デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
2節 其他ノ経済団体及ビ民間諸会
12款 雑 1. 報知新聞主催実業懇話会
■綱文

第56巻 p.367-368(DK560109k) ページ画像

明治44年1月21日(1911年)

是日栄一、当会ニ出席シテ演説ヲナス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四四年(DK560109k-0001)
第56巻 p.367 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四四年     (渋沢子爵家所蔵)
一月二十一日 晴 寒
○上略 午後五時報知新聞社ニ抵リ、商工業者懇話会ニ出席シテ、食卓ニテ一場ノ演説ヲ為ス ○下略


竜門雑誌 第二七三号・第六八頁 明治四四年二月 実業家懇話会(DK560109k-0002)
第56巻 p.367 ページ画像

竜門雑誌  第二七三号・第六八頁 明治四四年二月
○実業家懇話会 青淵先生には一月二十一日午後六時報知新聞主催の実業懇話会に出席し、演説欄掲載の如く「知行合一」と題し一場の演説を為せり


竜門雑誌 第二七三号・第一四―一五頁 明治四四年二月 ○知行合一の要 青淵先生(DK560109k-0003)
第56巻 p.367-368 ページ画像

竜門雑誌  第二七三号・第一四―一五頁 明治四四年二月
    ○知行合一の要
                      青淵先生
 本篇は一月廿一日報知社主催の実業懇話会の招聘に応じ青淵先生が同会席上に於て述べられたる意見の概要なり
      ○渋沢男爵の演説
新聞社の主催せる恁る懇話会に陪席の栄を得たるは誠に満足する処なり、世の中が追々進歩するに従ひ凡ての出来事を知悉する便宜は得るが、さて其知る事と行ふ事が全く一致するは却々容易の業でない、是れ則ち陽明学者の云ふ知行合一であるが、殊に実業の方面は広きに亘り知ると共に行ふ事が肝要であると同時に、能く知らねばならぬ必要がある、新聞は凡ての出来事を先に知て社会に教へる事を任務とし、実業は知る事は遅いが之を実行する事に黽めねばならぬ、若し此両者間の合一を欠く時は所謂知行不合一となるのである、然し知ると行ふとの間に於ける新聞の影響は或は行ひ難い事を報道せぬとも限らず、又実業家側に於て力の足らぬ為め行ふ事の出来ぬ場合もあらうが、兎に角両者相互に疏通を図り警告を試むるは是即ち知行を合一ならしむる順序なりと信ず、然して実業家をして現在知ると行ふとの段階に於て目下の時事問題に付て一言せんに、日本実業界の進歩は決して単独に発達したるものに非らず、他の刺戟に依りて進歩したるなり、例へば明治初年の実業は政治方面より誘導せられたるもので、則はち当時の為替とか商社とか云ふ者の頭取などは所謂仰付けられで成立し、亦何時も政治家及び新聞紙等が世の事実を且知り且教へて高処に導き、実業家も亦た高処に達せんとの信念を以て今日の程度に迄進歩せしめた様に思はれるが、日本の富力は尚頗る微弱なるに係らず、却て昔日に比較すれば足取りが幾分鈍くなり小成に安んじたるやの傾向あり、
 - 第56巻 p.368 -ページ画像 
大国民とか列強の伍伴に入りしとか云ふも、之れ只鉄砲玉の御蔭のみで、まだまだ実業界の前途は憂慮に堪へぬ事が多いのである、果して然らば本年は亥年故猪突を勧むると云ふ訳ではないが、知ると共に行ふ事と、又高き程度に達する様に進む感念を以て一層勇気を鼓舞せねばならぬと思ふ、日本の実業は最初政治界の誘導に依て成立し、四十年来幾分か此弊風が脱却したかの様であつたが、未だ何となく政治上の力強く、何も彼も政府の力に依頼する如き昔日に逆戻りして所謂政府万能に傾く恐れあり、一面商工業家が小成に安んずる趨勢を示し、四十年間の事物は此に花の咲止りではあるまいとか心配するのである吾々は平素分を守り謙譲を主とする旨を主張するが、是は一身を守る教訓にして、国家に対する観念は常に向上発展の勇気を沮喪してはならぬ事と信ず、吾人老たりと雖も本年の亥年は国家の為め奮励突進を試むべき覚悟を有せり云々