デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
2節 其他ノ経済団体及ビ民間諸会
11款 博覧会 4. 東北産業博覧会
■綱文

第56巻 p.363-365(DK560106k) ページ画像

昭和3年2月11日(1927年)

是ヨリ先、栄一、当博覧会総裁ニ推サレ、是日、其上棟式ニ際シ、祝辞ヲ寄ス。

四月十五日ノ開会式、五月二十日ノ褒賞授与式、及ビ六月八日ノ閉会式ニ際シ、栄一、総裁トシテソレゾレ告辞ヲ寄ス。


■資料

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第二四頁 昭和六年一二月刊(DK560106k-0001)
第56巻 p.363 ページ画像

青淵先生職任年表 (未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編
                竜門雑誌第五一九号別刷・第二四頁 昭和六年一二月刊
    昭和年代
 年  月
 二  三 ―東北産業博覧会総裁―


東北産業博覧会会報 第一一号 昭和三年二月 祝辞(DK560106k-0002)
第56巻 p.363-364 ページ画像

東北産業博覧会会報  第一一号 昭和三年二月
    祝辞
仙台商工会議所の主催に係る東北産業博覧会の計画著々進行して、玆に其全建築物の上棟式を挙行せらるゝに至れるは慶賀に堪へざる処なり、抑東北の地たる素より天然の資源に乏しからずと雖も、土地僻存し、気候寒冷なるがために、西南地方に比すれば、その産業文化の発達一歩を譲るの憾なきにあらざりしが、先覚有志諸君が不断努力の効空しからず、輓近長足の進歩をなし、殆んど面目を一新せり、この時に当りその成績を詮較し、兼ねてこれを内外に紹介せんため、各地の生産品を蒐集して、一大博覧会を開催せられんとするは、極めて時宜を得たる計画にして、洵に国本の培養に資し、昭和新政の宏猷に副ひ奉るものと謂ふべし、予は明治の初年第一銀行の経営に任ぜし当初より、聊か微力をこの地の振興に致し来れる因縁あり、近く四月清和の候を以てこの山河秀麗の地に東北産業の精粋を展開せらるゝの盛観に想到すれば、そゞろに欣躍を禁じ難きものあり、乃ち一言を寄せて祝辞となす
 - 第56巻 p.364 -ページ画像 
  昭和三年二月十一日     東北産業博覧会総裁
                    子爵 渋沢栄一


東北産業博覧会誌 仙台商工会議所編 第四六―四七頁 昭和四年一二月刊(DK560106k-0003)
第56巻 p.364 ページ画像

東北産業博覧会誌 仙台商工会議所編  第四六―四七頁 昭和四年一二月刊
 ○第一編 第六章 第三節 其の三 儀式
    告辞
余明治六年五月冠ヲ挂ケテ野ニ下リ、実業界ニ投ジタルハ、敢テ巨富ヲ欲シタルニ非ズ、一片商工業ノ進歩発達ヲ策シ、国運ノ隆昌ニ貢献セント微衷ニ出ヅ、蓋シ当時ノ社会ハ四民平等ノ美ヲ欠キ、官尊民卑ノ風尚ホ甚シク、才幹アル者ハ官途ニ就クヲ以テ畢生ノ目的トナシ実業界ノ萎微不振殆ド想像モ及ブベカラズ、爾来六十年微力ヲ以テシテ夢寐ダモ斯業ノ振興ヲ忘ルヽナシ、而シテ余ノ東北ニ因縁ヲ結ビタルハ実ニ明治十一・二年ノ交ニシテ、国立銀行支店ヲ此ノ地方ニ設ケ以テ文明ヲ啓発シ、産業ヲ振作セントセシニ始マリ、更ニ東北振興会成ルニ及ビ之ニ関係シテ其ノ誼愈々厚キヲ加ヘタリ
客歳仙台商工会議所主催ヲ以テ、東北産業博覧会ヲ開設セラルヽニ当リ、余ニ総裁タルベキヲ以テ薦メラル、余素ヨリ其ノ器ニアラズ、況ンヤ老齢其ノ任ニ堪ヘザルヲヤ、然リ而シテ敢テ快諾シタル所以ノモノ実ニ壮年時ノ素懐ト多年ノ情誼トハ之ヲ許サヾルモノアルニ因ル、本日玆ニ開会式ヲ挙グルニ方リ、予期以上ノ盛観ヲ呈シタルモノ一ニ政府並ニ県市当局ノ懇篤ナル指導ト熱烈ナル各府県ノ賛同ト県市民各位ノ奮起トニ由ルトハ言ヘ、又以テ機運ノ然ラシムル所カ、余今此ノ盛典ヲ見ル、隔世ノ感、今昔ノ情、転タ痛切ナルヲ覚ユ、欣快何ゾ加ヘン
余年歯正ニ八十有九、猶ホ残躯ヲ挺シテ或ハ外交ニ、或ハ社会政策ニ捧ゲントスルモノ、蓋シ其根柢財政経済ニ在ルヲ感ズレバナリ、各位ハ少壮有為ノ士ナリ、宜シク品性ノ向上ニ努メ斯業ノ研鑽ヲ積ミ、益益産業文化ノ振興ニ奪励シ、日新ノ国是ヲ翼賛シ奉ラザルベカラズ
余実業界ニ投ズルニ当リ謂ヘラク、余従来商業ニ於テ経験乏シト雖モ胸中一部ノ論語アリ、論語ヲ以テ商業ヲ経営シ、邦家ノ隆運ニ資セント、常ニ之ヲ服膚シ、自ラ範ヲ示サント努メテ怠ラズ、語ニ曰ク
 富ト貴キハ是レ人ノ欲スル所ナレドモ、其ノ道ヲ以テセザレバ之ヲ得ルモ居ラズ、貧ト賤シキトハ是レ人ノ憎ム所ナレドモ、其ノ道ヲ以テセザレバ之ヲ得ルモ去ラズ
ト、豈至言ナラズヤ、希クハ知行合一ノ主義ヲ信条トシ、躬行実践以テ渝ルナカランコトヲ、素懐ヲ陳ベテ告辞トス
  昭和三年四月十五日     東北産業博覧会総裁
                    子爵 渋沢栄一


