デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

6章 対外事業
1節 朝鮮
1款 日韓瓦斯株式会社(日韓瓦斯電気株式会社)
■綱文

第54巻 p.322-335(DK540072k) ページ画像

明治42年6月24日(1909年)

是日、横浜インターナショナル銀行ニ於テ、韓美電気会社買収ニ関スル契約書ノ調印ヲ了シ、七月二日、当会社大株主会ニ於テ、栄一之ヲ報告ス。次イデ同月二十一日、東京銀行倶楽部ニ於テ、当会社臨時株主総会開カレ、栄一、議長トナリテ議事ヲ司宰シ、右買収ノ件及ビ之ニ伴フ定款改正ノ件承認セラル。右定款改正ニヨリ、当会社社名ハ、日韓瓦斯電気株式会社ト改メラル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四二年(DK540072k-0001)
第54巻 p.322 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四二年          (渋沢子爵家所蔵)
六月十九日 雨 冷
○上略 十二時、兜町事務所ニ来リ、竹内・久米・岡崎等三氏ト京城電鉄ノ事ニ関シ、コールブラン氏交渉ノ顛末ヲ聞ク○下略
  ○中略。
六月二十二日 曇 冷
○上略 東京瓦斯会社ニ抵リ、重役会ニ出席シ、辞職ノ理由ヲ述へ、向後ノ措置ヲ協議ス、後、日韓瓦斯会社ニ於テ京城電気鉄道買収ノ事ヲ協議ス○下略
  ○中略。
六月二十五日 雨 冷
○上略 第一銀行ニ抵リテ午飧シ、後、市原盛宏氏ト種々ノ要件ヲ談ス、蓋シ同氏今日韓国ニ帰任スルヲ以テ、銀行事務其他瓦斯・電気・鉱山水力等ニ関スル要務ヲ談話ス○中略
午前十一時、岡崎遠光氏来リ、日韓瓦斯会社ノ事及電車事業買収ノ顛末ヲ報告セラル


中外商業新報 第八三二六号明治四二年七月三日 日韓瓦斯大株主会(DK540072k-0002)
第54巻 p.322-323 ページ画像

中外商業新報  第八三二六号明治四二年七月三日
    日韓瓦斯大株主会
日韓瓦斯会社は二日午後七時銀行集会所に大株主会を開き、会長渋沢男、岡崎専務、高松・久米の両取締役、及大倉喜八郎・浅野総一郎・山中隣之助・藤田俊一・東条一郎氏等二十名出席し、韓美電気会社買収の件に関し協議せり、先づ渋沢男は其交渉経過を陳述したる後の方針に就て
 今や日本人は韓国に対し勢力発展に努むべき秋也、特に京城の経済範囲に対しては痛く注意を加へざるべからず、韓国に於て瓦斯事業の有望なるは勿論なるが、独り此れのみならず、電気事業をも併せ営みて、其発展を速かならしむるは刻下の急務也、今回は交渉経過最も円満なりしは何より幸なり、而して資金百二十万円の調達方法
 - 第54巻 p.323 -ページ画像 
に対しては玆に確乎たる成算あるべく、且将来の利廻りに就ても数年後は必ず充分の見込あり云々
斯くて買収賛成の件を求められて種々協議の結果、一同全然賛成を表し、且事の速かに運ばれんことを希望するもの多数にて、此処に全く決定を告げたり、終つて晩餐を共にし、渋沢男等は退出し、重役其他四・五の諸氏は尚種々の談を重ね、九時頃全く退散せしが、廿日頃には臨時総会を開くやに聞く
  ○「竜門雑誌」第二五四号(明治四二年七月)ニ右ノ記事ヲ転載ス。


銀行通信録 第四八巻第二八五号・第五三頁明治四二年七月 ○日韓瓦斯会社の韓美電気会社買収(DK540072k-0003)
第54巻 p.323 ページ画像

銀行通信録  第四八巻第二八五号・第五三頁明治四二年七月
    ○日韓瓦斯会社の韓美電気会社買収
日韓瓦斯会社は事業追々進行して来る十月より開業することゝなりしが、彼のコールブラン氏の韓美電気会社とは事業の性質上必然競争を免れざる次第なるを以て、同会社に於ては右電気会社を買収し、瓦斯並に電気事業の独占を計画せしも、定款の規定上直に買収する能はざるより、先づ渋沢男を始め同社重役に於て「シンヂケート」を組織し該「シンヂケート」に於て買収に着手し、六月二十四日愈々調談成りしを以て、七月二日銀行倶楽部に於て大株主会を開き其結果を報告せり、而して契約の内容は韓美電気会社の資本金二百五十万円(内五十万円は社債)に対し買収費百七十万円にして、内二十万円は手附金として既に支払を了し、五十万円は社債の儘之を引継ぎ、残り五十万円は五箇年賦にて支払ふものにして、右に関し瓦斯会社にては本月二十日頃臨時総会を開き、定款変更の件と共に買収案を附議する筈なり


