デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

6章 対外事業
1節 朝鮮
7款 朝鮮森林鉄道株式会社
■綱文

第54巻 p.409-416(DK540082k) ページ画像

大正9年2月28日(1920年)

是日、日本橋倶楽部ニ於テ、当会社創立総会開カル。渋沢同族株式会社、株主トナル。


■資料

朝鮮森林鉄道株式会社 趣意書 目論見書 定款 第一―一六頁 大正八年刊(DK540082k-0001)
第54巻 p.409-413 ページ画像

朝鮮森林鉄道株式会社 趣意書 目論見書 定款  第一―一六頁 大正八年刊
    趣意書
鴨緑江上流及豆満江流域ニ於ケル営林廠所管林野ハ、面積弐百拾八万町歩、蓄積九億余万尺締ヲ算スト称セラレ、朝鮮ニ於ケル一大富源タリ、該森林ノ大部ハ概ネ数百年ノ星霜ヲ閲セル原生林ニシテ、過熟老齢ノ樹木多ク、速ク斫伐利用ノ方法ヲ講セサレハ空ク枯損ニ委スルノ外ナシト雖モ、行程遠クシテ流送ノ途絶エ竟ニ腐朽ニ了ラントス、是豈森林経済ノ一大恨事ニアラスヤ、然レトモ鴨緑江下流ニ於テハ大ニ其情勢ヲ異ニシ、木材流送便ナルカ為メ殆ント斫伐シ尽シテ剰ス所多カラス、漸次上流ニ溯リテ、今ヤ百数十里ノ遠キニ及ヒ、流材ノ混乱筏夫ノ争奪、搬出費ノ昂上等、到底大量ノ運材ニ適セス、然リ而シテ此大森林ニ対シ積極的利用ヲ講セント欲セハ、一ニ森林鉄道ノ敷設ニ待ツノ外策ナキハ何人モ異論ナキ所ニシテ、朝鮮総督府カ吾人ノ出願ニ対シ鉄道敷設ヲ許可セラレタルモノ、蓋シ緊切ナル時代ノ要求ニ応スルノ業ナルヲ認メラレタルニ外ナラス
今回吾人カ特許ヲ得タル鉄道ハ、咸鏡南道咸興ヲ起点トシテ平安北道厚昌郡厚州古邑ニ達スル一線ニシテ、黄草嶺附近ヨリ終点ニ至ル間約百哩深林地帯ヲ一貫スルモノニシテ、沿線五十万町歩ノ地積ニ存在スル木材ハ、此鉄道ニ拠テ一転海岸ニ達スヘシ、此事業タルヤ巨額ノ資金ト、長キ歳月ヲ要シ、遺憾ナカラ初期ニ於テハ予期ノ成績ヲ挙ケ得サルノ虞アルモ、設立後拾ケ年間総督府ヨリ八朱ノ利子補給ノ恩典ニ浴シ得ヘキヲ以テ、安全ニ目的ヲ達スル事ヲ確信スルニ足ルヘシ
吾人ハ会社成立後、起工ニ先チテ線路ノ状況、工事ノ難易、沿線産業ノ関係等ヲ精探シ、比較線ノ調査研究ニ最善ノ注意ヲ払ハサルヘカラス、此間又木材ノ種類蓄積ニ付キテモ既成ノ調査ニ加フルニ再応ノ調査ヲ実行シ、鉄道敷設ノ目的ニ対シテ万遺漏ナキヲ期セサルヘカラス此ノ如クニシテ吾人ハ克ク首尾徹底セル朝鮮富源ノ利用策ヲ実現セシメントス
猶本線ハ其地域ニ於テ農耕ノ適地ト認ムヘキモノ亦尠少ニアラス、交通不便ナル北鮮地方カ、此鉄道ニ依リテ如何ニ著シキ開発ヲ見ルニ至ルヘキカハ、蓋シ想像ニ難カラス、而モ本線完成後更ニ長津・満浦鎮間鉄道敷設ノ命令アリ、従ツテ本線ハ将来之ヲ満洲ニ連結シ、北鮮南満ニ於ケル一大幹線タルヲ得ルノ希望ヲ有ス、要スルニ吾人ハ本鉄道ノ将来頗ル多望ナルヘキヲ信シテ疑ハサルナリ

