デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 生産調査会
■綱文

第56巻 p.467-485(DK560119k) ページ画像

大正元年9月25日(1912年)

是日栄一、農商務省会議室ニ於ケル当会第四回会議第二日目ニ出席シ、諮問事項「魚市場法制定ニ関スル件」ノ特別委員長ニ推挙セラル。次イデ、委員山本悌二郎ヨリ、栄一及ビ益田孝・大岡育造等委員十名ノ賛成ヲ得テ、当会ノ調査範囲拡張等ニ関スル建議案提出セラレ、栄一、賛成意見ヲ述ブ。


■資料

竜門雑誌 第二九三号・第六七―六八頁 大正元年一〇月 ○第三回生産調査会《(第四回)》(DK560119k-0001)
第56巻 p.468 ページ画像

竜門雑誌  第二九三号・第六七―六八頁 大正元年一〇月
    ○第三回生産調査会《(第四回)》
○上略
△第二日 廿五日午後二時開会、左の諮問案を附議したり、即ち
  第三 魚市場法制定に関する件
本案に関しては道家水産局長の説明あり、種々の質問応答ありたる後是又会長指名十五名の特別委員附託となり、斯くて前記三諮問案の各特別委員は互選の上各委員長を選定したり、即ち左の如し
 第一 工業助長方法の件       委員長 武井守正男
 第二 重要輸出物産同業組合法改正の件
                   委員長 曾我祐準子
 第三 魚市場法制定の件           青淵先生
次に山本悌二郎氏は、我産業の発展並に同政策に至大の関係を有する生産調査会一ケ年僅か一週乃至一旬の会期にて、而も農商務省の諮問事項のみを調査研究するを甚だ遺憾とし、青淵先生・近藤男・益田孝添田寿一・大岡育造・野崎広太・志村源太郎・佐竹作太郎・小寺謙吉大野亀三郎諸氏の賛成を得て左の建議案を提出したり
    建議
 生産調査会に於ける調査の範囲を拡張し、同時に継続的常置機関たらしめ、以て調査の周到と産業行政の統一とを期し、併て国家が重きを産業の上に置くの決意を明かにせられん事を建議す
該建議案に対しては賛成者多く、結局会長より之が可否を決する為め議長指名の特別調査委員に附託せしむる事となり、委員は互選の上、田男爵を委員長に推して午後四時卅分散会せり、尚ほ廿六日の午後二時よりは第二案(同業組合法の件)、第三案(魚市場法の件)に関する特別委員会を開き、第一案(工場助長の件)特別委員会は廿七日午前九時開会する事に決定したり
○下略


生産調査会録事(第三回)《(第四回)》 第一二八―一六五頁 大正元年一一月刊(DK560119k-0002)
第56巻 p.468-479 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第四回)》  第一二八―一六五頁 大正元年一一月刊
    大正元年九月二十五日(水曜日)午後二時二十分開議
○議長(男爵牧野伸顕君) 是ヨリ開会致シマス、第三案ニ付イテ主任局長ヨリ説明ヲ致サセマス