京城電気株式会社二十年沿革史 同社編 第三一―四五頁昭和四年四月刊(DK540072k-0004)
第54巻 p.323-329 ページ画像

京城電気株式会社二十年沿革史 同社編  第三一―四五頁昭和四年四月刊
    第五章 韓美電気会社買収顛末
 抑も韓美電気会社は、明治三十七年中米貨三十万弗の社債を起して各種の事業拡張及改善を行ひしも、幾何もなく又資金の欠乏を告げ、前途の困難想像に難からざる折柄、明治四十二年日韓瓦斯株式会社の起工を見たるを以て、同年四月中コ氏○ヘンリー・コールブランは予て懇意なる竹内綱氏に謀りて、渋沢男に売却方を依頼しければ、竹内氏は同月東京に赴きて渋沢男に交渉し、渋沢男は直ちに重役会議を召集して協議せるに、其結果は、第一日本の対韓政策上より、第二は事業統一上より買収を可とし、更に進んで価格と支払方法を交渉せるに、コ氏は売却価額を百二十万円とし、支払方法は第一年目金六十万円、第二年目金六十万円として、契約締結の日より全部支払完了の日まで未払金に対して年六朱の利子を附すること、外に米貨社債五拾万円は其儘継承すること、其他なりければ、我社は実地調査の上評価するを至当とし、白石・久米・岡崎三重役を調査委員として技師二名を伴ひ、同年五月初旬京城に出張し実地調査を為したるに、価格高きに失し、買収に難色あり、仍て伊藤統監、曾禰副統監に経過を報告し、更にその意見を求めしに、両氏共に出来得るだけの犠牲を払ひて買収するやう慫慂せられたるが故に、遂に議定まり、売買に関する法律上の鑑定を弁護士岸精一氏《(岸清一)》に依頼したり。
 - 第54巻 p.324 -ページ画像 
      一、韓美電気会社内容調査報告書
右調査委員が本社に提出せる調査報告書は左の如し
韓美電気会社買収計劃及経営方針別紙の通り調査報告候也
  明治四十二年六月十七日         白石直治
                      岡崎遠光
                      久米良作
韓美電気会社は、韓国京城に於て、電気鉄道・電灯・電話・電気動力の供給等、電気一切の事業を独占するものにして、去る明治三十七年の創立に係り、其資本金は韓皇室の持分金百万円、現社長たる米国人コールブラン氏他一名の持分金百万円、合計金二百万円にして、他に金五十万円の社債を発行し、総額金二百五十万円を以て経営せるものなり、右社長コールブラン氏は同氏他一名の所有に属する株式五千株及一切の権利を売却するの意思あるやに聞及びたるを以て、先般其代価を問合せたるに、金百十二万五千円にて売渡さんことを回答し、且つ若し之の売買にして成立するに於ては、韓皇室の持分に対する代価は自ら斡旋して金三十万円に打切るの承認を受くべき旨申出たり、最も現在の社債金五十万円は買収者に於て継承すべきこと勿論にして、之の提言に依るときは韓美電気会社の財産及一切の権利は金百九十二万五千円の価額を以て売却せらるべき計算となるものとす。前項の回答に接したるを以て、実地に就き該会社の財産及営業の状況を調査したるに、営造物並に機械器具等は多少老朽腐損せるが故に、此等の物件を各其程度に鑑み評価したる結果、其の財産価額は概算金八十七万円を出でざることを知るを得たり、今之の評価額を前項売却価額金百九十二万五千円と対照するときは、営業権並に其他の特権は金百五万五千円の価額を有する計算となり、極めて不廉なりと云はざる可からず、然れどもコールブラン氏にして代償の要求を低下し、廉価に売却するに於ては同会社の買収は、其事業の性質と将来に於ける需要の増加とに考へ、決して不利益ならざるべきを信ず、試みに韓皇室並に同氏他一名の持分を合せ其の代償を金百二十万円に打切り得るものと仮定して、買収後の損益を推算するに、多少の拡張改良を加ふるに於ては別紙予算表に示すが如く、将来資本金に対して一割の利益(八年目より)を得ること必ずしも難事ならざるに似たり。
買収資金調達方法としては、四十二年八月中、日韓瓦斯株式会社株金の第二回払込(一株十二円五十銭)を行ひ、之れに依りて得たる金七十五万円中よりコ氏に対する第一回支払金七十万円を支払ひ、年賦支払は成るべく借入金を以て支払ふべく、又米貨社債五十万円は米国に於て借換を為すか、或は内地借入金を以て償還し、改良工事に要する金五十万円も又借入金を以て充当すべし。
      二、韓美電気会社資産調査
 我社と韓美電気会社との売買交渉に就き、コールブラン氏より我社に提出せる明治四十一年六月一日現在の同社資産並に成績調査書は左の如し。
        資本金及債務
 株金                        二、〇〇〇、〇〇〇・〇〇
 - 第54巻 p.325 -ページ画像 
 第一社債(抵当附年利六分)               五〇〇、〇〇〇・〇〇