東北産業博覧会誌 仙台商工会議所編 第五七頁 昭和四年一二月刊(DK560106k-0004)
第56巻 p.364-365 ページ画像

東北産業博覧会誌 仙台商工会議所編  第五七頁 昭和四年一二月刊
 ○第一編 第六章 第四節 其の三 儀式
    告辞
東北産業博覧会ハ位置既ニ形勝ノ地ヲ占メ、規模結構之ニ適ヒ、賛同範囲ハ帝国ノ全版図ニ渉リ、出品亦精粋ヲ尽クシ、近時稀ニ観ルノ施
 - 第56巻 p.365 -ページ画像 
設タリ、今ヤ審査官ノ微ニ入リ細ニ亘リ公平厳正ナル審覈ニ依リ、玆ニ優劣精粗判明シ、本日ヲ以テ褒賞授与ノ式典ヲ挙ケラル、惟フニ今次ノ施設ハ産業文化ノ進歩ニ裨補スヘキハ勿論ナリト雖、特ニ東北産業ノ振興開発ヲ促進シ、今後ノ進展蓋シ著シキモノアラン、余推サレテ総裁タリ、而カモ親シク会務ニ与ルヲ得サルノ憾アリシト雖、開会以来数々盛観ノ報ニ接シ、衷心欣快ヲ禁セサルモノアリ、豈ニ慶祝ニ堪ヘンヤ
熟々方今国家内外ノ情勢ヲ察スルニ、世局多端ニシテ、財政上、思想上洵ニ憂慮ニ堪ヘス、余ノ如キ老齢ノ身ヲ以テ猶且日夕忡々タルモノアリ、当ニ挙国一致奮起スベキノ秋ナリ、各位宜シク思ヲ玆ニ致シ、利義ノ合一ニ則シ、克ク能率ノ増進ヲ策シテ優良生産品ノ需給ヲ円満ニシ国利民福ノ招徠ニ寄与シ、以テ昭和維新ノ国是ニ副ヒ奉ランコトヲ期スヘキナリ
一言告辞トス
  昭和三年五月二十日     東北産業博覧会総裁
                    子爵 渋沢栄一


東北産業博覧会書類(DK560106k-0005)
第56巻 p.365 ページ画像

東北産業博覧会書類            (渋沢子爵家所蔵)
    告辞
夫レ産業博覧会開設ノ趣旨タル、各地ノ生産品ヲ蒐集シテ其ノ優劣精粗ヲ審覈シ、採長補短、以テ益々産業ノ振興ヲ企図スルニ在ルハ敢テ言フヲ俟タサル所ナリ、然リ而シテ今後ニ於ケル我国生産事業ノ経営タルヤ、単ニ内国的ノミヲ以テ満足スヘキニアラス、須ラク世界的見地ニ立脚シテ東西相倚リ有無相通シ、共存同栄ノ誼ニ由リ、小事業ノ乱立ヲ避ケ、合同統一ヲ策シテ、資源ノ充実ヲ確クシ、更ニ首脳人物ニ有為ノ適材ヲ選択スヘキナリ、而シテ其ノ生産品ニ就キテハ克ク時代ノ趨嚮ヲ察シ、習慣ニ泥マス、模倣ニ流レス、常ニ学理ノ研究応用ニ専念シ、独創発見ノ技能ヲ磨キ、文化産業ノ向上ニ邁往スヘキナリ如上ノ理ハ固ヨリ各位ノ夙ニ詳知セラルヽ所ナリト雖モ、今ヤ当博覧会ノ閉会式挙行ニ当リ、事業界ノ現状ト帝国ノ前途ヲ想フノトキ、切切偲々ノ情座ロニ湧キ来リテ又禁スル能ハス、一言婆心ヲ陳ヘテ敢テ告ク、冀クハ旃メラレヨ
終リニ臨ミ、内外賛同ノ官憲及団体ノ深厚ナル同情、県市民一般ノ熱心ナル援助並ニ役職員諸氏ノ鋭意尽瘁セレラタル労苦等ニ対シ、玆ニ深甚ナル敬意ヲ表ス
  昭和三年六月八日      東北産業博覧会総裁
                    子爵 渋沢栄一