デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 生産調査会
■綱文

第56巻 p.417-423(DK560115k) ページ画像

明治43年11月1日(1910年)

是日ヨリ五日間ニ亘リ、農商務省会議室ニ於テ、当会第二回会議開カル。是日、栄一出席シ、諮問事項「工場法案」ニ関スル特別委員長ニ推サル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四三年(DK560115k-0001)
第56巻 p.417-418 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四三年     (渋沢子爵家所蔵)
九月二十一日 曇 冷
○上略 午前九時農商務省ニ抵リ、生産調査会ニ出席シ、主査委員会ヲ開ク、大浦大臣モ出席シテ一場ノ挨拶アリ、夫ヨリ益田氏提案ノ各項ニ付テ開議シ、午飧ヲ大臣室ニテ一同食卓ヲ共ニシ、更ニ開議ニ移リテ午後四時各項ヲ議了ス ○下略
   ○中略。
九月二十三日 雨 冷
○上略 十時過農商務省ニ抵リ、生産調査会幹事ト共ニ過日議決セシ議案ノ文字ヲ修正シテ、更ニ他ノ委員ニ協議セシム ○下略
   ○中略。
十月二十九日 雨 冷
○上略 大阪・三重両紡績会社ヘ書状ヲ発シテ工場法ノ事ヲ照会ス ○下略
   ○中略。
十一月一日 晴 冷
午前七時起床、入浴シテ朝飧ヲ食ス ○中略 大阪紡績会社山辺氏・三重紡績斎藤氏等来話ス、工場法ノ事ヲ協議ス ○中略 農商務省ニ抵リ、生産調査会ニ出席ス、工場法案ヲ議題トシテ種々ノ質問アリ、終ニ十八名ノ
 - 第56巻 p.418 -ページ画像 
特別委員付託トナリ、会長指名ニテ委員トナリ、更ニ委員会ノ互撰ニテ委員長トナル、午後四時散会ス ○下略


竜門雑誌 第二七〇号・第七六―七七頁 明治四三年一一月 ○生産調査会(DK560115k-0002)
第56巻 p.418 ページ画像

竜門雑誌  第二七〇号・第七六―七七頁 明治四三年一一月
○生産調査会 第二回生産調査会は十一月一日午後一時より農商務省会議室に於て開かれたり、劈頭大浦農相は今回本会に諮詢せられたる工場法案に就て一場の演説を為し、次で大浦農相会長席に着き審議の末、工場法案は左記十八名の特別委員に調査を附託することに決せり十八名の委員は左の如し
 青淵先生・滝川弁三・益田孝・根津嘉一郎・松崎蔵之助・浅田徳則日比谷平左衛門・田川大吉郎・元田肇・三島弥太郎・野田卯太郎・桑田熊蔵・大岡育造・大野亀三郎・松田忠次郎・田健治郎・添田寿一・豊川良平
○中略
本会議は四日午後一時より開会に決し、四時過散会し、五時より精養軒に於ける農相主催の晩餐会に列席したり、尚ほ工場法案特別委員会は則日開会、青淵先生を委員長に挙げ、二日午後一時より委員会を開くことに決せり
翌二日午後一時より農商務省会議室に於て、工場法案調査特別委員会を開かる、委員長たる青淵先生会長席に着きて開会し、先づ同法案に関し各自の意見を開陳する事となし、日比谷・滝川・田・添田の諸氏交々意見を述べ、且つ各委員と当局者との間に質問応答ありて、此日は逐条審議に入らず、五時散会、翌四日も亦午前十時より委員会を開きて審議したれども未決の儘散会し ○中略 予て本会議に諮問せられたる工場法案も目下各実業団体並に工場等の意見を照会中にして、右は何れも本月中旬迄に答申到着の予定なれば、本会議は是にて一旦閉会とし、追て開会の上貿易案並に工場法案を討議することに決定したりといふ