 小口債務(二種)                        三六七・五二
 純益累計(一九〇四年八月一日より一九〇九年五月迄)   三一一、六一五・七五
 合計                        二、八一一、九八三・二七
        資産経費
 権利及財産                     二、五〇〇、〇〇〇・〇〇
 改良費及拡張費                      八二、八八〇・七五
 第一社債利払累計                     八三、四九八・九六
 預金及現金在高(現金在高二、四七〇・三九)        八一、〇三三・四九
 営業未収入金(主として電灯料)              一五、四八一・七七
 貯蔵品在高                        二八、六二九・九一
 石炭在高                         一八、八八八・五六
 保険料前払                         一、五六九・八三
 合計                        二、八一一、九八三・二七
第一 純益累計 三一一、六一五・五七ノ使途
 預金及現金在高(上記小口債務 三六七・五二差引)     八〇、六六五・九七
 改良費及拡張費                      八二、八八〇・七五
 第一社債利払累計                     八三、四九八・九六
 営業未収入金                       一五、四八一・七七
 貯蔵品在高                        二八、六二九・九一
 石炭在高                         一八、八八八・五六
 保険料前払(一九〇九年六月以降及一九一〇年の一部に対して) 一、五六九・八三
 合計                          三一一、六一五・七五
一九〇八年五月と一九〇九年五月の収入比較
 収入之部      一九〇八年五月     一九〇九年五月
 乗客賃     一五、三〇一・五四   一三、三〇七・〇七
 荷物運搬賃    一、一一二・〇〇      七二六・〇五
 電灯料      八、八八四・九三    九、六三三・八〇
 動力料金       六一四・六一      七五二・〇一
 電灯器具貸附収入 二、三〇一・二四      八四四・四三
 広告収入金      二五〇・〇〇          ――
 収入利子           ――      四二一・九四
 雑収入        四七三・五〇      一六七・四〇
 合計      二八、九三七・八二   二五、八五二・七〇
 支出之部
 電灯器具据附経費 一、八一九・六二      五八四・〇四
 営業支出     九、一〇三・七八    八、六六二・二九
 石炭代      七、一六九・三二    七、二九〇・七六
 広告費         六七・五〇          ――
 保険料        二三六・〇八      二〇六・四二
 雑費          一六・五〇       四一・四五
 合計      一〇、五二五・〇二    九、〇六七・七四
 純益金
第二 純益金累計 三一一、六一五・七五の年別表
 - 第54巻 p.326 -ページ画像 
 一九〇四年八月より十二月迄 一三、〇八二・五四
     (一月より十二月迄カ)
 一九〇五年  同      三四、一五一・八七
 一九〇六年  同      五〇、六四八・五七
 一九〇七年  同      七八、六七二・二三
 一九〇八年  同     一〇三、七一五・九五
 一九〇九年一月より五月迄  三一、三四四・五九
 合計           三一一、六一五・七五
一九〇九年五箇月間の純益より一箇年の総純益を推算すれば七五、二二七・〇一六となり、前年より減少せり。
        三、両者の覚書交換
        覚書
韓美電気会社ヲ甲トシ、日韓瓦斯株式会社ヲ乙トシテ、明治四十二年六月廿四日左ノ契約ヲ締結ス。
一、乙ハ甲ノ特権財産及営業ノ全部ヲ本年六月一日附貸借対照表ニ拠リ代金百二十万円ヲ以テ甲ヨリ譲受ケ、且ツ甲ノ第一番抵当附ノ社債金五十万円ノ債務ヲ受引クヘキモノトス。
 但引継ノ際甲ノ特権又ハ財産カ右貸借対照表ニ比較シテ減少ヲ来タシ、又ハ新タナル債務ヲ発見シタルトキハ、前項ノ代金ハ之レニ相当スル程度ニ於テ削減スヘキモノトス。
二、甲ハ前項ノ譲渡ニ付、其株主全員ノ一致シタル合意アルコトヲ証明スル為メニ其株式全部ニ対スル株券ニ譲渡委任状ヲ添附シ、乙ニ供託スヘキモノトス。
三、甲ハ第一項ノ譲渡目的物ノ引継完了ト共ニ解散スヘキモノトス。
四、乙ハ手附金トシテ金十万円ヲ本契約調印ト同時ニ甲ニ支払フヘキモノトス。
