デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
12款 其他 12. 財団法人真鍋奨学財団
■綱文

第47巻 p.363-366(DK470088k) ページ画像

昭和2年8月(1927年)

是ヨリ先、東京帝国大学医学部教授真鍋嘉一郎ノ功績ヲ記念スルタメ、奨学資金設定ノ議起リ、是年六月、之ガ募集ヲ開始ス。是月栄一、金千円ヲ寄付ス。


■資料

寄附金依頼ニ関スル来書 【(印刷物) 真鍋先生奨学資金募集趣意書】(DK470088k-0001)
第47巻 p.363-364 ページ画像

寄附金依頼ニ関スル来書          (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
    真鍋先生奨学資金募集趣意書
我々の尊敬する真鍋嘉一郎氏が臨床医家として常に研究に熱心なるは門外漢ながら我々が感服して措かない所である。されば優秀なる後進研究者が氏の周囲に集まれることは、氏が一講師として久原房之助氏の寄附になれる物理治療所に立籠りたる時代に於ても、我々の実見した所であります。今や守節十年の苦労が漸く酬ひられて、内科物理療法学講座は新設されて、我が真鍋君は教授に任せられ、其講座を担任せらるゝことになりました。今後俊秀なる研究者が君の教室に多数集まるに至ることは想ひやられます。然るにそれら青年医学者をして安心して研究に従事せしめんとせば、研究資金の必要を切に感ずる次第であります。不肖等は大方諸君の御賛同を得て、玆に将学資金を募集して真鍋教授の下にある有為な研究者が安堵して医学医術の進歩に努力せられるやうにしたいと存じます。資金は多ければ多いだけ研究に益するのでありますから、後進の誘掖に熱心なる我が真鍋致授の為め、否俊秀なる少壮医学者の為め、将た我が医学の為め、奮つて寄附せられんことを御願い致します。
 (附記)
  一、寄附金御申込は同封の別紙申込書を用ひて下さい。
  二、寄附金は一時払を希望致しますが、数回払にても、将た又予約払として年六朱の利子を支払はるゝことも、御都合次第であります。
  三、寄附金は東京丸ノ内日本興行銀行真鍋先生奨学資金勘定へ御振込を願ひます。
  四、右銀行より入金の通知あり次第当事務所より受領証を御届けします。
  五、寄附金申込は昭和二年七月末日までに願ひます。
  六、寄附金の総額は、多々益々弁ずる次第でありますが、年々、壱万五千円を支出するを得たく、最少限度年三千円をと存じます。
  七、寄附金の集りたる上は、其使途や管理法等は世話人に於て協議して極めたいと存じますが、財団法人として確実に取扱ふのがよいかと存じ、別紙草案を作製して見ました。
                           以上
 - 第47巻 p.364 -ページ画像 
  昭和二年六月
      真鍋先生奨学資金募集世話人(イロハ順)
                     井上匡四郎
                     岩波茂雄
              ○以下三六名、氏名略ス。
追而今日迄既に寄附御申込の各位は別紙の通りに御座候
  ○別紙三通略ス。


真鍋奨学資金領収書類(DK470088k-0002)
第47巻 p.364 ページ画像

真鍋奨学資金領収書類          (渋沢子爵家所蔵)
    真鍋先生奨学資金寄附御申込請書
一金壱阡円也   一時払
右真鍋先生奨学資金トシテ寄附御申込相成難有御請仕候也
 追而
  右御寄附金ハ東京丸の内日本興業銀行真鍋先生奨学資金勘定ヘ御振込ヲ願ヒマス
  昭和弐年八月六日
          真鍋先生奨学資金募集事務世話人
                  藤原英三郎
                  代石井道也(印)
    渋沢栄一殿


