デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
18節 其他ノ商工業
8款 非常報知機株式会社
■綱文

第54巻 p.79-83(DK540025k) ページ画像

大正4年7月20日(1915年)

是ヨリ先、小山谷蔵等ハ、電話線利用ニヨル火災報知機ノ製造貸付ヲ目的トスル会社設立ヲ計画シ、是日、政府当局ニ対シ、右電話線利用ノ認可ヲ請願ス。栄一、之ニ賛シ、中野武営ト共ニ、右請願書ニ副申ス。


■資料

渋沢栄一 日記 大正四年(DK540025k-0001)
第54巻 p.79 ページ画像

渋沢栄一 日記  大正四年          (渋沢子爵家所蔵)
六月八日 曇夕方ヨリ雨
○上略 正午帝国ホテルニ抵リ、午飧後非常報知機ノ設備ヲ実験ス○下略


渋沢子爵家所蔵文書 【(謄写版)(表紙)請願書/副申書/大日本非常警報株式会社設立目論見書】(DK540025k-0002)
第54巻 p.79-82 ページ画像

渋沢子爵家所蔵文書
(謄写版)
 (表紙)

  請願書

    請願書
火災防止上火災報知機ノ最モ急要ナルハ今更玆ニ多言ヲ要セス、欧米先進国ノ都市ニ於テハ種々ナル火災報知機ノ設備アルモ、特設線ニ依ル火災報知機ヲ始トシ、孰レモ其ノ構造複雑ナルノミナラス、昼夜間断ナク電流ヲ要シ、随テ之レニ附随スル費用又多大ナリ、依テ我国ノ現状ニ於テハ容易ニ是等ノ一ヲ設置スル能ハサルハ最モ遺憾トスル所ナリ、然ルニ日本特許第弐七四七七号ノ火災報知機ハ構造最モ簡単ニシテ、既設電話線ニ附設スルノ設備ナルガ為メ、多額ノ費用ヲ要セスシテ容易ニ其ノ目的ヲ達シ、電話ノ加入者ハ素ヨリ市街ノ随所ニ之レヲ設クル事ヲ得、我国ノ現状ニ鑑ミ最モ容易ニ社会公安ノ一大欠陥ヲ充タシ、少額ノ資金ヲ以テ実施シ得ヘキ適切ナルモノト認ムルニ付、前記火災報知機ヲ電話ニ連設スルコトヲ御認可被成下候ハバ、私共ニ於テ一ノ株式会社ヲ設立シ、右報知機ノ製造貸付営業ヲ創始シ、其ノ構造ヲ精巧ニシ、試検ヲ厳密ニシ、保存ヲ励行シテ作用ヲ有効ナラシムルト同時ニ、電話ニ些少ノ支障ヲ及ホササルヲ期シ、尚ホ貸付料金ヲ廉ニシテ一般ノ普及ニ努メ、専心公共ノ利益ヲ謀ルヲ以テ目的トシ確実ニ経営可仕ニ付、何卒特別ノ御詮議ヲ以テ右火災報知機ヲ電話ニ連結使用ノ特権私共ヘ御許可相成度、此段奉願上候也
     (日付数字手書)
  大正四年七月廿日
         右出願人
          東京市牛込区納戸町三十七番地
                      小山谷蔵
 - 第54巻 p.80 -ページ画像 
          東京府荏原郡池上村市野倉三百四十五番地
                      今西兼二
          東京市芝区高輪町三十八番地
                      木下英太郎
          同 市赤坂区新坂町六十七番地
                      林愛作
    逓信大臣 武富時敏閣下

(謄写版)
 (表紙)

    副申書

    副申書
非常報知機設置ノ急務ナルハ朝野共ニ之ヲ感シ、此レカ完成実施ヲ計リ、四・五ノ報知機組織ニ付識者間ニ於テ研究セル事已ニ久シト雖モ何レモ莫大ナル資金ヲ要スルガ為メ今日ノ我カ国状ニ適スルモノナク徒ラニ火災ノ惨憺タルヲ目撃シツツアルハ寔ニ遺憾ノ次第ニ御座候、然ルニ大正四年 月 日附ヲ以テ小山谷蔵外三名ヨリ請願ニ及ヒ候電話機利用非常報知機ハ、経済的ニ設備シ得ラルルノミナラス、其ノ組織ノ簡易ナルカ為メ其ノ設置ノ容易ナル点ニ於テ最モ便宜ナルモノト被存候、左レバ私共ニ於テモ之レガ普及ヲ計リ社会公共ノ福利ヲ増進致度、右ハ出願人ヨリ協議モ有之候ニ付、私共ノ自信ヲ付添シ爰ニ上申仕候
    (日付数字手書)
  大正四年七月廿日
          東京市日本橋区兜町二番地
                   男爵 渋沢栄一
          同 市本郷区元町一丁目五番地
                      中野武営
    逓信大臣 武富時敏閣下