五、第一一項《(衍)》ノ譲受代金ノ分割弁済方法、並ニ引継ハ左ノ順序ニ依ルモノトス。
 (一)金七十万円(前項ノ手附金十万円ヲ算入ス)ヲ本年八月末日ニ於テ支払ヒ、之レト同時ニ第一項ノ譲渡ノ目的物ノ引継ヲ実行スヘキモノトス。
 (二)金五十万円ハ五個年賦トシ、明年ヨリ明治四十七年マテ毎年一月末日ニ金十万円ツヽ支払ヒ、残額ニ年六朱ノ利子ヲ加ヘタルモノヲ乙ヨリ甲ニ支払フヘキモノトス。
 但シ、乙ハ甲ニ対シ物上担保ヲ提供セサルモノトス。
六、前項ノ弁済並ニ引継ハ、共ニ韓国京城ニ於テ為スヘキモノトス。
七、乙ハ成ルヘク速ニ其定款ヲ改正シテ其目的ヲ拡張シ、本契約ノ実行ヲ期スヘキモノトス。
 但万一乙カ右ノ如キ定款改正ヲ為シ得サルトキハ、乙ハ其指名スル「シンヂケート」ヲシテ乙ニ交替シ、本契約ヲ実行セシムルコトヲ得ヘキモノトス。
八、本契約ハ日本法律ノ適用ヲ受クヘキモノトス。
右契約ノ証トシテ覚書二通ヲ製シ、甲乙各会社ノ社長各自之ニ署名シ且各社印ヲ押捺スルモノ也
      四、韓美電気会社買収契約書調印
 - 第54巻 p.327 -ページ画像 
 両者の売買協商進捗し、明治四十二年六月二十三日双方の代表者は岸法律事務所に会合して契約文案を作製し、翌二十四日横浜インターナショナル銀行に於て、竹内綱氏、岸弁護士及同銀行支配人等立会の上双方契約書に調印せり。
        契約書
ヘンリー・コールブランヲ甲トシ、日韓瓦斯株式会社ヲ乙トシ、千九百九年六月二十四日左ノ契約ヲ締結ス
第一条 甲ハ韓美電気会社ノ株式ノ全部、即チ一万株ヲ、本年六月一日附ノ貸借対照表記載ノ如キ同社一切ノ特許・権利・資産・財産及営業並ニ本年六月以後ノ営業上ノ収益ヲ包含シテ、代金百二十万円ヲ以テ乙又ハ其指名者ニ譲渡スヘキモノトス
第二条 甲ハ前記ノ本年六月一日ノ貸借対照表ニ記載シタル差引計算中、不足ヲ発見シタルトキハ之ヲ塡補スヘク、而シテ貸倒レ又ハ計算違ヒニ対シ五千円タケノ余裕ヲ見積リ、右期日ニ於ケル生キタル資産ノ実価ヲ十四万円以上タラシムヘキモノトス
第三条 前記ノ譲渡ハ米貨二十五万弗ノ第一番抵当附社債ヲ負担シタルマヽ為シタルモノトス
第四条 乙ハ手附金トシテ、金二十万円ヲ本契約調印ト同時ニ甲ニ支払フヘキモノトス
第五条 乙ハ本年八月末日、又ハ其以前ニ前条ノ二十万円ノ手附金ヲ算入シテ金七十万円ヲ以テ甲ニ対シ支払フヘク、且ツ残金五十万円ヲ各十万円ノ約束手形五枚ヲ以テ甲ニ支払フヘキモノトス、而シテ右手形ニハ年百分ノ六ノ利息ヲ附シ、且ツ株式会社第一銀行ノ裏書ヲ得、其第一ハ千九百十年一月三十一日ヲ支払期日トシ、他ノ手形ハ爾後右千九百十年一月三十一日以後満四年間ニ四回ニ分チ毎満一年毎ニ支払フヘキモノトス
第六条 前記株券並ニ会社財算ノ引渡ハ、千九百九年八月三十一日、又ハ其以前ニ五十万円ノ支払並ニ右五枚ノ手形ノ引渡ト同時ニ之ヲ為スヘキモノトス
第七条 前記ノ現金支払ハ前記株券ト引換ニ横浜ニ於テ之ヲ為スヘク又右五箇ノ手形ハ横浜インターナシヨナル・バンキング・コーポレーシヨンノ銀行店舗ヲ以テ支払フヘキモノトス、但シ、エー・エツチ・コールブラン氏並ニ、エス・エル・セルデン氏ハ会社清算ノ目的ヲ以テ無俸給無報酬ニテ韓美電気会社ノ取締役タルヘキコトヲ承諾シタルヲ以テ、其資格ヲ維持センカ為メニ右株式ノ内各一株ヲ保有スル事ヲ許サルヽト雖モ、該両氏ハ該二株ニ無記名譲渡裏書ヲ為シ、之ヲ乙ニ交附シ置クヘキモノトス
第八条 韓美電気会社ハ千九百九年八月三十一日又ハ其以前ニ、前条ニ依ル株式ノ引受アリタル後、速ニ其全財産権利及特許ヲ有効ナル譲渡証書ニ依リ乙ニ譲渡シ、之ト同時ニ前条ニ記載シタル両人以外ノ電気会社ノ取締役三人ハ、乙ノ指定スヘキ三人ヲシテ交代セシメンカ為メニ辞任スヘク、且ツ社長ハ乙ヲ措イテ《(マヽ)》指名スヘキモノトス
第九条 コールブラン・ボストヰツク会社ハ前記財産ノ引渡ノ日ヨリ六ケ月間ハ、二階廊下ノ西南隅ニ在ル其現在ノ事務室ヲ使用スルコ
 - 第54巻 p.328 -ページ画像 
トヲ得ヘキモノトス
第十条 乙ハ可成速ニ其定款ヲ改正シテ其目的ヲ拡張シ、本契約ノ実行ヲ期スヘキモノトス、若シ万一右ノ如キ定款改正ヲ為シ得サルトキハ、乙ハ其指名スル「シンヂケート」ヲシテ乙ニ交代シ本契約ヲ実行セシムル事ヲ得ヘキモノトス
第十一条 乙ハ其費用ヲ以テ検査役一人ヲ韓美電気会社ノ事務所ニ派遣スヘク、該検査役ハ会社ノ一切ノ帳簿・書類・計算及収支ヲ閲覧検査シ得ヘシト雖モ、業務ノ執行ニ干渉スルヲ得サルモノトス
第十二条 取締役ハ日本法律ノ適用ヲ受クヘキモノトス
 右契約ノ証トシテ本証二通ヲ作製シ、当事者各自其代表者ヲシテ署名セシムルモノトス
                      コールブラン
        日韓瓦斯株式会社専務取締役 岡崎遠光
 拙者等ハ、ヘンリー・コールブランカ右契約ノ各約款及条件ヲ誠実ニ履行スヘキコトヲ、コールブラン・ボストヰツク・デベロプメント会社ヲ代表シテ保証候也
