デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 生産調査会
■綱文

第56巻 p.423-443(DK560116k) ページ画像

明治43年11月5日(1910年)

是日栄一、農商務省会議室ニ於ケル当会会議ニ出席シ、外国貿易助長ノ方法及ビ施設ニ関スル特別委員会委員長トシテ、委員会審議ノ経過及ビ結果ヲ報告シ、且ツ議長トナリテ議事ヲ司ル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四三年(DK560116k-0001)
第56巻 p.423 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四三年     (渋沢子爵家所蔵)
十一月五日 晴 寒
○上略 午後一時農商務省ニ抵リ、生産調査会特別委員会ヲ開キ、畢テ本会ヲ開ク、会長欠席ニ付之ヲ代理ス、外国貿易助長ノ案ニ付種々ノ討論アリ、第一項ヲ議決シ、第二項ハ更ニ特別委員九名ニ付托ノ事トナリ、第三項ニ至リテ時刻五時ニ近キヲ以テ散会ス ○下略


生産調査会録事(第弐回) 第一六〇―二一西頁 明治四四年二月刊(DK560116k-0002)
第56巻 p.423-442 ページ画像

生産調査会録事(第弐回)  第一六〇―二一四頁 明治四四年二月刊
    明治四十三年十一月五日午後二時開議
 - 第56巻 p.424 -ページ画像 
○議長(男爵渋沢栄一君) 是ヨリ開会致シマス、今日ハ会長ガ御所労デゴザイマスデ、私ガ代理致シテ御席ヲ涜シマス、昨日製茶ノコトニ付イテ提出者カラ大体ノ御申述ガアツタ後御質問ガアツテ、其質問ガ結了セズシテ会ヲ閉ヂマシタサウデゴザイマス、昨日ハ私モ欠席ヲ致シマシタ、続イテ此製茶輸出貿易ノ助長ニ関スル建議案ヲ議題ト致シマス
  一、製茶輸出貿易ノ助長ニ関スル建議案
○二十二番(田中芳男君) 昨日此茶業ニ付イテ、政府ガ補助スルコトガアルカナイカト云フヤウナ御質問ガアリマシテ、些カノコトデゴザイマスカラ御答弁ガ出来ルト思ヒマシタガ、夕刻ニナリマシテ閉会ニナリマシタノデ、夫レ限リニナリマシタカラ、遅レナガラ私カラ一言申上ゲマスル、茶業組合ニ対シテ政府ノ補助ハ先年ハアリマシタガ、今デハナイト云フコトデアル、サウ致シテ此節アリマスモノハ静岡県ノ製茶試験場ト福岡県ノ製茶試験場ト両方合セテ五千円バカリノ補助ガアルト云フコトデゴザイマス、其外ニハモウ政府カラ補助シテ居ルト云フコトハ更ニナイコトデゴザイマス、若シ其外ニアレバ御主任者ノ下岡君カラドウゾ御答弁下サルヤウニ願ヒタウゴザイマス
○十九番(男爵高橋是清君) 此問題ニ付キマシテ、私ガ遅クナツテ昨日質問ヲ致シマシテ、大谷君カラ御弁明ガアリマシタガ、少シク私ノ御質問申上ゲタ要点ヲ御酌違ヒニナツテ居ルヤウニ存ジマスカラ再ビ申上ゲマスガ、此茶ノコトハ御承知ノ通リ明治十五・六年未ダ我邦ガ銀貨国デアリマシタ時分、其当時我邦ノ貿易ハ輸出入合セテ六千万台デアリマス、今日ノ金ノ価ニシマシタナラバ先ヅ一億二千万ト云フ位ノ貿易ノ総高デアリマシタ、其当時ニ於テスラモ茶ハ五百万円乃至七百万円ノ間ヲ始終動イテ居ツタノデアリマス、即チ今日ノ金ニ直シマスレバ一千万円乃至千三・四百万円ノ間ヲ往来シテ居ツタモノデアリマス、其時分カラシテ此日本茶ハ無論輸出品ノ泰斗デアリマシタ、政府デモ非常ニ何トカシテ此販路ヲ拡メ、益々輸出高ヲ増サネバナラヌ退歩スルヤウナコトガアツテハナラヌト云フノデ頻リニ御世話ガアツタノデゴザイマス、而シテ今日ハ我邦ノ貿易ハ八億余ニ上リ、而シテ此茶ハ亜米利加ニ主ニ出ルノデアリマスガ、亜米利加ノ人口モ其当時カラ見マシタナラバ殆ド倍ニ増加シテ居ル訳デアリマス、ソレニモ拘ハラズ矢張此茶ハ寧ロ退歩ト云フ方デハアルマイカ、明治十七・八年ノ金高ヲ今日ノ金ノ位ニ直シマシタモノト殆ド変リガナイ位、或ハソレヨリ内ニ引込ムト云フヤウナ有様デアル、是ハ如何ニモ国家ノ為ニ痛嘆ニ堪ヘヌ次第デアリマシテ、私ハ茶ノ事ニ付イテハ何ニモ知ラヌノデアリマスケレドモ、始終気ニ掛ルモノデアリマスカラ、機会サヘアレバ能ク当業者又ハ外国人ナドニモドウイフモノデアラウカ、此病気ノ根原ガ何処ニアルモノデアラウカト云フコトニ付イテハ、此方カラモ質問ヲ致シタ次第デアリマス、夫故ニ二・三十年モ日本ノ茶ヲ扱ツテ経験ノアル即チ「シーリング」ノ話シタコトヲ此処ニ御紹介致シタ次第デアリマス、唯「シーリング」ニ茶ヲ沢山売ルヤウニシタラ宜カラウト云フヤウナ意味ニ或ハ御酌取ニナツタカト昨日ノ御答弁ノ模様デ考ヘマシタガ、決シテサウデナイ、私ガ「シーリング」ノ経験ニ
 - 第56巻 p.425 -ページ画像 
於テ最モ重キヲ置ク点ハ、此日本ノ茶トイフモノハ詰リ廉イカラ売レル、尻ノ安物ト云フコトガ即チ日本ノ茶ト云フコトニナル、併ナガラ此安イ茶ヲ飲ム人ガ決シテ亜米利加デ無クナル訳ハナイノデアル、又此安イ茶モ製造ノ方法又荷造ノ仕方等ニ注意ヲシテ行ケバ段々良クナルノデアル、故ニ自分ハ「シカゴ」ニ向ク茶ハ斯ウイフ製法ガ宜イ、紐育ハ斯ウ、「ボストン」ハ斯ウト云フ風ニ各地ニ向ツテ多少製法ヲ違ヘテ、其土地ノ人々ノ嗜好ニ適スルヤウニ力メテ居ル、夫故ニ斯様ニ再製器械モ工風ヲ凝シテ改良ヲシテハ専売特許ヲ得テヤツテ居ル、日本ノ製茶人ハサウイフ所ノ知識ニ乏シイ、折角自分ガ各地ノ嗜好ニ適スルヤウナ物ヲ造ツテ日本茶ヲ拡メヤウトシテモ、傍ラカラ日本ノ不適当ナ茶、粗製濫造ノ茶ヲ持ツテ来テ其市場ヲ崩スタメニ、自分等ガ日本ノ茶ヲ拡メヤウト思ツテ苦心スルトコロノモノガ水泡ニ帰スル此始末デ永ク続イタナラバ日本ノ茶ハ決シテ進ミハセヌ、寧ロ仕舞ニハ日本ノ茶ヲ相手ニシナクナルデアラウ、ソレガ如何ニモ嘆ハシイト云フコトヲ彼ガ言ツテ居ルノデアル、是ハ彼ガ数年ノ経験デ会得シタトコロノ判断デアリマスカラシテ、之ニハ私ハ余程耳ヲ傾ケタ次第デアリマス、而シテ現況ハドウデアルカト申シマスト、外国人ノ積出シタ茶ニハ余リ聞キマセヌガ、往々日本ノ直輸出スル人達ノ積出シタ茶ニ於テ粗悪ナル為メニ税関ヲ通過スルコトマデ禁ゼラレ、已ムヲ得ズ積戻スヤウナモノモアリマス、又折角注文ヲ取ツテモ見本通リ拵ヘテ呉レルダラウト思ツテ居ルトコロガ、一番茶ノ注文ニ対シテ二番茶三番茶ヲ承知シテ此輸出商人ガ積出ス、而シテ向フヘ行ケバ必ズ値引キヲサレル、或ハ売レナイカラシテ競売ニ出シテ安売ヲスル、斯ウ云フコトガ此良イ方ノ茶ノ声価ヲ墜シ、市価ヲ下落セシムルノデ、正直ナ真面目ナ即チ大谷君ノ御尽力ナサツテ居ルトコロノ会社カラ出ル方ノ茶ハ大ニ迷惑ヲ蒙ツテ居ル、又我邦ノ製茶ノ術ニ於テハドウデアルカト云フト、近来静岡ノ製茶ノ業トイフモノハ非常ナ発達進歩デアリマス、現ニ鹿児島辺ハ加納子爵ガ知事デ在ラレタ時ニ、彼処ニハ茶ニ肥料ヲ施セト云フコトヲ説イタトコロガ、県民ガ之ヲ馬鹿ニシタ、茶ニ肥料ヲヤルト云フコトガアルモノカ、未ダ曾テヤツタコトハナイ、又九州ノ方ハ随分野生ノ茶モアル、其当時其茶ハドウシテ居ルカト云フト、一斤五銭・六銭位デ皆販売サレテ居ツタモノデアル、然ルニ静岡カラ製茶ノ教師ヲ傭ツテ県庁ニ於テ肥料ヲ施シタ茶ノ良イ葉ヲ高ク買ツテヤル、サウシテ其教師ニ依ツテ製造ヲシ之ヲ静岡ニ出シタトキニ静岡ノ茶ト比較シテ静岡ノ茶ノ上ニ鹿児島ノ茶ガ価ヲ有ツテ外国ニ出タト云フコトガアリマシタ、サウイフコトカラ考ヘテ見ルト再製ノ術モ余程進歩シテ居ルノデアル、消費スル国ノ進歩モ倍シテ居ル、而シテ此出タル物ガ依然トシテ明治十七・八年カラ変ラヌト云フノハ何処ニ病源ガアルノデアリマスカ、此建議案デハ製茶ノ試験場ヲ設置シロモツト増スガ宜イ、ソレカラ第二項ハ輸出貿易ノ助長ニ関スル施設ヲ政府デヤレト云フノデスケレドモ、ドウモ是デハ如何ニモ茶ガ、若シ物ヲ言ツタナラバ、モウ些ツト療治ノ仕方ガアリハシナイカ、モウ些ツト親切ニ言フテ呉レタラドウカト云フ憾ガアリハセヌカト私ハ考ヘタタメニ、実ハ此質問ヲ致シタ訳デゴザイマス、此提案ノ精神ニ至ツ