    第三案 魚市場法制定ニ関スル件
          〔右ハ朗読ヲ経サルモ参照ノ為メ掲載ス〕
      魚市場法重要規定事項
一、総則
 (一)魚市場ニ於テ取扱フ魚類ノ意義ヲ定ムルコト
二、設立
 (一)魚市場ノ設立ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルコト
 (二)設立許可期間ハ二十年以内トシ、其ノ更新ヲ出願シ得ルコト
 (三)魚市場ハ一地区一箇所、一営業者ヲ原則トスルコト
 (四)魚市場ノ設備ニ要スル土地、又ハ水面ハ土地収用法ノ規定ニ依リ収用又ハ使用スルヲ得ルコト
 - 第56巻 p.469 -ページ画像 
 (五)市町村其ノ他之ニ準スヘキモノカ魚市場ヲ設立スルトキハ、其ノ地区内ニ於ケル私設魚市場ノ廃止ヲ命シ得ルコト
 (六)市町村其ノ他之ニ準スヘキモノハ、魚市場ヲ設立シ営業者ニ貸付スルヲ得ルコト
 (七)魚市場ニハ附属小売場ノ設置ヲ命シ得ルコト
三、組織
 (一)魚市場ハ、市町村其ノ他之ニ準スヘキモノヽ設立ニ係ル場合ノ外株式会社組織タルヘキコト
 (二)魚市場ニ於テハ、其ノ魚市場ノ仲買人及附属小売人ニ対シテノミ卸売ヲ為スコト
 (三)魚市場ハ、自ラ魚類ノ買付ヲ為スヲ得サルヲ原則トスルコト
 (四)魚市場ノ業務規程ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘキコト
四、売買
 (一)魚市場ニ於ケル売買ハ、競売ヲ原則トスルコト
 (二)魚市場ハ其ノ仲買人及附属小売人ヲシテ証拠金ヲ納付セシメ得ルコト
 (三)魚市場ハ手数料ヲ徴収シ得ルコト
五、仲買人及附属小売人
 (一)魚市場ハ其ノ仲買人及附属小売人ヲシテ身元保証金ヲ納付セシメ得ルコト
六、取締
 (一)魚市場ニ於テハ法令ノ制限禁止ニ牴触シ、又ハ衛生上有害ノ水産物ノ販売ヲ禁止スルコト
 (二)魚市場ニ於テハ場内取締人ヲ選任スヘキコト
 (三)魚市場ハ禁制品ヲ市場外ニ搬出又ハ廃棄スルコトヲ得ヘク、又秩序維持ノ為メ入場ノ拒絶又ハ退場ヲ命シ得ルコト
七、監督
 (一)行政官庁ハ監督上、左ノ事項ニ付権限ヲ有スルコト
  (イ)臨検、検査、捜索又ハ差押
  (ロ)設立許可ノ取消、業務停止若ハ制限
  (ハ)場屋其ノ他ノ建物ノ位置・構造・設備ノ変更
  (ニ)市場業務規程ノ変更、役員及場内取締人ノ選任解任ノ認可若ハ改任ノ命令
  (ホ)魚市場設立ノ拒否・取消又ハ業務ノ停止若ハ制限ノ処分ニ対シ訴願又ハ行政訴訟ヲ提起シ得ルコト
八、罰則
 (一)法令ノ違反ニ対シ相当ノ罰則ヲ設クルコト
九、適用範囲
 (一)法律ハ大市場ニ適用スルコト
 (二)主務大臣必要ト認ムルトキハ、指定地以外ノ地ニ法律ノ一部ヲ適用シ得ルコト
十、経過規定
 (一)従来ノ魚市場ニ於ケル魚問屋カ法律ノ規定ニ依リ、株式会社組織ノ魚市場ヲ設立セムトスル場合ニ於ケル相当ノ便宜規定ヲ設クル
 - 第56巻 p.470 -ページ画像 
