デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 生産調査会
■綱文

第56巻 p.387-400(DK560113k) ページ画像

明治43年6月21日(1910年)

是日栄一、農商務省会議室ニ於ケル当会会議ニ出席シ、議長トシテ議事ヲ司宰ス。議案「外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件」及ビ「不正競争ノ取締ニ関スル件」ハ共ニ特別委員付託トナリ、栄一、前者ノ特別委員ニ推サル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四三年(DK560113k-0001)
第56巻 p.387 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四三年     (渋沢子爵家所蔵)
六月二十一日 曇 冷
○上略 午飧後農商務省ニ抵リ、生産調査会ニ出席ス、議長席ニ就テ議事ヲ整理ス、午後四時散会 ○下略


生産調査会録事(第壱回) 第一〇八―一五七頁 明治四三年九月刊(DK560113k-0002)
第56巻 p.387-400 ページ画像

生産調査会録事(第壱回)  第一〇八―一五七頁 明治四三年九月刊
    明治四十三年六月二十一日午後一時三十分開議
○議長(男爵渋沢栄一君) 是ヨリ開会ヲ致シマス、私ハ過ツテ副会長ノ命ヲ受ケテ居リマスルデ、此議事規則ニ依リマシテ今日ハ会長ガ御差支デゴザイマス故ニ副会長トシテ此席ヲ涜シマス、ドウゾ宜シク御了承ヲ願ヒマス、甚ダ不慣レデゴザイマスカラ、議事ノ整理ハ頗ル不行届デゴザイマスカラ、成ル丈ドウゾ御議論ヲ御手柔カニ御願申シマス、第二ノ議案外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件ヲ議題トシマス
○五十三番(法学博士添田寿一君) 次ノ第二ノ問題ニ御入リニナリマス前ニ、昨日私ノ提出致シマシタコトハ建議案ノ出タ模様ニ依ツテ御決シニナルト云フコトデ御見合セニナツテ居ルノデアリマスガ、其後
 - 第56巻 p.388 -ページ画像 
建議ノ出マシタ模様ハ如何デゴザイマセウカ。チヨツトソレ丈ヲ伺ヒタイ
○議長(男爵渋沢栄一君) 唯今添田サンカラ御尋ガゴザイマシタガ、其後案ガ大分出テ居リマス、其出マシタ御人及其題目ヲチヨツト朗読致シテ此処ニ御聴キニ達シマス
○織田幹事 生産ト運@トノ関係ニ関スル建議案ヲ和田維四郎君ガ野田卯太郎君外二名ノ同意ヲ以テ提出サレマシタ、ソレカラ魚鳥ノ繁殖及保護ヲ図ルコト、地方自治団体ニ於テ質屋業ヲ営ムヲ得セシムルコト、土地証券(地券)及農業証券ノ制ヲ設定スル件、全国重要工業地ニ工業試験場ヲ設クル件、此四ツハ松崎博士ガ他ノ同意者ヲ得テ建議ヲ提出サレテ居リマス、ソレカラ添田博士ガ日比谷平左衛門君外三名ノ同意ヲ以テ建議案ヲ御提出ニナツタノハ、第一ガ農業金融機関整備ノ必要、第二ガ工場法制定ノ必要、第三ガ不正重役ニ関スル制裁加重ノ必要、第四ガ海陸ノ聯絡ヲ便ニスルノ必要、第五ガ移民殖民ニ関スル方針ノ決定実行ノ必要、此五ツデゴザイマス、其外ニ川瀬善太郎君カラ本多静六君外二名ノ同意ヲ以テ、森林ト砂防及治水ニ関スル行政ノ統一ヲ図ルコトヽ云フノ建議ヲ提出サレテ居リマス、ソレカラ本多静六君ガ川瀬善太郎君外二名ノ同意ヲ以テ建議案ヲ提出サレタノハ此処ニ四ツゴザイマス、第一ガ行道樹栽植ノ件、第二ガ山水風景其他天然物利用ノ件、第三ガ我国殖民ノ大方針ヲ調査スル件、第四ガ本邦地産業ノ大方針ヲ確立スル件デアリマス、唯今受取リマシタモノガ多ウゴザイマスカラ、是カラ蒟蒻版摺ニ致シマシテ、配付スルコトニ致シマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 合計建議ニナツタモノガ十五アリマス、添田サンノ分モ加ヘテデス――是ヨリ外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件ヲ議題ト致シマス

    外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件
 我国輓近ニ於ケル貿易ノ発達ハ頗ル顕著ニシテ、其ノ進歩世界稀ニ見ルナリト雖、之ヲ先進諸国ノ事例ニ徴スルニ発展ノ余地尚ホ尠シトセス、今ヤ改正関税ハ公布セラレ、国内ニ於ケル工業漸ク起ラントスル機運ニ際シ、我商品ノ販路拡張上何レノ市場及如何ナル物品ニ最モ重キヲ置クヘキヤ、如何ナル施設ヲ為スヘキヤ、其ノ他貿易ノ促進上如何ナル方法ニ依ルヘキヤヲ調査スルハ、刻下ノ状勢ニ照ラシ洵ニ急切ナリト信ス
 是レ本問題ヲ提出スル所以ナリ
○番外(商務局長大久保利武君) 第二ノ問題ノ「外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件」、此問題ニ付キマシテ一応説明ヲ致シマス、先ヅ以テ此問題ニ付テ御断リヲ致シテ置キマスノハ、本問題ハ他ノ問題ノヤウニ諸君ノ御手許ニ具体的ノ案ヲ印刷ニ附シテ御廻ハシシテハゴザイマセヌ、其理由ハ此問題ニ付キマシテハ従事農商務省《(来カ)》ニ於キマシテモ種々経営致シタコトモゴザイマスル、其中デ成績ノ挙ツタモノ、又挙ラザルモノモゴザイマスルガ、要スルニ此助長方法並ニ施設経営ト云フコトハ極メテ慎重ナル取調ヲ要スルコトデアツテ、本省ニ於テモ