                  コールブラン(自署)
                  セルデン(同)
              立会人 竹内綱(印)
      五、本社臨時株主総会と買収趣旨
 本社の韓美電気会社買収は以上の如く進捗したれば、其顛末を大株主に報告して諒解を得るの必要あり、仍て明治四十二年七月二日午後五時、東京市日本橋区坂本町銀行倶楽部に大株主相談会を開きたるに出席者十九名(三百株以上)あり、席上渋沢会長より韓美電気会社の買収経過報告及将来に対する経営方針並に意見等を詳細に述べて賛成を求むるや、満場一致を以て賛成せしかば、愈よ臨時株主総会を召集して買収に関する諸般の承認を得べく、明治四十二年七月六日附を以て招集状を発したり。
 臨時株主総会は明治四十二年七月二十一日午前十時、東京銀行倶楽部に於て開会す、株主総数五百九十四名、権利個数六万に対し、出席株主三百六十五名、権利個数三万八千三百〇三、内委任状三百三十通権利個数三万二千三百〇八なり。
 渋沢会長議長となり、一、韓美電気会社買収の趣旨、二、買収交渉の経過、三、契約の内容、四、資金調達方法、五、買収に関する諸経費、六、電車事業に対する将来の利廻り、七、瓦斯電気利廻合算等詳細に亘る説明あり、満場一致の賛成を得たる後、更に定款改正を附議し、孰れも原案通り可決確定せり。
 尚当日一般株主に発表せる買収趣意書は左の如し。
        韓美電気会社買収趣意書
 日露戦役以後韓国に於ける我官民の経営は日に月に進捗し、殊に京城及び其附近に於ける発展力の著大なるや真に驚くべきものあり、即ち、教育・警察・衛生・道路等の設備は漸次其の面目を一新し、金融・商業・運輸等の機関亦従来に比して頗る釐革せらる、而して是等文明的施設は一として本邦人の拮据経営に待たざるなし、然る
 - 第54巻 p.329 -ページ画像 
に独り市内の電車及電灯は約十年以前米国人コールブラン氏等の創始する所となり、京城に於ける邦人勢力の展開上一障碍たるの感あり、是に於てか数年前より之を本邦人の掌裡に収めんとし、個人又は団体の力を以て、若くは公衙又は官辺の声援を得て之れが買収策を講じたること蓋し三・四回に止まらざりしが、未だ嘗て功を奏せず、顧ふに其の屡次之れが実行を企図したる所以のものは、単に経済的意味のみに非ず、又政治的干繋の伏在したるが為めならんか、而して今回二・三有志者の熱心なる斡旋に基き、傍ら統監府の賛襄を得、本会社の重役及他二・三の組織に係るシンヂケートに於て買収協定を遂げ、同事業の将に本邦人の手に落ちんとするに至りたるは亦一快事と云はざるを得ず、抑々京城の地たるや、韓国首都として八省百官の備れるのみならず、統監府及駐剳軍を始めとして大小官公衙の在るあり、韓国第一流の豪門紳士又多く其地に居住す、即ち物資の消費地及び文明的要具の需要地たるや論なき所なり、知るべし、電気及瓦斯の之の地に於ける必要欠くべからざる事業たるや我日韓瓦斯会社の創設亦実に之れが為めのみ、今日更に一歩を進めて当会社に於てシンヂケートの買収協定を承認し、瓦斯及電気両事業を併営することゝせんか、韓国首都に於ける住民必須の二大要素を独占し、交通機関を始として炊熱及動力の供給を兼営することを得べし、豈利且便ならずや、而して若し将来永く之を他の経営に委ねんか、点火及び動力供給の上に於ては勢ひ営業上の競争を惹起するに至るべく、為めに当会社は営業開始の時より引用家勧誘の上に於て比較的多くの経費と労力とを要すべく、又瓦斯料金の上に於ても多少の不利益を忍ばざるを得ざるに至るべし、加之ならず電気会社設備の現状にては電流の我が埋設鉄管を腐蝕せしむるの虞れありて、之が為に被る損害蓋し鮮なからざるに似たり、今日に於て両事業を合併せば則ち是等の欠点は宜しく速に之を摂理塩梅し得べきのみならず、其の経営は頗る経済的となり随て利潤の増進を見るや必せり。
 韓美電気会社従来の営業方法に就ては動もすれば世間風評あり、或は其の主宰者が米国人たるの故を以て、又は灯力不充分なるの故を以て、若くは電車設備不完全なるの故を以て、住民の感情を害し、経営者も需要者も共に便宜を欠きたるの形跡あり、今之を日韓人の掌裡に移し、且直ちに改良及拡張法を実行せば、是等の点は極めて円満とならん、而して韓美電気会社は啻に電気特許権を有し居るのみならず、事業経営に要する機械器具及び各種原料の関税免除の特典をも併有するに於ては、経営其の宜しきを得ば、前途真に有望と謂ふべし。
 之を要するに我が日韓瓦斯株式会社に於て韓美電気会社を買収せば則ち営業は統一せられ、経費は節約せられ、工事は故障を減殺すべし、而して将来益住民の公益を増進し、聊か以て我が官民韓国経営策の一端を助成するを得ば、亦以て本会社創設の趣意を貫徹するに庶幾らんか。