生産調査会録事(第弐回) 第三―一〇頁 明治四四年二月刊(DK560115k-0003)
第56巻 p.418-421 ページ画像

生産調査会録事(第弐回)  第三―一〇頁 明治四四年二月刊
    第三、農商務大臣ノ諮詢事項
本会ニ対スル農商務大臣ノ諮詢事項左ノ如シ
                    生産調査会
其ノ会ニ左ノ事項ヲ諮詢ス
  明治四十三年十月十八日
              農商務大臣 男爵 大浦兼武
      一、工場法案
農商務大臣ノ諮詢ニ係ル工場法案左ノ如シ
      工場法
第一条 本法ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル工場ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノニ之ヲ適用ス
 一、原動力ヲ用フルモノ
 二、事業ノ性質危険ナルカ又ハ衛生上有害ノ虞アルモノ
 三、常時十人以上ノ職工ヲ使用スルモノ
 - 第56巻 p.419 -ページ画像 
第二条 工業主ハ十二歳未満ノ者ヲシテ工場ニ於テ就業セシムルコトヲ得ズ、但シ本法施行ノ際十歳以上ノ者ヲ引続キ就業セシムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
 行政官庁ハ軽易ナル業務ニ付就業ニ関スル条件ヲ附シテ十歳以上ノ者ノ就業ヲ許可スルコトヲ得
第三条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ヲシテ一日ニ付十二時間ヲ超エテ就業セシムルヲ得ズ、主務大臣ハ業務ノ種類ニ依リ前項ノ就業時間ヲ二時間以内延長スルコトヲ得
 就業時間ハ工場ヲ異ニスル場合ト雖モ前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ通算ス
第四条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ヲシテ午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ就業セシムルコトヲ得ズ
第五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ前条ノ規定ヲ適用セズ但本法施行十年後ハ十四歳未満ノ者及廿歳未満ノ女子ヲシテ午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ就業セシムルコトヲ得ズ
 一、一時ニ作業ヲ為スコトヲ必要トスル特種ノ事由アル業務ニ就カシムルトキ
 二、夜間ノ作業ヲ必要トスル特種ノ事由アル業務ニ就カシムルトキ
 三、昼夜連続作業ヲ必要トスル特種事由アル業務ニ職工ヲ二組以上ニ分チ交替ニ就業セシムルトキ
 前項ニ掲ゲシ業務ノ種類ハ主務大臣之ヲ指定ス
第六条 職工ヲ二組以上ニ分チ交替ニ就業セシムル場合ニ於テハ本法施行後五年間第四条ノ規定ヲ適用セズ、本法施行五年後左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ更ニ十年間亦同ジ、但シ本法施行十年後ハ十四歳未満ノ者ヲシテ午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ就業セシムルコトヲ得ズ
 一、午前零時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ就業スル組ノ職工員数ヲ他ノ組ノ職工員数ニ比シ初ノ五年間ニ在リテハ十分ノ八以下、次ノ五年間ニ在リテハ十分ノ六以下ノ割合トスルモノ
 二、午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ十六歳未満ノ者及女子ノ就業スル作業時間ヲ初メ五年間ニ在リテハ四時間以内、次ノ五年間ニ在リテハ二時間以内トスルモノ
第七条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ニ対シ毎月少クトモ二回ノ休日ヲ設ケ、職工ヲ二組ニ分チ、交替ニ午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ就業セシムル場合、及第五条第一項第二号ニ該当スル場合ニ於テハ少クトモ四回ノ休日ヲ設ケ、又一日ノ就業時間ガ六時間ヲ超ユルトキハ少クトモ三十分、十時間ヲ超ユルトキハ少クトモ一時間ノ休憩時間ヲ就業時間中ニ於テ設ク可シ
 職工ヲ二組以上ニ分チ交替ニ午後十時ヨリ午前四時ニ至ル間ニ於テ就業セシムルトキハ、一週間ヲ超エザル期間毎ニ其ノ就業時ヲ転換ス可シ
第八条 天災事変ノ為又ハ事変ノ虞アル為必要アル場合ニ於テハ、主務大臣ハ前五条ノ規定ノ適用ヲ停止スルコトヲ得
 避クベカラザル事由ニ因リ臨時必要アル場合ニ於テハ、工業主ハ行
 - 第56巻 p.420 -ページ画像 
政官庁ノ許可ヲ得テ期間ヲ限リ第三条ノ規定ニ拘ラズ就業時間ヲ延長シ、第四条乃至第六条ノ規定ニ拘ラズ職工ヲ就業セシメ又ハ前条ノ休日ヲ廃スルコトヲ得
 臨時必要アル場合ニ於テハ工業主ハ其ノ都度予メ行政官庁ニ届出デ一月ニ付キ五日ヲ超エザル期間就業時間ヲ二時間以内延長スルコトヲ得
第九条 工業主ハ十六歳未満ノ者及女子ヲシテ左ノ各号ニ掲ゲタル業務ニ就カシムルコトヲ得ズ