 - 第56巻 p.426 -ページ画像 
テハ誠ニ賛成ヲ致スノデアリマス、今日我製茶ハ此儘ニハシテ置カレナイ、其病気ノアルトコロヲ研究セラレテ、其病気ヲ治スルト云フ手数ヲ取ラレルコトハ、目下ノ急務ト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、サウ云フ精神ヲ以テ又サウ云フ趣意ニ依ツテ昨日御質問ヲ申上ゲタ次第デゴザイマス、重ネテ此処ニ申シテ置キマス
○番外(農務局長下岡忠治君) 唯今御質問デモゴザイマスルケレドモ、先ヅ政府ガ此茶業ニ付イテドウ云フ考ヲ有ツテ居ルカト云フ大体ノ事ヲ極ク簡単ニ申上ゲマス、唯今御話ノ通リニ、維新以来製茶ト云フモノハ日本ノ貿易ノ最モ重要ナ位置ニ居リマシタガ、生糸ノ方ハ非常ナ進歩ヲ致シテ唯今デハ一億三千万円ト云フヤウナ巨額ヲ輸出スルトイフコトニナツテ居ルニモ拘ハラズ、製茶ノ方ハ相変ラズ千万円位ノ金額ヲ前後シテ居ル、昨年ナドハ大分景気ガ好カツタト云フ方デ先ヅ千三百万円ト云フ輸出デアリマシタ、尚一方ガサウ進歩シテ居ルノニ、一方ノ方ガ思ヤウニ往カヌノデアルカト云フ点ニ付キマシテハ、是ハ余程大切ノ問題トシテ、政府モ従来カラ非常ニ研究モ尽シマシタ其結果ヲ簡単ニ申上ゲマスルト、結局其随分悲観論者カラ申シマスルト斯ウ云フ事ヲ申シマスル、亜米利加ト云フ所ハモウ「アングロサクソン・レース」ガ余リ余計入ル、他人ノ独逸人ナリ或ハ羅甸人種ガ余計入ルカラ随ツテ珈琲ヲ飲ム方ニ進ンデ行ク、夫故ニ亜米利加ノ方デハ将来茶ノ需要ハ余リ殖ヘル見込ガナイノデアルト云フ風ニ始終考ヘテ居ル人ガアリマスガ、併シ段々調査シタ結果ニ於テ見ルト決シテサウデハアリマセヌ、大体ニ於テ珈琲ガ九割、茶ガ一割ト云フモノガ亜米利加ノ需用ニナツテ居リマスガ、ソレガ十数年来ノ統計ニ依ツテ見ルト少シ茶ノ方ガ減ツテ居リマス、併シ大体カラ言フト人口ノ殖ヘルニ伴ツテ茶ヲ飲ム程度ガ珈琲ト同ジヤウナ程度ニ進ンデ居ル、其茶ノ中ニモ紅茶ト緑茶トガアツテ、日本ハ主トシテ緑茶ノ方ヲ出スノダト云フコトデゴザイマスガ、紅茶ノ方ニ割合ニ蚕食セラレテ日本ノ緑茶ガ亜米利加ノ人口ノ殖ヘルニ伴レテ、モウ少シ人口数ニ伴レテ殖ヘテ行クコトガ出来サウナモノダト云フノハ事実デアリマス、併ナガラ是ハ紅茶ヲ好ンデ緑茶ガ追々ニ減ツテ来ルカト云フコトニ付イテハ、随分茶業組合ノ人モ彼方ヘ行ツテ調ベテ居ルシ、又向フノ領事ナリ其他各方面カラノ材料ヲ綜合シテ考ヘテ見ルト決シテサウデハナイ、矢張将来トテモ相当ニ緑茶ハ向フデ飲ム階級ガアツテ随分見込ガアルト云フコトハ想像ガ出来ルヤウニ考ヘテ居ル、ソレハ何故ニサウ殖ヘナイカト云フコトノ方ニ付イテ見マスルト、結局物ガ高クナツテ居ル、廉イ物ヲ向フニ出スト云フコトデアレバ幾ラデモ需要ガアルケレドモ、段々日本ノ生活ナリ総テ生産費ガ高クナツタタメニ割合ニ値段ガ高クナツタト云フコトガ最大原因ニナツテ居ル、其以外ニハ例ヘバ印度、錫蘭茶ガ非常ニ保護セラレ、販路ヲ拡張スルタメニ各種ノ方法ヲ取ツテヤツテ居ル、然ルニ日本デハ現在ハサウイフ方法ヲ取ツテ居ラヌト云フコトモ確ニ大ナル原因ニナツテ居リマスケレドモ、其基礎ハ何処ニアルカト云フト、物ガ割合ニ高イノト労力ガ日本デ高クナツテ来タガタメニ、安クテハ引合ハヌガタメニ相当ノ値段デ売ルト他ノ競争ニ堪ヘヌト云フコトガ主タル原因ニナツテ居リマス、亜米利加ノミナラ
 - 第56巻 p.427 -ページ画像 
ズ加奈陀ニ於テモ矢張同ジコトデ、若シ相当ニ安イ物デ供給ガ出来ルコトデアレバ、ドシドシ幾ラデモ向フデ需要ガアルト云フ見込ハ確ニアルノデアリマス、殊ニ米西戦争ノ際ニ大ナル課税ヲセラレマシタカラソレデ一ツ頓挫ヲシマシタケレドモ、幸ニ五箇年間デ廃メニナリマシタカラ、一旦頓挫ヲ受ケタモノモ更ニ戻ツテ来テ、唯今ノ所デハ寧ロ順境ニ居ル様子デアリマス、其方カラ言ツテモ私ハ見込ガアルト云フコトガ言ヘルノデアリマス、扨テ生産費ノ減少ト云フ是ガ大切ノ問題デ、日本ノ茶業ノ前途ニ付テハ是ニ帰著シテ居ル、ソレニ付イテモ十数年来ノ茶業ノ一般ヤツテ居ル状況ト、今日ヤツテ居ル有様ト比較スルト、余程進歩ハシテ居ルケレドモ、未ダ是ヨリ生産費ヲ減少スル余地ハ非常ニアルト思ヒマス、極ク簡単ナ例ヲ以テ申シマスレバ、例ヘバ茶ヲ摘採スルト云フコトニ付イテモ、一人ノ女ガ二貫目カ三貫目摘ムコトガ是マデノ通常デリマシタ、ケレドモ若シ茶園ノ整理ヲシテ行クコトニスルト少クトモ其倍位摘ムコトガ出来ルコトニナツテ居リマス、是等デモ著シク生産費ノ減少ト云フコトニ関係ノアルコトデアリマシテ、其他粗揉器械、是等デモ適当ノモノヲ得テ品質ヲ害セザル範囲ニ於テ器械ヲモウ少シ利用スルコトガ出来タナラバ非常ニ影響シテ来マスカラ、斯ウ云フ点ナドノ研究ガ今日デハ余程進歩ハシテ居ルト云フ条、マダマダ余程研究ノ余地ガアルト云フ考ヲ以テ、政府ノ試験場アタリモ多少ノ研究ハシテ居リマスケレドモ、マダ不十分デアルシ、又地方ノ試験場アタリニ付イテモ其事ハ余程研究シテ居リマスガ若シ之ヲ相当ナ方法ヲ以テ研究ヲ怠ラザル限ニ於テハ、余程生産費ガ減少スル事デアラウ、決シテ茶ト云フモノハ絶望トイフモノデナクシテ力ノ尽シヤウニ依ツタナラバ生産費ヲ廉クシ、随ツテ尚米国市場ナリ加奈陀市場ナリ其他ノ方面ニ於テ販路ヲ拡張スル見込ガアルデアラウト斯ウ考ヘテ居ルノデゴザイマス、極ク簡単ニ……
○六十三番(上埜安太郎君) チヨツト委員長ニ御尋致シタイノデアリマスガ、昨日モ段々提出者ノ大谷サンヨリ御話ヲ承リマタガ、今日茶業ニ於ケル大ナル弊害ハ粗製濫造ガ余程関係ヲシテ居ルヤウニ承ツテ居リマスガ、之ヲ矯正スルニ付イテハ何カ委員会デ御話ガアリマシタデセウカ、如何デセウカ、又今日ト雖モ何カ検査スルトカドウスルトカ、羽二重製糸ノ如キ方法デモ付イテ居ルノデアリマスカ、ドウデアリマスカ、一応承リタイ
○二十二番(田中芳男君) 唯今ノ御質問ハ即チ此建議案ニアリマストコロノ、第一ノ製茶試験場ノ設置ト云フ箇条ノ理由中ニアツタト思ヒマスル、如何トナレバ粗製濫造ヲスルト云フノハ即チ未ダ方法ニ拙イノデ、生産ノ途サヘ十分ニ付ケバ粗製濫造ハ止ムカラシテ、是非トモ此試験場ガアレバ今ノ御心配ニナツタコトハ救済ガ出来ルト斯ウ云フ考カラシテ、先ヅ試験場ノ設置ヲ望ンダ訳デアリマシタト云フコトヲ私ハ承ツテ居リマス
  (「採決々々」ト呼ブ者アリ)
○議長(男爵渋沢栄一君) 別ニ御質問ハゴザイマセヌデスカ、―本案ニ対シテ、最早御質疑ガゴザイマセネバ、決定ニ及ビタイト思ヒマスガ……
 - 第56巻 p.428 -ページ画像 
  (「異議ナシナシ」ト呼ブ者アリ)
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ建議案ニ対シテ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
  起立者 多数
○議長(男爵渋沢栄一君) 大多数デゴザイマス、本建議案ハ可決ニナリマシタ、―続イテ此外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件、之ヲ議題ト致シマスル
    外国貿易助長ノ方法及施設ニ関スル件
○議長(男爵渋沢栄一君) 之ニ付キマシテハ私ハ特別委員会ノ委員長ヲ勤メマシテゴザイマスルデ、委員会ノ経過ヲ此処ニ御報道致シタウゴザイマスル