コト
 (二)従来ノ魚市場カ一地区ニ二以上アルトキハ、法律ノ規定ニ依ル魚市場ヲ設立スル為協議会ヲ開カシムルヲ得ルコト
 (三)従来ノ魚市場ハ法律施行後一定ノ期間営業ノ継続スルヲ得ルコト
○番外(道家水産局長) 御手許ニ廻ツテ居リマスル魚市場法制定ニ関シマスル問題ニ付イテ、其制定ノ必要ノ理由ニ付イテハ昨日大臣ヨリ御述ニナリマシタ通リノ次第デゴザイマスルガ、尚ソレニ付キマシテ大体ノ趣意ヲ一言申上ゲテ見タイト存ジマス、御承知デモゴザイマス通リ、此市場ハ生産者及ビ消費者ノ間ニ於ケル販売ノ機関デゴザイマシテ、其機関ハ最モ健実ニ且公平ニ正確ニ作用ヲシナケレバナラヌノハ論ヲ俟タナイコトデアリマスルガ、現在ノ魚市場ノ状況ハ如何ト見マスレバ、大都会ニ於キマスルトコロノ魚市場ノ如キハ名ハ市場デゴザイマスルケレドモ、其実ハ各個ノ問屋ガ個々別々ニ相集リマシテ各自ノ店舗ニ於テ其商品ヲ販売シテ居ル、個々別々ニ営業ヲ致シテ居ルヤウナ状況デゴザイマス、其間ニ於テ別ニ統一モナケレバ甚ダ其秩序ヲ欠イテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、其多数ノ問屋ナルモノガ相集ツテ営業ヲ致シテ居リマスルカラシテ、其間ニ非常ナル競争ヲシ激烈ナル暗闘ヲシテ居ルト云フヤウナ状態デアリマシテ、甚シキニ至リマシテハ、其荷主、即チ地方ヨリ商品即チ魚類ヲ誘致致シマスルニ付イテハ、種々ナル手段、極端ニ申シマスレバ陋劣ナル不正ナル手段方法ヲ用ヰテ之ヲ誘致シ、且又其販売方法ト雖モ誠ニ不正ナル手段ヲ用ヰテ居ルノデアリマス、ソレハ何カト申シマスレバ、各問屋ナルモノガ多数寄リマシテ互ニ無益ナル競争ヲ致シテ居ルノデアリマス、先ヅ東京・大阪・京都ノ如キニ於テハ皆大体サウ云フヤウナ状態デアリマス例ヘバ東京ニ於キマスルトコロノ問屋仲買ナドノ数ハ、現在ハ約八百余ゴザイマス、ソレデ其取引高ガ先ヅ二千万円以上ハアルト考ヘテ居リマス、是等ガ総テ斯ウ云フ機関ニ依ツテ販売セラレテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、地方ニ居リマストコロノ生産者ナルモノハ、斯ノ如キ状態ノ市場ニ向イテ其魚類ヲ輸送シ、販売ヲ委託セネバナラヌノデアリマスルガ故ニ、其生産業者ハ安心シテ之ヲ売ルト云フコトガ出来ナイ、又販売ヲ致シマシタ実際ノ価ガ果シテ幾ラニ売レテ居ルヤト云フコトハ、仕切面ト実際トヲ照シテ確ナル値段デアルト云フコトヲ知ル途ガナイノデアリマス、故ニ此生産者ノ方カラ言ヒマスレバ、極メテ今日ノ状態ハ不安ナル位置ニ居ツテ、ソレガタメニ迷惑ヲ蒙ルコトハ頗ル多イノデアリマス、又消費者ノ方カラ申シマスルト斯ノ如キ状態ノ市場ノ下ニ集ツテ来タトコロノ魚ヲ、其機関ヲ通ジテ購買スル訳デアリマスルカラシテ極メテ不廉ナル、或ハ新鮮ヲ欠イテ居ルヤウナモノモ買ハナケレバナラヌト云フコトハ、今日ノ状態ニ於テハ実ニ已ムヲ得ヌ次第カト考ヘルノデゴザムマス《(イ)》、詰リ今日ノ状態ハ生産者ト消費者ノ間ニ於テ生産者カラ売ルトコロノ値段ト消費者ノ買フトコロノ値段トノ間ニ於テ頗ル懸隔ガ大ナルモノデアル、大体カラ申シマスレバ約五・六割位ハ其中ニ開キガアルノデゴザイマス、斯ノ如キ有様デアリマスルカラシテ是等ノ弊害ヲ矯メルト云フコトハ最モ必要ナコトヽ考ヘルノデゴザイマス、即チ是等ノ弊ヲ矯メルコトヲ主ト致シマ
