デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
1節 綿業
3款 東洋紡績株式会社
■綱文

第52巻 p.165-171(DK520017k) ページ画像

大正15年8月12日(1926年)

是日栄一、阿部房次郎ノ当会社社長就任ニツキ、往事ヲ回想シ、且ツ将来ヲ嘱望スル書翰ヲ発ス。尚、引続キ当会社営業ニツキ報告ヲ受ク。


■資料

渋沢栄一書翰 阿部房次郎宛大正一五年八月一二日(DK520017k-0001)
第52巻 p.165-166 ページ画像

渋沢栄一書翰  阿部房次郎宛大正一五年八月一二日   (小平省三氏所蔵)
炎暑之候賢台益御清適之条遥賀之至ニ候、過日御出京之際ハ弊事務処まで御来訪被下候処、匆卒拝接欠礼此事ニ御坐候
貴紡績会社々長之重職も先般斎藤恒三君辞任ニ付、賢台に於て後任御担当之事ハ当然之義とハ奉存候得共、向後別而御負担相増し内外御繁忙之御義と察上候、実に歳月如矢之譬に洩れす、明治十二・三年頃故山辺氏を誘掖指導して、大阪三軒屋に於る新工場創設之当時、及其十九年に至りて故伊藤伝七氏之依頼に応して、三重紡績会社を設立せし新創事業之困難も、老生にハ今尚眼前に髣髴いたし転々今昔之感に堪へす候、爾来玆に約五十年間我邦綿業之進展ハ筆舌之尽し得へきものニ無之、而して貴会社之如き現に其中心に在りて常に牛耳を執るの任に当るものハ、別して平素之御注意容易ならさる事と深く御察申上候何卒此上とも充分御精励相成、弥増斯業拡大相成候様御尽力之程懇祈
 - 第52巻 p.166 -ページ画像 
仕候、過日第一銀行之総会に於て、大阪支店主任野口弥三氏と会見候処、同氏よりも賢台此度貴会社々長御就任被成候事縷々被申聞、且貴会社平生之御注意其宜を得て、目下経済界不況之時節にも拘はらす頗る堅実にして且有利なる御経営之有様詳細ニ談話せられ、殊に従来貴会社と同支店との取引上の関係ニ付而も種々説明有之候間、此上とも不相替御同情之程拝顔仕候
○中略
  大正十五年八月十二日
                    伊香保客舎に於て
                      渋沢栄一
    阿部房次郎様
         玉案下
  尚々老生義本月三日より避暑之為メ伊香保温泉ニ転地仕候、尤も本月末には帰京之積ニ候、乍序申添候也


(阿部房次郎)書翰 渋沢栄一宛大正一五年八月一九日(DK520017k-0002)
第52巻 p.166 ページ画像

(阿部房次郎)書翰  渋沢栄一宛大正一五年八月一九日
                     (渋沢子爵家所蔵)
拝復 御芳翰正に拝誦仕候、当年は殊の外残暑厳敷候処
尊台益御健勝奉大賀候、過般は拝趨長坐□□□仕候
御来諭之如く我紡績業も過去五十年少なからざる浮沈有之候得共今日の盛況に至り我重要工業と相成候事、全く閣下始め先輩諸氏の指導宜しきを得たるに帰因致候、邦家之為め慶賀に不堪候、又弊社に於ても過去幾多小会社を合併し、或る時は株主に迷惑之感を懐かしめ候事ありしも、御蔭を以て今日之大を為すに至り、多少国家に貢献致候事之れ全く閣下始め山辺・伊藤・斎藤等諸氏之誘掖指導之結果と一同感佩致居候、尚乍此上宜敷願上候
斯業之前途も内には労働問題・深夜業廃止之事もあり、外に欧米先進国之圧迫、印度・東洋に於ける販路競争等あり、中々多事多難を被思候、当業者之努力は元よりなれど、先輩諸氏の後援に俟つ事も多大に有之候、何卒今後御力添への程奉懇願上候
○中略
時未だ酷暑の候御厭ひ被遊度候、先は御請旁右申上度如此ニ御申上候
                           敬具
  八月十九日               阿部房次郎
    渋沢子爵
       搨下
  ○当会社ハ毎月貸借対照表ニ書状ヲ添ヘテ栄一ニ送リ、業績ヲ報告セリ。以下ソノ二・三、及ビ其他ヲ掲グ。貸借対照表ハ略ス。