○番外(幹事織田一君) 其前ニチヨツト御報告ヲ致シテ置クコトガアリマス、此報告書ノ中ノ第十三頁ノ第六ノ一『横浜正金銀行ヲシテ特別低歩ノ丸為替ヲ附セシムルコト恰カモ紡績業者ニ対スルカ如クスルコト』ト云フ字ガゴザイマス、之ヲ『特別低歩ノ丸替為』ノ『丸』ト云フ字ヲ削リマシテ『特別低歩ノ為替ヲ附セシムル』ト云フコトニ修正ニナリマシテ『恰カモ』カラ以下ハ削除ニナリマシタ、ソレカラ第十五頁ノ表ヲ除キマシテ第三行目ノ『第一ノ事項タル丸為替』ト書イテアリマスル『丸』ト云フ字ヲ削ルノデゴザイマス、ソレダケヲ修正致シテ置キマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 是カラ御報道致シマスガ、此特別委員ハ十五名御指名ヲ受ケマシテ、委員会ヲ開キマシタコトガ十数回デゴザイマス、即チ先ヅ三回程特別委員会ヲ開キマシタ、然ルニ何分事柄ガ数数アリ、又ソレニ対シテ特別委員中ニ意見ガ沢山ゴザイマシタニ付イテ、之ヲ取纏メテ答申案ニ致スニハ特ニ主査ヲ設ケルガ宜カラウト云フコトニ相成リマシテ、主査委員ガ七名出来マシタ、其主査会ヲ開キマシタコトガ前後六回デゴザイマス、ソレカラ主査ニ於テ此案ノ略ボ骨組ガ出来マシタ後ニ、更ニ三回ノ特別委員ヲ開イテ漸ク此処ニ提案シ得ルヤウニ相成ツタト云フ順序デゴザイマス、且此処ニ全体ノ趣意ヲ申上ゲマスト、関係ガ甚ダ大ナル故ニ、又其希望ガ例ヘバ金融ニ海陸ニ運輸ニ大ニ関係ヲ致シテ居リマスル、又或ハ動力ニ若クハ又或種類ニ於テハ従来相当ナ輸出品トシテナリ得タモノモ甚ダ微々トシテ進マヌ、或ハイロイロナル障碍ヲ蒙ツテ居ル等ノ事柄ヲ□分《(充)》ニ攻究ヲ致シ、而シテ此案ニ成立テタイト云フノデ種々ナル方面ニ亘リマシテ取調ヲ致シタノデゴザイマス、故ニ其局ニ当ル本省ノ商工局長・水産局長其他ノ方々ニ始終臨席ヲ請フテ説明ヲ求メタノミナラズ、例ヘバ金融ニ関シテハ大蔵省ノ当局者、又鉄道運輸ニ関シテハ鉄道院ノ当局者或ハ此動力ニ関シテハ逓信省ノ電気局ノ局長又当業者ニ於テモ各種トハ申シ得ラレマセナンダガ、或ハ花筵・羽二重・紙等ノ事ニ付イテハ其当業者ノ出席ヲ請ヒマシテ悉ク聴合セマシタ上デ此処ニ提案致シタト云フ次第デゴザイマス、彼是レサウ云フヤウナ手続ヲ労シマシタタメニ、案ノ成立チマスノガ大ニ時ヲ費シ、又此案ガ甚ダ長クナリマシテゴザイマス、併シ此説明ハ唯斯ク望ム要領ヲ斯様書イタノハ斯ウ云フ内訳ガアルカラト云フコトヲ分リ得ルト云フ為ニ説明書ヲ添ヘマシ
 - 第56巻 p.429 -ページ画像 
タケレドモ、全体ノ案ハ一カラシテ十五マデ此処ニ答申ノ案ト致シテ宜カラウト云フコトニ相成ツタ次第デゴザイマス、デ委員会ノ概況ヲ此処ニ此席カラ御報告致シマスル、而シテ此案ニ対シマシテ自然御了解ノシ難イ、若クハ更ニ御尋ネ等ノコトガゴザイマシタナラバ、委員中ソレゾレ特ニ此事ニ考案ノ余計アツタ委員ガ出席シテ居ラレマスルデ、其委員カラ御答弁ヲ致スヤウニ致シマスカラ、此案ノ特別委員会ノ委員長トシテ此処ニ一応報道致シテ置キマス
ソレデハ此答申書ト云フモノハ朗読ヲ致サセマス、全体ヲ朗読シマシテ御議決ヲ請フヨリハ、始メカラ切レ切レニ進ンデ往ツタラ宜シウゴザイマセウカラ、先ヅ答申書ノ本文即チ始メノ『貿易ノ消長ハ国運ノ因ツテ繋ル所ナリ』カラ『急務ナリト認ム』、ソレヲ議題トシ、後ハ一、二ト順ヲ逐フテ御議決ヲ請フヤウニ致シタイト思ヒマス
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
 織田幹事朗読
    答申書
貿易ノ消長ハ国運ノ因ツテ繋ル所ナリ、熟々本邦貿易ノ将来ヲ案ズルニ、各種原料ヲ国内及近クハ満洲・支那、遠クハ印度・米国・濠洲等ニ仰ギ、之ニ加工シテ輸出スルノ外アルベカラズ、此ノ如クニシテ貿易ノ利益ヲ収メントスルニハ、内ニ於テハ百方生産費ノ減少ヲ謀リ、外ニ向テハ鋭意販路ノ拡張ニ力メサルベカラズ、果シテ然ラバ先ヅ第一ニ産業ノ国是ヲ確立シ、各種生産ノ組織ハ勿論、財政経済関税ノ諸政策、海陸運輸ノ経営、国民教育ノ施設其ノ他内政外交総テ此大方針ニ遵拠シ、終始一貫以テ国富ノ増進ヲ図ルニ付キ遺憾ナキヲ期セザルベカラズ、而シテ其ノ施設タル固ヨリ多端ナリト雖モ、差当リ左記ノ事項ヲ以テ刻下ノ急務ナリト認ム
  (「異議ナシ異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○議長(男爵渋沢栄一君) 本文ニ対シテハ別ニ御質議ガゴザイマセネバ、次ニ移リマシテ宜ウゴザイマスカ
 織田幹事朗読
第一、比年貿易増進ノ活勢ニ照シテ考フルニ、最モ重大ノ任務ヲ負ヘル金融機関ノ資力尚不足ナルヲ感ズルコト甚ダ切ナリ、仍テ政府ハ横浜正金銀行ヲシテ、其ノ為替資金ヲ増加スルノ方法ヲ講ゼシメ、且一層之ヲ督励セラルヽコトヲ要ス、若シ然ラズトセバ、普通銀行ノ海外為替ヲ開キツヽアルモノニ対シ、正金銀行ト同様ニ低利ナル割引資金融通ノ特典ヲ与ヘ、以テ其ノ活動ヲ充分ナラシムルコトヲ要ス
○二十三番(田川大吉郎君) 此提案者ノ意思ハ二ツノ中ノ一ツノ方法ヲ行ヒタイト云フノデアツテ、二ツノ方法ヲ兼ネ行ヒタイト云フ希望デハナイノデアリマスガ
○議長(男爵渋沢栄一君) 全クサウデアリマス、若シ出来ナイ場合ハト云フ意味……別ニ御質議ガゴザイマセネバ第二ニ移リマス
 織田幹事朗読
第二、対東洋貿易ハ対欧米貿易ト大ニ其ノ趣ヲ異ニシ、而カモ我邦ハ必ズ此両方面ニ於ケル貿易ノ成効ヲ期セザルベカラズ、仍テ政府ハ
 - 第56巻 p.430 -ページ画像 
一方横浜正金銀行ヲ督励シテ、対清為替ニ一層ノ力ヲ用ヰシメ、一方為替以外ノ資金融通ヲ目的トセル、日清銀行ナルモノヲ設立スルヲ要ス
○六十五番(稲田周之助君) 日清銀行ト云フモノハドンナモノデスカ……
○議長(男爵渋沢栄一君) 日清銀行ハドウ云フモノカト云フ御質問デスカ
○六十五番(稲田周之助君) サウデス
○議長(男爵渋沢栄一君) 日清銀行ハ矢張リ日清銀行……
○六十五番(稲田周之助君) 日清銀行ト申ス銀行、此銀行ト云フノガ日本ト支那ガ拵ヘル、即チ日本ノ政府カラモ支那ノ政府カラモ出金ヲスルヤウナ意味ノ日清銀行デアルカ、又唯支那デ営業ヲスル銀行ト云フ意味デゴザイマスカ
○八番(益田孝君) 今ノ御質問ニ付キマシテ御答弁ヲ仕リマス、正金銀行ニ於テ、既ニ日清間ノ貿易ニ大ニ努メテ居リマスノデ、為替作用ナドノコトニ付テ格別遺憾ナ訳デハゴザイマセヌガ、ドウシテモ此正金銀行トシテハ正金銀行ノ務メガアツテ、サウ土地ニ於ケル種々ナ貸付等ニ付テ其営業ノ力ヲ及ボシ得ルカ否ヤハ申ス迄モナク分ツタコトデゴザイマス、ソレデ近頃ニ於テ別シテ正金銀行ハ満洲ニ於テモ其辺迄働クト云フコトハ新聞抔デモ承知致シテ居リマスケレドモ、性質ニ於テ尚支那丈ケニ於テ支那・満洲ニ於テ総テ正金銀行券デ参ツタ所ノ日本ノ物品ノ為替ヲ六十日ナリ九十日ナリノ後ニ捌キ切レヌ場合ノ時抔ハ、ソレヲ又貸付ケヲシテ貿易ヲ助ケルト云フコトモ入用デゴザイマセウ、ソレカラ又漸次支那ニ対シテ其勢力ヲ拡メルニ付テハ、詰リ申スト金融ノ働キガ大ニアラウト思ハレマスル、随分不動産ニ対シテモ貸付ヲ要スル場合モゴザイマセウシ、種々ナ支那トノ関係ヲ深クシマスルニ於テハ、特殊ノ日清銀行ト申スモノガゴザイマシタナラバ、大ニ其便益ヲ得ルコトヽ思フノデゴザイマスカラ、貿易ニ付テハ正金銀行アリ、又此日清銀行ハ正金銀行ト相俟ツテ支那内地ニ働クトシマシタナラバ、一方ニハ大ニ正金銀行ノ力ヲモ助ケルト云フコトニナリマセウ、故ニ随分是迄此創立ニ付テハ論ガアツタコトデゴザイマスガ今日迄出来ヌデ居リマシテ、益々支那ニ対スル貿易ノミナラズ総テノ関係ニ於テ甚ダ遺憾トシマスルカラ、斯ウ云フモノヲ設立為サルガ宜カロウト斯ウ委員ハ存ジマシタ
○十六番(法学博士松崎蔵之助君) 唯今御説明ニ依ツテ多少了解シマシタガ、未ダ少シク吾々共ニハ真ニ目的ガ何処ニアルカト了解シ兼ネマスノデゴザイマスガ、如何ニモ前カラシテ日清銀行ノ設立ノ必要ヲバ唱ヘマシタ者モアリマスル、本員抔モ多少其必要ヲ認メテ居ルノデアリマスガ、其後大分日清ノ国ノ関係モ違ツテ参リマシテ、又清国ニ於ケル状況モ大分変ツテ参ツテ居リマス、既ニ横浜正金銀行ヲ以テ対清貿易ノ為替機関トナシテ居ル以上、尚其上目下ノ日清ノ関係及清国ニ於ケル状況ニ照ラシテ此特別ニ設立セラレマスル日清銀行ノ活動ノ余地ガアリマスヤ否ヤ、続イテ尚今少シ如何ナル組織トシタナラバ其目的ガ達スルコトガ出来マスカニ付テ、一寸唯心得ノ為ニ御差支ナケ
 - 第56巻 p.431 -ページ画像 
