デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

6章 対外事業
2節 支那・満洲
6款 日華実業協会
■綱文

第55巻 p.444-448(DK550085k) ページ画像

大正15年12月10日(1926年)

是日、当協会、外務省亜細亜局長木村鋭市等ノ出席ヲ求メテ、幹事会ヲ開ク。栄一出席シ、中華民国時局問題ニ開シ、意見ノ交換ヲナス。


■資料

日華実業協会 【拝啓 幹事会開催ノ件…】(DK550085k-0001)
第55巻 p.444 ページ画像

日華実業協会               (渋沢子爵家所蔵)
拝啓
    幹事会開催ノ件
本日ノ幹事会ニテ御申合セノ通リ
外務省木村亜細亜局長及中山書記官ニ御出席ヲ願ヒ、来ル十日(金曜日)正午ヨリ、当事務所ニ於テ幹事会相開キ候間、御繰合セ御出席被成下度、此段御通知申上候 敬具
  大正十五年十二月七日
                     日華実業協会
     渋沢子爵殿


集会日時通知表 大正一五年(DK550085k-0002)
第55巻 p.444 ページ画像

集会日時通知表  大正一五年     (渋沢子爵家所蔵)
十二月十日 金 正午 日華実業協会幹事会(同会)


日華実業協会第七回報告書 第一三頁 昭和二年一二月刊(DK550085k-0003)
第55巻 p.444-445 ページ画像

日華実業協会第七回報告書  第一三頁 昭和二年一二月刊
    役員会並ニ諸会合記録 (大正十四年十二月以降《(五)》)
○上略
幹事会 十二月十日午前十一時ヨリ、事務所ニ開会シ、渋沢会長・児
 - 第55巻 p.445 -ページ画像 
玉副会頭《(長)》、安川・白岩・奥村・白仁・荻野・倉知・角田・天宅各幹事出席セラレ、時局ニ関シ種々懇談スル所アリタリ
外務当局トノ意見交換会 十二月十日正午ヨリ、木村亜細亜局長・中山書記官出席サレ、対支時局問題・漢口罷業問題ニツキ意見交換ヲ為シ、三時散会セリ
○下略


