デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
1款 株式会社第一銀行
■綱文

第50巻 p.20-21(DK500003k) ページ画像

明治42年11月20日(1909年)

是ヨリ先、明治三十八年公布ノ勅令第七十三号廃セラル。是日第一銀行、韓国ニ於ケル業務ヲ韓国銀行ニ引継グ契約ヲ締結ス。


■資料

官報 第七九二二号明治四二年一一月一八日 勅令(DK500003k-0001)
第50巻 p.20 ページ画像

官報  第七九二二号明治四二年一一月一八日
    勅令
朕明治三十八年勅令第七十三号廃止ノ件ヲ裁可シ、玆ニ之ヲ公布セシム
 御名 御璽
  明治四十二年十一月十七日
             内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
                    外務大臣 伯爵 小村寿太郎
勅令第三百二十二号
明治三十八年勅令第七十三号ハ、明治四十二年十一月二十日限之ヲ廃止ス
  ○勅令第七十三号ハ株式会社第一銀行ノ韓国ニ於ケル業務ニ関スル件ナリ。
   本資料第十六巻所収「韓国ニ於ケル第一銀行」明治三十八年三月二十四日ノ条参照。
  ○本巻所収特殊銀行中「株式会社韓国銀行」参照。


株式会社第一銀行第二十七期 自明治四十二年七月一日至明治四十二年十二月三十一日 営業報告書 第二―三頁刊(DK500003k-0002)
第50巻 p.20 ページ画像

株式会社第一銀行第二十七期 自明治四十二年七月一日至明治四十二年十二月三十一日 営業報告書
                         第二―三頁刊
    処務要件
○上略
一、十一月十六日、取締役日下義雄韓国銀行ヘ業務引継ノ為メ、京城ヘ出張ス
○中略
一、十一月二十日、韓国銀行ト業務引継ニ関スル契約ヲ締結ス
一、同日韓国政府ト締結セル、銀行券発行ノ事務、貨幣整理ノ事務及国庫金出納ノ事務取扱ニ関スル契約ヲ解除ス
一、同日銀行券ノ権利義務承継ニ関シ、韓国銀行ト契約ヲ締結ス
一、同日韓国銀行ト銀行券消却資金年賦償還ノ契約ヲ締結ス
一、同日韓国銀行ト日本釜山支金庫及韓国釜山支金庫事務代理取扱ノ契約ヲ締結ス
一、同日業務引継ニ関スル契約ニ基キ韓国銀行ニ業務ノ引継ヲ為ス
○下略


第一銀行五十年史稿 巻六・第四五―四七頁(DK500003k-0003)
第50巻 p.20-21 ページ画像

第一銀行五十年史稿  巻六・第四五―四七頁
                     (株式会社第一銀行所蔵)
 ○第二編 第六章 第一節 韓国中央金融機関の譲渡
    韓国中央金融機関としての本行の成績
 - 第50巻 p.21 -ページ画像 
回顧すれば、本行が明治十一年始めて支店を韓国に設けてより、年を閲すること玆に三十一年、其間拮据経営次第に業務を拡張し、枢要の各地には支店・出張所を置き、韓国金融の調理と日韓貿易の発達とに貢献すること尠からず、三十八年以来は必要の諸店に貨幣整理部を置き、旧白銅貨・葉銭等の悪貨無慮三億万枚を交換し、或は買収し、同時に新貨幣をも発行して之が流通に努め、同国経済界に何等の動揺をも生ぜしめずして、能く数百年来紊乱せる貨幣を整理統一せり、又国庫金取扱についても漸次支金庫を増設し、秩序を整へ、徴税の状況、国庫金の出納、共に敏活改善を謀りて遺算なきに至れり、而して銀行券の発行は、明治三十五年一覧払手形を発行せる後、屡々韓国官民の妨害に遭ひ、酸苦を嘗むること再三に止まらざりしが、本行の信用年と共に加はりて、遂に韓国人をして紙幣通用の利便と安全とを知るに至らしめたり、此等は皆本行が韓国中央金融機関として、同国の財政経済に努力せる成績の一端なり、而して本行は、この中央全融機関の変革に際し、円満に之が解決を遂げ、営業上の損失を蒙ることなく、平穏に事務の引継を了したるは、亦頭取以下当事者の苦心の大なるを諒とするのみならず、国家社会の為に本行の特権利益を犠牲にして、公益に尽せる精神は、本行の自ら満足する所にして、又密に光栄とする所なり。