デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和6年1月―9月（1931年）

是間開カレタル当協会幹事会ニハ、栄一、静養中ノタメ出席セザリシモノノ如シ。

日華実業協会往復（三）　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
謹啓
　　　　幹事会ノ件
来ル卅日（金曜日）正午、当事務所ニ於テ幹事会相開キ度
当日ハ谷亜細亜局長出席ノ上、最近ノ支那関係諸問題ニ関シ、各位ト充分意見ノ交換致度御意嚮ニ有之、御多用中乍ラ、何卒御繰合セ御出席奉願候　敬具
　　昭和六年一月廿六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日華実業協会
　　　　子爵渋沢栄一殿

竜門雑誌　　第五一〇号・第七五頁　昭和六年三月
　　　　青淵先生動静大要
　　　　　　二月中
青淵先生には、本月も引続き曖依村荘に籠居静養せられたるに依り、本記事なし。

日華実業協会往復（三）　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（謄写版）
謹啓
時下愈御清適之段奉欣賀候、陳者刻下ノ対支時局ニ関シ、去ル九月廿五日幹事会ニ於テ別記声明書ヲ決定シ、内外新聞紙ニ発表致置候間、御承知置願候　敬具
　　昭和六年九月廿六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日華実業協会
（別紙、謄写版）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ゴム印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　昭和六年九月廿八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ゴム印）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日華実業協会
支那官民ノ我ガ国ニ対スル言動ハ逐年著シク常軌ヲ逸シ、友好国トシテ恕ス可カラサルモノアリ。
絶エス国民ニ対シテ排日ノ思想ヲ鼓吹シ、甚シキハ多年国民教育教科書ヲ以テ排日思想ヲ涵養シ、全支ニ亘リ不法ナル排日排貨ヲ行ヒ、或ハ暴力ヲ以テ日貨ヲ掠奪シ、或ハ邦人ノ生命ニ危害ヲ加ヘ、其他アラユル不法暴戻ノ行為ヲ敢テシ、遂ニハ経済上ノ絶交ヲ標榜スルニ到リ明白ナル敵対的行動ヲ以テ挑戦的態度ニ出デテ顧ミズ、今ヤ我国ニ対スル権益ノ侵害、名誉ノ毀損ハ其ノ極点ニ達シタリ。就中支那政府ノ首班者ガ排日思想ノ主タル煽動者タルノミナラズ、公然我ガ邦ニ対シ
 - 第55巻 p.537 -ページ画像 
侮蔑又ハ挑戦的ノ言動ヲ為スニ至ツテハ到底黙過シ難キ所也。
殊ニ満洲地方ニ於テハ我ガ権益ノ侵害、在留邦人居住生命財産ノ不安日ヲ追ツテ増大シタルニ拘ラズ、我ガ邦ノ上下ハ常ニ善隣ノ誼ヲ旨トシ、寛容ヲ以テ之ニ臨ミタル事ハ、適々以テ彼ノ侮慢ヲ増長セシメ、遂ニ今回南満鉄道線路ノ破壊及襲撃ノ如キ暴挙ヲ敢テスルニ到ラシメタリ。
玆ニ於テカ、我国ハ条約上既得ノ権益ヲ確保スル為メ、自衛的応急手段ヲ採リタルハ当然ノ措置ナリト信ズ。
吾人ハ当面ノ時局ガ支那側ノ反省ニ依リ、両国間直接ノ折衝ヲ以テ、一日モ速カニ収拾セラレンコトヲ望ムト雖モ、此ノ際多年両国間ニ累積セル諸懸案ヲ徹底的ニ解決スルハ勿論、排日行為及ビ排日思想ヲ根絶スルノ方法ヲ講シ、以テ将来永久ノ平和ヲ確保スルハ絶対的ニ必要ナリト痛感ス、之ガ為メ対支関係事業及ビ貿易等ノ上ニ蒙ルベキ犠牲ハ、固ヨリ之ヲ忍ブノ覚悟ヲ有スルモノ也。　　　　　　以上