 - 第56巻 p.471 -ページ画像 
シテ、今回御諮詢ニナツテ居リマスル法案ニ付イテハソレニ重キヲ置イテ制定ヲセラレタノデアリマス、是等ノ弊ヲ矯メムト致シマスルニハ、成ルベク魚類ヲ一個所ニ取纏メマシテ、サウシテ其販売取引組織ト云フモノヲ成ルベク完全ニ致シマシテ、一方ニ於テハ此中央市場トデモ申シマスルカ、其市場ノ外ニ小売市場ト云フモノヽ制ヲ設ケマシテ、都会ニ於テハ必要ナル場所ニ応ジマシテ多クノ小売市場ヲ設ケサセマシテ、ソコデハ此中央デ卸売ヲ受ケタ即チ仲買ノ位地ニ立ツ者ガ其小売市場ニ於キマシテ、直接ニ市民即チ消費者ニ低額デ且新鮮ナモノヲ販売ヲサセタイノデアリマス、デ、此ノ如ク致シマスレバ、即チ現在ニゴザイマストコロノ小売商人ト云フ者ノ手ヲ一ツ省クコトガ出来マスカラソレニ依ツテ消費者ノ方カラ申シマスレバ、廉価ナル魚ヲ購入スルコトガ出来ヤウト考ヘルノデゴザイマス、先ヅ消費者ノ方カラ言ヒマスレバ、此小売市場制度ト云フモノヲ設ケテ、サウシテ比較的廉価ナ魚ヲ供給サセタイノデゴザイマス、尚ホ其外ニ今日ノ魚市場ナルモノハ前申上ゲタヤウナ状態デ、個々別々ニ当業者ガ営業ヲシテ居ルト云フヤウナ有様デゴザイマスカラ、ソレノ設備ト云フモノハ固ヨリ極メテ不完全ナモノデアリマス、之ヲ衛生上カラ申シマスト、又食品ヲ取扱ウ場所トシテハ、総テ不完全ナモノト考ヘマスカラ、是等ノ設備ハ相当ニサスルコトニ致シマシテ、尚ホ又冷蔵庫デアルトカ、或ハ氷蔵庫ト云フヤウナモノモ設備致サセマシテ、必要ニ応ジマシテ貯蔵ヲサセテ、腐敗ナドノナイヤウニ完全ナル設備ヲ為サシメル様ニ致シタイト考ヘマス、ソウシテ此法律ニ基キマシテ、行政官庁ニ於テ適当ノ監督ヲ行フト云フコトニ致シタイノデゴザイマス、又魚市場ノ経営ニ就テハ或ハ会社デスル場合モゴザイマセウシ、又公共団体デスル場合モゴザイマセウガ、人民一般ニ食料品ヲ供給スルト云フ場所ニナリマスルカラシテ、ソレ等ノ雲要供給ノ関係、食料問題ニモ関係スルコトデアリマスカラシテ、市営モ宜ロシカロウ、或ハ公共団体デ之ヲ経営スルコトガ適当ナリトスル場合ニ於テハ、従来ノ施設ノ魚市場ガゴザイマスレバ、ソレニ対シテ廃止ヲ命ズルコトガ出来ルト云フヤウナコトニ致シタイノデゴザイマス、之ヲ要スルニ、現在ノ魚市場ハ只今申上ゲルヤウニ組織ノ上カラ申シマシテモ、又取引ノ上カラ申シマシテモ、又設備ノ上カラ申シマシテモ、極メテ不完全ナモノデゴザイマスカラ之ヲ改メル必要ガゴザイマスルシ、其上ニ生産上ノ上カラ言ヒマシテ又消費ノ関係カラ言ヒ、又食料ノ問題カラ致シマシテモ、今日ノ魚市場ト云フモノハ実質ニ於テモ亦タ形式ノ上ニ於テモ誠ニ不完全デアリマスカラシテ、ソレ等ヲ改メテ、健全ナル媒介機関、販売機関ト致シタイノガ此法律案ノ大体ノ趣意デゴザイマス、デ願クハ諸君ニ於テドウゾ十分ニ御審議アラレテ是非此目的ヲ達シタイノデアリマスルガ、尚ホ之ニ付テ詳細ノコトハ何レソレゾレ御質問モゴザイマセウシ、又委員会モ孰レ設ケラレルコトデゴザイマセウカラ、其時ニ於テ説明ヲ致シタイト存ジマス