日華実業協会 【十二月十日幹事会ニ於テ協会側 質問ニ対スル木村局長談話要旨】(DK550085k-0004)
第55巻 p.445-448 ページ画像

日華実業協会               (渋沢子爵家所蔵)
    十二月十日幹事会ニ於テ協会側
    質問ニ対スル木村局長談話要旨
一、南軍ハ近ク武昌ニ政府ヲ移ス様伝ヘラレ居ルモ、果シテ内部ノ結束固ク、北方ニ対峙スル如キ相当強固ナル政府ヲ樹立スルニ至ルヘキヤ、之カ見込ニツキ
  南軍カ武昌ニ政府ヲ移ス事ニ決定セルハ、余程以前ノ事実ナルモ各種ノ事由ノ為メ未ダ決行セズ、質問中「内部ノ結束固ク」云々トアルモ、之ハ最近新聞ニ、広東ニ於テ兼テ蒋介石ニ反感ヲ有スル一派カ多少策動セル如キ記事アリタル為メト思フ、斯カル記事ハ北伐軍出征以来度々報道サレシ記事ニテ、之ヲ以テ直ニ結束固キヤ否ヤヲ判断スルコト能ハズ、又質問中ニ「北方ノ如キ相当強固ナル政府樹立スルニ至ルヤ否ヤ」トアルモ、之等ノ見込ヲ目下ノ情態ニテ直ニ断定スル事ハ事実不可能ニテ、又危険ナリト思フモ、之等ニ関シ当方ノ考ヘヲ申述ブル事ニ致シ度シ、南方軍ハ急ニ武漢・江西ノ地ヲ得テ、従来ノ如ク広東一地方ノミナラズ、其範囲拡マリタル為メ、之等ノ地方ニテハ夫々異リタル地方特殊ノ事情ヤ、其ノ地方ノ色彩等ヲ考慮セザルベカラズ、又対外的ニモ従来ト異リ接衝ノ範囲広マリ、従来蒋介右ハ軍事指揮者トシテ絶対ノ権能ヲ有シタルモ、中心人物ハヤハリ従来各方面ヨリ有力者トシテ広ク之迄知ラレタル人物ヲ置カザルベカラズ、目下ノ情報ヨリスレバ、所謂右傾派ノ中心人物トシテ知ラレタル唐紹儀ヲ中心人物ト為サントノ議相当有力ナル如シ、如斯目下内部ノ御膳立ノ時代ナルガ、之ニ対シ、北方政府ハ基礎強固ナルモノト見ルカト云ヘバ決シテ然ラズ、段執政内閣倒壊以後、列国ハ北方政府ヲ支那政府トシテ認メス、吾々ハ只一地方ノ支配者トシテ取扱ヒ居レリ、其ノ実例ハ先般ノ日支通商条約改訂交渉ニ際シテモ、之ノ点ヲ充分ニ考慮シ、公文ハ一切覚書ノ形式ヲ採リ、相手方ヲ北京政府トモ支那政府トモ云ハズ、即外交部ナルモノト支那政府トノ区別ヲ明確ニ為シ居リ、只非公式ニ外交部トノ文書往復ノ形式ヲ採リタルモノニテ、日本トシテハ現ニ北京ニ公使駐在シ居レルモ奉天・上海・漢口・広東等各其他総領事《(地)》ヲ帝国政府ノ代表者トシテ、其ノ地方ノ事実上ノ支配者ト交渉セシメ居リ、北京駐在ノ公使ノ方針ト、時トシテ場合ニ依リ異リタル方針ニ出ツルモ止ムヲ得サルモノト認メ居レリ。
  支那時局ノ観方ヤ判断ハ甚困難ニテ、種々意見ヲ為ス者アルモ、自己ノ断定ヲ根底トシテ時局ヲ判断スル者多ク、実際其地方ノ督
 - 第55巻 p.446 -ページ画像 
軍其他有力者等ハ、各自己ノ立場ノ都合上何レニモ変ズルモノニテ、時局ノ将来ヲ速断スルハ危険ニテ、冷静ニ推移ヲ視ル外ナシ南方軍ニ於テモ、目下蒋介石ノ真ノ頼ミトナル股肱ノ部下ハ一万位ナル可ク、之ニ対シ孫軍ノ主力ハ廬香亭ノ部下残軍約八千位ナル可ク、真ノ力ハ五分々々ナルベキモ、南軍ハ国民党ニ属スル青年学生・労働団体等ノ宣伝ノ力大ニシテ、何レモ開戦前ニ其地方ニ入リ込ミ宣伝ニ従事シ、専ラ地方人心ノ同情ヲ得ルニ努メ居リ此点非常ナル強味ヲ有ス、併シ武器ヤ財政ノ点ハ孫軍方優レテ居リ、勝敗ノ決ハ容易ニ判断サレザル情態ナリ。