(庄司乙吉)書翰 増田明六宛昭和三年三月六日(DK520017k-0003)
第52巻 p.166-167 ページ画像

(庄司乙吉)書翰  増田明六宛昭和三年三月六日   (渋沢子爵家所蔵)
  昭和三年三月六日
                    庄司乙吉(印)
   渋沢事務所
    増田明六様
 - 第52巻 p.167 -ページ画像 
拝啓 益々御清祥奉賀候
陳者弊社弐月分貸借対照表壱葉御手許ヘ差出候間、子爵閣下ヘ御披露方宜敷御取計ヒ被下度、尚今回略ボ第一期計劃ヲ完成致シ候江州堅田ノ人絹工場ヲ分離シ、新ニ資本金五百万円ノ昭和レーヨン株式会社ヲ設立、其株式拾万株ハ全部東洋紡績ニ於テ之ヲ引受ケ、更ニ資本金七百万円ヲ増加シ、新株ハ本年五月二十五日現在ノ東洋紡績株主ニ対シ拾株ニ付壱株ノ割合ヲ以テ優先引受ノ権利ヲ与ヘ、残余株数ハ其処分ヲ取締役会ニ一任シ一般ニ公募セザルコトニ決定仕リ候間、此儀併セテ御披露被成下度此段御依頼申上候 拝具


(東洋紡績株式会社)第参拾壱回営業報告書 昭和四年下半期 第一―二頁刊(DK520017k-0004)
第52巻 p.167 ページ画像

(東洋紡績株式会社)第参拾壱回営業報告書
                 昭和四年下半期 第一―二頁刊
    第壱 株主総会ニ関スル事項
一昭和四年六月弐拾壱日、大阪商工会議所ニ於テ第参拾回定時株主総会ヲ開キ、昭和四年上半期営業報告書・貸借対照表・財産目録及損益計算書ヲ承認シ、利益金処分案ヲ可決シ、裕豊紡績株式会社創立ニ関スル報告ノ件ハ社長ヨリ詳細報告ヲ為シ、異議ナク之ヲ承認シ次デ岩尾取締役辞任ニ付功労金贈呈ノ件ハ、金額其他総テ取締役会ニ一任シ、後期繰越金ヨリ支出スルコトニ決シタリ、取締役改選期ニ付九名選挙ノ件ハ阿部房次郎・庄司乙吉・木村知四郎・蒲田政治郎・種田健蔵・関桂三・伊藤伝七・山辺武彦再選重任シ、新ニ服部廉輔当選就任シタリ


(庄司乙吉)書翰 渋沢栄一秘書宛昭和四年六月一日(DK520017k-0005)
第52巻 p.167 ページ画像

(庄司乙吉)書翰  渋沢栄一秘書宛昭和四年六月一日   (渋沢子爵家所蔵)
  昭和四年六月一日
                     庄司乙吉(印)
    渋沢子爵秘書 御中
拝啓 益御清祥奉賀候、陳者弊社五月分貸借対照表壱葉玆許同封御手許ヘ差出候間、子爵閣下ヘ御披露方宜敷御取計ヒ被成下度、尚本年上半期配当率ハ従前通リ年弐割五分ト査定致シ、別紙ノ通リ来ル二十一日株主総会ニ附議可致候、併セテ御承知被下度得貴意候 拝具
○下略


(阿部房次郎)書翰 渡辺得男宛昭和五年六月三日(DK520017k-0006)
第52巻 p.167 ページ画像

(阿部房次郎)書翰  渡辺得男宛昭和五年六月三日   (渋沢子爵家所蔵)
  昭和五年六月三日
                     阿部房次郎(印)
   渋沢事務所
    渡辺得男様
拝啓 益御清祥奉賀候、陳者本年上半期末貸借対照表壱葉玆許同封御手許迄差上候、御承知の通り当期は金解禁の影響を受け内地不況の折柄、銀価未曾有の暴落、印度関税引上、次いで外国綿布買止等の為め収益減少致候に付、昨日重役会に於て慎重審議の上当期配当率は年弐割と査定致、別紙之通り来る二十一日株主総会に附議可致候間、子爵閣下へ御披露方宜敷御取計ひ被下度此段得貴意候 敬具