レバ伺ヒタイ
○八番(益田孝君) 委員会デハ別ニ提案ヲ出シモ致シマセズ、又如何ナル方法ニ依ツテ設立スルヤト云フコトマデニ案ヲ及ボシテ居リマセヌ、デスカラソレマデ説明ヲ致スハ甚ダ委員会以外ニナリマスカラ一寸申上ゲラレマセヌ
○六十番(稲田周之助君) 今ノハ此日清銀行ナルモノハ為替ヲヤツテハイケナイト云フ制限ガアル、銀行ガ為替ヲシナイデ営業ガ出来ルモノデハナイガ、斯ノ如キコトヲスルト云フ事実ガアルカ、ソレヲ伺ヒタイ
○八番(益田孝君) 為替ノ方ハ専門ノ正金銀行ガアルモノデゴザイマスカラ、強テソレト又同様ナ競争者ヲ拵ヘテ競争スル必要ハナカラウ併ナガラソレハ絶対ナラヌト云ツテ別ニスルト云フ意味デモゴザイマセヌガ、之レノ設立ヲ希望スルニ付テ考ヘレバ、ドウシテモ両方相竢ツテ互ニ競争セズ、一方ハ支那内地ニ於ケル申サバ貸付銀行、ソコニ本旨ヲ立テヽ置イテヤレバ両方相俟ツテ都合好ク往ケルモノデアラウト思フ、夫丈ケノ用事ガ日清銀行ニ於テ務メレバ十分デアラウト云フ考ヘ……
○七十二番(若槻礼次郎君) 私ハ中ニ付テ御尋ネスルノデハアリマセヌガ、是ハ昨日本会ヘ引継ニナツタ主要穀物何トカ云フ委員会ノ報告ガ今日ノ新聞ニハ其儘皆出テ居ルカト思ヒマスガ、此外国貿易助長ノ方法云々ノ如キモ矢張明日ナリ新聞ニ御出シニナルノデアリマスカ、若シ新聞ニ御出シニナリマスナラバ、其理由ノ中デ少シ文字ノ修正ヲシタイト思ヒマスガ、其事ヲ伺ヒタイト思ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 今迄ハ出シテ居リマス、出ス積リデ御座イマス
○七十二番(若槻礼次郎君) ソレデハ四頁ノ十行目ノ所ニ『大発展ヲナスノ余地ナキヲ覚悟セザルベカラズ』其下ニ曩ニ対満洲輸出業ニ向ツテ低率資金融通ノ途開カルヽヤ、其ノ成績大ニ挙リ綿糸綿布ノ貿易ヲシテ今日アルヲ得セシメ、満洲ニ於テハ遂ニ優勢ヲ占ムルニ至リタルノ事実アリ』是丈ヲ削除シタイノデアリマス、ソウシテ『近時政府ハ又』、其『又』ヲ取ツテ即チ『余地ナキヲ覚悟セザルベカラズ、近時政府ハ満洲ノ云々』斯ウ云フコトニシテ、詰リ資金ノ所ハ削除シタイモノデアリマス、別ニ本文ノ『日清銀行ト云フ』御意見ニ対シテ余リ理由ニナルコトデナイヤウデアリマス、而シテ斯ウ云フ向出シニ書カレルト云フコトハ、私ハ却ツテ色々面白クナイ批評ガ起ル虞ガアリマスカラ、是丈ケハ削除シタイト思ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 此全体ノ文章ヲ残ラズ発表ヲ致サヌデ、説明書ハ除イテ本文丈ケヲ新聞ニ出シタラ如何デセウ、是迄ノハ説明ガ這入ツテ細カイコトニ入リ過ギル嫌イガアルカラ……
○七十二番(若槻礼次郎君) サウナレバ宜ウゴザイマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 昨日新聞ニ出マシタ分丈ケハ宜ウゴザイマスカ
  (「賛成」ト呼ブ者アリ)
○十九番(男爵高橋是清君) 私モ新聞ニ出ルノハ大キナ文字デ書イテ
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アルダケデ説明ト云フモノハ出ナイモノト今朝ノ新聞ニ依ツテ了解シテ居ツタノデ、曩ニ御決議ニナツタ第一ノ説明ニ或ハ誤解ヲ来タスヤウナコトガ書イテアリマスガ、其儘看過シテ居ツタ訳デアリマスガ、ドウカ此説明ハ出ナイヤウニ御取計ヒヲ願ヒタイ、若シ是ガ出ルト云フト或ハ大分誤解ヲ来ス虞ガアリマスカラ御注意ヲ願ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ今ノ若槻サンノ御修正ト別問題トシテ、新聞ニ出シマスコトハ本文丈ケニ致シテ説明ハ出シマセヌト云フコトニ極メマス
○五番(近藤廉平君) 総テノ条項ニ対シテヾゴザイマスカ
○議長(男爵渋沢栄一君) 総テノ条項ニ対シテ……
  (「賛成」ト呼ブ者アリ)
○十七番(浅田徳則君) 私モ此委員ノ御方ニ質問ヲ致シタイノデスガ日清銀行ナルモノハ唯一ノ日清銀行ノヤウニ是レハ見ヘマスルガ、之ヲ政府ガ或ル種ノ特典ヲ与ヘテ政府ガ之ヲ設立セシメルト云フ趣意デ出来テ居ルノデアリマセウカ、無論其御趣意ダラウト思ヒマスガ、一応確カメテ置キタク思ヒマス
○八番(益田孝君) 斯ウ云フコトハ、今迄矢張政府ノ特典ヲ与ヘラルルニ依ツテ出来テ居ルモノデゴザイマスカラ、何レモ政府ガ重イ義務ヲ持ツベキ訳デゴザイマスカラ、夫丈ケノ多少特典ハナケレバ出来モシマイト思ヒマス、ソレハ当局ノ御考ニ委セル積リデ委員ハ別ニ案ヲ出シマセヌ
○五十番(山本達雄君) 此日清銀行ノコトデアリマスルガ、今ノ御説明ニ依リマスト云フト、矢張政府デ特別ナモノトシテ設立ニナルト云フコトニナルダロウト云フ御説明デアリマシタガ、先刻ノ御話ニ依リマスト云フト、為替ハサセナイ、而シテ支那ノ内地デ銀行ヲスルト云フノデアリマスガ、一体銀行ナルモノハ是迄或ハ是ハ外国為替銀行、又ハ工業銀行・商業銀行、夫々凡ソ目的ヲ有ツテ銀行ガ立テラレテ居ルノデゴザイマスガ、此銀行ニハ為替ハ目的トセナイ、何方カト云フト支那ノ内地ニ向ツテ金ヲ貸スト云フコトヲ目的トスルト云フ説明ノヤウニ伺ヒマシタガ、シマスト唯彼方ニ向ツテ土地抵当ニ、或ハ又純粋ノ商業銀行ト云フヤウナコトニスルノデゴザイマスカ、其処等辺ハ又曖昧模糊ノ極ク八百屋ノ唯銀行ヲ立テルト云フ御精神デアリマスカ此第二『対東洋貿易ハ対欧米貿易ト大ニ其趣ヲ異ニシ云々』ト云フコトデアツテ、此書方ニ依リマスルト、ドウモ東洋貿易ナルモノハ欧米ノ貿易ト又違ツタコトガアル故ニ、何カ其貿易ヲ助長スル為ニ為替銀行デモ作ツタラバト云フヤウニ茫トシテ見ヘマシテ、而シテ先ニ到ルト云フト為替ハ正金銀行ガアルカラ、其以外ニ何カ資金ノ融通ヲ目的トスル銀行ヲ立テル、ソレデハドウモ主義ガ結局合ハヌヤウニ考ヘマス、ノミナラズ今云フ為替ヲセヌ銀行ヲ作ルト云フノハ如何ナル筋ノ銀行ヲ作リマスノデスカ、一寸本員ニハ甚ダ頭ガ悪イセイカ、明瞭ニ分リマセヌ、其辺ヲ一ツドウ云フ種類ノ銀行ヲ作ル目的カ、如何ナル目的ヲ以テ銀行ヲ設立スルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス
○八番(益田孝君) 至極御質問ノ中ノ言葉ニ対シテ、サウ云フ嫌イガアルト云フコトハ御尤モデスガ、東洋ニハ又秩序ノ立ツテ居ル所ノ欧
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米ノヤウナ以外ニ種々ナル働キヲセネバナラヌ銀行ガ必要デアル、ソレデ両方共ニ相竢ツテ両方面ノコトヲヤル、今ノ現在秩序ノ立ツテ居ル正金銀行ガ両方面ノコトヲ遣切レル訳ノモノデナイカラ、ソコデ矢張東洋ハ東洋、即チ先ヅ東洋ト云ヒマスト主ニ支那デ特殊ノ又働キヲ要スル、申サバ自由ノ利ク銀行ガ必要デアル、何レ支那ノコトデゴザイマスカラ、銀貨ニシナケレバナラヌ、我本位トハ違ツテ資本モ違フデアラウシ、銀貨デ貸付ヲモシナケレバナラヌ、種々ナ支那ノ習慣ニ従ツテ支那ニ対スル貿易ノ助長ヲ図ル働キノ出来ルモノヲ拵ヘタイト云フコトデ、強テ唯為替ヲシナケレバ銀行ガ立タヌト云フモノデモアリマスマイシ、如何様ニモ、正金銀行ト気脈ヲ通ジテヤリマシタナラバ、尚其正金銀行以外ニモ働キノ出来ルコトハ是ハ知レ切ツタコトダト思ヒマス、別ニソレノ働キマデ委員会デ討議サレタ訳デハアリマセヌガ、唯サウ云フ働キノ出来得ルモノガ欲シイモノデアルト云フコトガ、即チ東洋ノ貿易ヲ助長スルニ一番大切ノ機関トナルデアラウト商議ヲ致シタ訳デゴザイマス