真鍋奨学資金領収書類(DK470088k-0003)
第47巻 p.364 ページ画像

真鍋奨学資金領収書類         (渋沢子爵家所蔵)
拝啓 酷暑の砌愈御清穆奉大賀候
陳者真鍋先生奨学資金募集に関しては今回多大の御助力を賜り候段難有奉深謝候
  一金壱阡円也 御寄附金
右は早速日本興銀へ御振込被下難有正ニ拝受仕り候に付ては、領収証早速御送付可申上筈の処、只今世話人不在ニ付、明後日頃ニハ作製御送付可仕候条不悪御諒承願上候
先は御請旁々不取敢御厚礼申上度如斯御座候 敬具
               真鍋会世話人 藤原英三郎
                  代石井道也(印)
    渋沢栄一殿


諸会報告書(四) 【真鍋奨学財団寄附申込一覧(イロハ順)(金参百円以下略ス)】(DK470088k-0004)
第47巻 p.364 ページ画像

諸会報告書(四)             (渋沢子爵家所蔵)
    真鍋奨学財団寄附申込一覧(イロハ順)(金参百円以下略ス)
                (昭和三年四月十四日現在)
 金額(円)     氏名
○上略
  一、〇〇〇   渋沢栄一
○下略


寄附金依頼ニ関スル来書 【(印刷物) 奨学資金ノ用途ニ就テ 真鍋嘉一郎】(DK470088k-0005)
第47巻 p.364-366 ページ画像

寄附金依頼ニ関スル来書         (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
 - 第47巻 p.365 -ページ画像 
    奨学資金ノ用途ニ就テ
                      真鍋嘉一郎
現今大学ノ組織ニ於テハ、官制上教授並ニ助教授ノ一部ノミガ先ヅ辛フジテ衣食シ得ル丈ケノ給与ヲ得ルモ、新進ノ学士ニ対シテノ地位ハ一科ニ於テ僅カニ二人乃至四人ノ判任給(一ケ月五拾円)ヲ受クル助手アルノミニテ、他ハ皆無俸給ニテ医務ヲ執リ傍ラ研究シツヽアル状態ナリ、然ル上ニ大学ニ於テハ久シク在職スレバトテ他ノ官庁会社ノ如ク其ノ技倆ト勤続トニヨリテ確カニ栄進スべシト言フ見込アルニアラズ、唯幸運ナル少数ノ士ガ偶然空地ノ生ズルニ際会シテ僅カニ有給ノ地位ヲ占メ得ルト云フガ如キ形勢ナリ、然レバ、現今大学医院ニ於テ修養シツヽアル新進学士ノ多クハ、大学ノタメニ勤務シ学問ノタメニ研究スルト云フ念慮ヨリモ、寧ロ自活準備ノタメノ一時的在職ニテ漸ク二、三年ニテ間ニ合フ程度ニ達スレバ、ナホ未成品又ハ半成ノママニテ皆大学ヲ辞シ、各其職ヲ求ム、偶大学ニ在留スルコト永キニ亘ルモノアリトモ、多クハ大学ニアルヲ名トシテ衣食ニ奔走スル傾向ヲ有シ、衷心ヨリ永ク大学ニ踏ミ止マリ、名実共ニ大成ヲ遂ゲント云フ如キ雄志ヲ懐クモノニ乏シ、コレ即チ地位ノ欠乏ト給与ノ存セザルトニ因スルモノナリ、自分等モカカル混沌タル前途ト窮乏ナル境遇トノ間ニ彷徨シツヽ幸ニモ今日マデ相違シタルモ、真ニ学徒ヲ養成シテ大成ノ域ニ達セシメ、真ノ意義ニ於ケル大学人タラシメンニハ到底現状ノマヽニテハ実現シ得べキコトニ非ズ、自分ガ十年間子弟ヲ指導シツツアル間ニ於テハ、人物頭脳共ニ優秀ニシテ、コレナラバ永ク大学ニ在リテ研究修養セシムレバ、大学ノタメ社会ノ為メ大ニ利益スベシト云フ人物ヲ発見シ、コレヲ大学ニ保留セシメント試ミシモ、多クハ衣食自給ノ要求ニ迫ラレ、アタラ秀才ヲ半成ノマヽニテ衣食ノ資ニ就カシムルノ遺憾ナル始末一再ナラス、コノ関係ハ何レノ教室ニ於テモ同様ニテ、教授ノ周囲ニハ唯昨今卒業セル未成ノ若輩ノミ多クシテ、教授ト比肩スべキ程ニ修養ノ大成ヲ遂グルモノ少シ、コレ当該教室ノ発展ヲ遅延セシムル一原因ナルノミナラズ、兼ネテ一旦得タル秀才ヲ萎靡セシメ、学界並ニ社会ノ損失又少シトセズ、自分ハ疾クヨリコノ欠陥ヲ認メ、改善救済ノ方法ヲ講ゼズンバアルべカラズト思惟シツヽアリキ、時偶今回ノ如ク当局、局外各位ノ一方ナラザル尽力ニヨリテ、自分ノ講座ノ成立ヲ見ルニ至リ、コノ祝スべキ講座ノ成立ヲ永遠ニ記念シ、且ツ講座発展ノ基礎ヲ固クセンガタメ、一定ノ資金ヲ得テ前記人才養成上ニ於ケル欠陥ヲ幾分ナリトモ之ヲ補ヒテ、自分ノ素志ノ一端ヲ達成セント切望スルモノナリ
      計画ノ大要
講座設立記念研究生ノ制定 医学部卒業生ニテ当分ノ内ハ物療内科医員ニ限リ、二年間以上実地ノ医務研究ニ従事シ、其人物能力共ニ優秀ニシテ、利害ノ観念ヲ離レ、自己ノ趣味ヨリ尚進ンデ診療ノ学問ニ没頭セントシ、其資力及バザルモノニ、一ケ月最高弐百五拾円ヲ給与シ其研究ヲ遂ゲシムルコト、尚コノ給与ヲ受ケタルモノハ自家開業等ヲナサズ、社会的、公共的、学問的ニ活動スルコトヲ条件トス
コノ制度ハ恰モ東照宮三百年祭記念奨学金ノ如キニ準ス
 - 第47巻 p.366 -ページ画像 
現今帝国大学ニ於テ大学院学生中優秀ナル研究生ニ特選給費生ナルモノアルモ、其給与額一ケ月五拾円内外ニテ、満足ナル給費ニアラズ
其給費研究生ノ人選ハ当分ノ内真鍋主任ノ推薦ニヨリテ、将来実現スべキ財団法人ノ評議員ノ決議ヲ経ルモノトス
      希望
寄附金全体ヲ基金トシテ財団トナシ、其利子ヲ以テ講座設立記念研究生ノ給費ニ充ツルコト
研究生一名ノ給費ハ一ケ年参千円トシ、出来得ベクンバ五名分ノ給費ヲ得タキコト
従テ所要ノ給費ニ相当スべキ利子金額ヲ生スべキ基金額ヲ希望ス
  ○右ハ表紙共菊版四頁ノ印刷物。