 - 第54巻 p.410 -ページ画像 
    目論見書
      一、企業計劃書
一、線路起点・終点及其経過スヘキ地名
   起点   咸鏡南道咸興郡咸興
   終点   平安北道厚昌郡厚州古邑
   経過地名 咸興郡五老里・下通里・長津郡古土水・下碣隅里旧鎮・徳洞・長津・厚昌郡南社洞口
二、軽便鉄道、軌条ノ重量、軌間及単複線ノ区別
   軌条     六拾ポンド
   軌間     四呎八吋半
   単複線ノ区別 単線式
三、所要資金金
   壱千九百万円也         建設費
   金壱百万円也          運転資金
   計金弐千万円也
        建設費内訳(百四拾参哩)

                              円
    用地費                 四五七、四〇〇
    土工費               四、三六二、〇〇〇
    橋渠・溝橋・伏樋費         一、一五六、二二〇
    隧道費               二、九六六、四〇〇
    軌条費(百五拾哩六拾ポンド)     四八七五、〇〇〇
    停車場・器械場 諸建物及境界杭費    九二九、九一〇
    運送費                 五〇〇、〇〇〇
    建築用汽車 同用具費           七一、五〇〇
    動力設備及電線架設費          一七七、二〇〇
    ケーブル費               三〇〇、〇〇〇
    総係費                 三一五、九一〇
    工事監督費               七八九、七八〇
    車輛費 機関車拾六輛 貨車百八拾輛 一、六三〇、〇〇〇
    予備費                 四六八、六八〇
    合計金              一九、〇〇〇、〇〇〇

      二、収支予算書
        収入之部
一金弐百六拾万五千参百六拾円     総収入金
        内訳
   一金弐百八万七千八百円     木材運賃収入
     壱ケ年輸送数量三一〇、二五〇噸
   一金四拾壱万七千五百六拾円   一般貨物運賃収入
     壱ケ年輸送数量 七三、〇〇〇噸
   一金拾万円           雑収入
        支出之部
一金百参拾五万七千七拾円       営業費
        内訳
   一金八拾参万七千円       運輸費
 - 第54巻 p.411 -ページ画像 
   一金参拾四万円         保線費
   一金拾八万七拾円        総掛費
差引金百弐拾四万八千弐百九拾円    壱ケ年純益金
     所要資金弐千万円ニ対シ六分弐厘四毛強
  備考
     運賃ハ貨物積込箇所ノ遠近ヲ参酌シ、壱噸壱哩ニ付平均金四銭トス
        以上
右ノ如ク全線完了後ニ於ケル企業利益ハ、資本金ニ対シ利率六朱弐厘四毛ナルモ、運転開始後貨物其他ノ関係ニ於テ所期ノ利益ヲ挙ケ得サル場合ハ、営業ノ基礎確立シ得ル迄政府ノ補給ヲ仰キ、年八朱ノ配当ヲナスモノトス

