デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

6章 対外事業
2節 支那・満洲
6款 日華実業協会
■綱文

第55巻 p.448-451(DK550086k) ページ画像

昭和2年1月14日(1927年)

是ヨリ先、当協会幹事会ニ於テ、中華民国ノ時局問題ニツキ、協議ヲ重ネタル上、是日「支那時局ニ対スル声明書」ヲ発表ス。栄一、会長トシテ之ニ与ル。


■資料

日華実業協会往復(二)(DK550086k-0001)
第55巻 p.448 ページ画像

日華実業協会往復(二)          (渋沢子爵家所蔵)
拝啓
    幹事会ノ件
前回幹事会(旧臘三十一日)ニテ御報告ノ、支那時局ニ対シ上海在留邦人ヨリノ申入モ有之、旁此際至急協会トシテノ大体意嚮御決定願度来ル六日(木)正午ヨリ、当事務所ニ於テ、幹事会相開キ候間、御繰合セ御臨席奉願候 敬具
  昭和二年一月四日
                     日華実業協会
追白
  尚来ル七日(金)正午ヨリ、更ニ幹事会相開キ、当日ハ外務省木村局長ニ御出席ヲ乞ヒ置キ候間、御含置願候
    子爵 渋沢栄一殿


日華実業協会 【拝啓 幹事会ノ件 明十三日(木)…】(DK550086k-0002)
第55巻 p.448-449 ページ画像

日華実業協会               (渋沢子爵家所蔵)
拝啓
    幹事会ノ件
明十三日(木)正午当事務所ニ於テ幹事会相開キ、別紙時局ニ対スル意見書案ニツキ御協議願度、御繰合セ御出席願候
尚当日ハ船津辰一郎氏上京ノ上、幹事会ニ御出席ノ事ニ相成候間御含
 - 第55巻 p.449 -ページ画像 
置願候 敬具
  昭和二年一月十二日
                      日華実業協会
追白
  別紙意見書案ハ細目ニ亘ル事項ハ後日ニ譲リ、不取敢時局ニ対スル骨子丈ヲ認メタルモノニ候間、御含願候
    子爵 渋沢会長殿
(別紙)
    日華実業協会意見書案
近時支那各地ニ頻発スル動乱又ハ排外運動ハ、最近南軍ノ勢力拡大ト共ニ、其内容益複雑険悪ヲ極メ、其気勢又熾烈トナリ、不法無理ノ行動従来曾テ見サル処ニシテ、今ニ於テ吾人ハ確固タル決心ト覚悟ヲ以テ、之ニ対応スルニ非レハ、将来収拾ノ途ナキニ至ルヤヲ憂フルモノナリ
吾邦ノ支那ニ対スル対策ハ、列国ト共ニ飽ク迄従来ノ主義精神ニ立脚シ、慎重ノ態度ヲ以テ、列国及支那ヲシテ軌道ヲ逸セシメサル様常ニ指導的ノ地位ニ立ツコト必要ナルハ論ナキ処ナルニ拘ラズ、近時列国ノ態度ハ稍モスレバ相背馳シ、協調ノ基準ヲ失シ、為メニ時局ヲシテ一層紛糾セシメツヽアルハ遺憾千万ナリ
吾人ハ徒ラニ事ヲ好ムモノニ非ス、従テ飽ク迄列国ト協調時局解決ヲ希望シテ止マサレトモ、此レカ為メ条約上ノ違反ヲ黙認又ハ公認スルカ如キ事態ニ立到ルカ如キコトハ、将来ノ為メ由由敷大事ナルヲ以テ支那ヲシテ合法的解決ノ方法ニ出テシムルコト絶対必要ナリト信ス、例ヘハ漢口英租界問題ノ如キ、其直接不法ノ行動ヲ我既約権ノ上ニ及ボス場合ニ於テハ、如何ナル手段ヲ講シテテモ之ガ擁護ヲナシ、我国威ヲ失墜スヘキニ非ス、又輸出入税ヲ自由ニ増率セントスルカ如キ行動ニ対シテモ亦同シ、而シテ時勢ノ変化ニ応シ、隣邦ニ対シ互譲ノ精神ヲ以テ臨ムハ当然ナレトモ、今日ノ如キ支那ノ不法無理解ノ行動ニ対シテハ、万一列国ノ協調不可能トスレハ、我国ハ已ムナク上述ノ趣旨ヲ以テ、単独行動ニ由ル自衛ノ途ヲ執ル覚悟ノ外ナキヲ信スルモノナリ
  ○右文中ニ左ノ書入アリ
   客年来宿痾之為め籠居致居、殊に近状ニ疎なるも、対支関係に付而ハ此際別して熟慮を要す事と存候間、本協会より之意見も可成実際的之事を倶陳致度《(マヽ)》と存候、就而ハ現下之実状充分に調査せられ、過激に走らず因循ニ陥らさる程度に於て、其筋へ之進言御決定有之度候、右ハ病中婆心申上候、尚児玉君、白岩・角田其他之諸氏へも宜敷御伝声有之度候也
     一月十四日                  栄一