諸会報告書(四) 【(印刷物) (ゴム印) 参考 拝啓 春寒料峭之候愈御多祥奉大賀候、陳者予而得貴意居リ候真鍋先生奨学財団寄附行為ハ…】(DK470088k-0006)
第47巻 p.366 ページ画像

諸会報告書(四)            (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
(ゴム印)
参考
拝啓 春寒料峭之候愈御多祥奉大賀候、陳者予而得貴意居リ候真鍋先生奨学財団寄附行為ハ、同封冊子ノ通リ財団法人トシテ去ル二月八日文部大臣ノ認可ヲ得、続テ二十一日登記結了致候次第ニ御座候
尚本財団役員ハ、昨年十一月廿五日開催ノ第一回総会ニ於テ、夫々決定、是ヨリ着々実行ニ移リ、所期ノ目的ヲ貫徹センコトヲ期シ居リ候得共、真鍋先生御希望ノ奨学事業ヲ円滑ニ進捗セシメンニハ、前途尚遼遠ノ観有之候条、此際切ニ各位ノ御後援ト御同情ニ預リ度奉懇願候
                           敬具
追而
 寄附申込書同封致候間多少ニ不拘御援助被成下度重テ願上候
  (年月数手書)
  昭和三年四月 日
               真鍋奨学財団
                 理事長 和田嘉衡
  ○別冊略ス。