    定款
      第一章 総則
第一条 本会社ハ朝鮮森林鉄道株式会社ト称ス
第二条 本会社ハ朝鮮咸鏡南道咸興郡咸興・平安北道厚昌郡厚州古邑間ニ軽便鉄道ヲ敷設シ、旅客及一般貨物ノ運輸及此ニ附帯スル事業ヲ営ムヲ以テ目的トス
第三条 本会社ハ本店ヲ朝鮮京畿道京城府ニ置ク、但シ業務ノ都合ニ依リ適当ノ地ニ支店又ハ出張所ヲ設クルコトアルヘシ
第四条 本会社ノ公告ハ本店所在地所轄地方法院ノ登記公告ヲ為ス新聞紙ニ掲載ス
      第二章 資本及株式
第五条 本会社ノ資本金ハ金弐千万円トシ、之レヲ四拾万株ニ分チ、壱株ノ金額ヲ金五拾円トス
第六条 本会社ノ株券ハ五拾株券・拾株券及壱株券ノ三種トシ、総テ記名式トス
第七条 株金払込ノ時期及金額ハ取締役会ノ決議ニ依リ之レヲ定メ、少クトモ二週間以前ニ其通知ヲ発送スヘシ
第八条 株主若シ払込期日ニ払込ヲ怠リタル時ハ、金百円ニ付キ壱日金四銭ノ割合ヲ以テ延滞利息ヲ支払ヒ、尚ホ之レカ為メニ生シタル損害ヲ賠償スヘシ
第九条 株式売買譲渡ヲ為シタル時ハ、本会社所定ノ書式ニヨリ該株券ヲ添ヘ名義書換ヲ請求スヘシ
  相続遺贈其他法律上ノ手続ニヨリ株式ヲ取得シ、又ハ氏名変更ノ為メ名義書換ヲ為サントスルトキハ、請求書ニ其ノ事実ヲ証明スヘキ書類ヲ添附スヘシ、又場合ニヨリ相当ト認ムル保証人弐名以上ヲ立テシムルコトアルヘシ
第十条 株券ノ併合分割ヲ求メ若クハ之レヲ毀損シタル為メ其ノ引換ヲ求メントスルトキハ、本会社所定ノ書式ニヨリ請求ヲ為スヘシ株券ヲ亡失シ又ハ甚シク汚損シ、更ニ其ノ交附ヲ受ケントルトキハ、弐名以上ノ保証人連署ヲ以テ其事由ヲ記載シタル書面ヲ提出スヘシ、本会社ハ請求者ノ費用ヲ以テ其ノ旨ヲ公告シ、参拾日以
 - 第54巻 p.412 -ページ画像 
上九拾日以内本会社ニ於テ定ムル期間ヲ経過シ、故障ナキモノト認メタルトキハ、新株券ヲ交附スヘシ
第十一条 株券名義書換ハ壱枚ニ付金拾銭、新株券交附ハ壱枚ニ付金参拾銭ノ手数料ヲ徴収スヘシ
第十二条 株主其住所氏名又ハ印鑑ヲ変更シタルトキ、又ハ相続ノ開始アリタルトキハ、直チニ之ヲ届出スヘシ
  外国又ハ一週間以内ニ郵便物ノ到達セサル地ニ住所ヲ有スル株主ハ、一週間以内ニ郵便物ノ到達スヘキ地ニ仮住所又ハ代理人ヲ定メ、本会社ニ届出ツヘシ、其変更アリタルトキ亦同シ、本条ノ届出ヲ怠リタル為メ書類ノ不到着又ハ遅延ヲ生スルコトアルモ、本会社ハ其責ニ任セス
第十三条 本会社ハ総会前参拾日以内ノ期間ヲ定メ公告ヲ為シ、株券ノ名義書換ヲ停止スルコトアルヘシ
      第三章 役員
第十四条 本会社ノ取締役ハ拾名以内、監査役ハ七名以内トシ、参百株以上ノ株式ヲ所有スル株主中ヨリ総会ニ於テ選挙ス
第十五条 取締役ハ互選ヲ以テ社長壱名ヲ置ク、業務ノ都合ニヨリ専務取締役・常務取締役若干名ヲ置クコトヲ得
第十六条 取締役ノ任期ハ満参ケ年、監査役ノ任期ハ満弐ケ年トス、但シ在任中ノ最終ノ決算期ニ関スル定時総会以前ニ其任期カ満了スルトキハ、該総会ノ終結スルマテ其任期ヲ延長ス
第十七条 取締役・監査役ニ欠員ヲ生シタルトキハ、株主総会ヲ開キ補欠選挙ヲ行フ、此場合ノ任期ハ前任者ノ残期トス、但シ取締役監査役全員ノ選挙ヲ行フ場合ハ前条ノ任期ニヨル
  在任者ノ数カ法定ノ人員ヲ欠カサルトキハ、取締役会ニ於テ必要ト認ムル時期マテ前項ノ選挙ヲ延期スルコトヲ得
第十八条 取締役ハ在任中其所有スル株式参百株ヲ監査役ニ供託スヘシ、監査役ハ取締役退任後ノ株主総会ニ於テ其責任解除アリタル後前項ノ株式ヲ返還スヘシ
第十九条 取締役・監査役ノ報酬ハ株主総会ノ決議ヲ以テ之レヲ定ム
      第四章 株主総会
第二十条 定時総会ハ毎年五月・拾壱月之レヲ開会ス
第二十一条 総会ノ議長ハ取締役社長之レニ任シ、議事ヲ整理ス、取締役社長差支アルトキハ他ノ取締役之ニ任ス
第二十二条 総会ノ決議ハ出席株主議決権ノ過半数ニヨル、可否同数ナルトキハ議長之レヲ決ス
  議長ハ自己ノ議決権ヲ行フコトヲ妨ケス
第二十三条 総会ニ於ケル株主ノ議決権ハ壱株毎ニ壱個トス、但シ株金払込ヲ怠リタル株主ハ、其払込ヲ為スマテ議決権ヲ行フコトヲ得ス
第二十四条 株主若シ代理人ヲシテ議決権ヲ行ハシメントスルトキハ其法定代理人又ハ本会社ノ株主ヲ以テ代理人トスルコトヲ要ス
第二十五条 総会ノ決議ハ決議録ニ記載シ、議長及出席株主弐名以上之レニ署名捺印スヘシ
 - 第54巻 p.413 -ページ画像 
      第五章 計算
第二十六条 本会社ハ毎年四月・拾月ニ於テ決算シ、損益計算書・財産目録・貸借対照表・営業報告書等ヲ総会ニ提出シテ承認ヲ受クヘシ
第二十七条 本会社ノ損益計算ハ、毎期総収入金ヨリ諸支出金・償却金及賞与金ヲ控除シタル残額ヲ純益金トス、但シ賞与金ハ総収入金ヨリ諸支出金ヲ差引キタル残額ノ拾分ノ壱ヲ超過スルコトヲ得ス
第二十八条 本会社ノ純益金ノ分配ハ法定積立金トシテ其百分ノ五以上ヲ控除シ、残額ヲ株主ニ配当ス、但シ計算ノ都合ニヨリ別途積立金及後期繰越金ヲ為スコトアルヘシ
第二十九条 株主配当金ハ其計算期最終ノ株主ニ払渡スモノトス
第三十条 別途積立金ハ株主配当金ノ補充其他臨時必要ニ応シ之レヲ支出スルコトヲ得
      第六章 附則
第三十一条 本会社ノ負担ニ帰スヘキ設立費用ハ金参万円以内トス
        以上
  大正八年 月 日
                       発起人