 - 第56巻 p.389 -ページ画像 
懈ラズ常ニ研究ハ致シテ居リマスルシ、又多少ノ施設経営モ行フテ居リマスガ、今回出シマシタ趣意ハ此問題ニ付テ、本会委員ノ御方々ニ於テハ最モ経験ニ富ミ且ツ学識ニ於テモ同様種々ナ御意見ガアルコトト固ク信ジテ居リマスカラ、此問題ニ付テハ成ルベク委員ノ諸君ヨリシテ種々ノ御高見ヲ承ツテ、ソレヲ参考ト致シテ将来ニ向ツテ施設経営ヲ致シタイ、斯ウ云フ精神デゴザイマス、別ニ他ノ問題ノ如ク具体的ノ案ヲ御手許ニ出シテ、ソレニ付テ諮詢致スト云フコトニナツテ居リマセヌ、併ナガラ本省ニ於テ是迄施設経営シタ事柄モゴザイマスルシ、又外国貿易ノ研究ニ付テモ聊カ御参考ニ一・二言致シタイコトモゴザイマス
 外国貿易ノ発達ト云フコトハ無論一国ノ貿易政策ノ如何ニ依テ其目的ヲ達スルノデアルシ、又其運用如何ト云フコトガ極メテ必要ナコトデアリマス、而シテ又此外国貿易ハ諮問案ニモ書イテアリマスル通リ「何レノ市場及如何ナル物品ニ最モ重キヲ置クベキヤ、如何ナル施設ヲ為スベキヤ、其ノ他貿易ノ促進上如何ナル方法ニ依ルベキヤ」ト云フ問題ノミニ依テ、貿易全体ノ発達ヲ図ルト云フコトハ出来ナイノデアリマス、無論内地ノ産業ノ発達、内外交通機関ノ整備、金融機関ノ完備、実業教育ノ普及等ノ種々ノ補助機関ト申シマセウカ、外国貿易ニ直接間接ニ関係シタコトノ改良発達ニ依テ始メテ外国貿易全体ノ改良発達ヲ遂グルコトガ出来ルモノデアラウト思フノデアリマス、併シ今回出シマシタ問題ハ玆ニ書イテアリマスル通リ、主トシテ本省ノ主管ニ属スルコトニ重キヲ措イテアリマスノデ、何レノ市場如何ナル物品ニ重キヲ措クベキカ、又其施設経営ハ何ウスルカト云フ問題ニ限ラレテ、其範囲ガ本省主管ノ範囲ニ止メテアルコトモ御承知ヲ願ヒタイノデアリマス
 御参考迄ニ外国貿易ノ現況ト、是迄過去現在ニ多少ノ施設経営ヲシテ居ルコトヲ一・二是レヨリ申上ゲタイト思ヒマス、御承知ノ如ク我国近年ノ貿易ノ発達ハ実ニ顕著ナル現象ヲ呈シテ居リマシテ、年ヲ逐ウテ其貿易額モ増シマスルシ、又年ヲ逐ウテ其貿易ノ販路モ世界各国――各方面ニ其範囲ヲ拡ケツヽアルノデアリマス、近年外国貿易発達ノ内容ニ就テ著シク認ムル一ツノ現象ハ、我国ガ外国ヨリシテ年ヲ逐ウテ原料ヲ輸入スルト云フコトノ甚ダシク殖エタコトト、又モー一ツハ外国カラ入レタル原料ニ学術機械ノ力ト低廉ナル生産費ニ依テ、此原料ニ加工シテ之ヲ外国ニ輸出スル――即チ輸出工業品ノ著シク増シマシタ事柄デアリマス、言葉ヲ換ヘテ申シマスルト外国ヨリ原料ヲ多ク入レテ、之ヲ加工シテ製品トシテ外国ニ輸出スルト云フノガ、我国貿易ノ発達ニ付テ顕著ナル事実デアリマス、此傾向ガ将来モ我邦地理上ノ関係ヨリシテ、又現状ヨリシテ将来ヲ察スルト、必ズ継続スベキ傾向デアル、又此趨勢ハ是非継続セナケレバナラヌ事柄デアリマス、又是等貿易関係ニ付イテ、貿易対手国ノ関係、又輸出入ノ関係ノ国々ヲ見渡シマシテ、之ヲ観察イタシマスルト、我邦ガ最モ多ク輸出シテ居ル国々ハ何所デアルカト云フコトヲ見マスルト云フト、御承知ノ如ク、米国並ニ清国デゴザイマス、輸出ノ最モ多額ヲ占メテ、又其発達ノ余地、将来ニ於テ販路拡張ノ最モ多キモノハ此二箇国デアルノデ、
 - 第56巻 p.390 -ページ画像 
近年著シク貿易ノ上ニ付イテ此現象ガ進ミツヽアルノデアリマス、勿論他ノ欧洲諸国ニ於テモ、貿易ハ進ミツヽアリマス、又将来モ進メナクテハナラヌノデアリマスガ、殊ニ此二国ハ歴史的地理的関係国柄ト云ヒ、原料ノ豊富ノコト、又人口ノ非常ニ夥多ナルコト、是等ノ点ヨリ致シマスレバ、最モ斯ウ云フ国柄ニ力ヲ用ヰナケレバナラヌ、即チ貿易市場トシテハ、将来最モ有望ナル主要ノ所デアラウト思ヒマス、其他英領印度・蘭領印度ノ如キモノモ、人口ハ非常ニ多ウゴザイマシテ、近年ノ貿易ヲ見マスルト云フト、年ヲ逐ウテ是等ノ方面モ非常ナル増進ヲ致シマシテ、我ガ商品ヲ歓迎スル状況ガ見エルノデアリマスデ是等ノ国ニ向ツテモ、盛ンニ国内工業ノ発達ヲ期シテ、輸出ヲ図ラナケレバナラヌノデアリマス、御承知ノ如ク、我邦国ノ大キサ、土地ノ状況カラシテ、前申シマシタ輸出品ノ原料ト云フコトニ付イテハ、限リ有ル土地デ、将来益々進ンデ来ル需要ノ限リ無キ製品ヲ、我邦ノ原料ニノミニ依ツテ立ツト云フコトハ出来マセヌカラ、多ク海外ヨリ原料ヲ入レテ盛ンニ之ニ加工シテ、海外ニ輸出スルト云フ点カラ考ヘマスト云フト、丁度米国・清国・英領印度又蘭領印度ノ如キハ、頗ル好望ノ土地デアルノデアリマス、即チ海外ヨリ原料ヲ多ク入レル国ニ向ツテ、其入レタ原料ニ向ツテ加工シタ品物ヲ輸出スルト云フ、此関係ハ我邦ノ貿易ノ将来ニ向ツテ深ク注意ヲ要スルコトデアラウト思フ又濠洲・南米・墨西哥ノ如キ、是等ノ国々モ未ダ貿易額ニ於テハ他ノ国々ニ及ビマセヌガ、種々ノ関係カラシテ近年彼ノ国ニ本省ヨリ実地人ヲ派シテ調査シタ所ニ依リマスト、将来有望ノ所デアツテ、我邦ノ貿易ノ販路トシテ好望ノ一ツデアルノデアリマス、此貿易ノ趨勢ハ殊ニ政府ニ於テハ留意シテ、助長イタシタイト考ヘテ居ルノデアリマスソレカラ一ツ附加ヘテ申シタイノハ、此商品ノコトニ付イテ、将来此商品トシテハ成ルベク需要ノ多イ土地ニ付イテ、実用品ヲ主トシテ輸出ヲ試