デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

9章 其他ノ公共事業
5節 祝賀会・表彰会
9款 時事新報社主催灯台守慰問表彰会
■綱文

第49巻 p.394-396(DK490135k) ページ画像

昭和3年9月27日(1928年)

是ヨリ先、時事新報社、灯台守慰問表彰ヲ企画ス。是日、東京会館ニ於テ、ソノ第一回委員会開催セラル。栄一出席シ、委員ヲ代表シテ意見ヲ述ブ。


■資料

会員関係書類 【(別筆) 昭和三年九月十一日承諾返事スミ 謹啓 時下益々御清栄奉慶賀候、陳者今般本社ニて相企て候灯台守慰問表彰の計画ハ…】(DK490135k-0001)
第49巻 p.394 ページ画像

会員関係書類              (渋沢子爵家所蔵)
            (別筆)
            昭和三年九月十一日承諾返事スミ
謹啓
時下益々御清栄奉慶賀候、陳者今般本社ニて相企て候灯台守慰問表彰の計画ハ、各方面より多大なる賛助を得て意想外の成功を収め、募集中の寄附金額も已ニ三万円を超過する有様ニ御座候処、此の寄附金を灯台守の為ニ最も有効ニ利用する為ニハ、是非とも有力なる委員会を設置して慎重に決定仕り度く、就而御多用中甚だ御迷惑とは存候へども、貴殿ニ於かれても何卒右委員たることを御快諾被下度此段御願申上候 敬具
  昭和三年九月
                       時事新報社
    渋沢栄一様
 尚近日中ニ本社員を参上せしめて詳細を申上ぐる筈ニ御座候


時事新報 第一六六六三号昭和三年九月二八日 「灯台守の為に」の寄附金、最善の利用法を考究 本社原案を基礎として 灯台守慰問表彰第一回委員会(DK490135k-0002)
第49巻 p.394-396 ページ画像

時事新報 第一六六六三号昭和三年九月二八日
    「灯台守の為に」の寄附金、最善の利用法を考究
      ……本社原案を基礎として……
        灯台守慰問表彰第一回委員会
本社計画の灯台守慰問表彰式に関する第一回の委員会は廿七日正午東京会館に於て開かれた、出席者は
 子爵渋沢栄一氏・逓相久原房之助氏・海軍次官大角岑生氏・逓信次官桑山鉄男氏・灯台局長広幡忠隆氏・郵船会社専務武田良太郎氏・東洋汽船専務浅野良三氏・本邦最古の灯台守長草間時福氏・本社編輯長伊藤正徳氏
の各委員の外、本社側より取締役会長門野幾之進氏・社会事業部主事粕谷氏等であつた、午餐の後
 門野社長 は先づ公務多端の折、一人の欠席もなく打揃つて来会されたことを謝してから
 『自分は保険業に関係し、海上保険の再割引を外国会社に付する場合、その率の高いのに驚いた、その高価なる理由は、日本の近海が世界で一番海難が多い為である。夫れには地理的の理由もあらうが我国に灯台の少ないことが有力なる原因である。之を反対の側から眺むれば、灯台の効用は夫れ程に重且つ大であり、而して其灯台を
 - 第49巻 p.395 -ページ画像 
守る奉仕者の仕事も非常に重大である。然るに其の人々が、社会から忘れられ、孤独の寥漠なる生活を忍ばねばならぬことは、遺憾千万のことゝ思ふ』
とて、本社が其無名の奉仕者を慰安し表彰する計画を樹てた所以を述べ、更に『寄附の金額は決して充分とは思はないが、委員諸君に於かれては、何うか其最善の利用法を考究され、無名の犠牲者を慰める為めに御尽力を御願し度い』
旨を語つた。之に対し
 渋沢子爵 は、委員を代表して
 『私は灯台のことについては不案内のものであるし、またその灯台の必要に就いても余り知らない一人であるが、自分がこうして百歳に近い身を以て委員を御引受け致しましたに就ては、深く灯台守の孤独の生活に同情する所があつたからである、人間が一人で居ること位つらいことはない、春は鳥、秋は虫と共に楽しむ以外に人とは何の交渉もない灯台守の生活は到底想像以外のものである、自分が青年時代に鬼界ケ島の物語を読んだことがある、非常によく書けて居て、初めて孤独の生活が如何に苦しいものであるかと云ふことを知つた、今日の灯台守の生活が鬼界ケ島の俊寛の様なものであるとは思はないが、併し慰められない淋しい生活であることは同じであらう、時事新報社の今回の計画は誠に情の深い美挙であつて、私もこれを知つてその主旨に賛成もしまた少々ばかり寄附もした次第である、別に御役にも立ちませんが、孤独の慰められない灯台守にいたく同情して委員を御引受けした次第である』
とて子爵が心から孤独の淋しさに同情して本社の計画に賛助した真情を述べれば、出席者一同は今更ながら子爵の熱誠に感じ入るばかりであつた、引続き別室にて寄附金処分に関する具体的の討議に入つたが之れに先だつて、本社の伊藤委員は私案として(一)基金設立の件(二)勤続者表彰の件及び(三)残額処分の件に就いて説明するところがあつた、之れに対し渋沢子爵は無条件に賛成の旨を述べ
久原逓相 も賛成の意味で次の如く述べた
 『今回の御催しに就いて私としては、単に所管の上からばかりでなく、一個人としても衷心から賛同して已まない。時事新報社が灯台看守の慰安及び表彰を、永久的事業として経営されるのは、此上もない有意義な美挙であつて、私が其委員の一人に加へられたことは光栄であり亦歓喜でもある。この上は、私も力の及ぶ限り尽して見たい、実に涙ぐましい事業である。何うか、発起人に於かれても、此至難であらう仕事に対して、今回同様の御努力を続けられ、真に有意義なる公益事業の成果を大ならしめんことを念願して已まない次第である』
草間委員は勤続者の表彰に対して、金額の表彰もさることながら、之れに「勤続章」の如きものを制定して贈呈しては如何との意見を述べまた他の委員から種々灯台守の子女の教育に就いての意見もあつて、結局原案を基礎として協議することになつたが、当日は最後の決定を見るに至らず、追つて第二回の委員会を開いて慎重に討議することゝ
 - 第49巻 p.396 -ページ画像 
して散会。因みに伊藤氏案の要領は次の如くである。
  一、基金設定の件
寄附金を二分し、永久的及び一時的の二種とし、基金を「灯台守優遇基金」と名付け、次の二つの事業を行ふ
 (甲)子弟奨学基金
 (乙)良書頒布基金
基金額は差当り二万円とす
  二、勤続者の表彰
寄附金のうちより約一万円を以て勤続者年限に応じて表彰計画を樹てること
  三、残額処分の件
残額は灯台守の最も必要とする物品を贈呈すること