 - 第54巻 p.330 -ページ画像 

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一巻・第七五四―七五七頁昭和四年一〇月刊(DK540072k-0005)
第54巻 p.330-331 ページ画像

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編  第一巻・第七五四―七五七頁昭和四年一〇月刊
 ○第二編第三章第一節京城の電気軌道
    三、日韓瓦斯会社の創立と韓美電気買収
 明治三十八年日露戦役中より曾禰寛治曾禰荒助子爵の息岡崎遠光日本銀行調査役等の計画せる日韓瓦斯株式会社は、爾来幾曲折を経て東京瓦斯会社社長渋沢栄一子を創立委員長とし、同社重役工学博士高松豊吉を初め久米良作・大橋新太郎・大倉喜八郎・市原盛宏・山口太兵衛等十一名の申請に対し、統監府は光武十一年(明治四十年)六月二十七日附を以て営業認可を与へ、四十一年九月三十日会社の成立を見、東京に本社を置き京城に営業所を設けて其準備に著手し、翌四十二年十一月三日 明治天皇天長節の佳辰を卜して開業初夜点火を行ひ、京城泥峴街を不夜城と化し、日韓人をして瓦斯灯火の効用を知らしめた。
 従来漢城の灯火は韓美電気会社独占の姿なりしも、電灯料甚だ不廉十六燭光一箇月料金二円五十銭十燭光同上一円六十銭なるのみならず、その架設に際して多額の料金を要求するより需要者極めて少なく、五万戸を有する漢城府内電灯需要者は僅々五百戸、灯数十燭換算八千三百九十八灯に過ぎず、是れがため会社は収支相償はずして毎期欠損を続け、料金引下の如き到底望むべくもあらざりしが、之れに反して瓦斯灯の料金は遥に低廉なる上その燭力も亦小電灯に比して頗る快明なるより、一般の歓迎すること限りなく、需要者日に増加するの盛況を呈し、韓美電気のために一大敵国出現せるの観があり、窃に恐慌を感ずるに至つた。斯くしてその社業追々好況に赴かむとするや、敏くも将来を洞察せる韓美電気のコールブランは、予ねて京釜鉄道の発起者にして其の建設事業に干与し朝鮮に関係浅からざる竹内綱を通じて、日韓瓦斯会社に対して電気事業譲渡の意ある旨を洩らした。
 是れより先竹内綱は、明治三十五年頃京釜鉄道建設の用務を帯びて屡々韓国に来往し、其の都度長期間京城に滞留する内、コールブラン等の漢城電気が開業以来事業不振にして、韓廷の出資に対しても引続き無配当の状況なることを探知したるが、予ねて東洋の事業は須らく「東洋人の手に其の実権を把握せざるべからず」てふ高遠なる一種の東洋モンロー主義を抱懐し居れる竹内綱は、此の機会を逸せず漢城電気を買収して日韓人の合同営業と為さむことを企て、公使館書記官萩原守一と相議り、コールブランの行動に注意を怠らざりしが萩原書記官は窃かに会社の内情を調査し、買収につき韓国外部大臣李夏栄子とも謀りて宮中に運動を進め、竹内より韓廷に請願書を提出し、一方加藤増雄元全権公使大江卓の両宮内府顧問も亦共に斡旋の労を取りたる結果コールブランと直接交渉を重ぬるに至りたるも、譲渡価格折合はずして遂に交渉不調に終つたのであるが、玆に到りてコールブランは往年の因縁をたどり、日本資本家に対し韓美電気譲渡に付て竹内綱の尽力方を懇請し来つたのである。
 明治四十二年四月、コールブランが竹内綱を通じて、日韓瓦斯会社社長渋沢栄一に其の事業譲渡に就て交渉したるに依り、渋沢社長は直ちに同社重役会議に謀りたる結果、第一我が国策上、第二事業の統一上之れを買収するを可とせるが、買収価格は百二十万円とし、二箇年
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に分ちて支払ひ、未払込金に対し年六朱の利子を附し、外に社債米貨五十万弗を継承することとなり、同年五月委員白石直治・岡崎遠光・久米良作及技師内藤游等を派して実地調査を遂げ、伊藤統監・曾禰副統監に経過を報告して意見を求め、尚ほ弁護士岸清一に法律上の鑑定を依頼し、交渉を進めたる結果前記条件の下に両者の協定成立し、四十二年六月二十四日横浜インターナシヨナル銀行に於て、竹内綱・岸弁護士及び同銀行支配人立会の上コールブランと岡崎遠光日韓瓦斯会社専務取締役との間に買収契約に調印を了した。
○下略


渋沢栄一 日記 明治四二年(DK540072k-0006)
第54巻 p.331 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四二年        (渋沢子爵家所蔵)
七月二十一日 曇 冷
○上略午前十時銀行集会所ニ抵リ、日韓瓦斯会社臨時株主総会ニ出席シ京城ニ於ケル電車電灯ノ事業ヲ米人ヨリ買収スルニ関スル要件ヲ議決ス、畢テ同会社重役会ヲ開キ、向後経営ノ順序ヲ協議ス○下略


中外商業新報 第八三四五号明治四二年七月二二日 日韓瓦斯総会 日韓瓦斯、電気改称(DK540072k-0007)
第54巻 p.331-332 ページ画像

中外商業新報  第八三四五号明治四二年七月二二日
    日韓瓦斯総会
      日韓瓦斯、電気改称
日韓瓦斯会社は韓美電気買収に関し株主の議決を経る為め、廿一日臨時総会を開けり、出席者は人員三百四十八名、此権利個数三万七千二十三株(委任状共)にして渋沢男議長席に着き、議事に入るに先ち、議案提出の理由に就て曰く
 従来韓国の電灯・電鉄事業は挙げて米人の手に帰し居れり、然るに卅六・七年頃米人コールブラン氏該事業を本邦人の経営に移さんと交渉し来りし事ありしも、機尚熟せざりしが、今春竹内綱氏を介し再び交渉を進め来れり、依て当時上京中の伊藤公の意見を承合し、岡崎専務其他親しく出張実地調査の末、該事業の買収は差当り左の四点の不利益を避くるを得べく、即ち
 一、点火及動力供給の上に於ける競争の弊
 二、瓦斯引用家勧誘に要する比較的多大の経費及労力を要する事
 三、競争に基因する瓦斯価格の低落
 四、電気会社設備の現状にては其電流の当社埋設鉄管を腐蝕せしむる損害
 従て左の二点の利便を受くるを得べし
 一、上述の欠点は容易に摂理按排し得る事
 二、事業経営頗る経済的となるべく、随て利潤の増進を見ること
 斯く認めたるを以て、愈々代償価額に付き交渉を進めたるに、彼の主張は自己受取の分の外韓国皇室御持株たる三十万円、並に米貨廿五万弗の継承を条件とし、都合百九十二万五千円を要する計算なりしも、再び協商の結果、提案の如く社債を承継し、代金百廿万円を仕払ふこととし、六月廿四日を以て仮契約成立し、手附金として内二十万円支払ひたり
 而して該契約の要領は
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 一、全代償金の仕払方法として五十万円は本年八月中に、残額五十万円は明年一月より四十七年一月に至る五箇年間、毎年一月卅一日四十万円宛支払ひ(年六朱の割にて手形五枚交付)、社債五十万円は四十四年より向ふ五箇年間、毎年十万円宛償還
 二、株券一万株及会社全財産の引渡授受は八月末日とす
 三、六月一日現在の帳簿に依り現金・預金・石炭・貯蔵品等金十四万円は八月受渡日に於て授受すべき事等なり、而して該資金の調達方法としては、第二回払込株金(一株十二円五十銭払込)七十五万円を以て第一回仕払金七十万円に充当し、其他の年賦銷却の分、米貨社債償還金並に四十三年電鉄以後拡張改良経費約五十万円は総て借入金を以て弁し得べき見込なり云々
と述べ、議事に入り、二・三問答の末、何等の異議なく満場一致を以て左の原案を可決し、同十一時半散会せり、因に第二回株金の払込期日は八月中旬と定め、追て催告を為す筈也
○下略


