デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

8章 軍事関係諸事業
1節 第一次世界大戦関係
1款 対独開戦
■綱文

第48巻 p.482-489(DK480141k) ページ画像

大正3年8月16日(1914年)

是日、総理大臣大隈重信、都下ノ実業家ヲ官邸ニ招キテ、ドイツ国ニ最後通牒ヲ発シタル事情ヲ説明ス。栄一出席シテ答辞ヲ述ブ。


■資料

東京日日新聞 第一三五五四号大正三年八月五日 ○帝国政府の声明 四日外務省公示(DK480141k-0001)
第48巻 p.482 ページ画像

東京日日新聞 第一三五五四号大正三年八月五日
    ○帝国政府の声明
      四日外務省公示
帝国政府は欧洲政局の最近の形勢に対し政治上及経済上憂慮の念を禁ずる能はず、而して帝国政府の切に冀望する所は、右紛争が一日も早く解決を告げ平和の克復を見るに在ること固より言を俟たずと雖も、不幸現時の戦局が継続する以上、帝国政府は右戦局が可成紛争の現に感染せる地方以外に波及せざらんことを冀望し、且帝国政府は厳正中立の態度を確守し得べきことを期待するものなり、然りと雖も時局今後の転変に就ては最も細心の注意を有するものあり、万一英国にして戦争の禍中に投ずるに至り、且日英協約の目的或は危殆に瀕する等の場合に於ては、日本は協約上の義務として必要なる措置を執るに至ることあるべし、此の如き時期の遂に到達すべきや否やは今日固より予言し得ざる処なるのみならず、帝国政府は斯る場合の発生せざることを切に冀ふものなりと雖も、政府は諸般の情勢に対して現に慎重なる注意を加へつゝあり


中外商業新報 第一〇一六九号大正三年八月一四日 風雲と財界 渋沢栄一男談(DK480141k-0002)
第48巻 p.482-483 ページ画像

中外商業新報 第一〇一六九号大正三年八月一四日
    風雲と財界
                   渋沢栄一男談
△深憂の要なし 欧洲に大禍乱あるに拘はらず、日本内地現在の金融界は取分けて逼迫の摸様もなく、何れかと云へば平穏也と評するの当れるに近し、只欧洲の戦禍は勢ひの及ぶ所世界的となり、各国相互の国際取引は事実上不能の状態に陥りたる結果として、此頃万事が稍々世界的となり来りし日本も、間接に其影響を受け、民間の外資輸入は頓挫し、又為替の杜絶と運賃保険料の暴騰、乃至は銀塊相場立たざる為に外国貿易不振の事実は掩ふ可らず、之が金融界に多少安心なり難き感じを起さしむるは、蓋しマタ止むを得ざるの成行なれど、今日の場合深く憂ふべき問題に非ず
△万一の金融 今後戦局が如何に発展する乎、日本は此間に立つて奈何に身の振方を附くる乎は、事将来の問題にして、素より予測の限り
 - 第48巻 p.483 -ページ画像 
に非らずと雖も、伝ふるが如く、日本政府に於て愈々最後の決心に出で、進んで戦列に入るべく、某国に対して宣戦を布告する事ありとするも、其用ふべきの力は全体に及ばず、或程度の海軍と万一の場合僅かの陸軍を動かすに過ぎざるべし、随つて仮令不幸にして日本が某国に宣戦を布告して軍事行動を起す、凡そ程度の知れた軍費にて足るべし、故に日本の軍事費が直ちに内地金融に悪影響を与ふるに至らずして済むべき也
△兌換擁護の必要 日本が進んで宣戦を布告すると否とを問はず、事に局に当るものは兌換の基礎を飽迄も擁護せざる可らず、此事の為には上下挙つて謂はゞ挙国一致して、出来得る丈け正金の蓄積に努力するの要あり、正金を蓄積して放散せざる事は、啻に今日の時局に際してのみ必要あるに非ずして、実は常平生に於ても其必要大にあり、国民の用意を希望する所なれど、火を視て夜警を置き、痢して慎食するの風は、凡そ免る可らざる人情の欠点なるが故に、現在目前に於て正金を放さゞるの必要迫まりたる今日、特に国民の覚悟を望まざる可らず、正金を蓄積して国外に放散せざるは即ち日本の兌換制度を擁護すべき所以也


