デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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諸会発起趣意書（四）　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（印刷物）
　　　　碧雲堂崔有声先生趣意書
粛啓　高堂愈々御清健奉欣賀候、陳者這般朝鮮京城ノ儒博、従二品中枢院議官成均博士崔有声先生本土漫遊ノ途ニ上ラレ、頃日帝京ニ来寓セラレ候ニ就テハ、此際先生ヲ内外諸公ニ御紹介申上度存候、抑モ先生ハ号ヲ碧雲堂ト云ヒ、昔新羅朝ノ文昌侯文領相兼御史大夫翰林学士崔致遠孤雲先生大賢二十四代之後裔ニシテ、累世貴族タリ、彬々タル文風ハ代々秀絶タルモノ有リ、煌々タル勲功ハ世々是ヲ尊承ス、先生幼ニシテ才格衆ニ超ヘ、八歳既ニ孔学ノ庭ニ在リ、十三能ク七書ヲ誦シ、後崔益鉉先生ニ従師シ高風愈上ル、抱負文学ハ韓柳ニ比肩シ、詩詞ハ李杜ニ争頭シ、神毫ハ王陶ノ筆法ニ髣髴タリ、立志ノ年孔子ノ廟成均博士ニ叙セラレ、次イテ従二品中枢院議官ニ任セラル、韓国ノ朝野悉ク其徳望ヲ重慕ス、日鮮併合ノ当時静カニ山荘ニ帰ス、十有余歳山風渓雨ヲ友トシ筆勢益鋭ナリ、先生旬将サニ六閲ニ達ス、然レトモ育英ノ志勃々禁セス、日鮮同化ノ血脈ヲシテ是ヲ長ヘニ致サントスル処ノ赤誠ノ為メニ其志ヲ動起シ、断然故郷ヲ辞シテ此帝京ニ来ル、先生ノ博学ハ衆ノ知レル所、而カモ其霊筆ハ誰レカ能ク是ヲ凝セン、爀爀タル令名偉彩ヲ放ツ、要路ノ大官朝野ノ名士玆ニ先生ヲ援助セラレ神毫到ル処ニ敬セラレ、依ツテ得ル所ノ潤筆謝料中ヨリ其幾分ヲ割イテ青年子弟ノ教費ニ充給ス、当時先生ハ輦轂ノ下雑司ケ谷ニ仮寓ス、逐時勝地観光ノ途次到処ノ志士仁人ハ、願クハ先生ノ志ヲ嘉シ、宜敷同化民族ノ為メ、一片ノ義侠ト和平ノ仁礼ヲ以テ、衷心大ニ御後援アランコトヲ冀フ所以ナリトス
　　　　　　　　　　　　　　　　　右記謹白
　　　　　　　　　　　　　王世子附武官　金応善序
　　　　　　発起及賛助員（順序不同）
　　子爵　渋沢栄一○外六八名氏名略ス
　　　　大正　年　月　日　府下高田町雑司ケ谷七百四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　（電話牛込二四六一番）
　　　　　　　　申込所　碧雲堂崔先生　書道会事務所
　　　　　　　　　　　　　　　　　幹事　近藤宅治
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　引間敬石