 一、蒸汽缶・原動機・電気機械・動力伝導装置其ノ他ノ機械若ハ装置ノ危険ナル部分ノ掃除注油・検査・修繕其ノ他ノ取扱ヲ為シ又ハ之ニ接近シテ為ス業務
 二、機械又ハ動力伝導装置ノ運転中ニ調帯・調索ノ取付又ハ取外ヲ為ス業務
 三、足場、車軸道、梯子其ノ他墜落ノ虞アル場所ニ於ケル業務
第十条 工業主ハ十六歳未満ノ者ヲシテ左ノ各号ニ掲ゲタル業務ニ就カシムルコトヲ得ズ
 一、チアン水素酸・チアン化合物・砒素・砒素化合物・水銀・水銀化合物・燐・燐含有物・硫酸・硝酸・塩酸・苛性カリ・苛性ナトロン、其ノ他毒性又ハ劇性ノ物品ヲ取扱フ業務
 二、エーテル・ベンヂン・二硫化炭素、其ノ他ノ危険性物品ヲ取扱フ業務
 三、土石・鉱物・骨角等ノ粉砕・篩別、又ハ襤褸・綿麻・獣毛・藁等ノ選別・梳解・截断其他ニ依リ著シク塵埃・粉末ヲ発散スル場所ニ於ケル業務
 四、チアン水素酸・砒素・水銀・燐・鉛・亜鉛・クローム・クロール・フルオール・アニリン又ハ其ノ化合物其ノ他ノ毒性物ヲ気状若ハ粉状ニ於テ発散スル場所ニ於ケル業務
第十一条 主務大臣ハ前二条ニ掲ゲタル業務ノ範囲ヲ定メ、及之ニ準スベキ業務ニ付キ前二条ノ規定ヲ適用シ、又ハ十六歳以上ノ女子ニ付キ前条ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第十二条 主務大臣ハ病者及産婦ニ付キ其ノ就業ヲ制限シ又ハ禁止スルコトヲ得
第十三条 行政官庁ハ命令ノ定ムル所ニ依リ工場及附属建設物並設備ガ危害ヲ生ジ又ハ衛生・風紀其他公益ヲ害スル虞アリト認ムルトキハ、予防又ハ除害ノ為必要ナル事項ヲ工業主ニ命ジ、必要ト認ムルトキハ其ノ全部又ハ一部ノ使用ヲ停止スルコトヲ得
 前項ノ処分ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ、違法ニ権利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十四条 当該官吏ハ工場又ハ其ノ附属建設物ニ臨検スルコトヲ得、此ノ場合ニ於テハ其ノ証票ヲ携帯ス可シ
第十五条 職工自己ノ重大ナル過失ニ依ラズシテ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタルトキハ、工業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本人又ハ其遺族ヲ扶助ス可シ
第十六条 職工、職工タラムトスル者若ハ工業主又ハ其ノ法定代理人
 - 第56巻 p.421 -ページ画像 
若クハ工場管理人ハ、職工又ハ職工タラムトスル者ノ戸籍ニ関シ戸籍吏ニ対シ無償ニテ証明ヲ求ムルコトヲ得
第十七条 職工ノ雇入・解雇・周旋ノ取締及徒弟ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八条 工業主ハ工場管理人ヲ選任スルコトヲ得、工場管理人ノ選任ハ行政官庁ノ認可ヲ受ク可シ、但シ法人ノ理事、会社ノ業務ヲ執行スル社員、会社ヲ代表スル社員・取締役・業務担当社員、其ノ他法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者及支配人ノ中ヨリ選任スル場合ハ此ノ限ニアラズ
第十九条 工場管理人ハ本法及本法ニ基キテ発スル命令ノ適用ニ付テハ工業主ニ代ハルモノトス、工業主営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有セザル未成年若クハ禁治産者ナル場合又ハ法人ナル場合ニ於テ工場管理人ナキトキハ其ノ法定代理人又ハ理事、業務ヲ執行スル社員、会社ヲ代表スル社員・取締役・業務担当社員、其他法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者ニ付キ亦前項ニ同ジ
第二十条 第二条乃至第七条、第九条及第十条ノ規定又ハ之ニ基キテ発スル命令ニ違背シタル者及第十三条第一項ノ規定ニ依ル処分ニ従ハザル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十一条 当該官吏ノ臨検ヲ拒ミ若ハ之ヲ妨ケ又ハ臨検ノ際当該官吏ノ訊問ニ対シ答弁ヲ為サズ又ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十二条 工業主ハ其ノ代理人、戸主・家族・同居者・雇人其ノ他ノ従業者ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違背スル所為ヲ為シタルトキハ、自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
 工業主ハ職工ノ年齢ヲ知ラザルノ故ヲ以テ本法ノ処罰ヲ免ルヽコトヲ得ズ、但シ工業主及取扱者ニ過失ナカリシ場合ハ此ノ限ニアラズ
第二十三条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ハ工場管理人ニ関スル規定及罰則ヲ除クノ外、官立又ハ公立ノ工場ニ之ヲ適用ス
 官立工場ニ関シテハ所轄官庁ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ行政官庁ニ属スル職務ヲ行フ
  附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム


生産調査会録事(第弐回) 第三六―九三頁 明治四四年二月刊(DK560115k-0004)
第56巻 p.421-423 ページ画像

生産調査会録事(第弐回)  第三六―九三頁 明治四四年二月刊
    十一月一日 ○明治四三年午後一時四十五分開会
○議長(農商務大臣男爵大浦兼武君) 諸君、本日ハ玆ニ第二回ノ生産調査会ヲ開会致シマスルニ付キマシテ、斯クモ多数御参集ヲ得マシタノハ誠ニ喜ブ所デゴザイマス、曩ニ開会致シマシタ時ニハ丁度私ハ海外旅行中デゴザイマシテ、諮問ノ事項其他生産ニ関スル重要ナル諸問題ニ付キマシテ慎重ニ熱心ニ御調査攻究ヲ御進行ニナリマシテ、既ニ建議ニナリマシタノモゴザイマス、其他未決ノ問題ニ付キマシテハ今年ノ暑中ヲ厭ハセラレズ特別委員会ヲ開カレマシテ調査ニ調査ヲ重ネ以テ我国生産ノ発達ニ資セラレマシタルコトハ国家ノ為メニ私ノ感謝
 - 第56巻 p.422 -ページ画像 
ニ堪ヘザル所デゴザイマス、今回ノ開会ニ付キマシテ、玆ニ工場法案ヲ諮問致スコトニ致シマシタ、此法案ハ御承知ノ通リ久シク朝野ノ問題トナツテ居ツタモノデゴザイマシテ、明治三十一年ニ農工商高等会議ガ此制定ノ必要ヲ議決致シマシタル以来、年ヲ経ルコト玆ニ十有二年ニナリマス、其ノ間ニ帝国議会ハ三十二年及三十五年ノ頃ニ或ハ建議ヲ以テ工場法ノ制定ヲ促シ、或ハ質問書ヲ提出シテ工場法ノ運命ニ付イテ質ス所モゴザイマシタ、而シテ政府モ亦夙ニ制定ノ必要ヲ認メテ居リマシタカラ、明治三十五年ニ法案ヲ公ニ致シマシテ朝野ノ意見ヲ求メマシタ所ガ、其後三十七・八年ノ戦役、其影響デ経済界ノ動揺ヲ致シマシタカラシテ、此工場法案ノ提出ノ機会ヲ失フタ訳ニナツテ居リマス、漸ク昨年ニ至リマシテ、更ニ第三回ノ公表ヲ致シマシテ、中央衛生会、全国ノ商業会議所、其他実業当業者ノ団体等ノ意見ヲ徴シマシタノデゴザイマス、ソレヲ以テ加除修正ヲ致シマシテ、サウシテ第二十六議会ニ提出致シタ所ガ、其時政府ハ又更ニ調査研究ヲ重ネナクテハナラヌト云フ箇条ヲ発見致シマシタカラシテ、遺憾ナガラ一旦之ヲ撤回致シタノデゴザイマス、爾後十分ノ審議ヲ重ネマシテ必要ナル修正ヲ遂ゲテ、玆ニ生産調査会及ビ中央衛生会、其他実業者ノ団体ニ諮問致シマシテ以来、全国ノ商業会議所其他ニ於テ講究中デゴザイマシテ、十一月ノ十五日迄ニ答申ノ集マル筈ニナツテ居リマス、凡ソ工業ノ健全ナル発達ヲ図ル為メニハ工場法ノ制定ノ必要ナルコトハ勿論ノコトデゴザイマス、曩ニ此生産調査会ヨリモ工場法制定ノ必要ニ付テ御建議ガゴザイマシタ次第デ、其制定ガ必要ナリト云フコトニ付テハ諸君ト私ト全ク意見ヲ同ジウシテ居ルコトハ歓喜ニ堪ヘナイ訳デゴザイマス、願クハ諸君ノ最モ老練ナル識見ト豊富ナル経験トニ依リマシテ十分ニ調査御攻究ヲ為サレマシテ、本案ヲシテ我ガ工業ノ現在ノ状況ニ適合シテ、職工ヲ保護シテ工業ノ発達ヲ助クル御意見モ出テ居リマスカラ、必ズ早ク出来ルダケ御運ビニナルコトヽ私ハ信ジマス、其他ノ特別委員ノ方々モ昨夜ナドハ遅クマデ御精励ニナツテ居ラツシヤイマシタガ、此工場法案ハ曩ニ申上ゲマシタ通リ、国家ノ最モ大切ナル重要ナル問題デアルト云フコトハ、御同感デアラウト考ヘマスカラ、私ハ特別委員ガ出来タナラバ御纏リガ出来ルト信ジテ居リマス、然ラバ十八名ノ委員ニ御異議ガゴザイマセヌカ