ミル、一ツ将来此需要地ノ嗜好ヲ能ク調ベテ、見込ノアルト云フ物ノ如キハ、進ンデ試製試売ヲ致シテ貿易ヲ進メテ往キタイ、是マデ試製試売ト云フコトモヤツタコトハアリマスルガ、何分規模ノ小サイ事柄デアツテ、世界ヲ相手トシテ貿易ヲ助長スルト云フニハ規模ガ小サイ、成ルベク規模ヲ大ニシテ、調査ノ結果有望ト認メル所ニ向ツテ、試製試売ヲ行ヒタイ、デ是等ノ商品ノ中デ、或ハ工業品トシテ、或ハ農産品ト云ヒ、或ハ水産品ト云ヒ、又木材ト云ヒ、種々ノ有望ナル品物ガ有ルダラウト思フノデアリマス、是等ハ既ニ是マデ輸出額ノ上ニ付イテモ、少ナカラヌ進歩ヲ呈シテ居リマスガ、将来是等ノコトモ着々実地ニ施シテ、其目的ヲ達スルヤウニシタイト考ヘテ居リマス第二ニ申上ゲタイノハ内外ノ産業状態ノ調査、及ビ研究ト云フコト、御承知ノ如ク是ヨリシテ我邦ガ世界各方面ニ向ツテ商品ノ販路ヲ求メタイト云フコトニ付イテハ、余程需要地ノ嗜好ノ調査、人情風俗等ノ研究ヲ積ミマシテ、サウシテ之ヲ我邦ノ当業者ノ参考ニ供シ、且ツ奨励モ加ヘルト云フコトハ、常ニ必要ヲ感ジテ居ルノデゴザイマス、夫故ニ夫等ノコトニ付イテハ、本省ニ於テモ海外貿易拡張費ト云フモノヲ、予算ニ御承知ノ如ク出テ居リマシテ、鋭意此調査研究ト云フコトニ付イテハ、怠ラズ努メテ居ルト云フ訳デアリマスルガ、何分内外ノ
 - 第56巻 p.391 -ページ画像 
産業状態ハ日ニ月ニ進歩シテ、今日新奇ナリトシタコトモ明日ハ既ニ陳腐ニ属シテ居ルト云フコトガ多イノデアリマスカラ、是ハ将来ニ於テハ一層広ク且深ク研究調査ヲ遂ゲテ以テ販路ノ拡張、商品ノ改良ヲ行ハナケレバナラヌノデアリマス、此調査研究ト云フコトニ就キマシテハ、我国ノ商業会議所ノ活動ニ待ツコトモ甚ダ多イ、又商品陳列館ノ如キニ於テ調査研究ヲ遂ゲテ販路拡張、商品ノ改良ニ資スルト云フコトモ必要デアリマス、或ハ又領事等ノ報告ニ依ツテ施設経営スルコトモ、又ハ実業練習生ヲ適当枢要ノ地ニ派シテ産業ノ調査練習ヲ致サシメ、殊ニ又本年ノ議会ニ於テ成立致シマシタ商務官ノ設置モ日ナラズシテ実施サレルダラウト思ヒマスガ、此商務官ニ向ツテモ成ルベク前述ノ諸機関ト気脈ヲ通ジ聯絡ヲ取ツテ調査研究ト云フコトニ就イテハ、将来大ニ相提携シテ其目的ヲ達シタイト考ヘテ居リマス、第三ニ申上ゲタイノハ販売組織ノ改善ト云フコトデ、御承知ノ如ク我貿易上本邦ノ商品ト云フモノハ往々ニシテ粗製濫造ノ謗リヲ受ケテ、折角一旦得タ所ノ声価モ一朝ニ落トシテ仕舞フ、得タ所ノ販路モ失ツテ仕舞フト云フヤウナコトガ多イノデ、是ハ既ニ長イ問題デ誰モ承知シテ居ル事柄デ、今更繰返ス必要モナイ位ノコトデアリマスガ、併ナガラ事実ハ事実デ依然トシテ其弊ハ今日モ去ラヌノデ、去ラヌ以上ハ是等ノ弊害ニ向ツテ之ヲ矯正シテ往ク必要ガアルカラシテ、大ニ攻究スル必要モアルノデアリマス、無論此貿易ノ上ニ就イテ我国ノ当業者ノ資本ノ豊カナラザル所ヨリシテ、勢ヒ粗末ナ品物、即チ一旦或価格ヲ以テ売出シタモノヲ乍チニ品ヲ粗悪ニスル、夫レヲ矢張同ジ価格デ売ル、或ハ抜ケ駆ケヲナシ売崩シヲスルト云フヤウナコトデ以テ、到ル所ニ失敗スル、此原因ニ就イテハ種々アラウト思ヒマスガ、最モ遺憾ニ考ヘルノハ、我国ノ当業者ノ間ニ一致団結シテ小ナル資本ヲ合セ、小ナル力ヲ合セ、依テ以テ之ヲ大ニシテ外ニ当ルト云フコトガ甚ダ欠乏シテ居ルヤウニ思フノデアリマス、此販売組織ト云フ事柄ハ、ソンナラバ之ヲドウシタナラバ宜カラウカト云フコトハ中々ムツカシイ問題デアラウト思ヒマスルガ、本省ニ於テ是等ノ弊害ニ向ツテ常ニ考ヘテ居ルノハ、或ハ当業者ノ団結ヲ図ル為ニ同業組合ト云フモノヽ力ニ依ルトカ、或ハ其設立ヲ奨励スルトカ云フコトニシテ、成ルベク同業者ガ一致団結シテ僅ノ資本ヲ合セレバ大キクナル、僅ノ力モ合スレバ大ナル力トナリ、以テ其外ニ当ルト云フコトヲ努メテ居リマスルガ、時勢ノ進ムニ従ツテ、又販売合同ト云フ如キ問題モ大ニ攻究スベキ事柄デハナイカ、既ニ販売合同ト云フコトニ就イテハ或ル事業ニ於テハ既ニ我国ニ於テモ行ハレテ居リマス、ガ併シ独逸其他先進国ニ於ケル如ク未ダ大規模ノ販売合同ト云フコトハ出来テ居リマセヌ、将来世界ヲ相手トシテ我国ノ貿易ヲ進メル上ニ就イテハ、ドウシテモ資本ヲ大ニシ組織ヲ大ニシナイト、区々タル力ニ於テ一騎打ノ戦争ハ出来ヌノデアリマスカラ、成ルベク小サイ力ヲ集メテ合同シテ外ニ当ル、工業ノ合同若クハ販売業ニ於ケル合同、即チ独逸ニ於ケル「カルテル」若クハ「シンジケート」ノ一種ノ販売合同ト云フコトニ向ツテハ大ニ攻究シテ、其組織方法ノ如キモ如何ニスベキカ、如何ニシテ其方法ヲ執ルベキカ、外ニ当ルベキカト云フ問題等モ極メテ必要ナ事柄デアラウト思
 - 第56巻 p.392 -ページ画像 
