デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治43年5月25日（1910年）

是日、当会社ニ於テ、増資ニ関スル大株主協議会開カレ、栄一出席ス。右増資ハ、七月二十五日臨時株主総会ニ於テ議決セラル。

渋沢栄一　日記　明治四三年　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
五月二十五日　曇　暖
○上略　午飧後、東京瓦斯会社ニ抵リ、増資ニ関スル株主相談会ニ出席ス
○下略

中外商業新報　第八六四六号明治四三年五月二六日
　　　　東京瓦斯増資協議
東京瓦斯会社は二十五日午後二時本社に重役会を開き、同社に尤も縁故ある渋沢男、大株主中の大株主たる若尾民造・渡辺治右衛門其他数氏の臨席を請ひ、既報の如く増資に関する協議会を開き、会社重役より左の増資案を提出し協議を為せり
　（一）事業拡張の為現在資本金一千七百万円を三千五百万円とし、其増加金一千八百万円を三十六万株（一株金五十円）に分ち、現在株式と合せて総数七十万株とす、但現在資本金の内未払込残額金四百三十万円は、明治四十三年十一月を期とし之が払込を完了するものとす
　（二）増加株式三十六万株の内三十四万株は、明治四十四年一月現在株主に対し、其所有株式一株に付増加株式一株を割当て募集し、残り二万株は公衆より競争募集を為し、其額面を超ゆる金額は商法第百九十四条の規定に依り準備積立金中に組入るゝものとす
一同、種々所見を述べしが結局原案の時機に適せるを認めたり、併し該増資は多額の金額なるを以て、更に大株主の協議に附するを適当とし、三十日午後四時五百株以上の大株主会を開き之を附議することに決せり、而して大株主会に於て可決の上は、七月の定時総会と共に臨時総会を開き之れを決定すべく、猶同時に定款の改正をも附議すべしと、因に同社は大会社として積立金比較的僅少なるを以て、今回の増資に依り特に二万株（百万円）丈を倍額増資の外に更に増加し、之を競争募集とし、其超過金額を積立金に加へ之が増加を計るものなりと云ふ

東京経済雑誌　第六一巻第一五四四号・第三二頁明治四三年五月二八日
○東京瓦斯増資決定　東京瓦斯会社にては廿五日午後一時より大株主会を開き、渋沢男・若尾民造・渡辺治右衛門・浅野総一郎氏外九名出
 - 第53巻 p.204 -ページ画像 
席、会社よりは重役一同之に列し、高松社長より増資案の内容に就き説明する所あり、多少議論ありしも結局左の如く原案通り決定し、四時散会せり
　　　○前掲増資案ト同ジ、略ス。

竜門雑誌　第二六五号・第七〇頁明治四三年六月
○東京瓦斯会社の増資　東京瓦斯会社大株主は昨日○五月二十五日午後二時より同社に於て増資案に関する協議会を開き、青淵先生・若尾民造・渡辺治右衛門氏外九名出席、高松社長より増資案の内容に就き説明し多少の議論ありたるも結局左の通り決定せり。
　　　○前掲増資案ト同ジ、略ス。
而して未払金四百三十万円の払込を以てフレザーよりの借入金三百万円「内百五十万円は三月、残余は五月を以て弁済期限とす」、其他小口の負債を償却する方針にして、尚該案は来る三十日午後一時より精養軒に於て五百株以上の大株主を招集して附議し、其結果に依り定時総会に提案することゝし、午後四時散会したり。