(謄写版)
    大日本非常警報株式会社設立目論見書
社会ノ公益ヲ増進スルト同時ニ利益ノ見込確実ナルノミナラス、世ノ進歩ト共ニ事業発展ノ見込アルモノハ、企業トシテ上ノ上ナルモノナリ、日本国ニ於テ電話利用非常警報会社ヲ起コスガ如キハ正ニ此ノ二大要素ヲ具備セル者ニシテ、着実ナル実業家ノ進ンテ之ヲ翼讚スルニ躊躇セザル所ナル可シ
      準備会
本業ヲ記《(起)》サンガ為メニ、先ツ以テ準備委員会ヲ起コシ、以テ会社設立ノ準備ヲ整フルヲ要ス、委員会ハ社会ニ相当勢望アリ信用アル紳士ヲ以テ組織シ、一面政府ニ向テ電話使用許可及警視庁ニ対スル交渉運動ヲ継続スルト同時ニ、他方会社組織ノ準備ニ着手スルヲ要ス
      目的
 - 第54巻 p.81 -ページ画像 
会社ハ前記準備委員ヨリ政府ノ認許権ヲ継承シ、且ツ米国人ポツター氏所有ノ特許権及附属ノ必要ナル書類其他一切ノ報告ヲ買収シ、以テ火災盗難ノ非常警報其他附随ノ事業ヲ経営ス
会社ノ資本金ハ壱百万円トシ、第壱回四分ノ一払込ヲ以テ東京ヨリ着手スベシ
      東京市経営目論見
東京市ノ既設電話総数四万壱千八百七拾九個(大正弐年調)ニ対シ一割即チ四千弐百口ヲ以テ加入者ト仮定スルハ、之ヲ欧米ノ実験ニ徴シテ極メテ安全ナル見積リナリ、故ニ此数ヲ基礎トシテ目論見ヲ立ツルニ左ノ如シ
  壱万円    私邸単式加入者  壱千口(一口金十円)
  参万円    商店同様     壱千五百口(一口金二十円)
  四万五千円  復式加入者    壱千五百口(一口金三十円)
  壱万八千円  ボタン四千五百個 復式一口三個ノ割(一個金四円)
  弐万円    市街箱五百個   市ノ設備壱個金四十円
  九千円    復式附属収入
 合計金拾参万弐千円也    総収入金
右経営ニ要スル費用ハ極メテ少額ニシテ、総収入ノ二割乃チ弐万六千四百円ヲ充当スレバ充分ナラン
      右設備費
 一金五万四千七百五拾円也   諸機械製造価格
   内 弐万四千弐百五拾円  単式弐千五百個  壱個九円七拾銭
     壱万四千五百五拾円  復式壱千五百個  同同
     九千円        ボタン四千五百個 同弐円
     六千九百五拾円    市街箱五百個   同十三円
 一金弐万壱千七百八拾円
  内  六千円        レジスター三十個 壱個弐百円
     百拾七円       鈴三十個     同参円九拾銭
      拾壱円       リレー拾個    同壱円拾銭
      九拾円    テープツインメー三十個 同参円
     壱千五百円      電池三千個    同五拾銭
      壱万円       独立電線二十哩  壱哩五百円
      四千円       研究室及事務所
  合計金七万六千四百六拾八円  機械其他設備一切
      会社ノ組織及事業ノ予想
一特許権ハ本会社資産ノ主要項目トナル者ニシテ、此価格金弐拾五万円ノ支払方法左ノ如シ
 一、買売価格ノ半額即チ金拾弐万五千円ハ会社ノ成立ト同時ニ、会社ヨリポツター氏ニ支払フ可シ、此支払ハ会社ノ都合ニ依リ半額即チ六万弐千五百円ハ現金、他ハ会社ノ株券(但シ全額払込)ヲ以テスルモ差支ナシ