○四十七番(星野錫君) チヨツト承リタイノデスガ、此案ノ魚市場ハ一地区一箇所一営業者ヲ原則トスル、即チ其一営業者トスルハドウ云フコトデアリマセウカ、一言伺ヒタウゴザイマス
 - 第56巻 p.472 -ページ画像 
○番外(道家水産局長) 一営業者トハドウ云フコトデアルカト云フ御質問デゴザイマシタカラ御答ヲ致シマス、此一営業者ト云フ意味ハ、本案ノ中ニ営業、市場トシテ営業シ得ル場合ガ凡ソ三ツゴザイマス、ソレハ公共団体、即チ市町村アタリガ建物ヲ建テマシテ、サウシテ魚類ノ依託販売ヲ受ケ、ソレヲ其市場デ売ルト云フコトマデ致シマスルノト、モウ一ツハ建物ヲ公共団体ガ建テマシテ、サウシテ其営業即チ地方ヨリ送リマシタトコロノ魚類ヲ受ケマシテソレヲ市場デ売ルノハ会社ガスルト云フモノデアリマス、ソレカラモウ一ツノ場合ハ建物モ其営業モ会社ガ致シマス、斯ウ云フ訳デ、詰リ売買取引ヲ営ム者ガ公共団体、若ハ会社ノ一ツノ者ガヤルト云フノガ一営業者ト云フ意味デアリマス
○二十九番(木村艮君) 此魚市場ト多少聯関シテ居ルカラ御尋ヲ致シマスノデスガ、魚類以外ニ鳥肉牛肉、若クハ各種ノ農産物、即チ蔬菜デアリマストカ、果物デアリマストカ云フヤウナモノモ亦同様ノ利ト害トガアリハセヌカト思フノデスガ、特ニ魚類市場ト云フコトガ規定セラレタノハ、何カ特別ニ理由ガアルノデゴザイマスカ、ソレヲ一ツ伺ヒタイト思ヒマス
○番外(道家水産局長) 唯今此魚市場ヲ特別ニシテ、之ニ類似ノ青物鳥獣肉ト云フヤウナモノヲ何故一ツニセヌカト云フ御尋ノヤウニ伺ヒマシタガ、是ハ能ク起ル問題デゴザイマス、ガ併シ之ヲ特ニ斯様ニ致シマシタノハ、第一ニハ其等ノモノトハ取引方法ガ余程習慣モ違ヒ、又性質モ余程違テ居リマス、故ニ之ヲ一ツニ纏メルト云フコトハ余程困難デアリマス、又夫々調査モシナケレバナラヌ、ソレ故ニ先ヅ目下急ニ迫ツテ居リマスルトコロノ此魚市場ト云フモノヲ調査ヲ遂ゲマシタカラ、之ヲ別ノ案ト致シマシタ、又斯ノ如キモノヲ別ニ致シマシタ例ハ、御承知デモゴザイマスガ家畜市場法ト云フモノガ既ニ出来テ居ルヤウナコトデアリマス、其等ノ意味ヲ以テ特ニ魚市場ト限ツタ次第デゴザイマス
○二十九番(木村艮君) 御説明ヲ承ハリマシテ益々疑ガ深クナツタ訳デアリマスガ、今御引合ニ出サレマシタ家畜市場ト魚市場トハ大抵誰ガ見マシテモ違ツテ居ルコトハ分ルノデアリマスガ、魚類獣肉及ビ蔬菜・果実ト云フヤウナ食料品デアルト云フ点カラ申シテモ、成程魚類ハ漁業者ガ捕ツテ来ルノデアル、野菜其他ハ百姓ガ拵ヘルノデアルト云フ点カラモ違フカモ知レマセヌガ、売買取引及ビ商習慣等ニ於テ余程違ツテ居ルト言ハレタノデアリマスガ、ドウカ一ツデモ二ツデモ宜ウゴザイマス、其違ツテ居ル点ヲ指摘シテ、サウシテ之ヲ別ニシナケレバナラヌト云フコトヲ御示シガ出来レバ願ヒタイノデアリマス ○中略