日華実業協会往復(二)(DK550086k-0003)
第55巻 p.449-450 ページ画像

日華実業協会往復(二)          (渋沢子爵家所蔵)
          (栄一鉛筆)
          一月十四日日華実業協会ヨリ外務大臣ニ進達セシ意見書原稿
                 一月十九日油谷氏持参
    関税附加税実施ニ対スル意見書
謹啓
 - 第55巻 p.450 -ページ画像 
今回北京政府ノ宣言セル関税二分五厘及五分ノ自由増率実施ニ対シ、本邦政府ニ於テハ絶対反対ノ旨御声明相成候趣聴及ヒ候事ニ有之候、本問題ニ関シテハ今更事々敷申上候ニモ及ヒ不申ト存候得共、斯カル条約上ニ由ラサル不法ノ課税ニ対シテハ絶対ニ御峻拒被下、飽ク迄合法的ニ解決セシムル様御配慮被成下度奉願候 敬具
  昭和二年一月 日
                  日華実業協会
                   会長 子爵渋沢栄一
   外務大臣
    男爵 幣原喜重郎殿


渋沢栄一 日記 昭和二年(DK550086k-0004)
第55巻 p.450 ページ画像

渋沢栄一 日記  昭和二年          (渋沢子爵家所蔵)
一月二十日 快晴 寒気昨ト同シ
○上略 日華実業協会事務員油谷恭一氏来リ、頃日来対支関係ニ付本会ニ於ル幹事諸氏ノ尽力ト其経緯ヲ説明セラレ、且書類ヲ提出ス ○下略


日華実業協会第七回報告書 第一四―一六頁 昭和二年一二月刊(DK550086k-0005)
第55巻 p.450 ページ画像

日華実業協会第七回報告書  第一四―一六頁 昭和二年一二月刊
    役員会並ニ諸会合記録 (大正十四年十二月以降《(五)》)
○上略
幹事会 一月六日正午、事務所ニ於テ開会、児玉副会長外各幹事出席外務省木村局長出席サレ、英国ノ対支声明其他ニツキ説明アリ、意見交換ヲ為ス
幹事会 一月十三日正午、事務所ニ於テ開会、児玉副会長外各幹事出席、当日ハ最近上海ヨリ帰京ノ船津氏及谷口房蔵氏出席サレ、船津氏ヨリ最近ノ漢口ニ於ケル南軍状況ニツキ詳細説明アリタリ
幹事会一般支那時局ニ関スル声明書発表 一月十四日午後五時銀行倶楽部ニ於テ開会、児玉副会長、安川・白岩・倉知・入江・角田・河野・白仁・森各幹事出席、大阪ヨリ上京ノ喜多氏・武居氏並ニ船津氏同席ノ上、支那時局ニツキ意見交換シタル後、意見書ヲ発表セリ(同意見書ハ本文○後掲記載ノ通リ)
幹事会 一月十七日正午、事務所ニ於テ開会、児玉副会長及ヒ各幹事出席シ、「支那側カ自主的ニ実施セントスル関税附加税ニ対シ、外務省ニ意見書ヲ提出スルコト」ニ決定シ、尚引続キ対支時局ニツキ意見交換ヲ為シタリ
幹事会 一月廿八日正午、事務所ニ於テ開会、児玉副会長及白岩・白仁・安川・森・角田・入江・荻野・奥村・河野・天宅各幹事出席シ最近支那各地ヲ視察シ帰京セル長野氏ノ視察談並ニ其ノ所見ヲ聴取シ、各自意見ノ交換ヲ為ス所アリタリ
幹事会 二月九日正午、事務所ニ於テ開会、児玉副会長外各幹事出席ノ上、翌十日開会ノ評議員会報告ノ打定《(合)》セ、並ニ支那時局ニ関シ意見交換ヲ為シ散会セリ
○下略


