デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

9章 其他ノ公共事業
1節 記念事業
3款 聖徳太子一千三百年御忌奉賛会
■綱文

第49巻 p.34-36(DK490013k) ページ画像

大正8年10月2日(1919年)

是日当会、内務大臣官邸ニ実業家ヲ招待シテ、寄付ヲ懇請ス。栄一副会長トシテ之ニ与ル。


■資料

集会日時通知表 大正八年(DK490013k-0001)
第49巻 p.34 ページ画像

集会日時通知表  大正八年     (渋沢子爵家所蔵)
十月二日 木 午後五時半 聖徳太子千三百年御忌奉賛会(内相官邸)

 - 第49巻 p.35 -ページ画像 

竜門雑誌 第三七七号・第五八頁 大正八年一〇月 聖徳太子千三百年御忌奉賛会(DK490013k-0002)
第49巻 p.35 ページ画像

竜門雑誌  第三七七号・第五八頁 大正八年一〇月
○聖徳太子千三百年御忌奉賛会 青淵先生の副会長なる同会にては十月二日夜、内相官邸に京浜の実業家五十余名を招待し、徳川頼倫侯・青淵先生等より、同会の主旨を講述して寄附を懇請する所ありたる由なり。



〔参考〕日本魂 第五巻第四号・第一二六―一二八頁 大正九年四月 聖徳太子一千三百年御忌奉賛会について 奉賛会副会長 男爵 渋沢栄一(DK490013k-0003)
第49巻 p.35-36 ページ画像

日本魂  第五巻第四号・第一二六―一二八頁 大正九年四月
    聖徳太子一千三百年御忌奉賛会について
                奉賛会副会長 男爵 渋沢栄一
 上宮太子が日本文明の啓道者に在しますことは、私が敢て玆に申すまでもありませぬ。而して今日太子の功業を追憶することは、固より太子に対する感謝の微意より出たことでありますが、一面には又聖代に於ける文化事業として、吾々国民の当然為すべきことであらうと信じます。
 太子の御事業や、御徳については、多くの学者専門家によつて述べられたことゝ思ひますから、私は専ら奉賛会のことについて申しますが、もともと此会の成立ちたるや、太子の御功業を記念すると同時に明大正十年四月を以て、太子と最も縁故の深い大和の法隆寺、並びに河内の叡福寺の両所において、聖徳太子一千三百年の御忌法会が営まるゝに対して、これを賛助し、且つ太子の御事業を永遠に記念しようといふことから起つたのであります。而して其の記念事業といふは、五つの項目に分れて、(第一)は今申した、法隆寺並びに叡福寺の法要賛助であります。今日の聖代において太子の遺された宗教・法制・文学・美術・工芸をはじめ、感化救済の施設を偲びまつると共に、太子の御創立にかゝる法隆学問所の昔を偲ぶべき其の大和法隆寺において法会が営まれ、一方又太子を永久に葬りまゐらする河内磯長の叡福寺において、法要が営まるゝとしますれば、これを奉賛することは、即ち太子の御徳を偲ぶの謂ひであります。太子の薨去に際しては、史官これを記して日月輝を失ひ、天地既に崩ると申した位でありますから、如何に太子が、多数の人々に愛惜され給ひしかは、これを以て見ても解かることであります。(第二)は聖徳太子記念研究基金の設定であります。此は主として研究の方面でありますが、今日我が国の学界に於て痛切に感ぜらるゝものは、古代の研究が総ての方面において甚だ不充分であることであります。従つて我が国民の信仰・宗教・哲学・法制・歴史・文学・美術・音楽・工芸等の尚ほ闡明されないものの多いといふことは、独り学者とのみ言はず、一般国民の深く遺憾とするところであります。今聖徳太子一千三百年御忌に際して、太子を記念し奉らんがために、是等の研究基金を設けて、其の進歩発展に資する方法を講ずるは、太子に対する報恩の一端でもありませうし、また今日学界の要求を充たす最善の方法であらうと思ひます。(第三)は以上の研究に必要なる諸方面の図書を蒐集し、その他之に関する設備を為し、学者研究家の便にしようといふのであります。(第四)は聖徳太子の御伝及び唱歌の編纂出版でありますが、これは過般既に懸
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賞方法によつて募集せられ、更に専門家によつて修正改刪を加へられた上、出版されることになつて居るのであります。(第五)は法隆寺の防火設備でありますが、これは余程急務であると信じます。法隆寺が我が国に於ける最古の建築として、これが保存を要することは申すまでもないのであります。然るに、その建築が木造たるに係はらず、防火設備が殆んど顧みられてないといふことであります。そこで、奉賛会では当局に交渉して、防火設備を完からしめようといふのであります。
 而して以上の事業を遂行するためには、約四十五万円を要するのでそれは総て有志の寄附に仰ぐといふのであります。そこで、是れがためには、関係されて居る人々が、各方面に活動せられて、それそれ醵集中でありますが、聖徳太子の遺徳を感謝せらるゝ人々は言ふに及ばず、我が国の文化事業を援けんとせらるゝ篤志家によつて、その目的を達することを得ましたならば、私までが望外の仕合せであります。