デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

7章 行政
1節 自治行政
4款 東京市関係 1. 東京市講演会
■綱文

第48巻 p.329-330(DK480097k) ページ画像

明治42年12月26日(1909年)

是日、東京高等商業学校講堂ニ於テ、第九回東京市講演会開カル。栄一、渡米実業団ニ関スル演説ヲナス。


■資料

東京日日新聞 第一一八七二号明治四二年一二月二七日 ○東京市講演会/○渋沢男の米国談(DK480097k-0001)
第48巻 p.329-330 ページ画像

東京日日新聞 第一一八七二号明治四二年一二月二七日
    ○東京市講演会
東京市の催しにかゝる第九回講演会は、二十六日午後一時より一ツ橋なる東京高等商業学校大講堂に開会せらる、戸野教育課長開会の辞を述べ、鐘淵紡績会社取締役工学士高辻奈良造氏の米国工業視察談、東京興農園主農学士渡瀬寅次郎氏の米国視察談、渋沢男の米国旅行談あり午後五時二十分閉会したるが、聴衆千五百余名満場立錐の余地なく頗る盛会なりし

    ○渋沢男の米国談
    △東京市第九回講演会に於て
△鉄道の設備 旅行中用ひられたる列車は九月五日シヤートルを出発してより十一月三十日桑港に到着するまで同一の客車にして、室内の設備は我国に於て到底夢想だも及ばざる所なり、九十日間の旅行に客車を家として一の不便を感ずる事なかりし、米国の鉄道会社と汽車会社との秩序ある設備方法には只々喫驚の外なし
△農場の巡回 グランドホープ市にては、同地の歓迎により自働車にて田園の畔道を五十哩位の速力にて馳走巡廻したるが、我日本の小農
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組織に見て其規模の大なるには実に驚きたり
△事業統一の精神 前大統領ローズベルト氏は各種のトラスト征伐を為したるが、予はシカゴ市の製鉄工場を見、事業の統一を計るにトラスト組織の最も有力なるものなることを看取せり、勿論利益を壟断するは不都合なるべけれど、自国の商政策として他国の進歩と拮抗せんとするには決して非難すべきものに非ずと信ず
△排日問題に就て 加州に於ける排日問題は只だ単に労働協会の感情的問題にして軽視すべきにあらざれども、さればとて全米人の感想《(マヽ)》す此問題を甚だ迷惑となし居るは事実なり、予等五十人と九十日の旅行は僅小なるものなるべけれど、同問題に対して全米人士に与へたる感化は決して尠少にあらざるべし
△市の設備に就て 来る四十三年には予等の招待を受けたる各地の商業会議所員を招待せざるべからざるに、我首都たる東京市のホテル、道路其他の設備は遠く彼れに及ぼざるを恐る、故に少くとも我国民は唯誠意を以て此歓待に報ひざる可らず
   ○他ノ資料ハ本資料第三十二巻所収「渡米実業団」昭和四十二年十二月二十六日ノ条ニ収ム。