(朝鮮森林鉄道株式会社)株主氏名録 第一頁 大正九年刊(DK540082k-0002)
第54巻 p.413 ページ画像

(朝鮮森林鉄道株式会社)株主氏名録  第一頁 大正九年刊
    株主氏名録(大正九年二月廿八日現在)

  株数    府県  氏名
 八五、〇〇〇 東京 東洋拓殖株式会社
 参〇、〇〇〇 熊本 九州製紙株式会社
 弐弐、〇〇〇 東京 大川平三郎
 壱弐、〇〇〇 同  田中栄八郎
 壱弐、〇〇〇 同  長谷川太郎吉
  八、〇〇〇 三重 熊沢一衛
  六、〇〇〇 滋賀 下郷伝平
  五、〇〇〇 朝鮮 津田鍛雄
  五、〇〇〇 東京 小西安兵衛
  四、〇〇〇 岐阜 渡辺甚吉
  四、〇〇〇 東京 藤田好三郎
  参、八〇〇 同  東洋生命保険株式会社
  参、五〇〇 兵庫 伊藤長次郎
  参、五〇〇 東京 松村精一
  参、〇〇〇 熊本 田村久八
  参、〇〇〇 朝鮮 津田イト
  参、〇〇〇 熊本 山内栄吉
  参、〇〇〇 兵庫 阿部房次郎
  参、〇〇〇 東京 渋沢同族株式会社
  参、〇〇〇 大阪 島徳蔵