日華実業協会第七回報告書 第一―三頁 昭和二年一二月刊(DK550086k-0006)
第55巻 p.450-451 ページ画像

日華実業協会第七回報告書  第一―三頁 昭和二年一二月刊
 - 第55巻 p.451 -ページ画像 
    会務報告
      第七回重要会務報告 (昭和元年一月以降《(二)》)
  一、時局ニ対スル声明書発表
支那ハ過去十数年間殆ド内乱ノ絶間無ク、国内秩序回復全ク其ノ徴ヲ認メラレサルニ、昨年九月広東国民革命軍ノ長江進出以来、其ノ主唱スル所政治上・社会上並ニ産業上ノ組織ニ対シ殆ト根本的変革ヲ来スヲ目的トシ、其ノ手段又過激ナル為メ、漢口地方ニ於テハ金融・産業ハ殆ト閉鎖サレ、一般貿易ハ極度ノ不振ニ陥リ、又暴力ニ依リ漢口英租界ヲ回収スル等、南方派ノ勢力拡大ト共ニ、対内的ハ勿論、対外国際関係ニ於テモ異常ナル影響ヲ及ホシ、唯ニ南方ノミナラス、北方ニ於テモ南方過激ナル主強《(張カ)》ノ影響ヲ受ケ、対外硬運動トナリ、関税附加税ノ自主的賦課並ニ外国租界回収運動トナリテ現ハルルニ到リ、時局ノ推移容易ナラサルニ鑑ミ、昨冬以来各方面ノ情勢ヲ蒐集シ、対策凝議中ナリシガ、先ツ一般輿論ノ喚起ヲ必要ト認メ、本月一月幹事会ニ於テ熟議ノ上、左記一般声明書ノ発表ヲ為セリ
   ○支那時局ニ対スル声明書 (昭和元年一月十四日《(二)》)
近時支那各地ニ頻発スル動乱ハ、最近南軍ノ勢力拡大ト共ニ排外的色彩益濃厚トナリ、其内容複雑険悪ヲ極メ、其気勢又熾烈トナリ、不法無理ノ行動従来曾テ見サル処ニシテ、今ニ於テ吾人ハ確固タル決心ト覚悟ヲ以テ之ニ対スルニ非レバ、我ガ対支関係ハ収拾ノ途ナキニ至ルヲ憂フルモノナリ
支那ニ対シ我邦ハ、列国ト共ニ慎重且好意的態度ヲ以テ、支那ノ国民的希望ヲ尊重スベキハ論ナキ処ナルガ、近時支那ノ態度ハ、稍モスレバ常軌ヲ逸シ、時局ヲシテ一層紛糾セシメツヽアルハ遺憾千万ナリ
吾人ハ飽ク迄列国及支那ト協調ヲ希望シテ止マザレドモ、条約上ノ違反ヲ黙認又ハ公認スルガ如キ事態ニ立到ルコトハ、将来ノ為メ由々敷大事ナルヲ以テ、支那ヲシテ合法的態度ニ出デシムルコト絶対必要ナリト信ズ
例ヘバ近時長江一帯ニ於ケルガ如ク、其ノ直接不法ノ行動ヲ我条約上ノ権利ニ及ボス場合ニ於テハ、如何ナル方法ヲ以テスルモ之ガ擁護ヲナスベキモノナリ、輸出入税ヲ自由ニ増率セントスルガ如キ行動ニ対シテモ亦同ジ、而シテ時勢ノ変化ニ応ジ、隣邦ニ対シ互譲ノ精神ヲ以テ臨ムハ当然ナレトモ、今日ノ如キ支那ノ不法不合理ノ行動ニ対シテハ、万一列国ノ協調不可能ノ場合、我国ハ已ムナク上述ノ趣旨ヲ以テ単独自衛ノ途ヲ執ル覚悟ノ外ナキヲ信ズルモノナリ