フ、ソレカラ第四ニ申上ゲタイノハ重要輸出品ノ検査ト云フコト、此貿易品ノ上ニ就イテ最モ遺憾ニ考ヘルノハ、我国ノ商品ハ兎角品物ガ揃ハナイ、良イ品物モ出来ルガ、併シ悪ルイ品物モ沢山ニソレニ混ツテ居ツテ、商品トシテ品質ガ揃ツテ統一シタ品物ガ出来ナイ、即チ粗製濫造ノ如キモ其原因ノ一ツデアリマスガ、兎角品物ガ不揃ヒデ商品トシテ大ナル価値ヲ保ツコトガ出来ヌト云フコトガ一ノ大ナル欠点デアリマスノデ、此事ハ従来種々ニ研究サレテ居リマスガ、政府ニ於テハ既ニ御承知ノ通リ横浜ニ於テハ生糸検査所、神戸ニ於テハ花筵検査所ト云フ国立ノ検査所ヲ設ケテ経営シテ居リマス、又同業組合ニ於テ商品ノ検査ト云フコトモ多クヤツテ居リマスルシ、或ハ又羽二重ノ如キハ其主産地ノ県ニ於テハソレゾレ県事業トシテ検査ヲ行ツテ居リマス、此重要輸出品ノ検査ト云フ事柄ガ頗ル必要ナ事柄デアリマスルガ併シ此品物ノ性質如何、生産状態如何ト云フコトニ依ツテ、此検査ノ方法モドウシテモ一定シテ行フコトハ出来ヌノデアリマス、此羽二重ノ検査ト云フコトモ唯今ノ所デハ生産県ニ於テ行ツテ居リマスルガ、尚進ンデ之ヲ統一スルタメニ出来ルダケ共通ノ利害事情ヲ能ク研究シテ、出来ルダケ之ヲ統一スルタメニ適当ナ方法ヲ取ルコトニナツテ居リマシテ、目下調査中ニ属シテ居リマスルガ、各県ニ於テ行ツテ居ル所ノ羽二重ノ検査ヲ出来ルダケ統一シテヤルト云フコトニ目下調査シテ、略々見込ガ付イテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、其ノ外ノ輸出品ニ付キマシテモ、多クノ当業者ニ於テハ是非官営デ検査ヲ行ツテ貰ヒタイト云フ様ナ希望モ是迄申出マシタケレドモ、ドウモ品物ノ性質状態ノ如何ニ依ツテ一概ニ官営デヤルコトハ余程慎重ナ調査ヲ要スルコトデアツテ、余リ種々ナ民業ニ向ツテ関渉シテヤルト云フコトモ民業ノ発達ノ上ニ付テ如何デアラウカ、第一其検査ノ目的ヲ達スルト云フ上ニ付テ未ダ確信ガ付カヌノデアリマス、唯今ノ方針デハ成ルベク同業組合ニ於テ検査ヲ施行スルトカ、或ハ聯合検査ヲ各同業組合間同業者間ニ於テ行フト云フヤウナ方針ヲ取ツテ進ンデ行キタイト考ヘテ居ルノデアリマス、尚他ニ段々申述ベタイコトモアリマスルガ、大略右様ノ現況又施設経営ノ考ヲ有ツテ居ルノデアリマスガ、何レ此案モ特別委員会ガ設ケラレルコトヽ考ヘマスカラ、詳細ナコトハ其席ニ於テ述ベル機会モアラウト思ヒマスガ、大体以上ノコトヲ御参考ニ申述ベマシテ、経験アリ学識アル諸君ノ御意見ヲ多ク、成ルベク多ク伺ヒマシテ、将来ノ参考ニシテ出来ルダケ実行ニ努メタイ、斯ウ云フ精神デ居ルノデアリマス、返ス返ス具体的ノ案ニ付テ御意見ヲ拝聴スルト云フコトニナツテ居リマセヌノハ右様ノ次第デゴザイマスルノデ、ドウゾ此案ニ付テハ種々ノ御高見ヲ承リタイノデゴザイマス
○中略
○七十一番(西村治兵衛君) チヨツト私ハ大久保局長ニ伺ヒタイト思ヒマス、唯今本案ヲ調査審議スルニ当リマシテ農商務省ノ御意見ノアリマス所ヲ詳細ニ伺ヒマシタ、誠ニ満足ニ存ジマス、其中ニ私ガ伺ヒタイト申シマスノハ、此産業ヲ進ムル上ニ於テ外国ヨリ原料ヲ多ク輸入シテ、ソウシテ之ニ加工精製シテ外国ヘ成ルベク多ク出スト云フコトガ必要デアルト云フコトニ付テハ惇々ト御意見ヲ伺ツタノデアリマ
 - 第56巻 p.393 -ページ画像 
ス、然ルニ内地ニ於キマシテ最モ多ク産出スル所ノ原料ガゴザイマス是等ニ向ツテハ何等ノ御意見モ伺ハナカツタヤウデゴザイマス、玆ニ一例ヲ挙ゲテ申シマスレバ、此前ノ問題トナツテ居リマス所ノ蚕糸ノ如キ、是ハ産出高ニ於キマシテモ、輸出高ニ於キマシテモ、其大部分ヲ占メテ居ルヤウナ特有ノ物産デアルト信ジマス、然ルニ多クハ唯生糸ノ儘デ輸出スルカ、否ラザレバ之ヲ織物ニシタト言ツタ所デ、僅ニ極ク簡単ナル半製品同様ノ織物ニシテ之ヲ輸出シテ居ル位ノ状況デアラウト思フノデス、此等ニ対シマシテハ之ヲ精製加工シテ輸出ヲ促スト云フコトニ付テハ、今日此案ヲ議スルニ当ツテ、何ニカ農商務省ニ於テモ御意見ノ在ルコトト存ジマスガ、此際幸ニ拝聴スルコトヲ得マスレバ誠ニ満足ニ存ズルノデアリマス
○番外(商務局長大久保利武君) 唯今生糸ノ例ヲ引イテ、内国ニ産スル所ノ原料ニ就テ研究シナカツタガ、即チ単ニ外国ヨリ輸入スル所ノ原料ニノミ重キヲ置イテ居ル如クニ言ツタガ、ソレハ何ウ云フ訳デアルカト云フ、斯ウ云フヤウナ御尋ネト承知致シマシタガ、無論生糸ハ我国ノ輸出品トシテ最モ多額ヲ占メ、又最モ我国民ガ重キヲ置クベキモノタルコトハ言フ迄モアリマセヌガ、私ハ貿易ノ趨勢ノ上ニ付テ、外国ヨリ原料ヲ入レテ精製加工シテ輸出致スト申上ゲマシタノハ、貿易ノ趨勢即チ将来ニ於テ益々趨勢ハ顕著ナル事実トシテ発達スベキモノデアル、無論生糸ノ如キハ輸出重要品デアツテ、先程申シマシタ亜米利加ノ輸出入ノ貿易ノ上ニ付テ、実ハ品名等ハ特別委員会ニ於テ申ス積デアツタノデスガ、私ガ生糸ト申シマシタノハ是レハ半製品トシテ見テ居リマスノデ、亜米利加ニ半製品トシテ輸出致シテ、亜米利加ガ即チ我国ノ大ナル需要者トナルノデ、亜米利加トカ支那トカノ貿易ニ付テ一々申スノハ煩雑デアリマスカラ是レハ申上ゲナカツタノデアリマシタガ、大ニ此等ノ品物ニ向ツテ力ヲ竭クスコトハ申ス迄モナイコトデアリマシテ、又原料ニ加工シテ出スト云フコトハ亜米利加トノ貿易関係ヲ見マスルト云フト、羽二重トシテ盛ンニ輸出シテ居リマス又印度・濠洲等ニモ羽二重トシテ盛ンニ多額ノ輸出ヲ示シテ居ル次第デ、又羽二重等ニ染色ヲ施シ、或ハ捺染シ、精製品トシテ輸出ヲ奨励シタイ、又木綿織物ニ同様ノ加工ヲナシ輸出ヲ試ミタイノデアリマス御尋ネノ如キコトハ我国ノ貿易ノ方針トシテ、私ハ全然之ヲ助長シテ往クベキモノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス
○十二番(伯爵寺島誠一郎君) 昨日第一ノ議案トナリマシタ蚕糸業ノ発達及改善ニ関スル件ト云フ議案ニ付キマシテハ、委員ノ中カラ動議ガ出マシテ十五名ノ特別委員附託ト極マリマシタノデアリマス、而シテ委員十五名ハ議長指名ニ御任カセシタノデアリマス、唯今問題ニナツテ居リマス外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件ト申シマスル案ニ付キマシテモ、昨日ノ例ニ拠リマシテ矢張議長指名ノ十五名ノ特別委員ニ附託セラルヽコトヲ私ハ動議トシテ提出致シマス、而シテ此議長指名ノ十五名ノ委員ノ中ニハ、副議長渋沢男爵ヲモ其中ニ含マセラルルコトヲ希望スルノデアリマス
  (「賛成々々」ノ声起ル)
○二十三番(田川大吉郎君) 私ハ此問題ヲ撤回セラレンコトヲ望ミマ
 - 第56巻 p.394 -ページ画像 
ス、諮問ノ案トシテ殆ド的確ナル案ヲ欠イテ居ル、斯ノ如キ漠然タル問題ニ審議ヲ凝ラスコトハ短イ日ニ於テ時ガ足リマセヌ、案ノ名ニ於テハ外国貿易ニ付イテデアリマスガ、併シ案ノ内容ノ説明ハ所謂刻下ノ状勢ニ照ラシ、調査ト謂ヘルコトト、施設ト謂ヘルコトニ自カラ分界ガアルベキデアリマス、案ノ御精神ニ向ツテハ固ヨリ異論ノアル訳デナイ、日本ノ外国貿易ヲ助長スルノ方法及施設ニ関シテハ、如何ナルコトヲスレバ良イカト云フ問題其物ニ付テハ何人モ異論ハアリマセヌ、併シ其中ニ調査トシテ示メサレタルモノノ如キハ、須ラク当局自カラノ責任以内ノコトデアル、官民朝野ヲ合シテ玆ニ一ツノ具体的案ヲ作ル為メニ提出スルニ方ツテハ、当局者ハ宜シク的確ナル案ヲ具ヘテ諮問セラルベキデアリマス、斯ノ如キ漠然タルモノヲ提出セラルルノハ私ハ迷惑デアリマス、此意味ニ於テ私ハ此案ノ撤回ヲ希望スルノデアリマス
○五十二番(法学博士一木喜徳郎君) 私ハ特別委員ニ附託スルト云フ説ニ賛成致シマス、唯今田川君ヨリ御説モアリマシタ、是レモ一応御尤ト考ヘマスガ、先刻商務局長ハ謙遜ノ意味ヲ以テ具体的ノ案ヲ具ヘテ提出ガ出来ナカツタト云フコトヲ言ハレマシタガ、併ナガラ其御説明ノ中ニ唯今農商務省ノ採ツテ居ル所ノ方針、並ニ農商務省ニ於テ従来調ベラレタ結果トシテ御話シニナツタ所ノモノハ、矢張是ハ一種ノ案ト見テ良カラウト思フノデアリマス、或ハ其御方針ニ付テハ随分議論スベキ余地ガアルト思フ、唯今西村君ノ質問ノ如キモ其一デアル、私ハ之ニ付イテモ少々当局者ニ意見ヲ質シテ見タイト思ツテ居ツタノデアリマス、即チ此一例ニ付テ申シマシテモ、当局者ハ簡単ニ原料ヲ輸入シテ之ニ加工スルト云フコトハ現時ノ趨勢デアル、又将来之ニ向ツテ力ヲ入レナケレバナラヌ、是ガ果シテ適当デアルヤ否ヤ、是ガ果シテ将来ノ趨勢デアルヤ否ヤト云フコトハ、大イニ考フベキコトデアラウト思フ、原料ハ無クシテサウシテ之ニ加工スルト云フコトヲ以テ永ク我邦ノ産業ノ基礎トシテ、方計トシテ往クト云フコトハ、随分危険ナルコトデハ無イカト思フ、原料ヲ別ニシテ我邦ノ恃ム所ノモノハ果シテ何ンデアリマスカ、例ヘバ生産費ガ廉イトカ、労力ガ廉イト云フコトモ比較的ノ話デアル、縦令労働ガ廉クトモ、其労働ノ効果ニ至ツテ、海外ノ労働ニ及バヌト云フコトデアレバ、結局生産費ハ高イノデアル、ソレノミナラズ、此生活ノ状態ガ段々進ンデ生活費用ガ増シテ参ルニ付イテハ、労働ガ廉イト云フノモ決シテ永ク恃ムニ足ラヌコトデアラウト思フ、ダカラ之ニ付キマシテモ、一面ニハ此生活ノ状態ノ進歩ニ伴ツテ生活費ノ増スコト成ルベク抑制シテ往クト同時ニ、一面工場法ノ制定其他ノ方法ニ依ツテ、労働ノ効力ヲ挙ゲテ往クコトヲ尚ホ大イニ研究シナケレバナラヌコトデアラウト思フ、兎ニ角此生産費ガ廉イトカ、労働ガ廉イトカ云フコトヲ永ク恃ミマシテ、我邦ガ産業ヲ維持シ、外国ト競争ヲ継続シ、更ニ其競争ニ於テ一層優勢ヲ得ヤウト云フコトハ到底望ミ難イコトト思フ、寧ロ恃ム所ノモノハ我邦ノ原料デアツテ、ソレニ向ツテ加工シテ、日本ガ外国ニ対シテ特有ナル優勢ノ地位ヲ占メテ居ル物ニ、大イニ力ヲ注グ必要ガアルデハナカラウカト考ヘマス、此点ニ付イテハ他ノ機会ニ於テ、商務局長ト幾ラカ
 - 第56巻 p.395 -ページ画像 
意見ヲ異ニシタルコトガアルノデ、是等ノ点ハ私ハ大イニ攻究スベキ点デアラウカト思フ、ソレデ先刻別段具体的ノ案トシテ御話ハ無カツタケレドモ、兎ニ角農商務省ニ於テ従来執リ来ツテ居ル方針、若クハ今後ノ方針トシテ御考ヘヲ御述ベニナツタノデアルカラ、是等ノ点ハ即チ本会ニ於テ研究スル値ノアル点デアラウト思フ、兎ニ角是モ先刻寺島伯ヨリ御発議ニナリマシタ特別委員ニ附セラレテ、慎重ニ審議セラレムコトヲ希望シマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 別ニ御異存ゴザイマセネバ、今二十三番ノ御説ハマダ賛成ガ無イヤウデゴザイマスカラ、寺島伯ヨリ十五名ノ特別委員ヲ作ツテ、ソレニ附託スルト云フ案ガ賛成ヲ得テ居リマス、ソレニ向ツテ決ヲ採ラウト思ヒス《(マ)》
○十二番(伯爵寺島誠一郎君) 其十五名ノ委員ノ内ニハ渋沢男爵モ含ンデ置クト云フコトデ……
○議長(男爵渋沢栄一君) 唯今御聴キノ通リデゴザイマス、ソレデハ寺島伯ニ御同意ノ方ハ御起立ヲ願ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 多数ト認メマス、委員ハ追テ御報道ヲ致シマス、第三ニ移リマス、不正競争取締ニ関スル件、此案ヲ議題ト致シマス

    三、不正競争ノ取締ニ関スル件