（東京瓦斯株式会社）営業報告書　第五〇回明治四三年六月　刊
明治四十三年上半期間ニ於ケル本会社ノ業務並ニ諸計算ノ要領ヲ左ニ報告ス
　　　　一　株主総会
一、定時株主総会　一月二十二日、第四十九回定時株主総会ヲ東京商業会議所ニ開会ス○中略
一、臨時株主総会　定時株主総会閉会後、引続キ臨時株主総会ヲ開キ左記各号ノ議案ヲ議決セリ
　（一）渋沢男爵在任中ノ功労ヲ謝スル件ニ付委員ヨリ報告ノ件
　　取締役社長高松豊吉ヨリ明治四十二年七月株主総会ノ決議ニ基キ委員及重役協議ノ上、金五万円贈呈ノコトニ決シタルヲ以テ、一月二十日目録ニ感謝状ヲ添ヘ贈呈シタル旨ヲ報告セリ
○下略
　　　○右ニツイテハ本資料第十二巻所収「東京瓦斯株式会社」明治四十二年六月六日ノ条参照。

（東京瓦斯株式会社）営業報告書　第五一回明治四三年一二月　刊
一、定時株主総会　七月二十五日第五十回定時株主総会ヲ東京商業会議所ニ開会ス、出席株主（委任状共）千八十七人、此株数二十五万八百二十五株ニシテ、取締役ノ提出ニ係ル明治四十三年上半期間内ニ於ケル営業報告書・財産目録・貸借対照表及損益計算書ヲ承認シ、亜テ利益金分配案ヲ議決セリ
一、臨時株主総会　定時株主総会閉会後引続キ臨時株主総会ヲ開キ、左記各号ノ議案ヲ議決セリ
　（一）資本金増加ノ件
　一、会社現在資本金壱千七百万円ニ金壱千八百万円ヲ増加シテ資本金総額ヲ金参千五百万円ト為ス事
 - 第53巻 p.205 -ページ画像 
　二、増加資本金壱千八百万円ハ之ヲ三十六万株ニ分チ新株式ヲ発行スル事
　三、新株式ノ内三十四万株ハ明治四十四年一月一日現在ノ株主ヲシテ、其ノ所有株一株ニ付、一株ノ割合ヲ以テ任意引受ヲ為サシムル事
　四、新株式ノ引受ヲ為サントスル株主ハ、株式申込証ニ会社ノ定ムル申込証拠金ヲ添ヘ会社ノ指定スル期間内ニ、其ノ指定スル銀行ニ差出スヘキコト、右期間内ニ申込ヲ為ササルトキハ新株式ヲ引受クルコトヲ得サル事、申込証拠金ハ第一回払込金ノ内ニ振替ヲ為スヘキ事
　五、新株式ヲ引受ケタル株主ハ会社ノ指定スル期間内ニ第一回ノ払込ヲ為スヘキコト、右期間内ニ払込ヲ為ササルトキハ新株式引受ノ権利ヲ失フ、此場合ニ於テ申込証拠金ハ之ヲ返還セサル事
　六、引受ナキ株式及第一回払込ノ未済ナル株式ノ処分ハ取締役ニ一任スル事
　七、新株式ノ内二万株ハ額面以上ノ価額ヲ以テ競争募集ヲ為スコトトシ、募集ニ関スル一切ノ事項ハ取締役ニ一任スル事
　八、額面ヲ超ユル金額ハ会社ノ準備積立金ニ組入ルル事
　（二）定款改正ノ件
　　第一条第三号ノ次ニ「石炭鉱ノ試掘及採掘」ノ一号ヲ加フル事ニ決ス
　　第二条ヲ「本社ノ資本金ハ参千五百万円トス」ト改ムルコトニ決ス
　　第六条ヲ「本社ノ資本金参千五百万円ハ之ヲ七十万株ニ分チ、一株ノ金額ヲ五拾円トス、前項株式ノ内二万株ハ額面以上ノ価格ヲ以テ発行スルモノトス」ト改ムルコトニ決ス
　　第七条ヲ「本社ノ株券ハ左ノ四種トス、甲種一株券、乙種十株券丙種五十株券、丁種百株券」ト改ムルコトニ決ス
　　第九条第二項中「金五十銭」ノ次ニ「百株券ハ一枚ニ付金壱円」ノ十一字ヲ加フルコトニ決ス
　　第十七条中「其払込ヲ為スヘキ期日」ヲ「其払込ヲ為スヘキ期日ノ翌日」ト改ムルコトニ決ス