○番外(道家水産局長) 唯今ノ御尋ニ御答イタシマス、成程此野菜・鳥獣肉ト云フヤウナモノガ、魚類ト同ジク食料品タルコトハ是ハ無論ノコトデゴザイマス、併ナガラ是ハ先刻モ大体ノ説明ノ時分ニ申上ゲマシタ通リデ、此魚市場法ノ改正ヲスルコトハ、誠ニ必要且ツ緊急ニ迫ツテ居リマスル状態ト、又取引習慣ノ状況モ自ラ異ツテ居ル次第デゴザイマス、尚ホ此鳥獣肉等ニ於キマシテ必要ガアリマスレバ、其必要ニ応ジテ之ニ追加ト云フコトモ妨ガナイ次第デアリマセウト考ヘマ
 - 第56巻 p.473 -ページ画像 
ス、故ニ今日ハ此魚市場ナルモノヲ特ニ制定ヲ必要トシテ出シタ次第デゴザイマス
○三十九番(上埜安太郎君) チヨツト御尋イタシマスガ、此御渡シニナツテ居リマス規定ニ依ツテ見マスルト、此魚市場ハ「市町村其ノ他之ニ準ス」市町村其ノ他ト云フコトガ出テ居リマスガ、是ハ当局者ノ御考デハ成ルタケ市町村ニ主トシテヤラセル、市町村即チ公共団体ガヤラナケレバ其ノ他ノモノニヤラセルト云フ意味デアリマセウカ、如何デアリマセウ
○番外(道家水産局長) 唯今ノ御質問ニ御答ヲ致シマスルガ、此魚市場ノ経営ハ主トシテ公共団体ニヤラセルノデアルカドウカ、斯ウ云フ御質問ノヤウニ承ハリマシタ、固ヨリ此法文ノ趣旨カラ申シマスレバ其積リデゴザイマス、併ナガラ現在ハ沢山此魚市場ガゴザイマスカラシテ、ソレハ実際問題ニ譲ツテ然ルベキダラウト考ヘルノデアリマス
○三十九番(上埜安太郎君) 続イテ御尋ヲシタイ、唯今ノ御答ニ依ツテ見マスレバ、成ルタケ公共団体ニヤラセル、併シソレハ実際問題ニ依ツテト云フヤウナ御答デアリマスルガ、私共ノ考ニ依リマスルト云フト、魚市場ト云ヒマスレバ立派ナヤウデアリマスケレドモ、言葉ヲ換エテ見レバ矢張リ魚屋ノ営業デアリマスルガ、少シモ経験ノ無イトコロノ市町村アタリガ此事業ヲ致シマシテ相当ノ経営ガ出来ルデアリマセウカ、如何デゴザイマセウ、私共ハ余程是ハ至難ノコトノヤウニ思ヒマス ○中略
○番外(道家水産局長) 御答ヲ致シマス、大体ハ差支ハナイ営業ガ出来ルモノト考ヘテ居リマス、固ヨリ市町村ガ之ヲ始メルト云フコトニナリマスレバ、経験ノ無イト云フコトハ是ハ論ヲ俟タヌノデアリマスルガ、ソレハ適当ナル人ヲ入レ、是迄ノ業務ニ従事シタ者モ相当ニゴザイマスカラ、夫等ノ中デ適当ナ者ヲ選ビ、之ヲシテ業務ニ従事サセマスレバ、必ズ出来ナイコトデハナカラウト考ヘテ居ルノデゴザイマス
