デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和2年1月6日（1927年）

是日栄一、当会社社長木村雄次ノ来訪ニ接シ、取締役尾高豊作辞任ノ件ニ付キ報告ヲ聞ク。

渋沢栄一　日記　　大正一五年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
一月五日　曇　寒
○上略　金井滋直氏来ル、東洋生命保険会社ノ事及尾高家ニ関スル近状ヲ談話ス
○下略

渋沢栄一　日記　　昭和二年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
一月六日　快晴　寒気昨ト同シ　今日モ天気朗晴而モ風無クシテ寒威モ厳ナラス、恰モ散策ニ好適ノ時節ナリキ
○上略
午後東洋生命会社長木村雄次氏来話、尾高豊作ノ同社辞任ニ付種々ノ談話ヲ為ス
○下略

（尾高豊作）書翰　　渋沢栄一宛昭和二年一月七日　　　（渋沢子爵家所蔵）
 - 第51巻 p.294 -ページ画像 
拝啓
旧臘中御不快ニ亘らせられ御引籠の由御案じ申上候処、新春ニ入り最早御全癒被遊候やニ拝聞大慶至極ニ奉存候、扨東洋生命保険会社取締役辞任の義ニつき引続き多大なる御配慮を辱うし、小生病床迄敬三様御出で被下、且つハ増田氏へ御懇篤なる御思召御伝達の御計らひ有之第一銀行佐々木様並ニ木村雄次氏へも夫々可然御取なしの結果、万事円満ニ解決仕候事、予てよりの宿意ニても有之誠ニ喜ばしく難有衷心感謝罷在候、第一銀行重役としてハ敬三様小生補欠として御入社被遊候御運びも、之亦最も時宜を得たる御高配と深く感佩仕候
本日木村社長態々拙宅へ御越し被下、種々打ちとけて御懇切なる御話合ひ相遂げ申候、此上ハ病気本復を待ち、飛鳥山御邸を始め奉り、各方面への御挨拶も仕り度、折角静養ニつとめ居候、御蔭様にて盲腸炎も至つて軽症ニ有之、切開等の大事ニ至らず無事経過仕候得共、予後の警戒ニ尚旬余を要し可申かと存候、自然御無沙汰ニ相成候を申訳無之存じ、玆ニとりあへず御礼旁御報告迄如此ニ御座候、何卒厳寒の折柄益御自愛被遊度御願ひ申上候　敬具
　　昭和二年一月七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　豊作拝
　　　　渋沢御祖父上様
　　　　　　　　　　御侍史
　追て拙家所有の東洋生命株式弐千株ハ、昨年末の時価を以て第一銀行へ御引取願ひ無事受授相済候間、何卒御休神被下度願上候

（東洋生命保険株式会社）第弐拾八回事業報告書
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一―八頁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　昭和三年一月刊
　　自昭和二年一月一日至同年十二月三十一日　事業報告書
　　　　　　　　　　　　　東京市麹町区永楽町二丁目二番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東洋生命保険株式会社
昭和二年一月一日ヨリ同年十二月卅一日ニ至ル、第廿八回事業年度ニ於ケル当会社事業ノ成績及諸統計ヲ報告スルコト左ノ如シ
○中略
　　　　三、総会ニ関スル事項
一、昭和二年二月二十一日定時株主総会ヲ本社内ニ開催シ、昭和元年度第二十七回事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書ノ承認ヲ求メ、且同年度利益金処分案並ニ定款第四十四条改正ノ件ヲ附議シ、何レモ満場一致ヲ以テ原案ノ通リ可決シ、次テ取締役永田甚之助、監査役鎌田勝太郎・竹山純平任期満了ニ付選挙ノ件ハ何レモ再選重任トナリ、取締役一名補欠選挙ノ件ハ渋沢敬三当選、即日就任シ、前取締役尾高豊作氏ヘ慰労金贈呈ノ件ハ取締役会ニ一任スルコトニ可決シタリ
○中略
　　　　九、其ノ他重要ナル事項
一、取締役尾高豊作辞任ノ件
　右ハ本店所轄区裁判所ニ於テハ昭和二年一月二十五日、其ノ他ノ支
 - 第51巻 p.295 -ページ画像 
店ニアリテハ同月二十八日迄ニ何レモ所轄区裁判所ニ於テ其ノ登記ヲ了セリ
○中略
三、取締役永田甚之助、監査役鎌田勝太郎・竹山純平再選重任、取締役渋沢敬三当選就任ニ関スル件
　右ハ本店所轄区裁判所ニ於テハ昭和二年二月二十三日、其ノ他ノ支店ニアリテハ同月二十八日迄ニ何レモ所轄区裁判所ニ於テ其ノ登記ヲ了セリ
○下略
　　○尾高豊作ハ尾高次郎ノ長男ニテ、大正九年以来取締役タリ。

集会日時通知表　　昭和二年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
三月一日　火　午前十時　東洋生命保険会社長木村氏来約（飛鳥山）