○十九番(男爵高橋是清君) 御質問並ニ御説明ニ依リテ能ク了解ヲ致シマシタガ、私ハ正金銀行ニ近イモノデスカラ別ニ意見ハ述ベヌ積リデ居リマシタガ、若槻君ノ御心配ニナツタ点ハ即チ此外国関係ノ事柄ノ御心配デ、此説明ノ新聞ニ出ヌヤウト云フ御説ハ誠ニ御尤モナ次第デ、今日ハ特別ノ貸附ヲスルコトノ必要ハ政府ガ満洲ニ於テ必要アリト認メラレテ、正金銀行ヲシテ其本務以外ニ年賦若クハ長期ノ貸附ヲ不動産抵当デ出シテ、満洲ニ於ケル内外人ノ事業・商売、総テノコトヲ奨励スルコトニト云フヤウナコトデ著手シテ、正金銀行ヲシテ其事ヲ扱ハシメテ居リマス、今又天津ナドモ其区域ニ入レテ貰ヒタイト云フヤウナ請求モ出テ来マシテ、或ハモツト日本ノ商人ガ支那内地ニ入込ンデ或ハ支那人ト手ヲ携ヘテ商売ニ従事スルヤウナ時期ガ参リマシタナラバ、玆ニアリマスヤウナ日清銀行ノ設立ヲ必要トスル時ノ来ルダロウトモ考ヘラレマス、併シ目下ノ所デハ正金銀行ノ方カラ此客筋ノ方ノコトヲ考ヘテ見マスト、今直グニ之ヲ立テナケレバナラヌ程ノ事実ガアルト云フコトハ認メラレヌノデアリマス、曾テ綿糸ノ合同聯合会ガ出来マシテ、内地ニ於テモ綿糸ガ紡績業者ハ捌キガ付カヌ、支那ニ於テハ印度ノ紡績ト闘ハネバナラヌ、ソレニハ支那ニ持ツテ往ツテ日本ノ糸ノ荷物ヲ沢山ニ備エテ置イテ、売レル時機ガ来タラバ内地カラ取寄セルト云フ不便ナコトヲシナイデ、即座ニ品物ノ供給ガ出来ルヤウニ沢山彼処ニ荷物ヲ置カナケレバナラヌ、ソレニ対シテ特殊ノ取扱ヲシテ貰ヒタイト云フ精神デ政府ニ願出デ、政府カラ許可ニナツテ始メタコトガアリマス、一年六箇月ト云フモノヲ彼方デ融通ヲスルト云フコトデ、政府ノ方ハ最初ノ六箇月間デ縁ガ切レマシテ、其跡矢張正金銀行ガ其義務丈ケヲ継承シマシテ、始メハ政府カラ其資金モ出タノデス、其資金ハ六箇月デ政府ヘ返ヘシテ正金銀行ハ最初ノ目的通リ引続キ其途ヲ開イテ居リマスガ、存外長期ノ定期貸付ヲ利用スル場合ガナカツタ、ソレデ其後ハ契約ガ一年デアリマシテ、ズツト其後利用セラレズニ仕舞ツテ今日ニナツテ居ル、サウ云フ状態デアリマスカラ是ハ商売ノ懸引ニモ依ルコトデアリマセウ、ドウモ目下直グニ之ヲ
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立テナケレバナラヌト云フヤウナ必要ハ認メマセヌ、他日我ガ商人ガ支那内地ニ這入ツテ商売ヲスルコトニ就テモツト進ンダナラバ其必要ガ起リマセウカラ、実ハ外国人ナドガ頻リニ日本ノ商人デ公平ナ競争ヲスル者ガナイ、政府ガ後援ニナツテ政府ガ世話ヲシテサウシテ吾々ニ向ツテ商人ガ働クノデアル、吾々ハ政府ノ保護ヲ受ケテ居ルモノデナイ、日本政府ガ日本ノ商人ヲ助ケルト云フノハ吾々私人ト闘ハシテ吾々ヲ支那カラ駆逐スルト云フコトデアルト云フヤウニ深ク外国人ガ感ジテ居ルノデス、成ルダケサウ云フ間違ツタ考ヲ外交上助長サセナイヤウニスルコトハ最モ必要ナコトヽ考ヘマス、玆デ『対清為替ニ一層ノ力ヲ用ヰシメ一方必要ノ場合ニ於テハ』ト云フヤウナ文字デモ御加ヘニナツタナラバ余程此処ガ緩フナリハセヌカト思ヒマス、目下差当リ直グ立テナケレバナラヌト云フヤウナ考ヲ起スノハ甚ダ不利益デアリマスマイカ、又目下直グニ起サナケレバナラヌ必要モナイノデアリマスカラ『適当ナ時機トカ』、或ハ『必要ナ場合ニ於テ』ト云フコトヲ御入レニナツテハ如何デスカ、是ハ委員ノ方ニ御相談致シマス
○五十番(山本達雄君) 私ハ此第二ノ日清銀行設立ノコトヲ今日此処ニ議決セラルト云フコトハ如何デアラウカト思ヒマスノデ、之ヲ削除スル動議ヲ提出致シマス、(「賛成々々」ト呼ブ者アリ)其理由ハ第二トシテ、対東洋貿易ハ対欧米貿易ト大ニ其ノ趣ヲ異ニシ、而カモ我邦ハ必ズ此両方面ニ於ケル貿易ノ成功ヲ期セラレタイ、其貿易ノ目的ヲ成功セシメルタメニ正金銀行ヲシテ一方ハ対清為替ノ業務ヲサセ、一方デハ支那ノ内地ニ於テノ貸附ノ仕事ヲサセルト云フ意味ノヤウニ思ヒマスガ、元ト此正金銀行ハ既ニ今日支那ノ方面ニ行キマシテ上海・天津或ハ牛荘其他ヲ始メトシテ数箇処ノ要路ニ既ニ支店ヲ開イテ居ルノデアリマス、而シテ其正金銀行ハ必ズ為替バカリデアルカト云フト或ハ天津或ハ上海ニ於テ夫々其貿易ノ為ニ金ヲ貸スコトヲ今日ヤツテ居ル、既ニ聞クトコロニ依ルト、今日支那方面ニ向ツテ既ニ一千万円以上ノ預金ヲ以テソレゾレ仕事ヲシテ居ル、本員モ曾テ此貿易ノ機関タル正金銀行ニ関係ヲ有ツテ居ツタコトガアリマシタガ、今日思出シテ見マスト云フト、丁度三十二年ノ頃ト記憶シマスガ、ドウモ日本ガ金貨本位ニナツテ、サウシテ金銀ノ等差ノアル所ニ於テ貿易ヲスルコトハ正金銀行ハ甚ダ困難デアル――困難デアルガ、ドウモ国家ノ進運上此東洋貿易殊ニ支那ノ貿易ト云フモノハ最モ必要デアル、故ニ之ニ付イテ大ニ力ヲ費サナケレバナラヌト云フコトデ、先年議会ニ於テ既ニ正金銀行ニ於テ特別ナ資金ヲ貸スト云フコトニナツタ、其年々ノ利子ナルモノハ二千万円ノ高ト記憶シテ居リマスルガ、ソレニ付イテモ思フニハ此東洋貿易即チ金銀ト云フ本位ノ違ツタ国ニ於テ仕事ヲサセルニ付イテハ、政府ハ正金銀行ニ特別ナ低利ノ金ヲ貸シテ主ニ此支那貿易ニ対シテ力ヲ費サセルト云フ其時ノ趣意デアツタヤウニ記憶シテ居リマスルカラ、随ツテ其当時資本ヲ増加シ、又天津・牛荘ノ如キ場所ニ向ツテ殊更ニ政府ハ勧メテ店ヲ出サセタト云フヤウナ状況デアリマス、ソレガ段々進ンデ今日ハ十分ナ責務ヲ負フテ其方ニハ力ヲ費シテ居リ、又近頃ニナリマスルト満洲方面ニ対シテハ恰モ我勧業銀行ノ如キ不動産ノ貸附マデモヤルト云フヤウナコトニナツテ、段々進ンデ
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居ルヤウニ承知シテ居リマス、サウ云フ様ナ方ニ向ツテ居リマスルカラシテ、私ハ機関トイフモノハ今日不備ヲ来シテ居ルトハ思ヒマセヌモウ既ニサウイフ機関ガ備ハツテ居マスカラシテ、此機関ヲ十分ニ整理シテ、サウシテ其方ノ力ガ貿易ト共ニ進ンデ行ツタナラバ、機関ガ一ツノタメニ融通ガ付カヌトカ或ハ貿易ノ進運ヲ大ニ妨害スルヤウナ虞ガアルマイカト思ヒマス、ソレガ既ニ第一条ニ於テ如何ニモ貿易ノ消長ハ国運ノ因ツテ繋ル所デアルト云フコトトシテ、其重大ナ貿易ヲ第一番ニ盛ニスルタメニハ第一金融機関ハ資力ガ不足シテ居ル、故ニ之ヲモウ少シ増加シナケレバナラヌ、其増加ヲサセルニ付イテハ横浜正金銀行ヲシテ其為替資金ヲ増加スルノ方法ヲ講ジサセル、且一層之ヲ督励セラルヽコトヲ要ス、若シサウ云フコトガ出来ヌナラバ已ムヲ得ナイタメニ普通ノ銀行ヲシテサセルト云フコトデ、第一今日ノ機関ヲ以テ十分ニ貿易ヲ奨メテヤラセル、ソレノ機関ガ往カナカツタナラバ外ノ銀行ニモ殆ド正金銀行ト同様ナ特典ヲ与ヘテモヤラセウト云フコトガ一条ニ書イテアルノデアリマス、シテ見マスレバ、縦令貿易ガ欧米ト東洋ト違フトシテ見タナラバ、違フナラバ違フダケ此正金銀行ヲ以テ東洋ノ為替ヲ余計ツケルヤウニ資本ヲ其方ニ余計ニ増スコトヲ奨メル、即チ第一条デ論ジタコトデ以テシタナラバ敢テ金融機関ガナイ、融通ガ付カヌト云フテサウ不自由ヲ感ズルコトモアルマイカト思ハレマス ○中略 此第二条ノ日清銀行ヲ設立スルト云フコトハ全部不必要ナ項目ト思ヒマスカラシテ、私ハ削除スルコトヲ欲シマスル
  (「削除説賛成」ト呼ブ者アリ)
○七十二番(若槻礼次郎君) 私モ大体唯今ノ削除論ト趣意ハ同ジデアリマス、若シ其方ガ御多数デアレバ無論賛成致シマスガ、折角此案ガ出来テ居リマスカラ原案ノ方デモ強ヒテ反対ハ致シマセヌケレドモ、先程モアリマスル通リ、前ノ読出シト後ノ方トハ違ツテ居リマスノデイロイロ御議論ガ出マスカラ、私ハ斯ウイフヤウニ修正シタイト思ヒマス、『対東洋貿易ハ対欧米貿易ト大ニ其ノ趣ヲ異ニシ而カモ』此所ヲ『対東洋貿易ニ関シテハ我邦ハ地勢上ノ便利ヲ有ス』ト修正シ、ソレカラ『我邦ハ必ズ此両方面ニ於ケル』ト云フ此『両』ノ字ヲ削ツテ『我邦ハ必ズ此方面ニ於ケル』ト斯ウ云フ風ニ改メマシテ、後ノ『対清為替ニ一層ノ力ヲ用ヰシメ』ノ下ニハ高橋君ノ言ハレル通リ『必要ニ依リテハ』ト斯ウ云フ文字ヲ加ヘタイ、サウスルト前ノ読出シト後トガ関聯シテ来ルノデアリマシテ、而シテ山本君ノ言ハレマスル今目前ニ大シタ必要ガナイト云フ御論ト大体同ジコトニ往キマス、削除論ガ成立チマシタラ私ハ無論賛成致シマスガ、若シ削除説ガ成立セヌナラバ唯今申シタヤウナ修正ヲ加ヘタイト思ヒマス
