デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
5節 新聞・雑誌・通信・放送
1款 新聞・雑誌 15. 実業之日本
■綱文

第48巻 p.240-242(DK480069k) ページ画像

大正15年1月(1926年)


 - 第48巻 p.241 -ページ画像 

栄一、「実業之日本」一月号ニ感想ヲ寄ス。


■資料

実業之日本 第二九巻・第一号大正一五年一月 【貴社ノ雑誌実業之日本…】(DK480069k-0001)
第48巻 p.241 ページ画像

実業之日本 第二九巻・第一号大正一五年一月
貴社ノ雑誌実業之日本ノ新年号ニ、老生感想ノ一端ヲ記載セヨトノ社長ヨリノ要求ハ老生ノ名誉トスル所デハアリマスガ、近来年ト共ニ身体モ漸ク老衰シ、随テ気力モ文筆モ兎角固陋ニ陥リ易キ虞ガアリ、加之昨年来宿痾ノ為メ籠居勝ニテ自然世間ノ物情ニ迂遠ニナリマシタカラ新進ノ論説抔ハ固ヨリ発表シ得ラレマセヌガ、只老人ノ婆心トシテ玆ニ権利ト義務トノ関係ニ付テ、老生ノ主義ヲ簡単ニ披瀝シテ特ニ青年諸君ノ参考ニ供シタイト思フノデアリマス
凡ソ事物ハ両者相対立シテ互ニ錯綜交渉シ、漸ク発展進歩スルモノデアル、例ヘバ彼ノ天地陰陽ノ大自然ヨリ知愚・善悪・尊卑・貧富・苦楽ノ人事ニ至ルマデ、総テ此軌道ヲ通過シテ居リマス、故ニ古人モ禍福ハ猶綯ヘル索ノ如ク常ニ輾転スルノデアルト言フテアリマス、而シテ今老生ノ説カントスル権利義務ノ如キモ亦此理ニ漏レズシテ、両者常ニ相聯絡シテ決テ分離孤立スルモノデハアリマセヌ、果シテ然ラバ吾人ハ此両者ニ対シテ如何ナル観念ニテ之ニ応シ、如何ナル手段ヲ以テ之ヲ処スヘキヤ、是レ老生ノ爰ニ説明セントスル要件デアリマス、而シテ老生ノ主張ハ、凡ソ人ハ先ツ義務ヲ尽スニ於テ完全ノ努力ナカルベカラズト断言シマス、右ニ付テ古聖賢ノ意見ヲ尋繹スレバ、論語ニハ孔夫子ノ言トシテ、君子ハ先ツ其言ヲ行ツテ而後之ニ従フ、又君子ハ言ニ訥ニシテ行ニ敏ナラント欲ストアリマス、既ニ其義務ノ履行ニ欠点ナキトキハ権利ハ要セズシテ自己ニ来ルノデアル、然ルニ現今ノ世相ハ全ク之ニ反シテ只権利ノ獲得ニ汲々シテ、義務ノ如キハ啻ニ之ヲ緩ニスルノミナラス、甚シキハ之ヲ藐視スルノデアル、蓋シ権利主義ノ泰西学説ヲ皮想的模倣ノ余弊終ニ此ニ至レルモノト思ハレマス畢竟今日ノ政事界・経済界特ニ資本労働間ノ争議ノ如キ総テ此誤謬中ニ在テ、甲是乙非互ニ相曲直スルノハ実ニ浩歎ニ堪ヘヌノデアリマス今ヤ新ヲ迎フル年首ニ当リテ世間声望高キ本雑誌ニ此旧思想ヲ掲載スルハ、或ハ古ヘ言ヲ出サザルハ身ノ逮バザルヲ恥テナリノ古訓ニ背キテ大方ノ笑ヲ免レサランモ、微衷黙止シ得ズシテ敢テ平素ノ所信ヲ述ヘテ貴社ノ需ニ応スルノデアリマス、頃日北越ノ旧友遠ク書ヲ送リテ添フルニ、次ノ狂歌「虎の巻各派に秘めて策戦の豹変あらむ寅年の議事」ガアリマシタ、老生ハ歌ニ付テ巧拙ノ批評ハ為シマセヌガ、想フニ政事界ヲ諷刺セシモノデアリマス、若シ果シテ寅年デアルカラ政事界ニ豹変アリト云フナレバ、明後年ハ辰年デアル、帝国ノ国運カ竜頭蛇尾ニナリハセヌカト杞憂ヲ生ゼザルヲ得ヌノデアル、故ニ吾人ハ今日ヨリ力ヲ戮セテ之ヲ揮攉鼓舞セネバナラヌ、蓋シ亦吾人殊ニ青年諸君ノ義務ニツケ又権利トモナルノデアリマス
  大正十五年一月
                      青淵識
                       時年八十又七



〔参考〕集会日時通知表 昭和二年(DK480069k-0002)
第48巻 p.241-242 ページ画像

集会日時通知表 昭和二年        (渋沢子爵家所蔵)
 - 第48巻 p.242 -ページ画像 
七月一日 金 午後五時半 実業之日本社三十周年記念会招待日本工業クラブ