デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
2節 演芸
2款 帝国劇場付属技芸学校
■綱文

第47巻 p.417-419(DK470109k) ページ画像

明治44年10月1日(1911年)

是日、当校第二回卒業式挙行セラル。栄一出席シテ生徒一同ニ卒業証書ヲ授与シ、後、訓示ヲナス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四四年(DK470109k-0001)
第47巻 p.417 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四四年         (渋沢子爵家所蔵)
十月一日 晴 冷
○上略 午後二時半帝国劇場ニ抵リ、女優ノ卒業証書授与式ヲ挙ク、畢テ一場ノ訓示ヲ演説ス、来賓中末松子爵ヨリ一場ノ演説アリ、式畢リテ此日ヨリ開場スル演劇ヲ一覧ス、夜十一時過帰宿ス


竜門雑誌 第二八一号・第四六―四七頁明治四四年一〇月 帝劇女優卒業式(DK470109k-0002)
第47巻 p.417-418 ページ画像

竜門雑誌  第二八一号・第四六―四七頁明治四四年一〇月
 帝劇女優卒業式 帝国劇場附属技芸学校の第二期女優生徒十四名は既に規定の学芸を習得したるを以て、十月一日午後二時三十分より、
 - 第47巻 p.418 -ページ画像 
同劇場二階大食堂に於て、卒業式を挙行したり、時刻到りて主客席に就くや、同校理事西野専務取締役開会の辞を述べ、次いで同校総長たる青淵先生より、卒業生泉亀代子・花岡蝶子・小原小春・音羽かね子月岡静枝・村瀬蔦子・宇治竜子・草間文子改め橘富美子・松本愛子・福原花子・小林延子・東日出子・木村重子・水野早苗の十四名に対し順次卒業証書を授与し、終つて先生は、更に卒業生に対し大要左の如き一場の訓示を与へたり。
 予は学校総長として諸子を送ると共に、劇場の社長として諸子を迎ふるを喜ぶ、諸子は学校卒業生として学校規定の学芸は充分に習得したるなれど、売物としては未だ決して之を以て満足なりとは言ひ難し、由来如何なる学校にても、卒業生は学校の課程をこそ卒たれ世間に対しては第一歩なるにも係らず、直に世間が自分を冷遇するかの如く誤解して、不満足を唱ふる者多きは、予の屡々聞知する処なれど、是れ実に偏見といふべし、斯る輩は世間が事業を与へ呉れぬといふ不平を鳴らせども、事業といふ者は与へらるゝものに非ず其人の力量次第にて吸付らるゝものなり、或一事が与へられて之を充分に処理したる人には、一事更に一事と与へられて、遂に其力量の在る処が世間に認めらるゝなり、諸子は宜しく其覚悟を以て、如何なる些事にても自分の力量を現すべき仕事と思ひて為すべし、殊に今日の過渡時代に於て新らしき地盤を造らんとする諸子は、大に奮闘して本分を完ふするの覚悟なかるべからず云々。
と述べ、之より卒業生総代宇治竜子の答辞、第一期卒業生総代藤間房子の祝辞ありて後ち、来賓未松子爵は立ちで、史上の女優より説起し今後の困難と名誉と相伴ふ旨を述べ且つ励ましたる演説あり、次いで阿部東京府知事の祝詞代読あり、終つて理事福沢桃介氏より閉会の挨拶ありて午後四時式を終り、来賓は別室食堂にて立食の饗応を受け、続いて当夜の演劇を観覧したり、当日来賓は前記の諸氏を始め、同劇場関係者・生徒父兄・新聞記者等約百名なりき。
  ○右ニ卒業生ヲ十四名トナシ、次掲中外商業新報マタ十四名トナスモ「帝国劇場株式会社第十回報告書」ノ記ス所ハ十三名ナリ。正誤未詳。


中外商業新報 第九一三二号明治四四年一〇月二日 ○帝劇女優卒業式 窈窕たる第二期生(DK470109k-0003)
第47巻 p.418-419 ページ画像

中外商業新報  第九一三二号明治四四年一〇月二日
    ○帝劇女優卒業式
      窈窕たる第二期生
帝国劇場附属技芸学校に於て養成されたる第二期女優生徒の卒業式は十月一日午後二時半より、帝国劇場内に挙行されたり、西野理事は開会の辞並に報告として述べて曰く、今日卒業の栄を荷へる十四名の卒業生は今を去る二年前の十月一日を以て本校に入学し、爾来新旧両演劇と東西両洋の音楽並に踊を研究したる者にて、成績を第一期に比せんか、第一期生の比較的演劇に達し居たるに反し、本年の卒業は踊に優る所あり、是れ蓋し社会要求の致す所かと、次で渋沢総長は卒業生十四名に卒業証書を授与して後一場の訓示を与へ、卒業後の処世方針は、学ぶ所を体して能く社会に適応するにあり、学校卒業生は身の不才を思はずして社会の用ひざるを喞つが常なれど、是れ誤れり、諸子
 - 第47巻 p.419 -ページ画像 
宜しく此旨を体得せよ、との意味を懇々縷述し、総長の訓示に対し本年の卒業生総代宇治竜子は答辞を述べ、次に第一回卒業生の祝辞ありたる後、末松謙澄子爵は来賓として祝辞を兼ねたる訓戒を与へ、女優の今後に於ける人格に深き注意を加へ、東京府知事の祝辞代読ありて全く式を終りしは四時に近く、斯くて来賓一同に立食の饗応あり、四時半閉会を告げぬ


(帝国劇場株式会社) 第十回報告書 明治四四年下半期・第三頁刊(DK470109k-0004)
第47巻 p.419 ページ画像

(帝国劇場株式会社) 第十回報告書
                明治四四年下半期・第三頁刊
 ○第一〇回報告書
    第四 附属技芸学校第二期卒業生
附属技芸学校ニ於テハ、十月一日ヲ以テ第二期卒業生十三名ヲ出セリ其氏名左ノ如シ
 泉亀代子 花岡蝶子 音羽かね子 橘富美子
 月岡静枝 村瀬蔦子 宇治竜子  松本愛子
 福原花子 小原小春 東日出子  木村重子
 水野早苗