○八番(益田孝君) 議長……
○議長(男爵渋沢栄一君) 益田サンハ……
○八番(益田孝君) 今ノ修正論ニ御賛成ガアルカナイカヲ……
○議長(男爵渋沢栄一君) 其前ニ若槻サン、今ノ修正ヲモウ一応……
○七十二番(若槻礼次郎君) 『第二ニ対東洋貿易ニ関シテハ我邦ハ地勢上ノ便利ヲ有ス、仍テ我邦ハ必ズ此方面ニ於ケル貿易ノ成効ヲ期セザルベカラズ、政府ハ一方横浜正金銀行ヲ督励シテ対清為替ニ一層ノ
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力ヲ用ヰシメ、必要ニ依リテハ一方為替以外ノ資金融通ヲ目的トセル日清銀行ナルモノヲ設立スルヲ要ス』斯ウイフヤウニ致シタイト思ヒマス
○八番(益田孝君) 今ノ若槻サンノ修正案ニ賛成ノアルノヲ待ツテ申スベキデアリマスガ、其修正ノ御説ニシテ此会ノ採ルトコロトナレバマダシモデアリマスガ、唯私ハ甚ダ遺憾トスルハ、モシ必要ノ場合ガアレバデハナイ、今日ハ遅レテ居ル位必要デアラウト自ラ存ジ居ルノデアリマス、勿論此書イタ文字ニ於テ政府ガ政府ガト云フテ他国ノ嫌疑ヲ受ケル様ナ事ヲ書イテアルノハ、ソレハ甚ダ宜シクナイデス、支那ヲ漫遊シテ帰ツタ御方ノ言フ事ヲ随分特別委員会ニ於テモ段々商務局長始メ報告ガゴザイマシタガ、ドウシテモ此支那ニ対スル商業上ノ勢力ヲ拡張スルニハ、モウ一ツ金融ノ便ヲ与ヘナケレバナラヌト云ツテ漫リニ正金銀行ニ求ムル、併シ是ハ正金銀行ニサウ求メラレタトコロガ、正金銀行ニハ正金銀行ノ定款モアリ、秩序ヲ追フタル貿易ニ向ツテ金融ヲ与ヘルノ外、特ニ今度満洲ニ於テ、今高橋男爵ノ御話ニ依ルト満洲ニ於テ特ニ政府カラノ命令デ不動産ニ対シテ貸附ヲナサルト云フ、即チ満洲ニ於テソレダケノ必要ヲ政府ニ於テ感ジテ、日清銀行ガナイカラ拠ナク正金銀行ヲシテ無理ダラウケレドモヤラセルト云フ必要ヲ感ジラレタノハ、即チ支那ニ於テノ必要ヲ感ジラレタノト同様デアラウト思ヒマス、何モ支那ト言ツタトコロガ、満洲ト言ツタトコロガ同ジコトデアル、将来ノ貿易ト云フコトガ皆各国申上ゲルマデモナク諸君御承知ノ通リ、モウ将来ノコトハ支那ニアルト云フコトデ、各々種々ナ方法ヲ以テ嫌疑ヲ避ケツツヤツテ居ルノデハアリマセヌカ即チ露西亜ナドハ前年ヨリ露清銀行ヲ拵ヘテ彼ノ通リイロイロ銀行ハ働キヲシテ居ル、ドウシテモモウ将来ノコトヲ考ヘテ近ク此好イ地位ニ居ル日本ガ遅レバセニ世ノ中ニ飛出シテ此貿易ノ利ヲ得ヤウト云フニハ支那ニ努メルヨリ外ハナイ、即チ目下必要ト云フコトヲ生ジテ居ルノデアル、私共ハ其場合ニ際シテハ今ノ高橋男爵ノ修正即チ必要ガアツタラト云フ字ヲ入レ、今若槻君ノ修正案モ何レモ必要ヲ見タラバト云フコトデアルケレドモ、其必要ヲ見ツツアルカラ設立シテ貰ヒタイ、設立ナサルガ適当デアルト思ヒマスカラ、成ルベクハ此原案ニ据ヘテ此方ニ賛成ヲ仰ギタイ、勿論此削除ナドト云フコトハ少々今日ノ場合ヲ唯其銀行一遍ノ営業ニ付イテノ御物語ナラバソレハドウカ知ラヌガ、金貨本位デアル所ガ銀貨国ニ於テ一ノ銀行ヲ設立スルト云フハ随分困難ナコトハ知レ切ツテ居ルカラ、銀行営業トシテハ株主ニナルノハイヤデアル、併ナガラ将来ノコトヲ考ヘタナラバ随分是ハ思半バニ過ギルコトガアルダロウト思ヒマスカラ、私ハ成ルベク此委員会建議ノ第二ヲ其儘御採用アルコトヲ希望スルノデアリマス
○七十一番(西村治兵衛君) 私ハ此第二項ノ大体ニ於テ原案ヲ賛成シソレカラ一箇所削除ヲシタイ所ガアリマス、ソレハ此三行目ノ上ノ方ノ『為替以外ノ』是ダケノ文字ヲ削除シテ後ハ原案ニ賛成シマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 五十番ノ此削除説ニ御賛成ガアツタヤウデアリマスカラ、最早御論ガ尽キマシタナラバ、ソレカラ一ツ決ヲ採リマスヤウニ致シタイト思ヒマス
 - 第56巻 p.437 -ページ画像 
  (「採決々々」ト呼ブ者アリ)
○六十四番(豊川良平君) 『為替以外ノ』ト云フ文字ヲ削除スルト云フ説ガ出マシタガ、『バング』ヲヤルニ為替以外ノナイ『バング』ハナイカト思ヒマス ○中略 所デ支那ヘ為替以外ノ日清銀行ヲ設立スルト云フコトハ、余程ムヅカシイ話デハナイカト思ヒマス、就キマシテハ一方デハヤラウトシ、一方デハヤラヌトスルト、ナカナカヤカマシイ話デアリマスガ、今日又為替以外ノ銀行ヲ支那ヘ設立スルト云フコトハチヨツト株主モナイダラウト思ヒマス、又株主ニナラウトスレバ政府ガ是ヘ六分ノ保障ヲスルトカイフコトガ出来ナケレバ出来ナイ話デアリマス、今日支那ヘ対シテ日本ノ国ダケデ保障シテヤルト云フ程ノ必要ナモノデアルカ、其辺モナカナカムヅカシイ問題ダラウト思ヒマス就キマシテハ山本君ハ総テヲ削除スルト云フ、西村君ハ『為替以外ノ』ト云フ文字ヲ削除スルト云フ、又高橋サンハ『必要ニ依リ』ト云フ御話デアリマシタガ、先ヅ私ハ『為替以外云々』ヲ今日削除スル方ガ却テ生産調査会ノ案トシテ出スニハ穏カノヤウニ思ヒマスカラ、山本君ノ説ニ替成致シマス
○中略
○議長(男爵渋沢栄一君) 此反対ノ御説、修正ノ御説モ多々ゴザイマス、修正ノ御説ハ色々ニ分レテ居リマスケレドモ、此修正説ハドウモマダ一寸賛成者ガアルトハ認メラレマセヌガ、反対ノ御説ニハ御賛成ガゴザイマセヌデ反対説ノ方カラ決ヲ採ツテ見マシテ、ソレカラ其模様ニ依リマシテ後ノ修正ニ移リマス、段々此修正ガアツタ御説ノ中ニモ少々違ツタノモアリ、或ハ又全然違ツタノモアリ、或ハ変ツタヤウニ見エテ其実似テ居ルノモゴザイマスガ、先ヅ五十番ノ此第二項ヲ総テ削除スルト云フ説ニ御同意ノ方ノ御起立ヲ願ヒマス
  起立者 少数
○議長(男爵渋沢栄一君) 少数デゴザイマス、御修正ノ説ガマダ大分多ク出マシタガ、或ハ斯ウ賛成ガアツタヤウナ、ナイヤウナ、甚ダ認メ兼ネマスガ、若槻サンノ御修正ハ斯ウ云フ文章デスカ『対東洋貿易ニ関シテハ我国地勢上ノ便宜ヲ有ス、仍テ必ズ此方面ニ於ケル貿易ノ成効ヲ期セザルベカラズ』『仍テ』ヲ廃メテ『故ニ』トデモ言ハフト云フ御意見デスカ
○七十二番(若槻礼次郎君) 何ニモナシニ……
○議長(男爵渋沢栄一君) 『政府ハ一方横浜正金銀行ヲ督励シテ対清為替ニ一層ノ力ヲ用ヰシメ、必要ニ依リテ一方為替以外ノ金融ヲ目的トセル日清銀行ナルモノヲ設立スルコトヲ望ム』……
○二十三番(田川大吉郎君) 若槻サンノ御説、松崎サンノ御説ノ如キハ、要スルニ本文ニ対シテ文章ノ修正ニ属シマシテ、其儘ニ措イテ為替以外ト云フ文字ヲ取ルカ取ラナイカト云フコトノ此原案ニ対シテ大ナル関係ヲ有ツテ居リマスカラ、為替以外ト云フ文字ヲ取ルヤ否ヤト云フコトヲ第一ニ解決サレンコトヲ希望シマス
○十六番(法学博士松崎蔵之助君) 私ノハ為替以外ト云フコトモ這入ツテ居ル、今ノ二十三番ノ云フノハ松崎サン若槻サンハ反対デアルケレドモ結局ハ文字ノ修正ハ第二ニシテ為替ノ有無ガ必要デアルカラ、
 - 第56巻 p.438 -ページ画像 
ソレカラ決ヲ採ツタラ宜カラウデハナイカ、修正ノ採決ヲ先ニシタイト云フ御趣意デアリマスカ……