 - 第52巻 p.168 -ページ画像 

(庄司乙吉)書翰 渡辺得男宛昭和五年一二月三日(DK520017k-0007)
第52巻 p.168 ページ画像

(庄司乙吉)書翰  渡辺得男宛昭和五年一二月三日   (渋沢子爵家所蔵)
  昭和五年十二月三日       東洋紡績株式会社
                    庄司乙吉(印)
   渋沢事務所
    渡辺得男様
拝啓 愈御清祥奉慶賀候、陳者本年下半期貸借対照表玆許同封御手許迄差上候、当期配当ハ前期通リ弐割ト査定、別紙之通リ来ル二十日株主総会ニ附議可致候間、子爵閣下ヘ御披露方宜敷御取計ヒ被下度、尚現下我国財界ノ情勢ト海外ニ於ケル国際競争ノ熾烈ナル実情ニ鑑ミ、産業合理化ヲ徹底セシメ倍々社運ノ進展ヲ期シ度重役会ニ於テ慎重審議ノ結果、大阪合同紡績会社ヲ合併スルコトト致シ、去ル十一月八日仮契約書ノ調印ヲ了シ、昨二日開催ノ臨時株主総会ノ承認ヲ得、来ル昭和六年三月十日合併実行ノコトニ相定メ候間、此儀併而御披露被成下度願上候
先ハ右不取敢得貴意度如斯御坐候 敬具


(渡辺得男)書翰控 庄司乙吉宛昭和五年一二月六日(DK520017k-0008)
第52巻 p.168 ページ画像

(渡辺得男)書翰控  庄司乙吉宛昭和五年一二月六日
                      (渋沢子爵家所蔵)
   東洋紡績会社           渋沢同族会社
    庄司乙吉様             渡辺得男
拝復 華墨敬誦仕候、益御清栄奉大賀候、偖て本年下半期貸借対照表御送付被下正に入手、尚当半期配当は前期通り弐割と御査定近く株主総会に御附議の趣拝承、早速主人に披露可致候、次に大阪合同紡績会社を御合併に関し御高示拝承、右につき過日貴社長御来訪親しく御懇話有之、主人に申伝へ候処、誠に適切妥当なる御処置と満腹の賛意を表し居候次第に御坐候、本案も二日の臨時株主総会に於て承認相成候趣此亦敬承仕候
右不取敢貴酬迄如此御坐候 草々敬具
  昭和五年十二月六日


大日本紡績聯合会月報 第四五九号・第二八頁昭和五年一二月 ○東洋紡績株式会社、大阪合同紡績株式会社合併(DK520017k-0009)
第52巻 p.168-169 ページ画像

大日本紡績聯合会月報  第四五九号・第二八頁昭和五年一二月
    ○東洋紡績株式会社、大阪合同紡績株式会社合併
 東洋紡績株式会社・大阪合同紡績株式会社の合併に関し、十一月八日東洋紡績株式会社々長阿部房次郎氏より左の通り発表せり、尚十二月二日各社株主総会を開き、附議決定せり
 現下我国財界の情勢と海外に於ける国際競争の熾烈なる実情に鑑み東洋紡績株式会社及大阪合同紡績株式会社各当事者は、産業合理化を徹底せしむる為め両社合併の有利なるを認め、各自重役会議の承認を経て本日両社の間に合併契約書の調印を了した、来る十二月二日各株主総会を開き附議決定の筈、合併条件の綱要次の如し。
      合併条件
一、東洋紡績株式会社を存続し、大阪合同紡績株式会社を解散する事
 - 第52巻 p.169 -ページ画像 
一、合併比率は合同株五十円払込済十株に付東洋株五十円払込済七株とす
一、合併実行期は昭和六年三月十日とす
 但合併に因り発行する株式に対する配当は、昭和五年十一月廿六日より起算す
一、昭和五年下半期両社利益配当率は東洋二割、合同一割五分を超えざるものとす 以上
      合併後の会社資本金及設備
一、資本金   六千四百九十七万五千円
一、払込資本金 四千九百九十七万五千円(増資金額一千三百十二万五千円)
一、綿糸錘数  一百二十二万五千九百六十四錘
一、撚糸錘数  二十万〇〇〇四錘
一、織機台数  一万六千三百七十八台
一、絹糸錘数  五万二千三百五十六錘