 営業上ノ自由競争益々激甚ヲ加フルニ伴ヒ、不正ノ手段ヲ弄シテ同業者ノ利益ヲ害シ営業上ノ秩序ヲ攪乱スルモノアリ、特許法・実用新案法・意匠法・商標法ハ勿論、刑法・商法・民法其他ノ法制ニモ不正ノ手段ヲ防遏スルノ規定アリト雖、是等現行ノ法制ノミヲ以テ充全ノ効果ヲ収メンコトヲ期スルハ到底至難ナリト思考ス、故ニ正当ノ営業者ノ信用ト一般需要者ノ利益トヲ保護スル為ニ競争上ノ不正手段ニ関スル取締ノ途ヲ講ズルハ実ニ喫緊ノ要務ナリト認ム
 是レ本問題ヲ提出スル所以ナリ

○番外(特許局長中松盛雄君) 第三ノ問題ニナリマスガ、不正競争取締ニ関スル事項、是ハ極簡単明瞭ナル問題デゴザイマシテ、別ニ説明スベキ必要ハ無イカト存ジマス、然ルニ世間ニハ多少之ニ付イテ誤解ヲ抱イテ居ル者ガアルト存ジマスカラ、聊カ御参考ノ為メニ説明イタシタイト存ジマス ○中略 此不正競争ハ何ノ為ニ取締ラナクチヤアナラヌカト申シマスルコトハ、極簡単ナル話デアリマシテ、商工業者ヲシテ自己ノ労力ヲ費ヤシ、若クハ資本ヲ卸シテ得タ所ノ其果実及其信用ヲ保全セシメタイト云フニ過ギナイノデアリマス、即チ之ニ依リテ、商工業者ガ安全ニ其業務ヲ営ムコトヲ得ルト云フ訳デ、結局商工業ノ健全ナル発達ヲ図ルニアルト云フコトヲ目的トスルモノデアリマス、デ畢竟此商工業ガ何ノ為ニ発達スルカト申シマスト云フト、国民ヲシテ各々勤勉ニ、且ツ忠実ニ其業務ヲ営ミ、且ツ又安心シテ其資本ヲ投下シ、十分ニ生産力ヲ増サシムルト云フコトヨリ来ルモノデアリマス、之ニ付キマシテハ、特許法ノ如キ商標法ノ如キ、意匠法ノ如キモノガアリマシテ、其発明ナリ、考案ナリ、又其他勤勉ヨリ得タル信用ヲ保
 - 第56巻 p.396 -ページ画像 
護スルニ付イテ、夫々規定ヲ設ケマシテ、其保護ヲ力メテ居ル次第デアリマス、然ルニ此商工業ノ発達ニ従ヒマシテ、漸次競争ガ盛ンニナツテ来ル、其競争ノ結果ハ或ハ不正ノ手段ニ訴ヘテ、勝ヲ制セントスルニ至ル、而シテ其不正ノ手段ガ益々巧妙ヲ極メマシテ、今日ノ有様ニ徴シテモ、甚ダ忌ムベキ所ノ方法ガ奸商ニ依リテ講ゼラレテ居ル、ソレハ自然ノ勢ヒデハゴザイマスガ、之ヲ看過スルト云フト、此商工業ノ発達ノ上ニ付イテ、大イナル妨ゲトナリハシナイカト云フ心配ヲ抱カシムルノデアリマス、例ヘテ見マスト、或ハ他人ノ氏名ヲ模造シ他人ノ信用ヲ得タル其氏名ヲ、自己ノ劣等ナル商品ニ附シテ市場ニ之ヲ拡布スル、或ハ又広告看板ニ用ヰルコトデアリマス、且ツ新聞ヲ見マシテモ、随分如何ハシイ広告ガアリマス、而已ナラズ、道路ヲ通過シマシテモ広告看板ノ如キモノハ、随分人ノ非難ヲ招キマスモノガ続続見当ルノデアリマス、其他是ハ諸君モ御承知デアリマセウガ、是ハ有名ナル守田宝丹ノ包装デアリマス、此所ニ三ツアリマスルガ、是ハ此中ニ偽造品ガ二ツアリマス、守田治兵衛ハ永ク売薬業ヲ営ミマシテ宝丹ト言ヘバ、既ニ守田ノモノト連想セラレテ居ルノデアリマス、然ルニ此宝丹ト云フ文字ハ、是ハ普通ノ名称ニナリマシテ、一ノ薬品名トシテ売ツテ居ル訳デアリマスカラ、宝丹ノ名称ニハ商標専用権ヲ与ル訳ニ行キマセヌ、夫故ニ宝丹ト云フ文字ノ外ニ、或ハ此処ニ在リマスヤウナ小サイ商標ヲ附ケテ其商標ニ就イテ登録ヲ受ケルト云フコトヲ致シテ居ルノデアリマス、或ハ其他特殊ノ文字ガ附イテ居ル訳デアリマスガ、而モ宝丹ト云フモノハ登録ヲ受ケルコトガ出来マセヌ為ニ折角ノ包装ガ往々真似ラレテ遂ニ守田宝丹ガ自己ノ得意ヲ失フノミナラズ、甚ダ悪イ品物ヲ売ラレ、ソレガ為メニ信用ヲ害セラレルコトガアルノデ、著シク損害ヲ蒙ツテ居ルト云フ次第デアリマス、此一ノ物ハ矢張富山県ノモノデアルト申シマスガ、同ジク守田治兵衛ノ宝丹トイフ名ヲ用ヒテ宝丹ノ発売ヲシテ居ル、是ハ奈良地方ノモノデアリマシテ是モ矢張名ハ何者カ知リマセヌケレドモ矢張守田宝丹ノ名ヲ以テ売ツテ居ル、是ハ屡々裁判沙汰ニナリマスガ、裁判ノ方ニ於テハ単ニ登録商標ヲ認メマシテ他ヲ認メヌ為ニ、包装等ニ依ツテ森田治兵衛ノ得テ居ル信用ハマダ権利ヲ得テ居ラヌ為ニ、本元ノ守田治兵衛ナルモノハ現ニ大ニ苦ンデ居ル次第デアリマス、斯ノ如キ包装トカ、或ハ他人ノ信用ヲ得テ居ル包装、或ハ姓名等ニ就イテノ保護ガアリマセヌ為ニ、折角得タル信用ヲ保護スルコトガ出来ヌ為メ商工業者ノ苦ンデ居ルコトハ確ナル事実デ、諸君ガ度々之ヲ御見聞ニナルコトダラウト存ジマス、其他工業上ノ秘密、或ハ商業上ノ秘密ガアリマス、是ハ或ハ工業上ノ方法ニ就イテハ特許ヲ受ケルコトノ出来ルモノモアリマス、而モ亦特許ヲ受ケルコトガ不利益ナルモノモアリマス、例ヘバ化学的方法ノ如キモノハ特許ヲ受ケラレルノデアリマスガ、新規ナル発明デアリマスレバ特許ヲ受ケラレルノデアリマスガ、之ヲ受ケルト直チニ真似ラレル、真似ラレタラ侵害ノ証拠ヲ挙ゲルコトガ甚ダ困難デアル方法ガ特許デアル、其製品ガ特許デナイ、自分ノ特許ヲ受ケタ品物モ普通ノ品物モ同ジデアル製品ニ在ツテハ、果シテ是ガ特許法ヲ侵害シテ居ルカ否ヤガ分リマセヌ為ニ、侵害ノ証拠ヲ挙ゲルコトガ甚ダ困難
 - 第56巻 p.397 -ページ画像 