○十九番(男爵高橋是清君) 此為替以外ト云フ文字ヲ取リマシテ矢張為替ヲ取組マセ、而シテ此日清銀行ト云フモノハ専ラ支那、東洋ニ向ツテ日本トノ貿易ヲ助長サセル方ノ機関ニシヤウ斯ウ云フ御精神ト見ル、是ハ前カラ日清銀行ト云フ噂ガ世ノ中ニアリマシテモ実際之ヲ立テヽ其働キノ如何ト云フコトヲ考ヘテ見マスト云フト、矢張モウ一ツノ正金銀行ヲ立テルト云フコトヽ結局同ジニナル、若シ是ガ金貨本位ニナル前ノ依然トシタ銀貨国デアツタ我国ナラバ、日清ノ間共ニ銀貨国デアルカラシテ為替ノ貿易ノ決済ハ直ニ其国ニアル所ノ銀ヲ以テ足ルト云フノデ其理論トシテ立テマセウガ、ソレデモ事実ハ此両国間デ為替ノ決済ヲ実物ヲ以テスルト云フコトハ不経済、詰リ其不経済ト云フノハ貿易者ノ損ト云フコトニナル、此機関ト云フモノハ営利ノ目的ト一方デハ実際国家ノ機関デアルケレドモ、其株主ト云フモノガアル以上ハ相当ノ利益ヲ収メナケレバナラヌ其銀行ノ働キニ於テ、為替ノ出合ヲ不経済ニ取レバ取ル程関係貿易者ノ損ニナルコトデアル、況ンヤ今日ハ我国ガ金貨本位デアル、支那ハ銀貨本位デアリマス、日清ノ貿易丈ケニ従事サセヤウト云フ目的デアツテモ其為替ノ出合ヲ付ケルニ於テハ、矢張是ハ亜米利加ナリ倫敦、主ニ倫敦ノ世界ノ市場ニ依リテ決済ヲ付ケナケレバナラヌノデ、単ニ日清銀行ガ支那計リヲ相手ニシテ総テノコトガ能ク往クカト云フトサウ往カナイ、矢張倫敦ニモ支店ヲ持チ、場合ニヨツタラ紐育ニモ支店ヲ持チ、サウシテ此ドウ云フ風ニ為替ノ利合ヲ取ツタラ一番宜イカト云フ工夫ヲシテ往カナケレバナラヌ、為替以外ト云フ文字ヲ取レバ二ツノ正金銀行ヲ起スト云フコトト同ジコトニナル ○中略 併シ私ハ不幸ニシテ今直接正金銀行ニ関係ヲ有ツテ居リマスカラシテ余リ正金銀行ノ弁護ハシタクナイ、国家ノ機関ト云フ観念ヲ有ツテ言フノデアリマスカラ左様御了解ヲ願ヒマス
○中略
○二十三番(田川大吉郎君) 私ハ此場合穏当ヲ欠クカモ知レマセヌガ緊急動議ヲ提出致シタイ、ソレハ此第二項日清銀行ニ関スル案件ヲ挙ゲテ特別ノ審査ヲ此上願ヒタイ、本会ハ是ガ為メニ再応ノ調査ヲ致スコトヲ決シテ誤ツタル行為トハ認メヌデアラウト思ヒマス
○中略
○四十七番(男爵武井守正君) 私モ今其緊急動議ヲ起サウト存ジタラ二十三番カラ出マシタノデ、至極二十三番ニ同意ヲ致シマス
  (「賛成々々」ノ声起ル)
○議長(男爵渋沢栄一君) 若槻サンノ修正案ニハ御賛成ガゴザイマスネ……
  (「若槻君ニ賛成」ト呼ブ者アリ)
○四十三番(子爵曾我祐準君) 唯今ノ緊急動議ニハ御賛成ガゴザイマシタニ依ツテ、緊急動議ニシテ成立シマスレバ此際他ノ案ニ付イテノ御採決ハ不用ノコトヽ考ヘマス、緊急動議ガ倒レマシタ後ニナサラヌト少シ都合ガ悪カラウト思ヒマスカラ一言申上ゲマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 然ラバ二十三番ハ此案ハ別ニ調査委員ヲ挙
 - 第56巻 p.439 -ページ画像 
ゲルノデスカ、前ノ調査委員ニ再調査ヲ付託スルノデスカ
○二十三番(田川大吉郎君) 私ハ別ノ委員ニ……
○議長(男爵渋沢栄一君) 委員ハ幾名……
○二十三番(田川大吉郎君) ソレハ考ヘテ居リマセヌガ、凡ソ九名モアツタラ宜カラウト思ヒマス
○四十三番(子爵曾我祐準君) チヨツト御尋シマスガ其項ダケニ付イテデスカ
○二十三番(田川大吉郎君) サウデス、日清銀行ダケデス
○議長(男爵渋沢栄一君) 第二項ヲ再調査スルタメニ特別委員ヲ設クルト云フ緊急動議ガ二十三番カラ出マシタ、ソレニ対シテ四十三番ノ御賛成ガアリマシタカラソレカラ先ニ決ヲ採リマセウ
○十七番(浅田徳則君) 私ハ議事ノ規則ノ上ニ付イテ御尋シタイノデアリマスガ、一体今日ハ此案ヲ全部議セラルヽコトニナツテ居ルノデアルガ、其中ニ種々ノ異議ガ生ジマシテ、此中カラ一箇条ヲ抜イテ此一箇条ダケヲ他日ノ議ニ付スルト云フノガ唯今緊急動議ノ御趣意ト聴ヘルノデス、サウシマスルト此場合ハ之ヲ削除スルト云フコトニナリハシナイカト思ヒマスガ如何デアリマスカ
○四十三番(子爵曾我祐準君) 私ハ斯ウ考ヘマス、是ハ元来委員会ノコトデゴザイマスデ、此動議ニシテ若シモ成立チマシタナラバ、此二項ダケヲ残シテ懸案ノヤウニシテ置イテ保留シテ居ツテ、第三ニ行ツテ一向差支ナイト思ヒマス、唯全部ヲ決了スルコトハ一箇条残シテ置クカラ自然ノ結果トシテ出来マセヌ、ケレドモ他ノ条ヲ議スルニハ差支ナイト思ヒマス、サリナガラ若シモ此条カラ他ノ条ニ関聯スルコトガ沢山ノ条数ノ中ニハアルカ知レマセヌ、ソレハ共ニ残シテ置クヨリ仕方ガアルマイト思ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 別ニサウ云フ議事規則ハゴザイマセヌケレドモ、今四十三番ノ御見解ノ通リニ会議ハ差支ナク進行シテ宜カラウト思ヒマス――然ラバ二十三番ノ緊急動議ヲ採決致シマス、二十三番ノ再調査ノ為ニ九名ノ特別委員ヲ設ケルト云フ動議ニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ願ヒマス
  起立者 多数
○議長(男爵渋沢栄一君) 二十三番ノ説ガ多数デゴザイマス
○五十三番(法学博士添田寿一君) 唯今ノ説ガ成立チマシタ以上ハ、外ノ御方ハ知リマセヌガ、私一人ハ今成立ツテ居ル特別委員以外カラ各委員ヲ御選ビ下サルコトヲ願フト大変都合ガ好イト思ヒマス、私ハ到底御選ビ下サイマセヌカ知レマセヌガ、御選ビニナリマシテモ御受ケハシマセヌ
○議長(男爵渋沢栄一君) マダ時ガアリマスカラ委員ノコトハ後ニ申上ゲルトシテ、今一時間議事ヲ御進行ニナツテハ如何デセウ
  (「賛成々々」ノ声起ル)
○二十三番(田川大吉郎君) 唯今ノ委員ハ議長指名トイフコトニ願ヒタウゴザイマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 畏マリシタ、――第三ニ移リマス
  〔朗読〕
 - 第56巻 p.440 -ページ画像 
第三 産業ヲ奨励シ貿易ヲ助長スル最重要ノ機関ハ鉄道ナリトス、今ヤ我全国ノ主要線路ハ国有制度ノ下ニ統轄セラレ、政府当局者ノ是認スル所直ニ之ヲ実行シ得ベキガ故ニ、当局者自ラ貿易実業家ノ見地ニ立チ、輸出奨励ヲ目途トシテ一層速達ノ方法ヲ講ジ、運賃割戻ノ制ヲ設ケ、海外市場ノ実状ニ応ジテ上下スルノ弾力ヲ有セシメ、且発著手数料ノ如キハ貨物ノ種類ニヨリテ或ハ之ヲ全廃シ或ハ之ヲ軽減スルコトヲ要ス
○四十四番(松山忠二郎君) チヨツト御尋ネシマスガ『運賃割戻ノ制ヲ設ケ』トアリマシテ、説明ニハ二割原料ノ輸出品ヲ減ズトナツテ居リマスガ、是ハ賃金ノ引下トセズシテ特ニ年末ニ割戻スト為サツタ理由ハ如何デス
○八番(益田孝君) 是ハ独逸ノ輸出シタモノニ付イテノ割引ハ詳シク分ツテ居リマセヌガ、現在ヤツテ居ルサウデゴザイマスガ、最モ能ク割合ヲ立ツテ割戻ヲシテ居ルノハ印度ニ於ケル石炭ノヤウデアリマス是ハ併シソレカラ割合ヲ取ツタ訳デハナイノデアリマス、確ニ輸出シタルモノダケニ対シテ運賃ノ割戻シヲシテ居リマス、段々攻究シテ見マスルノニ先ヅ一番是ガ効能ガアリハシマイカ、全ク出タモノダケニ対シテ此委員会デ協議ヲシマシテ、マア二割位ト云フコトニシテ此処ニ出シタノデアリマス、今ノ年末ト云フコトニ付イテハ何レデモ宜シウゴザイマス、必ズ年末デナケレバナラヌト云フ訳デハナイノデアリマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 松山サン、御質問ニ対シテノ御答弁ガゴザイマシタガ御了解ニナリマシタカ
○四十四番(松山忠二郎君) 矢張年末割引ト云フコトニナルト複雑ニナリマスルカラ、ソレヨリハ初メカラ引下ゲヲ定メテ置イタ方ガ簡便デハナイカト思ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 『割戻』トセズニ『引下ゲ』トシタラドウカト云フノデアリマスカ
○四十四番(松山忠二郎君) 『割戻』ニセズニ寧ロ『引下ゲ』ニシタ方ガ簡便デハナイカト云フノデアリマス
○七十一番(西村治兵衛君) チヨツト私ハ此場合ニ議事ノ進行上ニ付イテ御尋ヲシタイト思ヒマスガ、本問題ニ付イテ今委員ヲ第二項ニ設ケラレマシタガ、後ヲ議了致シマスルト其分ダケヲ御答申ニナル訳デアリマスカ、是ハ全部完全シナケレバ此案ハ決了シナイヤウニ思ヒマスガ、其辺ハ如何デアリマセウカ、果シテ是ガ尚此第二ノ委員ノ報告ヲ待ツテ決議スルマデ之ヲ答申シナイト云フコトデアリマシタナラバ外ニ未ダ簡単ナ建議案デ一・二調査委員ノ報告ガアリマスカラ、是ナドヲ先ニナサレマシテ、サウシテ尚時間ニ余裕ガアツタナラバ御議シニナルヤウニ致シタイト思ヒマス
  (「賛成々々」ノ声起ル)
○議長(男爵渋沢栄一君) サウスルト七十一番ノ御説ハ此案ヲ止メテ置カウト云フノデスカ
