デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正13年4月10日（1924年）

是日、当会社社長植村澄三郎、栄一ノ当会社創立以来多年ニ亘ル尽力ニ対シ、感謝状ヲ贈ル。

五月二十四日、栄一、大倉喜八郎ト連名ノ書翰ヲ以テ、当会社社長植村澄三郎ニ対シ、創業以来ノ功労ヲ謝ス。

株主往復　　十勝開墾株式会社　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　（朱書）
　　　　案
拝啓　益御清適奉賀候、陳ば明治三十一年御首唱により創立せられ候十勝開墾合資会社儀、創立当時意想外之種々の困難に遭遇し社員の脱退するもの相踵ぎ、遂に其大半を失ひ、当初の計劃水泡に帰せんとし真に惨憺たる悲境に沈淪し、解散説さへ唱へらるゝに至りしが、閣下は断して之に同せず、其存続を力説せられ、為めに大倉家其他之に做ひ、遂に其基礎を固め候、以来引続き不容易御高配を忝ふし、御蔭を以て明治四十四年に至り其目的たる開墾を了し、翌年五月成功検査を経て開墾土地全部の附与を受け、大正五年には組織を改正して株式会社となし、漸次社運隆昌に赴き遂に今日の盛況を見るに至り候は、偏に閣下の賜物と深く肝銘致、常に感謝罷在所に御座候、然るに今般明治製糖株式会社に当会社之経営を譲渡致候事と相成候に付ては、此機に於て聊か拝謝之意相表度、株主総会の決議により、甚だ薄菲ながら別紙目録の通り進呈仕度候間、何卒御受納被下度、右奉得貴意度如此御座候　敬具
　　大正十三年四月十日
　　　　　　　　　　　　　　　　　十勝開墾株式会社
　　　　　　　　　　　　　　　　　　社長　植村澄三郎
　　　　子爵渋沢栄一閣下
　　○別紙目録ヲ欠ク。

株主往復　　十勝開墾株式会社　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　渋沢事務所内
　　白石喜太郎殿
　　　　　　　　　　（ゴム印）
　　　　　　　　　　十勝開墾株式会社
　　　　　　　　　　　取締役兼農場長　吉田嘉市(印）
拝復　四月八日付御書状正ニ披見仕り候ニ付ては、小職外職員ニ対する慰労金有難く拝受、特《（殊）》の外の御厚配を蒙り恐縮に存じ候、従事員ニ対しては本日夫々交附仕り候間御了承被下度、一同大恐悦にて、御高恩感鳴在罷候、右は改めて御礼申上可く候へ共、小生より取敢す御礼まで申上候
永田氏分株代金も本日手交仕り候
先は右御請け旁々御礼まで申上度如斯御座候　敬具
　　大正十三年四月十五日

（増田明六）日誌　　大正一三年　　　　　　（増田正純氏所蔵）
四月廿一日　月　晴
○上略
午前十二時大倉喜七郎氏を帝国ホテルニ訪問して、十勝開墾会社よりの慰労金を届け、且大倉男爵より同会社農場内小学校及寺院ニ寄附金せられん事を懇請す
○下略

 - 第54巻 p.151 -ページ画像 

株主往復　　十勝開墾株式会社　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（控）
拝啓　益御清適奉賀候、然は十勝開墾合資会社創立以来、賢台には不容易御高配被成下、明治四十四年より社長として一切の事務を担当せられ、最困難なる開墾事業を完成し、翌四十五年五月、開墾土地之全部を受領し、大正五年会社の組織改正後も引続き取締役社長として着着成績を挙けられ候段、一同感謝罷在候、殊に今般特別之御斡旋を以て、同会社株式全部を明治製糖株式会社に譲渡する事と相成、玆に有終の美を収めたるは、全く貴台御尽力之結果に外ならずと喜悦致居次第に御座候、依て老生等申合はせ、右拝謝の寸志を表する為め、甚些少ながら別紙目録の通進呈致候間御受納被下度候
右得貴意度如此御座候　敬具
　　大正十三年五月二十四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　男爵大倉喜八郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　子爵渋沢栄一
　　　　植村澄三郎殿
　　○別紙目録ヲ欠ク。

（増田明六）日誌　　大正一三年　　　　　（増田正純氏所蔵）
七月九日　水　晴
午後六時、小石川伝随院附近偕楽園《（通）》に於て、十勝開墾会社の小宴催されたり、十勝より吉田嘉市君の上京を機として会合せられたる訳なるが、会合者は以前の重役一同なり