デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正11年12月21日（1922年）

是ヨリ先、大正九年一月当会館設立セラル。是日朝野ノ名士多数ヲ招待シテ開館式ヲ挙行ス。栄一、来賓トシテ出席シ、祝辞ヲ述ブ。

翌十二年九月一日ノ関東大震災ニヨリ、当会館ハ甚大ナル損害ヲ蒙リ、経営困難ニ陥リタルタメ、帝国劇場株式会社ニ合併シ解散スルコトトナリ、十四年五月五日、臨時株主総会ニ於テ、之ヲ議決ス。

竜門雑誌　　第四一六号・第五九頁　大正一二年一月
○東京会館開館式　丸の内に建築せられたる株式会社東京会館にては十二月廿一日正午より朝野の名士を招待して盛大なる開館式を挙行したるが、来賓には青淵先生を始め、清浦枢密院議長、内田・水野・鎌田各大臣、金子子、宇佐美東京府知事、後藤東京市長、阪谷・大倉両男、高橋政友・加藤憲政両集総裁、赤池警視総監等八百余名参し、定刻社長藤山雷太氏の挨拶に次ぎ、清浦子・青淵先生の祝辞あり、終つて宴を開き、閉宴後、来賓一同は同館の地下道より帝国劇場に到りて余興を見、同四時散会せる由。
　　○栄一祝辞筆記ヲ欠ク。

（株式会社東京会館）第八回報告書
　　　　　　大正十二年下半期（自大正十二年六月一日至同年十一月三十日）　付・第一四頁刊
　　　　株式会社東京会館株主姓名表
　　　　　　　　　　　　　　大正十二年十一月三十日現在
　　　　　　　　　　　　　　（イロハ順）
　株数　　　　　姓名
○上略
　参〇〇　　　渋沢同族株式会社々長
　　　　　　　　　　　　渋沢敬三
○下略

東京興信所報　　大正一三年九月三〇日
　　　　○（株）東京会館の近況
当社（資本金参百万円、内払込弐百五拾五万円）は現重役諸氏中心となりて広く株式を京浜間上流方面に募集し、九年一月設立せるも、一昨年九月頃迄は本館建築中にて準備時代に属し、事業開始は同年六月以降なり、常務平沼氏担当し相当の客足を迎へ、昨年上期決算に於ては創業以来の欠損及創立費を全部補塡し、年五分の配当をなし、其後も無事先づ普通の成績を挙げ居たりしが、昨年の変災にて火災は免れたるも、建物大破したれば、直ちに従業員全部を解雇し以て休業のま
 - 第54巻 p.89 -ページ画像 
ま今日に至れりと云ふ、而して之れが善後策に就ては、当事者が幾度となく協議せるも、具体化せざりしが、曩頃来株主側より十余名選挙し、之等諸氏と会社役員とを以て委員会を組織し、最近漸く具体化せり、其の内容を仄聞するに、大破せる建物に大修理を施し元通り営業を営むに在り、而て之れが復旧には大約壱百万円を要するものゝ如く之れが為に要する資金調達方法には具体説を聞かずと云ふ、而して之れが決定次第工事に着手する事となれるが、工期は大体十ケ月位を要するものゝ如しと云ふ、震災後引続き休業せるが為め毎期欠損を重ね去る五月末日締切りたる本年上期決算に於て拾壱万弐千九百六拾八円余の欠損を計上し、之に前期繰越欠損参拾六万九千壱百六拾四円余を加へ都合四拾八万弐千壱百参拾弐円余を後期繰越欠損とせるが、内実震災損害は計上せず其儘となれるを以て、実際欠損額は不明なるも、今仮に建物装飾等が壱百万円にて復旧するものと仮定せは、欠損総額は壱百四拾八万余円となる勘定なるが、尚ほ過去に一ケ年将来更に約一ケ年休業せざる可からざる等、之等間接被害を加ふる時は震災の被害は殆んど致命的に近き影響に相違なく、尚ほ約壱百弐拾万円位の負債もある様子なれば、今後の経営却々容易ならざる可く、復興計画の後れたるも之等の消息を窺ひ得可しとの噂なるも、兎も角復興する事は間違なからんと云ふ