デアル、夫故ニ或ル化学者ノ如キ随分優良ナ発明ヲ為シタ者ガ往々特許ヲ受ケルコトヲ恐レルト云フ次第デアル、発明ニ就イテハ特許ヲ受ケルコトガ不利益ヲ蒙ルモノガアリマスカラ、サウ云フモノハ之ヲ秘密ニシテ置ケバ宜シイ、所ガ今日工業上ノ秘密ヲ保護スル法律ガアリマセヌ、刑法上ニ他人ノ秘密ヲアバク云々ト云フ規定ガアリマスガ、是ハ工業上ノ秘密ヲ保護スル条文ニハナラヌノデアリマス、工業上ニ於ケル如ク、商業上ニモ又秘密ガアリマスガ、秘密ハ誠ニ商工業ノ上ニ於テ大切ナモノデアリマス、是ハ商工業ノ生命トモ云フベキモノデアリマスガ、今日ハ単ニ自己ノ使用者又ハ当業者ノ徳義心ニ訴ヘテ之レヲ維持スル計リデ、此秘密ノ漏洩ハ実ニ危険ノ状態ニアルト言ハナケレバナラヌ、之ニ就イテ今日マダ何等保護スル方法ガアリマセヌカラ、之レヲ保護シナケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、而モ斯ノ如ク不正競争ノ種類ガ多々輩出致シマシテ、或ハ商工業ノ発達上甚ダ心配ニ堪ヘヌモノガアリマス、夫故ニ今日我国商工業者ガ一面ニ於テハ特許法・意匠法或ハ商標法等ニ依ツテ保護ヲ受ケテ居ル訳デアリマスガ、其ノ半面ハ未ダ保護ガナイト云フ状態デアリマス、甚ダ是レハ不満足ナ状態ト言ハナケレバナリマセヌ、今各国ノ立法例ヲ案ジテ見マスルニ、不正競争ヲ取締ルノ設備ハ日本ノ如キモノデアリマセヌ、頗ル用意ノ周到ナルコトヲ見ル次第デアリマス、唯其法律ノ体裁ニ於テハイロイロアリマス、或ハ一般ノ法律即チ民法ナリ刑法ナリ実体法ノ概括的規定ノ解釈ニ任ジテ居ル所モアリマス、英吉利ノ如キ、仏蘭西ノ如キ、亜米利加ノ如キモノハソレデアリマス、而モ唯民法ニ一任シテ居ル国デアツテモ矢張必要ナルモノニ就イテハ規定ヲ設ケマシテ精密ニ取締ヲ為シテ居リマス、例ヘバ英吉利ノ「マーチヤンダイス・マークス・アクト」ノ如キハ其一例デアリマシテ、誠ニ細カニ不正ノ行為ニ就イテ取締ヲシテ居ル次第デアリマス、ソレハ配付致シテ居ル参考書ノ中ニ在リマスト存ジマスカラ御覧ヲ願ヒマス、自由競争ヲ貴ブ所ノ英吉利ノ国ニ於テモ、昔ヨリ誠ニ精密ナル規定ヲ設ケマシテ、不正ノ競争ニ就イテハ少シモ仮藉看過スル所ガアリマセヌ、英吉利ノ商品ガ信用ヲ市場デ博シタノハ、他ニモ原因ガアリマセウガ、即チ斯ノ如ク「マーチヤンダイス・マークス・アクト」ナルモノガ与ツテ力アルモノト信ゼラレルノデアリマス、其他西班牙ナリ、葡萄牙ニ於キマシテハ、之ヲ工業所有権法規ノ中ニ編入シテ規定シテアリマス、即チ特許法・意匠法・商標法其他工業所有権ニ関スル法規ヲ編纂シテ之ヲ法典トナシテ居リマス、其中ニ不正競争ニ関スル部分ニ就イテ細カニ規定シテ之ヲ取締ツテ居ル次第デアリマス、又独逸ニ於キマシテハ、不正競争ノ取締ハ特別ノ法律ヲ制定致シマシテ、ソレデ以テ単独ニ且明瞭ニ取締ツテ居リマス、斯クノ如ク苟モ文明国ト称セラレル国ニ於テハ不正競争ニ就イテ頗ル詳細ニ頗ル厳重ニ取締ツテ居ルト云ツテ宜イノデアリマス、然ルニ今日我国ノ状態ハドウデアリマスカト申シマスト、特許法・意匠法・商標法・実用新案法ノ外、刑法其他ニ於テ類似事項ヲ夫レ夫レニ規定シアルノミニシテ、苟モ不正競争トシテ之ヲ完全ニ取締ル所ノ規則ト云フモノハ先ヅ欠ケテ居リマス、夫故ニ其結果ハドウナリマスカト申シマスト、正当ノ商工業者ガ其弊ヲ受ケルノ
 - 第56巻 p.398 -ページ画像 
ミナラズ同業者一般ニ其弊ヲ蒙ラナケレバナラヌ次第デアリマス ○中略 ソレ故玆ニ生産調査会ノ開クルニ方リマシテ、不正競争ヲ取締ルノ要アリヤ否ヤ、若シ之ヲ取締ルナラバ其方法ハ如何ニシテ宜イカ、其範囲ハ何処マデニシテ宜シイカト云フヤウナコトニ付テ、諸君ノ十分慎重ナル御調査ヲ願フコトニシマシタ
○二十二番(田中芳男君) チョット御尋致シタウゴザイマス、唯今不正競争トシテ取締ルコトノ事項ニ付テハ詳シク御述ベニナリマシテ大ニ本員モ了解致シマシタガ、私共ナドハ毎日新聞ヲ見テ居リマスルト新聞紙上ニ掲ゲテアルコトガ如何ニモ不正競争ノ結果トシテ現ハレテ居ルコトガ多イトハ考ヘマスガ、アノ中ニ人ヲ瞞着スルコトガ多ク、ソレガ為メニ購買者ト云フモノハ非常ニ迷惑スルヤウナコトモ起ルダロウ、中ニハ此品物ヲ購買セヌ人ハ実ニ愚昧ナルモノデアルトカ、若クハ此品物ヲ用ヰナイ人間ハ国民デナイト云フ位マデ悪口ヲ言ツテ居ル、サウ云フヤウナ者ハ是ハ矢張不正競争ノ一ツト見テ今度ノ御取締ノ中ニ入ルコトデアラウカト考ヘマスガ、矢張是ハ何トカシテ不正競争トシテ取締ノ中ニ入レテ、アノヤウナコトヲ余リ新聞紙ナドニ仰々シク出シテ貰ヒタクナイト考ヘマスカラ、ソレヲチヨツト申シマス、ソレカラモウ一ツハ近頃ハ汽車ノ通ル所ナドト云フモノハ殆ド看板デ覆ツテシマウト云フ訳ニナル、其看板ガ立派ナラバ宜イガ、而モ風ガ吹イテ壊ハレテ半分ナイト云フヤウナ甚ダ不体裁ナ看板ガ多イ、近頃ノ如ク外国ノ観光団ガ追々見エル世ノ中デ、アノヤウナモノガ沢山出来テ来ルト、折角日本ノ風光ト云フモノヲ賞スル為メニ御出ナサツタ方々ガ如何ニモ不快ニ思フヤウニナリハシナイカ、是ナドハ観光団ニ対シテ甚ダ御気ノ毒ナヤウニ思フガ、併シ日本カラ他ノ国ニ御出ナサツタ観光団モ矢張アノ通リノモノヲ外国デ御覧ナサツタカ、ドウダカソレハ存ジマセヌ、ケレドモ私ノ考デハ斯様ナルモノヲドンドン立テルナラバ、モウ一年経ツタラ東海道筋ハマルデ両方見エヌヤウニシテシマウカト考ヘマスガ、日本人ガ見テスラ随分心悪ルイノデ、況ンヤ外国ノ御客様、殊ニ歴々ノ方ガ御出デニナツテアノ見トモナイ物ヲ見ラレルノハ、甚ダ恥入ツタ次第デアル、是等ハ矢張リ不正競争ノ一トシテ、ドウシテ取締ル途ガアルカ、御取締下サルヤウニシタイト考ヘマスカラ、私ハチヨツト御尋ネ旁希望ヲ述ベマス