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○中略
○議長(男爵大浦兼武君) ○中略 ソレカラ此工場法案ノ十八名ノ委員ヲ御苦労ナガラ指名ヲ致シマス
                       滝川弁三君
                       益田孝君
                    男爵 渋沢栄一君
                       根津嘉一郎君
                  法学博士 松崎蔵之助君
                       浅田徳則君
                       日比谷平左衛門君
                       田川大吉郎君
 - 第56巻 p.423 -ページ画像 
                       元田肇君
                    子爵 三島弥太郎君
                       野田卯太郎君
                  法学博士 桑田熊蔵君
                       大岡育造君
                       大野亀三郎君
                       松山忠二郎君
                    男爵 田健治郎君
                  法学博士 添田寿一君
                       豊川良平君
此諸君ニドウゾ御苦労ヲ願ヒマス
○中略
  午後四時十分散会



〔参考〕生産調査会ノ経過及成績 第一五三―一五四頁 大正八年三月刊(DK560115k-0005)
第56巻 p.423 ページ画像

生産調査会ノ経過及成績  第一五三―一五四頁 大正八年三月刊
    第一 工場法ニ関スル建議
健全有為ナル労力ノ工業上必要ナルハ論ヲ俟タス、是レ開明ノ国何レモ意ヲ労働者ノ保護上必要ナル立法ニ用ヒ、就中工場法ノ制定ヲ見サルナキ所以ニシテ、政府カ工場法案ヲ前期ノ帝国議会ニ提出セラレタル理由モ亦実ニ玆ニ存スルナルヘシ、然ルニ種々ノ事情ニ依リ未タ該法案ノ成立ヲ見ルニ至ラサルハ、本邦工業ノ為メ、国民体力維持ノ為メ痛惜ニ堪ヘス、故ニ願クハ必要ノ修正ヲ加ヘラレ、工場法案ヲ次期ノ帝国議会ニ提出シ其ノ成立ヲ期セラレンコトヲ
右本会ノ決議ニ依リ建議候也
  明治四十三年七月二十八日
                     生産調査会会長
    農商務大臣宛
   ○右ハ当会委員添田寿一ヨリノ提案ニ基キ建議サレタルモノナリ。