デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
8節 鉄鋼
3款 九州製鋼株式会社
■綱文

第53巻 p.48-51(DK530011k) ページ画像

昭和3年6月25日(1928年)

是日、当会社常務取締役松本健次郎、渋沢事務所ニ来訪、当会社工場施設ヲ政府ニ賃貸シ、爾後、八幡製鉄所ニ於テ経営スルコトトナリタル旨報告ス。

昭和九年二月一日、我国製鉄業統合ノタメ日本製鉄株式会社ノ設立ニ際シ、当会社ハ其工場施設一切ヲ挙ゲテ之ニ参加ス。


■資料

(増田明六) 日誌 昭和三年(DK530011k-0001)
第53巻 p.48 ページ画像

(増田明六) 日誌 昭和三年       (増田正純氏所蔵)
六月廿五日 月 降雨 出勤
○上略
午後三時松本健一郎氏来訪《(松本健次郎カ)》、九州製鋼所を政府ニ貸与する事になつた由で委細の報告があつた
○下略


中外商業新報 昭和三年六月二三日 九州製鋼工場を八幡製鉄が借入 けふ正式契約成立し多年の懸案漸く解決(DK530011k-0002)
第53巻 p.48-49 ページ画像

中外商業新報 昭和三年六月二三日
    九州製鋼工場を八幡製鉄が借入
      けふ正式契約成立し多年の懸案漸く解決
八幡製鉄所の九州製鋼株式会社委任経営に伴ふ工場借入については、廿二日午前商工省において中井製鉄所長官と九州製鋼代表松本健次郎氏との間に正式に契約を締結した、これに依つて多年懸案の問題も漸く解決されるに至つた、しかして事業開始は本年末の予定である、右契約の内容並びに理由左の如し
 鋼材の需要逐年増加し、頃者製鉄所に於て其注文に応じ能はざる場合甚だ尠しとせず、殊に軌条其の他鉄道用鋼材に於て然りとす、然るに纔に一道路を隔てゝ同所の西端に隣接し、事業上に於ては殆ん
 - 第53巻 p.49 -ページ画像 
ど一地域とも言ひ得べき地点に九州製鋼会社工場の休業せるあり、同工場は大正十二年大略竣功し、試運転を行へるのみにて、未だ一回の操業を為さず、常に周到なる手入を尽し来れることは周知のことなり、而して同工場は年約九万瓲の製鋼能力と、約七万瓲の鋼材圧延能力を兼ね有するを以て、同所が之を活用して前記鋼材を同工場の設備に依りて製造することゝせば、之に依りて注文急需の一部は緩和することを得べく、同所作業上にも便益尠しとせず、又其の結果として正貨海外流出の幾分を防止し得べし、故に此の際前記工場を製鉄所に借入れ、年額約七万瓲の鋼材の生産を為す為め今回契約を締結するに至つた、其の要旨左の如し
一、直に聯絡設備並に設備完成工事に着手し、五・六箇月を経て工事完成後作業を開始す
二、右に要する費用は東洋製鉄の前例に依り既定予算の差繰りに依り支弁す
三、借入期間は一年毎に更新す、但し会社は昭和四年度以降五回の更新は之を拒むことを得ず
四、借料は年額二十八万円とし、本年度は作業開始の日より日割計算を以て支払ふ、将来製品市価の変動に伴ひ多少の増減を為すことあるべし
銑鉄は目下製鉄所自体に於ても年間約十万瓲の冷銑購入を為せる状態なるを以て、本工場に於ても当分購入冷銑を使用する積なり、二三年後に於て製鉄所及戸畑工場の熔鉱炉に依り全部の熔銑供給可能となりたる場合には戸畑の熔銑使用の積なり、本年度に於ては銑鉄並に屑鉄とも相当の貯蔵あるを以て原料供給に支障なし


(九州製鋼株式会社)第拾弐回営業報告書 (自昭和参年参月壱日至昭和四年弐月弐拾八日) 第二―三頁刊(DK530011k-0003)
第53巻 p.49-50 ページ画像

(九州製鋼株式会社)第拾弐回営業報告書
           (自昭和参年参月壱日至昭和四年弐月弐拾八日) 第二―三頁刊
    第拾弐回営業報告書 (自昭和参年参月壱日至昭和四年弐月弐拾八日)
○上略
      第三、事業概要
当社取締役会々長代理松本健次郎ハ昭和参年六月二十二日東京ニ於テ製鉄所長官トノ間ニ当社工場貸借ニ関スル契約ヲ締結シタルニヨリ、同年七月七日臨時株主総会ヲ開キ満場一致之ヲ承認シ、同日ヲ以テ右貸付物件一切ノ授受ヲ了シタリ、依テ製鉄所ニ於テハ之ヲ製鉄所西八幡工場ト称シ、直ニ補完工事ニ着手シ、同年十一月七日ヲ以テ第一号平炉ニ瓦斯注入ヲ行ヒ、滞リナク製鋼作業ヲ開始ス、製材工場中製板工場ハ同年十一月廿四日、型鋼工場ハ昭和四年一月八日ヲ以テ何レモ圧延作業ヲ開始シ、玆ニ工場ノ全機能ヲ発揮シ、以テ我邦鋼材ノ自給量年間約拾万瓲ノ増進ヲ見ルニ至リタルハ誠ニ欣幸トスル所ナリ
昭和参年六月十二日当社工場用地々先海岸埋築完成地壱万弐千参百拾五坪ヲ当初ノ規約ニ基キ、若松築港株式会社ヨリ所有権ノ移転ヲ了シタリ
当社ガ曩ニ当社取締役会々長タル安川敬一郎氏ヨリ無利息ニテ借入シタル整理資金参百万円也ハ、会社ノ資産償却並ニ損失補塡ニ充当スル
 - 第53巻 p.50 -ページ画像 
コトヲ条件トシテ同氏ヨリ無償提供方申出アリタルニ対シ、昭和四年弐月廿八日取締役会ヲ開催シ之ヲ受諾スルコトニ決議シタリ
○下略