 一、残額拾弐万五千円ハ会社ノ第二回資本金払込ト同時(東京以外ノ都市ニ事業拡張ノ時)ニ第壱期ト同様ノ方法ヲ以テ支払ハル可シ但シ会社ハ全額ノ売買価格支払ヲ完了スル迄、会社ノ財産ヲ担保ト
 - 第54巻 p.82 -ページ画像 
スルカ、或ハ其他相当ノ方法ヲ以テポツターノ債権ヲ保証ス可シ
上記ノ条件ヲ以テ権利ヲ買収シ会社ヲ組織スル時ハ、株式総数弐万株(一株額面金五十円)ニシテ、第一回四分ノ一払込金弐拾五万円ヨリ金六万弐千五百円ヲポツター氏ニ支払フモ、残リ現在金拾八万七千五百円ノ資金ヲ以テ東京市ニ事業ヲ開始スルヲ得ベシ、又右資金ノ内ヨリポツター氏ヘ第二回ノ金六万弐千五百円ヲ現金ヲ以テ支払フモ、尚金拾弐万五千円ヲ剰シ、一切ノ設備ニ要スル資金七万六千四百六拾八円ヲ支出シテ充分ナル運転資金ヲ得可シ、依テ東京市経営ノ収支予算ヲ示セバ
 一金弐拾五万円也       総本金
    収入
 一金拾参万弐千円也      総収入
   内訳前掲
    支出
 一金五万八千〇五拾円也
   内 弐万六千四百円    事務所費   収入ノ二割
     壱万参千弐百円    維持費    収入ノ一割
     壱万八千四百五拾円  政府納付金  但シ収入ノ一割五歩
    差引
 一金七万参千九百五拾円也   利益金
右ノ中僅少ナル原価償却ヲナスモ、尚優ニ弐割以上ノ利益ヲ挙グルヲ得ベシ、若シ更ニ事業ヲ拡張シテ全国ノ重要都市ニ及ボサバ、経費ハ漸減シ利益ヲ倍加スルコト容易ナル可シ
千九百十三年十二月末日ノ調査ニ依レバ、日本帝国ノ電話加入者総数ハ弐拾万弐百七拾壱口ニシテ、年々ノ増加率ハ約七千五百ナリ、内全国ノ重要二十二都市ノ加入者数ハ
  東京 四万壱千八百七拾九  大阪 弐万壱千四百参拾九
  京都 壱万〇弐百拾五    横浜   四千七百弐拾弐
  神戸 五千九百四拾九    名古屋  五千八百九拾五
  其他ハ平均千五百内外十六市
合計拾壱万四千百八拾壱口ニ達ス、中壱割ヲ以テ加入者ト仮定シ、東京市ト同一比例ノ収入ヲ得ルモノトセバ約四十万円ノ収入ヲ得可ク、之ニ対シテ支出ヲ非常ニ節約スルヲ得可キヲ以テ、利益計算ハ漠大《(莫)》ナル比数ニ達スルナラン、而シテ之ニ要スル会社ノ資本金ハ第二回払込完了即金五拾万ヲ以テ充分ニ支弁スルヲ得可シ


竜門雑誌 第三四九号・第九八―九九頁 大正六年六月 ○非常報知機会社創立内定(DK540025k-0003)
第54巻 p.82-83 ページ画像

竜門雑誌  第三四九号・第九八―九九頁 大正六年六月
 ○非常報知機会社創立内定 我邦に於ける防火消防上の設備不完全の為め、年々数千万円の損害を蒙りつゝあるより、以上の設備欠陥を補ふべき新設備装置の急務に就き屡々有力者間の議に上り居たる所、今回愈々男爵長松篤棐・各務鎌吉・木下英太郎・川崎肇・八十島親徳外七氏発起となり、資本金一百万円を以て、前記の会社を設立することに内定し、追て具体的に協議の纏り次第、之を社会に公表して株式の募集に着手する由。而して此計画は昨年来青淵先生を始め中野武営
 - 第54巻 p.83 -ページ画像 
安田善三郎等諸氏の賛助あり、警視庁其他当該官庁にも屡々交渉の上終に今回如上の進捗を見るに至りしものなりと云ふ。