二、北方軍(奉天軍)ニ対シテハ従来ノ如ク不干渉主義ヲ採ルカ、又ハ此際何等カ積極的方針ニ出デラルカ
  質問ノ意味判然セザル点アルモ、東三省内ハ東三省外ト異リ、日本トノ干係ニ鑑ミ、関内ノ治安トカ、奉天票問題ニ対シテハ、場合ニ依リ積極的ニ適当ノ手段ヲ講スル考ヘナルモ、東三省外ニ対シテハ一切不干渉主義ヲ採ル考ヘナリ。
三、最近英国ノ方針トシテ伝フル所ニ依レバ、南北両政府ヲ各独立シタル支配者トシテ事実上ニ認メントスル方針ノ如ク伝ヘラルモ事実ナルヤ、又斯ル場合ニ於ケル日本ノ態度ニツキテ
  実際ノ事実ト多少異リ居レルモ、前述ノ通リ目下各国ニ依リ承認サレタル支那政府ナキ現状ニ於テハ、各地方ノ有力者ヲ事実上支配者ト認メ、交渉ヲ為シ居リ、又南方ハ単ニ南方政府トシテ承認ノ如キ考ヘ居ラズ、中央政府トシテノ承認ヲ要求セントシ居ルモノナリ。
  先般広東政府ガ財政不足ノ為メ華府条約所定ノ附加税実行ヲ宣言シ、各国ハ之ニ対シ抗議ヲ提出セシカ、右附加税ニ依ル日本トノ干係ハ五千弗乃至七千弗ノ問題ニシテ、権利関係ハ別トシテ実質上実力ニ訴ヘテ解決スル程ノ問題ニ非ズト思フモ、目下英国ノ態度ハ何等確然タル方針ナキ如ク、英国ハ右ノ抗議提出ニモ異議ヲ申出テタルカ、最近漢口ニ於テモ広東同様課税準備中ノ模様ナルカ、英国ハ之ニ対シ無条件ニテ認ムル如キ意嚮ナルカ、其ノ理由ハ、右附加税ノ実施ハ華府条約ニ依ルモノニシテ、関税制度維持ノ為メナリト云フモ、南方政府ノ承認ノ如キモ、南方ハ支那ノ中央政府トシテノ承認ヲ欲シ居リ、単ニ南方政府トシテノ承認ノ如キ考ヘ居ラザルニ依リ問題トナラズ、英国政府ノ方針判明セザルモ、広東側ト香港側トノ罷業解決交渉ノ際ニ、二分五厘附加税ニツキ内約束シタル事実アルモノノ如ク、従テ承認問題ハ、右約束ニ対スル法律上ノ根拠ヲ求メントスルニアルモノノ如クニモ解セラル。
四、南軍ト労農政府トノ関係ノ程度如何
  南軍ト労農政府トノ関係ハ、武器ノ如キ浦塩ヨリ直接広東ニ運搬シ、夜間虎門ニ運ビ入レ居リ、正確ニ判明セザル点アルモ、人ノ問題ハ「ボロヂン」等ハ別トシテ、六月以来少尉ヨリ中将級ノ人ヲ七十余人ハ入レ居リ、金ハ軍官学校ノ補助、政治部ヘノ補助トシテ各三万元程度ノ補助ヲ為シ居ル如ク、軍官学校創立ノ当時ハ
 - 第55巻 p.447 -ページ画像 
三十万元補助シタリトノ事ナリ。
  又五百万円補助シタル様伝ヘラルモ、小銃二万ヲ送リタル事実アリ、仮リニ一挺二百五十円トシテ五百万円トナルニ依リ、之ノ事ヲ伝ヘタルモノノ如シ、現金トシテハ大シタ援助ヲ為シ居ラザル如シ。
五、今後南軍ノ勢力拡大ト共ニ、今次漢口ニ於ケル如キ狂暴ナル罷工事件カ各地ニ頻発サル可ク予想サレ、而モ之ニ対シテ何等取締リノ方法モ付カザル現在ノ有様ニテハ、我企業上ニ重大ナル影響ヲ及ボス可シト憂慮サル、之カ対策ニツキテ
 漢口総領事館ヨリ交渉ニ関シテハ、南軍側ノ態度及効果ニツキ現状承リ度シ
 糾察隊ハ罷工ヲ煽動スルモノノ如シ、同隊ノ性質ハ、居留民トシテハ尊敬ヲ払フベキモノナリヤ、之ニ対シ、領事館ハ如何ニ取扱ヒ居ルヤ