○七十一番(西村治兵衛君) サウデス
○議長(男爵渋沢栄一君) 今進行スルト云フコトニナツテ居リマス
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○七十一番(西村治兵衛君) ソレデ御協議ヲ致スノデアリマス
○十五番(和田維四郎君) 唯今ノ御説ニ付キマシテ私モ意見ガゴザイマスガ、今日ハ土曜日デゴザイマスカラ第二項ガ決議ニナラナケレバ完全シタモノトシテ報告ニハナラナイト思ヒマス、他ノ案モエライ緊急ヲ要スル問題ノヤウデモゴザイマセヌカラ、今日ハ土曜日ト云フ格別ノ訳ヲ以テ是テ散会セラレンコトヲ希望致シマス
  (「賛成々々」ノ声起ル)
○議長(男爵渋沢栄一君) 大分此儘ニ置キタイト云フ御説ガ多イヤウデ、既ニ御片付ケニナツテ居ルヤウデアリマスガ、未ダ会長ハ何トモ申上ゲマセヌ、如何致シタモノデゴザイマセウカ、農商務大臣ハ五日迄ト云フコトデゴザイマシタガ、五日ハ今日デ経過シタノデゴザイマスガ、伺ヒマスルト諸君モ御承知ノ通リ工場法案ガ特別委員ニ付託サレテアリマス、即チ私モ其委員ノ一人デアリマスガ、此間工場法ノ特別委員会ニ於テ農商務大臣カラ承ルトコロデハ、一方ノ工場法ハ他ノ地方ノ官憲若クハ地方ノ職工団体ヘ大分御諮問ニナツテ居ルサウデス是ガ十五日頃マデニ大抵答申サレル、其答申ヲモ特別委員ガ能ク見テ案ヲ議スルヤウニシタガ宜カラウト云フ御注意デアリマシタ、故ニ其特別委員会ノ何ガ出来マシタナラバ、是非年内即チ当月末位ニ生産調査会ヲ開会スルト云フ御予定ダサウデアリマス、サウシマスト一向議事ガ五日ノ間ニ進行致シマセヌデ、殊ニ其中二日ハ休マレマシタカラ後五日間ト云フノデ七日八日ト継続スルカ、次ニ開カレルモノダカラ五日デ此処デ切ツテ後ニシタガ宜カラウカト云フコトハ、農商務大臣ノ御意向モゴザイマセウケレドモ、会議ニ於テ一応御相談致シマス
○四十九番(男爵田健治郎君) 今ノ議長ノ御尋ネニ対シテ意見ヲ申上ゲマスガ、此第二ノ特別委員ニ嘱托ナサル以上ハ特別委員ニ於テ切レ切レニ結了スル訳ニハ往クマイト思フ、シテ見ルト云フト第二ノ特別委員ノ報告ガアツタ後デナケレバ此決議ハ出来ヌ訳デアリマス、兎ニ角サウ云フ訳デアリマスカラ、議長御話ノ通リ本月末辺リニ更ニ本会ヲ御開設ノ御予定デアルナラバ、其節ニ矢張特別委員ノ報告ヲ俟ツテ一緒ニ御議決ニナルト云フコトガ極メテ便利デアラウト思ヒマスカラドウカサウ為サルヤウニ願ヒタイト思ヒマス
  (「賛成々々」ト呼ブ者アリ)
○議長(男爵渋沢栄一君) 農商務大臣ノ御意嚮ヲ次官カラ……
○農商務次官(押川則吉君) 本日ハ大臣ハ病気デ御出席ガ出来マセヌノデ皆サンニ宜敷申上ゲテ呉レト云フコトデゴザイマシタ、当初ノ考デハ約五日間ト云フノハ実ハ一日カラ五日迄ト云フ考ヘデゴザイマシタカラ、凡ソノ予定デハ今日迄デアツタノデゴザイマスケレドモ、此会議ノ模様ニ依ツテハ一日延バシ二日延バスト云フコトハ本省トシテ少シモ差支ナイノデゴザイマス、必ズ五日デ止メナクテハナラヌト云フコトデハナイノデアリマスカラ、諸君ノ会議ノ御模様ニ依ツテハドウ致シテモ差支ナイノデゴザイマスカラ、先刻渋沢議長ヨリ御話ノ通リ此工場法案ノコトニ付キマシテハ、ドウシテモ特別委員ノ御審査ノ都合ニ依ツテ今月ノ末若クハ来月ノ初メニモウ一回此会ヲ開イテ諸君ノ御会同ヲ煩ハサナケレバナラヌト云フ次第ニナツテ居リマスカラ、
 - 第56巻 p.442 -ページ画像 
唯今皆サンノ御希望ノ通リ本日限リ御止メニナツテ、更ニ此次ノ開会ノ時ニ総テノ問題ヲ御議シニナルコトニ付キマシテハ本省トシテハ少シモ差支ナイノデ、是丈ケノコトヲ御参考ノ為ニ申上ゲテ置キマス
○四十四番(松山忠二郎君) 今ノ第二項ガ再調査ニ附セラレタガ為ニ其後ヲズツト少シモ議サナイト云フコトハ余リ不親切ジヤナイカト思フ、マダ大分アルノデアリマス、第四・第五ト段々引続イテ審議シテ往ク中ニ又同様ナ問題ガ起ルカモ知レナイ、サウシテ此次ニ開カレタ時ニ又再調査ニ附シナケレバナラヌ問題ガ起レバ、何時迄経ツテモ決シナイコトデアリマスカラ、先ヅ約五日ト云フ始メカラ極メタコトデアリマスカラ、モウ一日二日延バシテ此後ノ審査ヲシテ仕舞ツテ、サウシテ本会ヲ御閉ジニナルガ至当ト思ヒマス
○二十二番(田中芳男君) 明日ハ日曜ニ当リマスガ、是ハ日曜ダカラ是非共休マナケレバナラヌト云フコトニナツテ居ルカハ知レマセヌガ相成ルベクハ此勢ニ一気呵成デ明日ハ休マズニ御遣リニナツテハ皆サンドウデスカ、私ハサウシタイト考ヘマス
○十五番(和田維四郎君) 明日出ロト云ツテモ出マイト思ヒマスカラ一寸申シテ置キマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 是ハドウモ多数デ決スル訳ニ往キマスマイガ如何デセウカ、大体御意嚮ガ分リマシタカラ大抵月末頃ニ御開キニナルデセウ、是ハ結局開カナケレバナラヌノデ、サウシタナラバ……
○四十三番(子爵曾我祐準君) 農商務省ノ御希望ガアルカ知リマセヌケレドモ、今ノ月末ノ会ヲ五日開ク所ヲ七日ニシテ、サウシテ二日計リ早ク始メテ、サウシテ此会ノ残ツタノヲ次ノ会ノ頭ニ附ケルト云フヤウナ風ニヤツタラ如何カト思ヒマス、一寸御参考マデニ……
○議長(男爵渋沢栄一君) マダ段々疑問所謂建議ガ濫発スルト云フ嫌イガアルカ知レマセヌガ、私共賛成シタノガ御手許ニ廻ツテ居ルノガ三ツ四ツノ建議案ガゴザイマス、夫等ヲ何レモ御議シヲ願フ訳ニナルダラウト思フ、サスレバ明日一日デ果シテ済ムト云フコトモ期シ難イ故ニ此農商務省ノ御都合ハ即チ一昨日出タ法案ノ特別委員会ガ済ミマシタラ直グ後ノ会ガ開カレルデセウガ、ソレマデ待ツト云フ方ガ寧ロ御便宜ジヤゴザイマセヌカ
  (「賛成々々」「異議ナシ異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ先ヅ五日ノ今日ハ終リトシテ、次ノ会議ハ又農商務大臣カラ御達シガゴザイマス、是デ散会致シマス
○農商務次官(押川則吉君) ソレデハ本会ハ是デ散会ト云フコトデ、此次ハ更ニ御招集ノ通知ヲ出スト云フコトニ致シマス
  午後四時三十五分閉会
   ○日清銀行問題ニツイテハ本資料第五十五巻所収「支那銀行設立問題」参照。



〔参考〕竜門雑誌 第二七〇号・第七六―七七頁 明治四三年一一月 ○生産調査会(DK560116k-0003)
第56巻 p.442-443 ページ画像

竜門雑誌  第二七〇号・第七六―七七頁 明治四三年一一月
○生産調査会 ○中略 翌四日も亦午前十時より委員会を開きて審議したれども、未決の儘散会し、翌五日午後二時より前回に引続き本会議を開きたり、当日会長大浦農相事故差支を以て青淵先生会長席に着き、十月卅一日予て調査を附託せられたる主査委員が審議決定したる「外
 - 第56巻 p.443 -ページ画像 
国貿易助長の方法及施設に関する答申案」の報告ありて之を議題に供し、先づ
○中略
との答申書全文を可決し、続いて各項の審議に移り第一項
○中略
右は多少の質問応答ありたるも結局報告案を是認し、進んで第二項
 対東洋貿易は対欧米貿易と大に其趣を異にす、而かも我国は必らず此方面に於ける貿易の成功を期せざる可らず、由て政府は一方横浜正金銀行を督励して対清為替に一層の力を用ひしめ、一方為替以外の資金融通を目的とせる日清銀行なるものを設立するを要す
に入りたるに、既に正金銀行ある以上日清銀行を設くるの要なし、又本案には為替以外の業務を営むとあり、為替以外果して何の肝要なる業務あるか、新設する暁には寧ろ為替業務を営ましめざる可からず等の議論百出、若槻大蔵・高橋正金・山本勧銀・西村治兵衛の諸氏各自意見を吐露して殆ど際限なければ、議場の一隅に起れる緊急動議に依りて、更に本案を一層精査研究せしむべく会長指名の委員九名(若槻松崎・土居・西村・民井・田川・浅田・山本・大岡)に附託し、第三項以下は委員会終了を俟ちて討議する事とし散会したるが ○下略