(九州製鋼株式会社)第拾七回営業報告書 (自昭和八年三月一日至昭和九年二月二十八日) 第一―八頁刊(DK530011k-0004)
第53巻 p.50-51 ページ画像

(九州製鋼株式会社)第拾七回営業報告書
            (自昭和八年三月一日至昭和九年二月二十八日) 第一―八頁刊
    第拾七回営業報告書 (自昭和八年三月一日至昭和九年二月二十八日)
      一、事業概要
従前ニ引続キ当社工場ヲ製鉄所ニ賃貸中ノ処、当期モ亦鋼材ノ需要著シク増大シタル為メ生産高モ漸次増加シ、工場賃貸契約ヲ解消シタル昭和九年一月末日迄十一ケ月間ニ於ケル当社工場ノ生産高ハ鋼塊十一万八千百五十一噸、型鋼六万百六十五噸ニ上リ、更ニ昭和六年十月以降休止中ノ鋼板工場ハ昭和八年七月ヨリ再ヒ作業ヲ開始スルニ至リ、此ノ七ケ月間ニ於ケル鋼板生産高二万四千二百五十噸ニシテ、何レモ前期ニ比シ多大ノ増産ヲ見タリ
而シテ日本製鉄株式会社ノ設立ニ参加シタル当社ハ昭和九年二月一日工場其他ノ財産ヲ同社ニ引渡シタリ
      二、株主総会
○中略
三、昭和九年一月二十五日明治鉱業株式会社事務所ニ於テ臨時株主総会ヲ開キ満場一致ヲ以テ左記事項ヲ可決々定シタリ
     記
  (イ)当社ハ日本製鉄株式会社ノ設立ニ参加スル為メ当社ガ現有スル固定財産及其他ノ財産ヲ金七百弐拾万四千円ニテ出資スルノ件
  (ロ)定款第二条ヲ左ノ通リ改正スルノ件
   定款第二条 当会社ハ左ノ業務ヲ営ムヲ以テ目的トス
    一、日本製鉄株式会社又ハ其他ノ有価証券ノ取得及処分
    二、動産又ハ不動産ノ取得及処分
    三、前各項ニ附随スル業務
○中略
    一、貸借対照表

     資産ノ部
                         円
払込未済資本金         五、〇〇〇、〇〇〇・〇〇〇
機械                 一〇、六九三・〇〇〇
器具什器               四一、五四四・九八一
貯蔵物品               一六、九七七・一二六
仮払金                一三、七九九・八〇〇
有価証券            七、二〇四、〇〇〇・〇〇〇
金銀在高              二二二、六七七・五二〇
繰越欠損金           四、四一〇、九二九・〇六二
当期欠損金             四六九、八七三・一九一
  計            一七、三九〇、四九四・六八〇
     負債之部
                         円
資本金            一〇、〇〇〇、〇〇〇・〇〇〇
 - 第53巻 p.51 -ページ画像 
借入金             七、三九〇、〇〇〇・〇〇〇
仮受金                   四九四・六八〇
  計            一七、三九〇、四九四・六八〇

    二、財産目録
                         円

払込未済資本金         五、〇〇〇、〇〇〇・〇〇〇
機械                 一〇、六九三・〇〇〇
器具什器               四一、五四四・九八一
貯蔵物品               一六、九七七・一二六
仮払金                一三、七九九・八〇〇
 海岸埋築工事            一三、一〇七・八三〇
 其他                   六九一・九七〇
有価証券            七、二〇四、〇〇〇・〇〇〇
金銀在高              二二二、六七七・五二〇
 当座預金               七、一五一・七二〇
 通知預金             一六五、〇五九・七七〇
 定期預金              五〇、〇〇〇・〇〇〇
 現金                   四六六・〇三〇
  計            一二、五〇九、六九二・四二七

    三、損益計算
     損失之部
                         円
支払利息              二七四、三七九・一三〇
総係費                二〇、二九一・二三〇
日本製鉄株式会社ヘ現物出資評価決定額ト帳簿価額トノ差損
                  八七五、一三一・四六七
雑損失                 五、五六七・六五四
  計             一、一七五、三六九・四八一
     利益之部
                         円
収入利息                四、〇八〇・八四〇
工場使用料             六九五、二三〇・七六〇
雑収入                 六、一八四・六九〇
  計               七〇五、四九六・二九〇
差引当期欠損金           四六九、八七三・一九一
前期繰越欠損金         四、四一〇、九二九・〇六二
後期繰越欠損金         四、八八〇、八〇二・二五三
右之通リニ候也
○下略