○下略

 - 第54巻 p.414 -ページ画像 

朝鮮森林鉄道株式会社書類(DK540082k-0003)
第54巻 p.414-415 ページ画像

朝鮮森林鉄道株式会社書類         (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
拝啓 益御清勝之段奉大賀候、陳者去ル大正九年二月二十八日東京市日本橋区浜町壱丁目弐番地日本橋倶楽部ニ於テ開会セシ当社創立総会並株主総会ニ於テ、左項承認可決相成候間、此段御報告申上候 敬具
    左項
一、創立委員ヨリ創立ニ関スル事項報告ノ件
      報告大要
 一、大正八年六月十二日咸鏡南道咸興、平安北道厚州古邑間軽便鉄道敷設ノ件許可セラル
 一、同年九月二十二日朝鮮森林鉄道株式会社設立ノ件許可セラル
 一、同年十月二十日定款ヲ作成ス
 一、同年十二月二十九日株式総数ニ対スル引受割当ヲ結了ス
   一、発起人引受株数 六万四千五百株
   一、引受割当株数 参拾参万五千五百株
 一、大正九年二月五日第壱回株金払込ヲ結了ス
 一、当会社ノ負担ニ帰スヘキ創立費金弐万九千八百六拾六円弐拾五銭也
  以上報告ハ総テ承認ヲ得タリ
二、取締役及監査役選任ノ件
 役員ハ取締役拾名、監査役七名トシ、左ノ通選任セラレ、何レモ就任ヲ承諾セラレタリ
  取締役 大川平三郎君 田中栄八郎君 長谷川太郎吉君 下郷伝平君 津田鍛雄君 熊沢一衛君 藤田好三郎君 島徳蔵君 八木武三郎君 永田甚之助君
  監査役 松平直平君 小西安兵衛君 伊藤長次郎君 渡辺甚吉君 阿部房次郎君 韓相竜君 藤本清兵衛君
三、商法第百三十四条ノ事項調査ノ件
 松村精一君・中井三之助君検査役ニ選任セラレ、左記各項ヲ調査シ総テ正確ナルコトヲ報告セラレタリ
   一、株式総数ノ引受アリタルコト
   一、第壱回株金払込アリタルコト
   一、創立費金弐万九千八百六拾六円弐拾五銭也ノ支出ヲ正当ト認ムルコト
 右ニテ創立総会ヲ終リ、引続キ株主総会ヲ開キ、左記事項ヲ決議確定シタリ
四、定款変更ノ件
 定款第六条ヲ左ノ如ク変更ス
  第六条 本会社ノ株券ハ百株券・五拾株券・拾株券・五株券及壱株券ノ五種トシ、総テ記名式トス
五、役員報酬額決定ノ件
 - 第54巻 p.415 -ページ画像 
 役員ノ報酬額ヲ年額金参万円以内トシ、適宜重役会ノ決議ヲ以テ支出スルコト
        以上
 追記 取締役ノ互選ニ依リ左ノ通選任セラレタリ
   取締役社長 大川平三郎君 専務取締役 長谷川太郎吉君
  大正九年三月五日     朝鮮森林鉄道株式会社
                取締役社長 大川平三郎
   株主       殿



〔参考〕大川平三郎君伝 竹越与三郎編 第三四五―三四九頁 昭和一一年九月刊(DK540082k-0004)
第54巻 p.415-416 ページ画像

大川平三郎君伝 竹越与三郎編  第三四五―三四九頁 昭和一一年九月刊
    第十七、朝鮮に森林を求めて鉄路を開く
        その他の交通事業
 製紙パルプの原料としては、日本内地は北海道と樺太の木材があるのみであり、それも段々乏しくなりつゝあるので、大川君はその新地域を朝鮮に求めて、研究に着手したが、それは鴨緑江上流二百余里の地点にあらざれば木材はない。但対岸には相当の木材が存在するけれども、張作霖勢力に属するもので如何ともすることが出来ぬ。そして鴨緑江上流のものは水路距離三百里に垂んとし、之を伐採して水中に投じて後、二年を経て始めて安東県に到達するといふ状態である。そこで大川君は別に工夫して咸興道方面から鴨緑江上流の水源に向つて鉄道を進め、奥地の木材を搬出することにせば、相当豊富なる材を得べきを確かめ、此の目的を以て、朝鮮森林鉄道会社を起し、官鉄咸興駅を起点として、赴戦嶺に達する鉄道を敷設し、嶺下に工場を建築し動力は嶺上の水力引用を目的とした。赴戦嶺の外にも立派な水力があつて其利用出願をしたが、着手せずに其の儘になつた。此の赴戦嶺の水力は後に野口遵氏の認むる処となり、今は東洋第一の水力事業となつて、三十万キロの電力を全朝鮮に供給しつゝある。是が為めに全朝鮮一般の産業に如何なる大刺撃大利便を与へたか、敢て贅言を要しないのである。然るに此の計画の中途に、欧洲の大戦が勃発し、露国には革命起り、西比利亜沿海洲の木材は或は都合克く日本企業家の手に入るべく想像せらるゝに至つた。沿海洲の森林は海港に接するもの多いので、木材の採集極めて容易にして、朝鮮の奥地より採収するものの如きは、到底比較にならぬほどの形勢なるを看取し、朝鮮森林鉄道は別に其処分を講ぜざるべからざる場合となつた。先是朝鮮総督府は鉄道補助法を制定発布し、内地実業家をして朝鮮の鉄道に投資せしむべく勧誘したるに、之に応じて左記の各鉄道が勃然として計画さるゝに至つた。

