デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
8節 鉄鋼
3款 九州製鋼株式会社
■綱文

第53巻 p.46-48(DK530010k) ページ画像

大正15年12月22日(1926年)

是ヨリ先、政府ニ於テ、当会社工場施設ヲ買収ノ意アリ、当会社之ヲ応諾スルニ内定ス。是日、当会社常務取締役松本健次郎、渋沢事務所ニ来訪シ、右事情ヲ報告スルト共ニ、之ヲ栄一ニ伝ヘテ其意見ヲ求ムルコトヲ請フ。翌二十三日栄一、増田明六ヲシテ、之ニ異議ナキ旨ヲ回答セシム。


■資料

(増田明六)日誌 大正一五年(DK530010k-0001)
第53巻 p.46 ページ画像

(増田明六)日誌 大正一五年       (増田正純氏所蔵)
十二月廿二日 水 曇夜雪
前十時松本健次郎氏来訪、九州製鋼会社政府に於て買収の意あり、調査委員を設けて評価を定め、之ニ応諾する哉否哉の内話あり、安川男爵としては之ニ応するを得策と存するが、多年御配慮を蒙り且株主たる子爵の御意見伺ひたしとの談話あり
○下略


九州製鋼株式会社株主書類(DK530010k-0002)
第53巻 p.46 ページ画像

九州製鋼株式会社株主書類         (渋沢子爵家所蔵)
                          (明石)
                 白石 (印)
大正十五年十二月廿二日常務取締役松本健次郎氏来話ノ要領 明六
一、本年九月政府ニ於テ買収ノ希望内談アリシコト
一、上記ニ対シ同意ノ内示ヲナシタルコト、会社トシテハ政府ノ製鉄所ト聯絡ヲ取リテ事業ヲ経営スル目的ナリシガ、果シテ永久ノ事業トナスベキヤ懸念ナキ能ハサルヲ以テ、政府ノ内談ニ応スルヲ得策ト認メタルニ依ル
一、政府ハ買収価格調査委員ヲ設ケ、現在ノ建物機械等ニ付テハ評価額ヨリ二割減、土地ニ付テハ、坪凡弐拾円(帳簿価格ハ参拾円ナリ)ヲ以テ買収価格ト定メタリ
  買収価格ニ付テハ調査委員ニ於テ決定シ、予メ会社ヘ相談セス、建物・土地・機械器具等ハ事実政府ニ於テ必要トスルモノ丈ヲ買収スルコトヽ定メ、不用ノモノハ一切除外シタリ
一、買収代金ハ製鉄所事業公債ヲ発行シテ之ヲ交付スルコト
  金額ハ額面百円ニ対シ凡八拾参円位ナランカ
一、製鉄所ハ特別会計ト為スコトニ予テ決定シアルヲ以テ、仮リニ今期議会解散トナルモ、特別議会ニ於テ協賛ヲ受クルコトヽナルベシ、又仮リニ政府更迭トナルモ次ノ政府ハ此方針ヲ継続スルモノト思フ
    以上
 - 第53巻 p.47 -ページ画像 


九州製鋼株式会社株主書類(DK530010k-0003)
第53巻 p.47 ページ画像

九州製鋼株式会社株主書類         (渋沢子爵家所蔵)
                      (敬三)
(控)                    (印) 白石
拝啓 時下益御清適奉敬賀候、然ハ昨日ハ尊来之処御匆々に打過し欠敬御免被下度候、扨九州製鋼株式会社に関する尊話之件渋沢子爵に相伝候処、御提案ニ対し聊か異議無之に付此旨早々御答致候様被申聞候右不取敢御通知申上候 匆々拝具
  大正十五年十二月廿三日         増田明六
    松本健次郎様
  尚々渋沢子爵之病気ハ引続き順調に回復、体温脈呼吸殆と平常と相成候間御安意被下度候
  尚男爵様にも宜敷御致声希上候 拝具