中外商業新報 第一〇一七二号大正三年八月一七日 対独最後通牒 十五日附を以て通告す(DK480141k-0003)
第48巻 p.483 ページ画像

中外商業新報 第一〇一七二号大正三年八月一七日
    対独最後通牒
      十五日附を以て通告す
帝国政府は英国政府と協同動作の交渉成立したるを以て、十五日を以て左の最後通牒を独逸政府に発したり(十六日午後四時外務省発表)
 帝国政府は現下の状勢に於て極東の和平を紊乱すべき源泉を除去し日英同盟協約の予期せる全般の利益を防護するの措置を講するは、該協約の目的とする東亜の平和を永遠に確保するが為めに極めて緊要の事たるを思ひ、玆に誠意を以て独逸帝国政府に勧告するに、同政府に於て左記二項を実行せられむことを以てす
    (第一)
  日本及支那海洋方面より独逸国艦艇の即時に退去すること、退去すること能はざるものは直に其武装を解除すること
    (第二)
  独逸帝国政府は膠州湾租借地全部を支那国に還付するの目的を以て、一千九百十四年(大正三年)九月十五日を限り無償無条件にて日本帝国官憲に交附すること
 日本帝国政府に於て叙上の勧告に対し、一千九百十四年(大正三年)八月二十三日正午迄に、無条件に応諾の旨独逸帝国政府よりの回答を受領せざるに於ては、帝国政府は其必要と認むる行動を執るべきことを声明す


中外商業新報 第一〇一七二号大正三年八月一七日 首相外相蔵相説明 最後通牒説明、時局と財界(DK480141k-0004)
第48巻 p.483-486 ページ画像

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東京日日新聞 第一三五六六号大正三年八月一七日 首相実業家を招く(DK480141k-0005)
第48巻 p.486 ページ画像

東京日日新聞 第一三五六六号大正三年八月一七日
    首相実業家を招く
大隈首相は十六日午後六時左の実業家を永田町の官邸に招待し、加藤外相より外交経過顛末、若槻蔵相より財政上に関する談話あり、大隈首相よりも種々懇談する所ありて午後七時過散会したり
 原六郎・菊池長四郎・安田善三郎・三村君平・南部球吉・古河虎之助・団琢磨・高松豊吉・根津嘉一郎・浅野総一郎・服部金太郎・中野武営・藤山雷太・森村市左衛門・日比谷平左衛門・大倉喜八郎・和田豊治・郷誠之助男・早川千吉郎・前川太郎兵衛・高田慎蔵・大橋新太郎・村井吉兵衛・加藤正義・近藤廉平男・園田孝吉・池田謙三・福井菊三郎・福原有信・豊川良平・益田孝・佐々木勇之助・水町袈裟六・志村源太郎・井上準之助・志立鉄次郎・馬越恭平・渋沢栄一男・末延道成・荘清次郎・柿沼谷蔵・小野金六・朝吹英二・阿部泰蔵


中外商業新報 第一〇一七二号大正三年八月一七日 △実業家の招待 経済関係の問答(DK480141k-0006)
第48巻 p.486-487 ページ画像

中外商業新報 第一〇一七二号大正三年八月一七日
    △実業家の招待
      経済関係の問答
大隈首相は十六日午後六時より永田町首相官邸に渋沢男を始め都下有数の実業家を招待し、別項貴族院其他に試みたると同様の時局に関する演説を為し、次いで加藤外相亦外交の顛末を陳述し、最後に若槻蔵相は又別項の如き時局と財界との関係に就いて演説を試む、玆に各相の演説畢るや渋沢男起ちて
 各相の演説により時局に対し我が政府の執らんとする態度を明かにするを得たるを謝す、偖て演説中に見ゆるが如く時宜によりては戦争開始の運びに至らんとするものあるが、由来戦争は国家の財政経済の発展に対し或種の打撃を与ふるものにして悲観すべきものなりと雖、又他の一面より見るに於ては国運伸張の基を此機会に啓くことあり、而して我が帝国の過去三・四十年間の史実を竅ひ、十年目毎には殆ど外征の師起り、常に叙上の過程を辿りたるの形跡ありしに想倒せば、此際転々感慨に堪へざる也
 庶莫、形勢今やかの如くにして大事将に決せんとす、只其の上は国
 - 第48巻 p.487 -ページ画像 
民一致協力以て邦家に奉ずるを念とすべきのみ
と述ぶ、語気洵に悲壮を極む、次いで志村源太郎氏は外相に一質問を試みて曰く
 世説の伝ふるが如く政府は今回の時局に関し、今日迄に何等かの交渉を米国に試みたりや、又時局の進展に連れ近き将来に之を試むるの必要生ずべきや如何、経済上関係する所深きを以て幸に説明あらんことを望む
と、加藤外相之に対し
 将来に於て或は如何に成行くや予じめ玆に断ずるを得ざれども、過去に於ては何等交渉を重ねたる事無し
と答ふ、更に近藤廉平男は
 一朝干戈相交ゆるに至らんか国費多端を告げ、従つて生産的施設に費されんと予期せられたるかの剰余金の如きも、戦費として不生産的に使用せらるゝ一方、貿易も杜絶する等財界に悪影響を及ぼすこと深からんが、去迚此際消極的方針を採ること能はざる事情もあればそれも已むを得ざるべく、国民は共同一致以て国難に処すを要すされど政府に於ても之を諒として徒らに悲観説伝はり不景気の襲来するが如きを、未然に防止さるゝの策を講ぜんことを望む
と陳ぶ、応対玆に畢りて別室に入り立食の饗応ありて散会したるは同八時半なりき、出席者左の如し
 安田善三郎、○以下二八名、欠席者一四名、氏名略ス