東京経済雑誌 第六〇巻第一五〇一号・第三六―三七頁明治四二年七月 ○銀行会社彙報(DK540072k-0008)
第54巻 p.332 ページ画像

東京経済雑誌  第六〇巻第一五〇一号・第三六―三七頁明治四二年七月
 ○銀行会社彙報
○日韓瓦斯会社総会 廿一日銀行集会所に於て臨時総会を開き、渋沢男会長席に着き、第一号議案韓美電気会社の事業一切を買収の件に対し、同社成立の由来、買収談開始の経過より買収利益として
 (一)競争を避ける得る事、(二)需要者加入勧誘の弊を絶つを得る事、(三)瓦斯価格の低落を防ぎ得る事、(四)埋設鉄管腐蝕の損害を免れ得る事、猶ほ買収資金百二十万円の内二十万円は本年六月中に手付金として支払、五十万円は同八月中に、残金五十万円は四十三年一月より四十七年一月に至る五ケ年間、毎年一月三十一日に十万円宛年六分の利を添へて支払ひ、社債五十万円は四十四年より向ふ五ケ年に、同年六分の利を添へ十万円宛償却する事
而して是等資金は差当り第二回の払込金七十五万円を以て之に充て、今後拡張すべき電気鉄道其他に要する資金は成るべく借入金を以て弁ずべく、尚ほ瓦斯電気兼業後の利益は断じて年八分を下るが如き事なかるべき計算なりとて、其利廻率等詳細に説明し、結局満場一致を以て前記第一号議案の外、第二号議案定款を改正して日韓瓦斯電気株式会社とする事、及び事業の目的を拡張して電気事業を加ふる事等を決議したり


(日韓瓦斯電気株式会社)営業報告書 第二回明治四二年八月刊(DK540072k-0009)
第54巻 p.332-333 ページ画像

(日韓瓦斯電気株式会社)営業報告書  第二回明治四二年八月刊
    第二回営業報告書
            東京市京橋区山下町拾四番地
                   日韓瓦斯電気株式会社
 明治四十二年二月一日ヨリ同年七月三十一日ニ至ル業務ノ要領左ノ如シ
      株主総会
○中略
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臨時株主総会 明治四十二年七月二十一日銀行集会所ニ於テ開会ス、出席株主三百六十五名(委任状共)、此株数三万八千三百三株ニシテ、取締役会長渋沢栄一議長席ニ着キ、左ノ二件ヲ議決セリ
 第一号 韓美電気会社ノ事業一切ヲ当会社ヘ買収ノ件
        案
  当会社業務ノ発展ヲ図ル必要上、韓国京城ニ於テ従来電気鉄道及電灯等ノ業務ヲ営ミ居ル韓美電気会社一切ノ特権・権利・資産及営業ノ全部ヲ代金百弐拾万円(外ニ米貨弐拾五万弗ノ第一番抵当附社債ヲ承継スルモノトス)ニテ買収スル事
  右買収ニ関スル諸経費トシテ金壱万五千円ヲ支出スル事
 第二号 定款改正ノ件
        案
  定款第一条及第二条ヲ左ノ如ク改正ス
  第一条 本社ハ日韓瓦斯電気株式会社ト称ス
  第二条 本社ハ韓国ニ於テ、第一、瓦斯ノ製造供給及副生物ノ精製販売、第二、電気鉄道・電話・電灯及電力ノ供給、第三、瓦斯及電気機械器具ノ製作販売、第四、前各項ニ附帯スル業務ヲ営ムヲ以テ目的トス
      庶務要領
商業登記 明治四十二年七月二十七日商号及目的変更ノ登記ヲ申請シ即日其登記ヲ了セリ
買収代金交附 明治四十二年七月三十日横浜インターナシヨナル銀行ニ於テ、専務取締役岡崎遠光、韓美電気会社取締役エス・エル・セルデント会見シ、契約書第六条ニ拠リ買収代金ト同会社株券トノ引替ヲ了セリ
○下略


