス
一日下奨学財団法人設人登記《(立)》ヲ管轄区裁判所ニ申請スルニ必要ナル一切ノ行為
右代理委任状仍テ如件
  大正十三年 月 日
                    渋沢栄一


日下奨学財団法人書類(DK470072k-0006)
第47巻 p.305 ページ画像

日下奨学財団法人書類           (渋沢子爵家所蔵)
               (別筆朱書)
               大正十三年九月四日、高根義人氏
拝啓 先般来御配慮を煩したる日下義雄氏遺言執行の件着々実行致し已に遺贈を受けたる人々への分配ハ結了致し、此上ハ日下家財産と日下法人の財産との実際ノ分割並に日下家憲に本き実際の処置等を為すべき順序に相成り居り候、未だ其他に未決の事項も有之候へ共、近き将来に結了可致候、尚ほ同氏遺言書第八項の実行に就てハ兼て御決議を請ひたる実行具体案に従ひ、別紙の通り竜門社へ寄附手続相運ひ申候間、何卒御承知置被下度願上候
余は拝謁の上可申上候へ共、不取敢右以書中得貴意申候 敬具
  九月四日
                     高根義人
    渋沢子爵
       閣下
  ○別紙ニツイテハ次掲参照。


日下奨学財団法人書類(DK470072k-0007)
第47巻 p.305 ページ画像

日下奨学財団法人書類           (渋沢子爵家所蔵)
拝啓 時下益々御清祥奉賀候、陳者故日下義雄氏遺言書第八項ニ
 井上侯爵及渋沢男爵万歳ノ後其墓前ニ各一対ノ灯籠ヲ供シ、余カ生前ニ於テ侯男ニ対シ有セシ感謝ノ意ヲ表シ、其費用トシテ各金五百円ヲ支出セラレタキ事
ト有之候処、渋沢子爵ニ先チ日下氏死去セシ次第ニ付キ、故人ノ趣意ヲ斟酌シ、今般同子爵ノ創立セラレタル貴社ヘ金壱千円ヲ寄附仕度、同封第一銀行小切手ヲ以テ御送付申上候間、何卒御受納被成下度願上候 敬具
  大正拾参年九月八日
             故日下義雄遺言執行者
                      高根義人
  竜門社理事長
    男爵阪谷芳郎殿


日下奨学財団法人書類(DK470072k-0008)
第47巻 p.305-306 ページ画像

日下奨学財団法人書類           (渋沢子爵家所蔵)
                 (別筆朱書)
                  大正十四年十二月廿九日
                  高根義人氏来状
拝啓 年内余日なく定めし公私御多忙之御事と拝察致し候、本年ハ多少御不例ニ被為在候ひしも速々御快復に相成、相変らす公共之為に御
 - 第47巻 p.306 -ページ画像 
尽力被為在候御事、何時なから感佩に不堪次第に御座候、小生も本年ハ数回風邪ニ罹り充分之活動も仕らす、殊に十月果降風邪之結果耳疾《(マヽ)》を生し静養を強られ、其為め竜門社の図書館捧呈式及び同社総会並ニ養育院の除幕式等にも陪するを得す遺憾此事ニ奉存候、今は快方にハ候へとも全治に不至、明年ハ健康を回復して旧に仍り微力なから公私の事務に鞅掌仕度心組をり候、日下遺言施行も有価証券等の換価処分も大略結了し精算を遂け候処、預定之如く日下達子殿の財産としてハ有価証券・現金及土地にて参拾余万円に達し、日下奨学財団の財産も約弐拾壱万円有之候、外ニ東京帝国大学へ寄附すへき土地四千五百坪(此価格ハ一坪五拾円と評価致しあれとも金八拾円以上に処分致し度存し候、左すれハ約参拾五六万円を寄附し得る事と相成可申候)尚ほ日下達子殿及財団の有価証券の換価も昨年初に実行せずして時機を見計ひ処分したる為め、各三四万円余よりの収得を得て好都合に相運ひ申し候、是にて日下家の財産も家憲に従ひ管理之本手続を実行し、法人の事業も相始め度存し居り候へとも、小生に於て前顕の如く静養を要する始末に候へバ、明年早々詳細御報告申上け、夫々着手可仕心組ニ有之候、年末ニ際し御挨拶旁々右申上候 敬具
  大正拾四年十二月廿九日
                     高根義人
    子爵渋沢栄一殿
          閣下


日下奨学財団法人書類(DK470072k-0009)
第47巻 p.306-307 ページ画像

日下奨学財団法人書類           (渋沢子爵家所蔵)
            (別筆)
            昭和三年七月五日飛鳥山邸ニ於テ
            子爵ニ大要申上済
拝啓 時下益御清祥奉賀候、陳者故日下義雄氏の遺言に依り遺言執行者たる拙者に於て寄附行為者と為り日下義雄奨学財団法人を設立致し文部省の認可を受け候に就ては、直に事業に着手すべきの処、種々の事情に因り遺言執行も未た完了に至らざる上に、拙者に於て不幸病気に罹り静養致し居り、旁其運に至らずして今日に及び候、然し遺言執行も近く終結致すべく候へば、其上にて御評議を仰き法人の事業も着着進行致させ度存候、玆に別紙報告書相呈し、同財団の現況貴覧に供し候、右に依れば、最初評定価格十六万六千四百三十五円八十銭の有価証券を資産として設立したる処、昭和二年十二月末日現在にては二十四万三千四百五円八十二銭と相成り、七万六千九百七十円二銭の増加を示し候、資産は総て公債にて保存すへきことに候へは、適当の時機に換価いたし、御評議を請ひたる上、定款に従ひ基金と利用資産との区別を建て申度存居候、尚ほ法人の資産たる有価証券及現金は定款に従ひ株式会社第一銀行に寄託し有之候
右御報告申上度如斯御座候 敬具
  昭和三年三月 日
        日下義雄奨学財団寄附行為者
           日下義雄遺言執行者
                    高根義人(印)
 - 第47巻 p.307 -ページ画像 
    評議員理事 子爵渋沢栄一殿
  ○別紙略ス。



〔参考〕日下義雄伝 同伝記編纂所編 第三三二―三三九頁昭和三年三月刊(DK470072k-0010)
第47巻 p.307-309 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。