(東洋紡績株式会社)第参拾四回営業報告書 昭和六年上半期 第一―三頁刊(DK520017k-0010)
第52巻 p.169 ページ画像

(東洋紡績株式会社)第参拾四回営業報告書
                 昭和六年上半期  第一―三頁刊
    第壱 株主総会ニ関スル事項
一昭和五年十二月二日、大阪商工会議所ニ於テ臨時株主総会ヲ開キ、十一月八日締結ノ大阪合同紡績株式会社トノ合併仮契約書ヲ承認シ合併実行ニ必要ナル事項ハ総テ取締役ニ一任スルノ件及定款改正ノ件ヲ可決シタリ
一同十二月二十日、大阪商工会議所ニ於テ第参拾参回定時株主総会ヲ開キ、昭和五年下半期営業報告書・貸借対照表・財産目録及損益計算書ヲ承認シ、昭和五年下半期利益金処分案ヲ可決シタリ
一昭和六年三月三十日、大阪商工会議所ニ於テ臨時株主総会ヲ開キ、三月十日ヲ以テ実行シタル大阪合同紡績株式会社トノ合併ニ関スル報告ヲ承認シ、次デ取締役壱名選挙ノ件ハ谷口豊三郎当選就任シタリ、尚取締役会ニ於テ元大阪合同紡績株式会社社長飯尾一二氏ヲ相談役ニ推薦シタル旨ヲ報告セリ
    第弐 株式ニ関スル事項
○中略
一大阪合同紡績株式会社トノ合併ニ伴フ増加資本金壱千参百拾弐万五千円ニ対スル、壱株金五拾円払込済株式弐拾六万弐千五百株(大阪合同紡績株式拾株ニ付七株ノ割合ニテ割当)ノ新発行株券ハ、四月二十八日ヨリ元大阪合同紡績発行ノ提供株券受取証引換ニ交付ヲ開始シ、尚競売代金支払モ同時ニ開始シタリ
○下略


(東洋紡績株式会社)第四拾回営業報告書 昭和九年上半期 第一―二頁刊(DK520017k-0011)
第52巻 p.169-170 ページ画像

(東洋紡績株式会社)第四拾回営業報告書
                 昭和九年上半期  第一―二頁刊
    第壱 株主総会ニ関スル事項
○上略
 - 第52巻 p.170 -ページ画像 
一昭和九年三月十九日、大阪商工会議所ニ於テ臨時株主総会ヲ開キ、昭和レーヨン株式会社トノ合併仮契約書ヲ承認シ、同会社ヲ当会社ニ合併スルノ件、及合併実行ニ必要ナル事項ハ総テ取締役ニ一任スルノ件、並ニ定款改正ノ件、及当社創立二十周年記念トシテ役員特別慰労金五拾万円、従業員特別慰労金壱百五拾万円、及公益事業寄附金壱百万円合計金参百万円ヲ前期繰越金ヨリ支出スルノ件ハ、総テ原案ヲ承認可決シタリ


(東洋紡績株式会社)第四拾壱回営業報告書 昭和九年下半期 第二頁刊(DK520017k-0012)
第52巻 p.170 ページ画像

(東洋紡績株式会社)第四拾壱回営業報告書
                 昭和九年下半期  第二頁刊
    第弐 株式ニ関スル事項
○上略
一元昭和レーヨン株式会社トノ合併ニ伴フ増加資本金六百万円ニ対スル、壱株金五拾円払込済株式拾弐万株(昭和レーヨン株式会社株式壱株ニ付壱株ヲ交付)ノ新発行株券ハ、八月十八日ヨリ、元昭和レーヨン株式会社株券ト引換ニ、交付ヲ開始シタリ、当期末現在ニ於テ、此ノ引換ヲ了セザル株主ハ百六拾六名、此株式数壱千九百拾参株ナリ
○下略