（株式会社東京会館）第拾回報告書
　　　　大正十三年下半期（自大正十三年六月一日至同十三年十一月三十日）　第四―一二頁刊
　○第拾回報告書
　　　　　　第七　事業ノ概況
本会館善後策ニ就テハ既ニ報告セル如ク、本年四月大株主会ヲ招集シ協議ノ結果、大株主ト重役トヨリ成ル委員会ヲ組織シ、審議ヲ重ネタルモ、前期ニ於テハ遂ニ成案ヲ見ルニ至ラザリシヲ以テ、当期ニ於テ是非之ガ解決ヲ期シ、引続キ拾数回ノ集会ヲ催セル外、更ニ成案ノ速成ヲ計ル為メ委員中ヨリ小委員ヲ選ビ、各債権者ニ対シ内情ヲ具ニ報告シ、旧債償還方法ニ付同情アル取計ラヒ方ヲ懇請スル等最善ノ努力ヲ尽シ、屡々折衝ヲ試ミタルモ、債権者ノ意嚮当方所期ノ点ニ達セズ斯クテハ整理到底見込ナク、荏苒延引ナシ難シトテ委員及重役一同辞任ヲ申出ヅルニ至レリ
依テ拾壱月拾弐日総株主集会ヲ開催シ、従来ノ経過ヲ報告シ、併テ善後策ニ就キ協議シタルニ、委員ヲ新ニ選挙シ之ガ方策ヲ講ズルコトヽナレリ
爾来新委員屡々会合シ、鋭意解決ニ腐心セラレツヽアルヲ以テ、断案ヲ得ルノ日遠キニアラズト信ズ
　　○貸借対照表・財産目録略ス。
　　　　損益計算
一金弐万七千六百九拾弐円四拾壱銭　　　　　当期収入金
一金八万九百拾円九拾六銭　　　　　　　　　当期支出金
　　差引金五万参千弐百拾八円五拾五銭　　　当期欠損金
 - 第54巻 p.90 -ページ画像 
一金四拾八万弐千壱百参拾参円八拾五銭　　　前期繰越欠損金
一金五万参千弐百拾八円五拾五銭　　　　　　当期欠損金
　　合計金五拾参万五千参百五拾弐円四拾銭　後期繰越欠損金
右之通リニ候也
　　大正十三年十二月十七日
　　　　　　　　　　　　東京市麹町区有楽町一丁目一番地
　　　　　　　　　　　　　　　株式会社東京会館
　　　　　　　　　　　　　　　　取締役会長　藤山雷太
　　　　　　　　　　　　　　　　常務取締役　平沼亮三
　　　　　　　　　　　　　　　　取締役　　　山本久三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　　伊沢良立
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　　森盛一郎
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　　内田恒太郎
右監査候処相違無之候也
　　　　　　　　　　　　　　　　監査役　　　石川彦太
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　　杉原栄三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　子爵　間部詮信