  前述ノ如ク広東政府ト労働団体トノ関係ヨリ見テ、又対外硬ハ支那一般ノ風潮ニシテ、之点ハ北方軍タルモ同様ニテ、従テ各地ニ種々ノ事件惹起スベキモ、今後之等悪影響ヲ出来ル丈ケ少クスル方法手段ヲ講ズル外方法ナカル可シト思フ、漢口ノ如キ日本トシテ直接影響少ク、又一般ニ外国側ヨリモ其ノ企業資本ノ点ニ於テ支那側ノ方利害関係深キ地方ニアリテハ、斯カル地方ニ罷業団ノ力ヲ充分ニ延バサス結果ハ、外国側ヨリモ支那側ノ方カ先ヅ打撃ヲ受クル事ト思フ、之ノ場合外国側ニ於テ陸戦隊等ヲ以テ強硬手段ニ出ヅレバ、対外運動ニ変ジ、却テ外国側ニ悪結果ヲ来ス虞レアリ、現ニ漢口ニ於テハ、漢口総商会カ結束シテ形勢悪化ヲ憂ヘ国民軍カ商業営業ノ保障ヲ為サザルニ於テハ、一斉罷市ヲ為ス可キ決議ヲ為シタル如シ。
  漢口ニ於ケル罷業ニ際シ、同地糾察隊カ事件ノ当初租界ニ於テ多少罷工ニ出デタル如キモ、総領事ハ当初形勢悪化センコトヲ憂ヘ万一ノ場合ハ陸戦隊ニ依リ居留民ヲ保護シ、又食糧攻メニ遇フ場合ヲモ考ヘ、糧食ノ準備ニツキテモ配慮スル一方、南軍ノ首領唐生智並ニ南昌ニ在ル蒋介石ニ対シ、極力平和ノ内ニ支那側ノ力ニ依リ治安ヲ維持シ、無事解決スル様極力交渉シ、初メヨリ強硬手段ニ依リ罷業運動ヲ対外運動ニ変ゼシメザル様処置シタル事ハ、最モ当ヲ得タル措置ト考フ、当時喜多氏関係ノ泰安紡績工場ニ対シテモ、初メヨリ憂慮シ居リシガ、同地支配人ノ適宜ノ処置ニ依リ騒擾ニ至ラズシテ解決シタル如シ。
  江浙地方ニテハ、北方ノ軍閥ニ依リ支配サルルコトヲ喜バサルト共ニ、南方側ノ占領ニ委スルコトモ歓迎セズ、従来ノ孫伝芳氏ノ遣リ方ニ大体賛意ヲ表シ、現状維持ヲ欲シ居ルモノノ如ク、斯カル運動ニデモ依リ同地方ノ秩序ノ保タレンコトヲ窃ニ希望シ居ル次第ナリ、又最近上海ニ於テ更ニ罷業運動起ラントシツツアルニ際シ、昨年ノ事態ニ鑑ミ、工部局側ノ希望モアリ、取締リノ為メ支那巡警ニ代フルニ日本巡査ヲ採用シ、取締リ徹底ヲ期セントシ内々交渉ヲ進メ居ルモノノ如シ
 - 第55巻 p.448 -ページ画像 
   (在支日本巡査数ハ六百名ニテ、各領事館所在地ニ配置サレ、予算ノ制限ヲ受ケ、之以上人員ヲ増加シ得ザル状態ニアリ、漢口ノ如キハ費用ノ半額ハ居留民負担ナリ)
                           以上

日華実業協会第七回報告 第一四頁 昭和二年一二月刊(DK550085k-0005)
第55巻 p.448 ページ画像

日華実業協会第七回報告  第一四頁 昭和二年一二月刊
   役員会並ニ諸会合記録(大正十四年十二月以降《(五)》)
○上略
幹事会 十二月二十三日正午、事務所ニテ開会、入江・荻野・白仁・角田・奥村各幹事出席シ、上海商業会議所会頭田辺氏ヨリ最近ノ支那時局ニ関スル事情並ニ意見ヲ聴キ、前回ニ引続キ対策ニツキ意見交換ヲ為シ、三時半散会セリ
幹事会 十二月三十一日正午、事務所ニ於テ開会、児玉副会長及ヒ安川・白仁・白岩・荻野・入江・角田・倉知・天宅・奥村各幹事出席支邦時局《(那)》ニ関シ上海在留邦人代表トシテ入京中ノ宮地氏ノ意見ヲ聴取シ、意見交換ヲ為ス
○下略