九州製鋼株式会社株主書類(DK530010k-0004)
第53巻 p.47 ページ画像

九州製鋼株式会社株主書類         (渋沢子爵家所蔵)
(別筆)
昭和元年十二月廿八日落手明六
拝啓 貴翰難有拝誦仕候、渋沢子爵にハ其後愈御快方に被為向候趣御一同様御安堵被遊候御事と奉拝察候、先日ハ御繁務之折柄御邪魔申上候御願之件早速子爵へ御上申被下候段奉謝候、委細御快諾之趣拝承早速敬一郎へも其旨相伝申候、何れ父より御挨拶申上候得共不取敢御礼申上度候 拝具
  十二月廿六日               松本健次郎
    増田明六殿


(九州製鋼株式会社)第拾回営業報告書 (自大正十五年三月一日至昭和二年二月廿八日) 第一―二頁刊(DK530010k-0005)
第53巻 p.47 ページ画像

(九州製鋼株式会社)第拾回営業報告書 (自大正十五年三月一日至昭和二年二月廿八日)
                       第一―二頁刊
    第拾回営業報告書 (自大正十五年三月一日至昭和二年二月廿八日)
○上略
      第二、事業概要
当期間ニ於テモ前期同様引続キ作業開始ヲ為スニ至ラザリシガ、偶々政府ニ於テハ鋼材ノ増産計画並ニ銑鋼一貫作業ノ充実ヲ計ル為メ、製鉄所ニ接近スル当社工場用地七万弐千七百坪(埋立地ヲ含ム)及工場設備一切ヲ六百四拾六万八千九百円ニテ買収スルノ希望アル旨ヲ以テ大正十五年九月ニ至リ之ガ正式交渉ヲ受ケタルニヨリ、当社ニ於テモ慎重精査ヲ遂ゲタルニ、買収条件就中価格ノ点ニ於テ聊カ遺憾ナキニアラザルモ、一面国家的見地ヨリ鋼材ノ増産計劃並ニ作業統一ノ企劃ヲ主眼トスル現政府ノ方策ハ素ヨリ之ヲ諒トセザルベカラズ、故ニ此際政府ノ提案ヲ承認スルコトハ本邦現下ニ於ケル鉄国策ヲ助成スル上ニ於テ適当ト認メ、現ニ開会セル第五十二帝国議会ニ政府ヨリ提出ノ本件ニ関スル法案通過シ、且当社ノ株主総会ニ於テ承認ヲ経タル上ハ本契約ヲ締結スベキ旨ノ仮契約ヲ、大正十五年十二月廿二日中井製鉄所長官トノ間ニ締結シタリ
○下略


(九州製鋼株式会社)第拾壱回営業報告書 (自昭和弐年参月壱日至昭卸参年弐月弐拾九日) 第一―二頁刊(DK530010k-0006)
第53巻 p.47-48 ページ画像

(九州製鋼株式会社)第拾壱回営業報告書
           (自昭和弐年参月壱日至昭卸参年弐月弐拾九日) 第一―二頁刊
 - 第53巻 p.48 -ページ画像 
    第拾壱回営業報告書 (自昭和弐年参月壱日至昭和参年弐月弐拾九日)
○上略
      第二、事業概要
当社ノ工場用地及工場設備一切ヲ政府ニ於テ買収スルノ希望アリタルニ対シ当社ハ之ヲ受諾シ、大正拾五年拾弐月弐拾弐日ヲ以テ製鉄所長官トノ間ニ之ガ仮契約ヲ締結シタル処、其後政府ノ提案ニ係ル右買収法案ハ第五十二帝国議会ニ於テ尚調査ノ必要ヲ理由トシ、延期ノ意味ニテ否決セラレ、爾来何等的確ナル進展ヲ見ルコトナクシテ荏苒今日ニ及ビタルハ誠ニ遺憾トスル所ナリ
而シテ工場設備ノ保全ニ関シテハ特ニ周到ナル注意ヲ以テ将来ノ操業上聊カノ遺漏ナキヲ期セリ
次ニ当社取締役会々長タル安川敬一郎ハ当社借入金整理ノ目的ヲ以テ金参百万円也ヲ無利息提供方申出タルニヨリ、昭和弐年七月参拾日取締役会ノ決議ヲ経テ之ヲ受諾シタリ
○下略