○番外(特許局長中村盛雄[中松盛雄]君) 第一ノ御尋ネニ依リマスト、新聞紙上ニ、此商品ヲ買ハナケレバ愚昧デアルトカ、或ハ日本人デ無イトカ云フヤウナコトガアル、ソレモ不正競争ニナルカト云フ御質問デアリマスガ、ソレハ矢張リ不正競争ノ中ニ這入ルベキモノデアルト考ヘマス――性質上這入ルベキモノデアルト考ヘマス、実ハ特定シタルモノ、守田治兵衛ナラ守田治兵衛ノ名ヲ奪ツテ来ルヤツハ、直接ニ特定シタモノデアリマスケレドモ、看板ニ自分ノ物ヲ誇大ニシ、虚偽的広告ヲスルノハ、間接ニ同業者ヲ害スルノデ、直接ノヤツデハ無イ、併ナガラ矢張リ西洋各国ニ於テハ、斯ノ如キモノモ不正競争トシテ取締ツテ居ルノデアリマス、矢張不正競争デアルト言ツテ宜シイ、第二段ノ質問ノ広告ガ国ノ風致ヲ害スルヤウナ事柄デアリマスガ、是ハ不正競争ノ中ニ這入ラヌモノト信ジマス、是ハ他ノ規則ニ依ツテ取締ルベキモ
 - 第56巻 p.399 -ページ画像 
ノカト信ジマス
○十八番(日比谷平左衛門君) 唯今ノ御説明ハ詳シク拝聴ヲ致シマシテ、今日ノ時節ノ上ニ於テハ必要ト信ジマス、而カモ如何ニモ案ガ錯雑シテ居ルコトデアリマスカラ、大イニ研究スル必要ガアラウト存ジマス、仍テ是ハ貿易助長ノ調査委員十五名ノ御方ニ是モ御依頼シタイト思ヒス
○七十一番(西村治兵衛君) 七十一番ハ此事柄ハ此ニ出テ居リマス参考ナドヲ拝見シマスト、頗ル単簡ノヤウデゴザイマスルガ、是ハ余程之ヲ取締ルト云フ所ノ方法ヲ攻究イタスノニハ、慎重ナル調査ヲ遂ゲナケレバナラヌト存ジマス、仍テ唯今先輩日比谷君ノ御説ガアリマスガ、私ハ是ハ矢張リ別ニ特別委員ヲ設ケラレマシテ、サウシテ特別委員ニ附託シタラ宜カラウ、ソレデ拙者ハ九名ノ委員、会長指名、斯ウ云フコトヲ申上ゲマス
○二十二番(田中芳男君) 九人ノ委員ノ方ニ賛成イタシス
○議長(男爵渋沢栄一君) 第三ニ付キマシテ委員附託ノ動議ハ、一ハ前ノ委員ト云ヒ、一ハ別ニ立テヤウト云フノデゴザイマス、七十一番ハ九名ノ特別委員ヲ作ラウ、而シテ其委員ノ指名ハ会長ニ任セヤウト云フノデ、之ニ賛成ガゴザイマス
  〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 他ニ御動議ガゴザイマセネバ、今ノ七十一番ノ九名ノ委員附託ノ決ヲ採リマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 起立ニ問ヒマセヌ、其通リ決定イタシマス
  〔渋沢副会長議長席ヲ退キ、小松原会長議長席ニ着ク〕
○議長(小松原英太郎君) 今日ハ拠ロ無イ差支ガゴザイマシテ遅レマシタ……次ノ問題ニ移リマス、公有林野開発ニ関スル件ノ諮問ニ付キマシテ……
○中略
○議長(小松原英太郎君) ソレデハ先刻来議長ニ指名ヲ御委託ニナツテ居リマス委員ヲ指名致シマス
  外国貿易ニ関スル特別委員
       男爵 武井守正君     男爵 渋沢栄一君
          近藤廉平君   法学博士 添田寿一君
       子爵 三島弥太郎君       益田孝君
          高橋新吉君        大谷嘉兵衛君
          原富太郎君        豊川良平君
          森村市左衛門君      岡崎邦輔君
          中野武営君        日比谷平左衛門君
          野崎広太君
  不正競争ノ取締ニ関スル特別委員
     法学博士 松崎蔵之助君    伯爵 寺島誠一郎君
          牧朴真君         早速整爾君
          元田肇君         西村治兵衛君
          中野武営君        田川大吉郎君
 - 第56巻 p.400 -ページ画像 
          日比谷平左衛門君



〔参考〕生産調査会録事(第壱回) 第一五八頁 明治四三年九月刊(DK560113k-0003)
第56巻 p.400 ページ画像

生産調査会録事(第壱回)  第一五八頁 明治四三年九月刊
    (第三日)明治四十三年六月二十二日午後一時二十五分開議
○上略
○議長(小松原英太郎君) 主要穀物ノ増収及改良ニ関スル件ヲ問題ト致シマス、一応説明ヲ致シマス
     五、主要穀物ノ増収及改良ニ関スル件
 本邦ノ最大糧食品タル米ノ過去二十年間ニ於ケル需要供給ノ関係ヲ観察スルニ、前ノ十ケ年間ハ輸出超過時代ナリシモ、後ノ十ケ年間ハ漸次輸入超過時代ト化シ、最近ノ平均ニ於テ約二百万石内外ノ輸入超過ヲ見ルニ至レリ、更ニ米ニ次ケル国民ノ主要糧食品タル麦ニ付テ考ルモ、明治三十四・五年ニ至ル迄ハ其ノ輸入額ハ毎二・三百万円ヲ超ユルコト稀ナリシカ、最近ニ於テハ一ケ年ノ輸入額八百万円以上ニシテ壱千万円ヲ超ユルコト鮮ナカラス、是ヲ以テ今日ニ於テ本邦ノ主要穀物ニ就キ需要供給ノ大勢ヲ精査シ、之ニ対スル将来ノ方針ヲ定ムルハ頗ル重要ナル問題タラスンハアラス、翻テ本邦農業供給力ノ前途ヲ考察スルニ、其ノ耕作方法ハ頗ル集約ニ赴ケリト雖、或ハ開墾ニ或ハ耕地整理其ノ他土地改良ニ或ハ栽培方法ノ改良ニ或ハ品質ノ改良ニ前途尚ホ増収改良ノ余地尠シトセス、依テ之ニ関スル施設ノ方針ヲ定メント欲ス
 是レ本問題ヲ提出スル所以ナリ
○下略