〔参考〕渋沢栄一書翰 阿部房次郎宛(大正元年)九月七日(DK520017k-0013)
第52巻 p.170-171 ページ画像

渋沢栄一書翰  阿部房次郎宛(大正元年)九月七日   (阿部房次郎氏所蔵)
拝読 爾来益御清適奉賀候
然者貴会社八月分計算表御回示被下拝見仕候、毎月恰好之御成績ニて利益も相当ニ有之、且来書ニよれハ将来之御経営も充分之御見込相立候由慶賀之□□御坐候、只為念御注意申上候ハ、兎角紡績業ハ原料製品等ニ多分之資金を要し候為め、巨額之手形□□□□営業用之運転資金を融通いたし候ハ斯業ニ於て不得已義ニハ候得共、一旦金融界之変調にても相生候ハヽ、時として大ニ逼迫を引起申間敷とも難期次第ニ付、前以篤と御注意被成、常々手形を以て取引いたし候銀行間も時々情意を通し会社之実況をも詳知せしめ、金融界匆忙之場合ニ於ても利子之高下ハ兎も角も、融通ニ梗塞等之事不相生様御心掛専一ニ御坐候現ニ此程名古屋ニ於る手形之間違等ニ付而も、自然各銀行間ニ懸念相生候程ニ付常々御用慎被下度候
右ハ婆心ニハ候得共心附候儘拝答旁一言申上候、尚引続き御精励奉祈候 匆々拝復
  九月七日
                    渋沢栄一
    阿部房次郎様
         拝復
 尚々山辺君其外重役諸氏へも御伝声頼上候也

大阪市三軒家 大阪紡績会社 阿部房次郎様 拝答親展 東京日本橋区 渋沢栄一
 - 第52巻 p.171 -ページ画像 
九月七日



〔参考〕渋沢栄一書翰 山辺丈夫・伊藤伝七宛(大正五年)四月二五日(DK520017k-0014)
第52巻 p.171 ページ画像

渋沢栄一書翰  山辺丈夫・伊藤伝七宛(大正五年)四月二五日
                    (阿部房次郎氏所蔵)
拝啓 爾来各位益御清適奉賀候、然者客月岡常夫氏出京せられ候とて来訪ニ付折節老生臥褥中御面会いたし候処、貴会社増資之事ニ付種々御内議有之候由内話有之候間、増資額之割合等ニ付而ハ充分御審議之上適当ニ御決定有之度、就而其割増金ニて積立金出来候場合ニハ、此際是非支那ニ於て一工場設置之御計画必要と相考候旨懇ニ愚見申述置候、右ハ其後之御評議如何相成候哉、既ニ印度タタ氏抔も其計画中之由ニて頃日別紙来状も有之候、又昨夕和田豊治氏会見之際同氏も現ニ取調中と申居候、右様各有力者之着手有之候ニ付而ハ、貴会社ニ於ても願くハ人後ニ落ちさる御奮発あらまほしきものニ御坐候
右者敢而御勧誘と申意味ニハ無之候得共、岡氏面会之際被申聞候処ニてハ、今般之増資御見込通り成功いたし候ハヽ、其割増金ニて色々御考案も有之候趣ニ付、老生ハ是非支那ニ一工場設置之義御決心被成度と企望仕候義ニ御坐候
老生も一月末より再度之流行感冒ニて困難いたし、三月末快方ニ付湯河原へ転地療養、本月十六日帰京、其後ハ稍本復ニ付引続き雑務ニ従事罷在候、御省念可被下候、但家内ニハ病人有之今以安心も仕兼候有様ニて取過居候義ニ御坐候、右一書可得貴意匆々如此御坐候 拝具
  四月廿五日
                      渋沢栄一
    山辺丈夫様
    伊藤伝七様
        各榻下
  尚々他之重役諸君へも宜敷御伝声可被下候也
  ○別紙欠ク。

大阪市北区堂島浜通三丁目 東洋紡績株式会社営業処  山辺丈夫様 伊藤伝七様 要件親展 東京市日本橋区兜町 渋沢栄一
四月廿五日