竜門雑誌 第二五五号・第四三頁明治四二年八月 ○日韓瓦斯会社の経営(DK540072k-0010)
第54巻 p.333 ページ画像

竜門雑誌  第二五五号・第四三頁明治四二年八月
○日韓瓦斯会社の経営 日韓瓦斯株式会社にては七月二十一日午前銀行集会所に於て臨時総会を開きたり、青淵先生議長席に着き、米人の経営に係る韓美電気会社買収の件を議決し、之に伴ふ定款改正の件も満場一致原案通り可決せり、当日青淵先生の説明に係る同会社の経営始末左の如し
 京城に於ける電鉄及電灯事業は米人コールブラン氏の経営する所なりしが、今春竹内綱氏を介して買収の交渉を受け、白石博士・岡崎専務等専ら其衝に当りて実地踏査の上、買収成立の暁は(一)点火及動力供給の上に於て競争なきこと、(二)瓦斯引用家に勧誘上、経費と労力とを軽減し得ること、(三)競争に因る瓦斯価格の低落を防ぐこと、(四)埋設鉄管の腐蝕を防ぐこと等の利益あれば、百廿万円の価格にて買収するに決せり、之に要する資金は一株拾弐円五拾銭宛の割合を以て七拾五万円を払込み、尚将来の運転資金五拾万円は全部借入金を為す見込にて、向後の利益配当は四十三年より年八朱位を為す考なり云々(万朝報所載)

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京城電気株式会社二十年沿革史 同社編 第六九―七二頁昭和四年四月刊(DK540072k-0011)
第54巻 p.334-335 ページ画像

京城電気株式会社二十年沿革史 同社編  第六九―七二頁昭和四年四月刊
    第七章 韓美電気会社事業引継
 日韓瓦斯株式会社は韓美電気会社の事業及全財産引継の為め、明治四十二年七月二十八日附を以て、取締役久米良作・弁護士岸精一《(岸清一)》・工学博士白石直治・技師広沢範敏四氏を引継委員に撰定して京城に派遣し、同八月九日京城に於て双方の委員立会の上、契約書に依る全財産の引継を完全に終了せり、而して引継げる主なるものは左の如し。
 一、特許権 電気鉄道・電灯・電話・松都漢江間電鉄敷設権其他。
 一、財産 コールブラン、ポストヰツク二氏の持株五千株、韓国皇帝の持株、土地建物設備一切、書類二十八通、帳簿十一冊、在庫品及石炭、家具什器、保険料、電車三十七台、貨物運搬車十三台
 一、社員 総人員二百十二名(日人二一人、米人三人、韓人一八八人)、俸給月額五千六百四十六円三十五銭。
      一、李太王の御持株問題
 コ氏は右売買終了後、明治四十二年七月急遽横浜出発倫敦に赴きけるに、同年八月に至り李太王殿下は始めて韓美電気会社が売買せられたることを知り、宮内次官小宮三保松氏に御下問あり、コ氏は右売却に就ては予に何等の交渉も無く、又何等の報告をも為さゞるなり、彼には予の持株全部を托し置けるが、其等を如何にせしや調査せよとの御言葉ありたれば、小宮次官は旨を領して直ちに伊藤統監に報告し、伊藤統監は小松外務部長に命じ、小松氏は八月十七日附を以て東京本社の岡崎専務に対し「旧韓帝の御持株売渡を証明すべき書類の提出」方を促したり、本社は命に依り引継書類並に関係書類を調査せるも、其間何等の疑義無く、又同株券は日本の株券と異りて委任状添附し居らず、両者の関係不明なるを以て、在京城のコ氏の令息を通じて倫敦のコ氏に対して事件の内容に就ての説明を求めたるに、同年九月三十日附、倫敦市ウエストミンスター街カクストンハウス館内エツチ・コールブラン氏より詳細なる説明書到着したり、而して該説明書に依ると、太王殿下とコ氏との関係は種々複雑せる為め太王殿下が誤解せられしものにて、コ氏の行為が正当なりしこと判明せり。
      二、韓美電気会社の残務整理
 韓美電気会社の実体は既に売却せられたるも、法律上の解散手続を完了するまでは、尚依然として其本社は北米セイブルツク市に存在し米国法人として州法の支配を受くるを以て、同社は明治四十二年七月十二日京城事務所に重役会議を開きて左の決議を為せり。
        決議
 之の会議に於て日韓瓦斯株式会社に売却及譲渡を確認したる書類の交付に依り、電気会社の財産が右会社に移転する際、取締役社長エツチ・コールブラン、取締役副社長エツチ・アール・ボストヰツク取締役アール・エル・セルデンの三名は辞職すべしとの動議を可決せり、上記三重役の辞職によりて生ずる後任者は日韓瓦斯株式会社にて指名せられ、又其中の首席者が新重役会議の会長たることを殊に同意す。
 右の決議に基き同日更に重役会議を開きて、岡崎遠光、山口太兵衛
 - 第54巻 p.335 -ページ画像 
久米良作、エツチ・イー・コールブラン、エス・エル・セルデン五氏を重役に選任し、又コ氏の総支配人書記及会計主任辞任申出を容れ、同日午後六時限り其任を解き、後任として曾禰寛治氏を書記及会計主任に選任せり。
 セルデン氏は我社よりセイブルツク市に於ける韓美電気会社の株主総会出席の依頼を受け、同年八月下旬横浜出発、一九〇九年(明治四二年)九月十五日株主総会開会、解散に関する諸般の決議並に手続を了し、会社を完全に解散し、社債二十五万弗は明治四十三年七月二十八日、我社は第一銀行より金五十万円を借入れて即日在横浜インターナシヨナル銀行を経て償還し、明治四十四年三月六日韓美電気会社重役岡崎・久米・山口三氏は米国法律に基き、東京米国大使館に出頭して、大使の面前に於て会社の解散を宣誓署名捺印して査証を得、之を米国に送附し、一九一一年五月二十四日コンネクチカツト州書記官の受理により、玆に韓美電気会社は完全に解散したるものなり。