株式会社東京会館株主書類　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（印刷物）
　　　　臨時株主総会招集通知書
一、開会ノ日時　大正拾四年五月五日午後二時
一、総会ノ場所　東京市麹町区有楽町一丁目一番地　当会館
一、会議ノ目的タル事項
　　左記契約ニ依リ帝国劇場株式会社ニ当会社ヲ合併スルノ件
　　　　　　合併仮契約書
　帝国劇場株式会社（以下単ニ帝国劇場ト称ス）ト株式会社東京会館（以下単ニ東京会館ト称ス）ト合併ノ件、ニ付左ノ如ク仮契約ヲ締結ス
　第一条　帝国劇場ト東京会館ト合併シテ、東京会館ハ解散シ、帝国劇場ハ合併ニ因リ資本ヲ増加シテ存続ス
　第二条　合併後帝国劇場ハ資本金額参拾万円ヲ増加シ、合併ニ因リ株式六千株（壱株ノ金額五拾円、各株ニ付払込ミタル金額五拾円）ヲ発行シ、東京会館ノ株式拾株（壱株ノ金額五拾円、各株ニ付払込ミタル金額四拾弐円五拾銭）ニ対シ帝国劇場ノ株式壱株ヲ割当交付ス
　　　　　前項帝国劇場カ東京会館ノ株主ニ交付スル株式ノ利益配当金ハ、双方ノ株主総会ニ於テ合併決議完了ノ日ヨリ起算シ之ヲ分配スルモノトス
　第三条　東京会館ノ株主ガ所定期間内ニ株券ヲ提供セズ又ハ併合ニ適セサル端数株アルトキハ、其処理ヲ帝国劇場ノ取締役ニ一任ス
　第四条　帝国劇場ハ東京会館ノ権利義務ヲ左ノ如ク承継ス
　　　　　第一、明治生命保険株式会社ヨリ建物担保附借入金五拾万
 - 第54巻 p.91 -ページ画像 
円及株式会社三井銀行ヨリ建物二番抵当借入金五拾五万円、合計金壱百五万円ノ債務
　　　　　　　　　但双方ノ株主総会ニ於テ合併決議完了当日ヨリ帝国劇場ニ於テ承継ス
　　　　　第二、三菱合資会社ヨリ東京会館ノ賃借セル土地ノ契約ハ帝国劇場之ヲ承継ス
　　　　　　　　　但双方ノ株主総会ニ於テ合併決議完了ノ当日ヨリ承継ス
　　　　　第三、東京会館ハ営業権・電話加入権・建設物・機械及器具等現在有姿ノ儘帝国劇場ニ引渡ス
　　　　　　　　　但東京会館ハ其明細表ヲ調製之ヲ提出スルモノトス
　　　　　第四、東京会館ノ現在使用人ハ、双方株主総会ニ於テ合併決議完了ノ当日ニ於テ、新規採用ノ手続ニ依リ帝国劇場之ヲ引継ク
　　　　　　　　　但東京会館ハ現在使用人ノ氏名及其給料額ノ明細書ヲ提出スルモノトス
　第五条　東京会館ハ前条第一号乃至第四号ニ掲載シタル以外ノ金銭債務ニ関シ、合併決議前ニ一切整理ヲ了シ、帝国劇場ニ何等ノ迷惑ヲ及ホサヾルモノトス
　　　　　　但帝国劇場ハ前項整理其他ノ費用トシテ金弐拾万円ヲ限リ東京会館ニ交付スヘキコトヲ約諾ス
　第六条　合併ニ関スル一切ノ手続ハ両会社ノ取締役ニ之ヲ一任ス
　第七条　両会社ハ各来ル五月五日同時ニ株主総会ヲ招集シ、此仮契約ノ承認ニ関スル決議ヲ経ルモノトス
　第八条　第七条以外ノ各条項ハ、第七条ノ各会社株主総会ニ於テ此仮契約ニ因ル合併決議ヲ為シタル時ヨリ、其効力ヲ生スルモノトス
　第九条　此仮契約ハ双方ノ株主総会又ハ、一方ノ株主総会ニ於テ承認ヲ得サルトキハ、法律上何等ノ手続ヲ要セス当然不成立トス
　右仮契約書弐通ヲ作成シ、当事者各自其壱通ヲ所持ス
　　　大正拾四年四月拾六日
　　　　　　　　　　　　帝国劇場株式会社
　　　　　　　　　　　　　締取役会長　男爵　大倉喜八郎
　　　　　　　　　　　　株式会社東京会館
　　　　　　　　　　　　　取締役会長　　　　藤山雷太
右臨時株主総会ヲ招集候間御出席被成下度、此段御通知申上候也
　　尚本総会ニ於テハ御承知ノ通資本及株主ノ過半数ノ御出席ヲ要シ候間、当日御出席難相成候節ハ、来ル五月二日マデニ別紙委任状用紙ニ御記名御調印（当会社ニ届出ノ印鑑ト同一ノ）ノ上御送付相成様呉々モ願上候
　　　大正拾四年四月弐拾日
　　　　　　　　　　　　　　株式会社東京会館
 - 第54巻 p.92 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　取締役会長　藤山雷太

株式会社東京会館株主書類　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（印刷物）
拝啓　予テ御通知申上候通リ、本月五日臨時株主総会ニ於テ帝国劇場株式会社ニ当会社ヲ合併スル件ハ、全員一致ヲ以テ承認可決相成候
尚合併契約第二条ニ依リ、東京会館ノ株式拾株（壱株ノ金額五拾円、各株ニ付払込ミタル金額四拾弐円五拾銭）ニ対シ、帝国劇場株式会社ノ株式壱株（壱株ノ金額五拾円払込済）ヲ割当テ交付スルコトヽ相成候間、左記ノ通リ御所有ノ株券全部ヲ御提供被成下度、若シ期間内ニ御提供セラレザルトキハ商法ノ規定ニ依リ株主タルノ権利ヲ喪失セラルベク候
　　株券提供期間　　　　大正拾四年五月九日ヨリ
　　　　　　　　　　　　同　　　　八月拾日マデ
　　株券提供場所　　　　東京市麹町区有楽町一ノ一
　　　　　　　　　　　　　株式会社東京会館事務所
右御報告旁々御通知申上候也
　　大正十四年五月　日　　　　株式会社東京会館
　　　　　　　　　　　　　　　　取締役会長　藤山雷太
　　○右ハ、渋沢同族株式会社社長渋沢敬三ニ宛テタル、大正十四年五月七日付消印アル葉書ナリ。

（増田明六）日誌　　大正一四年　　　　　（増田正純氏所蔵）
十二日○一二月　土　晴　　　　　　　　　　　　　　出勤
○上略
午後三時、大倉男爵にハ山本久三郎氏同伴子爵を来訪せられしが、折柄御不在なりしを以て、小生代ハりて面会したるニ、帝国劇場附属東京会館修繕費の件ニ付き、清水組（其工事請負者）ニ子爵より談話せられ度との事なり
○中略
来訪者氏名及要談
○中略
3、大倉男爵
　　　　　　　　帝劇附属東京会館建築費の件
4、山本久三郎氏
○下略