東京日日新聞 第一三五六七号大正三年八月一八日 ○首相実業家を招く 若槻蔵相の演説(DK480141k-0007)
第48巻 p.487-488 ページ画像

東京日日新聞 第一三五六七号大正三年八月一八日
    ○首相実業家を招く
     若槻蔵相の演説
大隈首相は時局の推移が経済上にも影響する処あるを以て、既報の如く十六日午後六時より主なる実業家を首相官邸に招待し、首相及外相は貴衆両院の各派代表者及新聞通信記者に説明せると同一の演説を為し、次で若槻蔵相は大要左の如き演説を為せり
 今回の事変に対し、独逸の回答如何によりては不幸開戦を見るに至るやも知れずとせば、剰余金も戦備に使用するの已むなきは国家の為に悲むべき事なるも、国家の重大事件なりとせば詮方なく、延いて商業上に悲観を惹起する事多かるべきも、挙国一致財政経済の悪影響の排除に努めざる可らず
右畢るや渋沢栄一男は
 今回の事件は財政経済上より論ずれば、日本のために一時的悲観の行はるゝは已むを得ず、併しながら国家の発展上より見れば却て楽観して可なるべく、斯る不祥事が恰も十年毎に勃発するは、予等の感慨に堪へざる所なり、要は挙国一致国運の隆昌を図るべし、云々
と述べ、次で志村源太郎氏は加藤外相に質問し、道途伝へらるゝ処に依れば、事変に関し米国と何等かの交渉ありしが如く見ゆるも、右は事実なりや否やと質せば、外相は将来交渉を要するものあるに至るや否や疑問なれど、現在は全然さる事なしと答弁し、更に近藤廉平男は
 若し開戦するが如き事あらば、剰余金の使用は勿論経費多端は已む
 - 第48巻 p.488 -ページ画像 
べからず、即ち不生産的に費用を要すると同時に、生産的なる貿易の一時停止するは洵に遺憾の次第なり、政府は経済界が起す不景気に対し、出来得る範囲に於て救済の途を講ぜられん事を望む、云々
斯て同七時半頃より立食の饗応あり、懇談あり、八時半散会したるが出席者は昨報の如し


東京毎日新聞 第一四一〇五号大正三年八月一八日 挙国一致を望む 渋沢男爵談(DK480141k-0008)
第48巻 p.488 ページ画像

東京毎日新聞 第一四一〇五号大正三年八月一八日
    ○挙国一致を望む
                    渋沢男爵談
十六日夜首相官邸に我々実業家を招待せられたる席上、大隈首相及加藤外相は今回日本帝国が独逸帝国に対し声明をなすに至りたる次第を説明し、日英同盟の条項に基き、東洋の平和を維持する為に已むを得ざる所以を縷述せられたり、我々は元来平和論者なるも事玆に到りては已むを得ざるものとし、且今次帝国の執りたる手段は邪道にあらずして、正道なるを以て予は直に之を賛成せる次第也、而て果て独逸が日本帝国を満足せしめ得るの回答をなすや否やは大なる疑問なるも、恐らくは日独開戦の已むなきに至るべし、事果して然らば挙国一致日英同盟の効果を完ふすると共に東洋永遠の平和を保持するに努力せざるべからず、固より開戦の結果は我々各種階級に影響し多大の打撃を被るは必然ならんも、之が為に各自不満を訴ふるは決して国民の為すべき途にあらず、挙国一致とは換言すれば総べてのものを犠牲に供する意なり、故に此際廃減税論者も其他の生糸業・紡績・海運・金融業者、一切の商工業者も国家の為め挙国一致の実を挙げ、以て日英同盟の義務と東洋永遠の平和を確保するに努めざるべからず、予は必ずしも大隈内閣なるが故に之を賛するにあらず、主義の為めに賛意を表するものなるを以て、仮令西園寺内閣又は原内閣たると其他の内閣たるとを問ふ処にあらざるなり、而して今回の日本政府の措置たるや、覇道にあらず実に王道なるを以て予の最も賛意を表する所以なり、云々


中外商業新報 第一〇一七四号大正三年八月一九日 □王者の要求也 無事の解決を望む 不十分なれど満足(DK480141k-0009)
第48巻 p.488-489 ページ画像

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