両江拓林鉄道(揚子江図面江を結び付くるもの)一千五百万円 男爵 福原俊丸
西鮮殖産鉄道(黄海道)           一千万円      山本悌二郎
朝鮮産業鉄道(慶尚北道)          五百万円      岡村左右松
朝鮮森林鉄道(咸鏡南道)          二千万円      大川平三郎
南朝鮮鉄道(全羅南道慶尚南道)       一千万円      坂出鳴海
朝鮮中央鉄道(慶尚北道忠清北道)      千二百万円     野村竜太郎

 然るに欧洲大戦終熄の後、不景気が全般に亘つて襲来して、各鉄道
 - 第54巻 p.416 -ページ画像 
会社孰れも経営困難に陥るに際し、総督府政務総監有吉忠一君は、救済策として六社の合併を勧誘するので皆喜んで之に応じ、資本金五、七五〇万円、払込一、七六五万円の朝鮮鉄道会社が成立したのは大正十二年九月であつた。
 第一回の社長は、渡辺嘉一君であつた。後昭和二年大川君之に次ぎて社長となり、今日に至つて居る。元来鉄道なるものは毎年幾分の増収あるを例とするが故に、此の鉄道も十五年間の補給契約期間には、独立経営の程度に進むべしと期待せるに、意外にも朝鮮に於ては交通運転の状況、更に進展せず、萎靡停頓の状態を持続して、今日に及んで居る。然るに満洲事件以来、内満の中間に位せる関係よりして、朝鮮の形勢は俄に活気を帯び来り、多年の愁眉を開かんとしつゝある。
 右の如くして朝鮮森林鉄道の整理は出来たれども、木材獲得の目的を以て沿海洲に進みたる大川君の事業は、全然失敗に終はつた。当時大川君の意見では、露国革命政府は必ずや資金に欠乏して居り、溺る者は藁を握むの状態にあるならん。彼等に黄金を示せば、木材買収契約の如きは極めて都合克く取運ぶべき筈である。国交の親疎の如き、今敢て重要視するの要なしと速断して、交渉を開始した。然るに彼は労働者は五十パーセント露人を使用すべしといふ事を主張する。之は実に厄介極まる事と思ひながら、一応尤の次第として、之を応諾して事業に着手せし処、彼の労働者は多くの家族を引連れて、其扶助を要求し、その外何角と托言して怠慢を極め、其能率の如きは話にならざる低度である。そして之を上司に訴れば何時も勝は労働者に帰するのである。斯くて三・四年間幾多の忍耐労苦も何の効もなく、多大の損害を蒙りて、事業抛棄退却の止むなきに至つた。
○下略
  ○当会社幹線路(咸興・満浦鎮間)ノ広軌式軌間ヲ弐呎六吋狭軌式ニ変更スルトキハ、咸興五老里間ニ於テ、咸興炭鉱鉄道(同狭軌式)ト並行布設スルコトトナルヲ以テ、両会社協議ノ結果大正十年十二月十八日、咸興炭鉱鉄道ノ物件並咸興・長豊里間軌道一切ヲ挙ケテ之ヲ当会社ニ買収スル協定成立シ、其後幹線路軌間変更ノ認可及ヒ工事施行認可ヲ受ケ、四月十九日ヨリ第一工区ノ工事ニ着手シタリ。(当会社第五回報告書ニ拠ル)
  ○当会社ハ、大正十二年五月二十八日開催ノ臨時株主総会ノ議決ニヨリ、朝鮮中央鉄道株式会社ニ合併ノ上、解散セリ。(本巻所収「朝鮮鉄道株式会社」参照)