○四番(小橋一太君) 第一ニ此市場ノ意義、若クハ範囲ト云フコトニ付イテ伺ヒタウゴザイマス、本案デハ大体市場ノ設備ト業務トヲ二ツ併セテ、即チ形式ト実質ヲ二ツ併セテ市場ト云フ趣旨ニナツテ居ルヤウデアリマスルガ、多ク市場ハ聞クトコロニ依ルト欧羅巴ノ例等ニ依リマシテハ、場所ヲ主トシテ殊ニ食品市場ノ如キハ其場所ニ対スル取締ノ下ニ食品ノ販売自由ヲ布イテアリマスルケレドモ、其販売行為其モノハ多クハ市場ノ組織ノ中ニ入ツテ居ラナイヤウニ承知シテ居ルノデゴザイマス、ソレデ本案デハ市場ノ設備及ビ取引行為モ加ヘテ法律ヲ以テ律セラルヽト云フコトデゴザイマスルガ、欧米各国ノ市場トシテ取引行為マデモ一緒ノ組織ノ下ニ加ヘテ、サウシテ法律ヲ以テ之ヲ律スルト云フ実例ガアリマスカドウカ、ソレヲ一ツ伺ツテ見タイノデアリマス、ソレカラ取引行為ニマデモ法律ヲ以テ律スル必要ガ如何ナル点ニ於テ存スルカト云フコトヲ、ソレト伴フテ是ハ先刻説明モアリマシタガ尚詳細ニ伺ヒタイノデス、ソレカラ先刻モ木村君カラ御尋ネニナツタト思ヒマスルガ、単ニ魚ノミヲ取締ツテ、其他ノ青物或ハ鳥獣肉等ニ対スル所謂食品ノ主ナルモノヽ取締法ハ設ケナイカト云フ、
 - 第56巻 p.474 -ページ画像 
斯ウ云フ御尋ネガゴザイマシタガ、私モ其点ニ付イテ伺ヒタイト考ヘテ居ツタノデゴザイマスルガ、農商務省デ御調査ニナツタ府県令即チ二十七県ニ亘ルトコロノ府県令ニ依リマスト、其府県令ガ取締規程ヲ設ケテ居ルノハ僅カ三県ヲ除イテ後ノ二十四県ハ総テ食品市場ハ魚鳥獣青物等ノ取締ヲ致シテ居ルノデアリマス、ソレヲ特ニ此際魚市場ヲ引離シテ取締ラナケレバナラヌ必要ハ如何ナル点ニアルヤ、更ニソレヲ伺ヒタイト思ヒマス、ソレト現ニ神奈川或ハ兵庫ノ如キ、従来食品市場トシテ魚青物等総テノ必要ナル食品ガ此市場ノ下ニ於テ適当ニ販売サレテ、而モ其食品市場ノ所有者ハ四・五人ノ団体ニ依ツテ有ツテ居ル、サウ云フ食品市場トシテ円満ナル発達ヲシツヽアルトコロノモノニ対シテ、此魚市場法ヲ適用セラレタル場合ノ関係ハ如何ナル事ニナルノデアリマセウカ、ソレヲ一ツ伺ヒタイト思フノデアリマス
○番外(道家水産局長) 唯今御尋ネノ点ハ四点カト存ジマス、第一ノ点ハ取引マデ法律デ規定ヲシタ実例ガ欧羅巴ニアルカナイカ、斯ウ云フ御尋ネノヤウニ考ヘマス、成程欧米ニ於キマシテ法律デ取締ノミナラズ取引マデ規定ヲシタト云フ実例ハ余リ見当リマセヌ、ガ併ナガラ是ハ余程御考ヲ願ヒタイト思ヒマスルノハ、日本ノ魚ノ取引ノ方法ト欧米ニ於ケルトコロノ取引ノ方法トハ大分様子ガ異ツテ居リマス、ノミナラズ又此魚ニ重キヲ置イテ居ル状態ニ於テモ大分異ツテ居ラウカト思ヒマス、デ、又欧米ニ於キマシテノ取引ノ方法トシマシテ、悉ク完全ナモノハゴザイマスマイケレドモ、併シ御承知ノ通リ此取引上ノ徳義トカ、又ソレニ要スル制裁トカト云フヤウナモノモ自然日本ノ状態トハ異ツテ居ラウト考ヘマスルカラ、独リ設備ノミナラズ、取引ノ方ニ於テ現実ノ状態ハ実ニ秩序ヲ失ヒ、謂ハヾ紊乱シテ居ルヤウナ有様デアリマスカラ、是ハドウシテモ法律ヲ以テ制定スル必要ガアルノデゴザイマス、ソレカラ第二ノ法律ノ利用、是ハ何故法律デスルカ、詰リ言フト法律事項ハ何処ニアルカ、斯ウ云フ御尋ネノヤウニ考ヘマスガ、ソレハ御承知ノ通リ土地収用法デゴザイマスルトカ、或ハ場所ヲ一箇所ニ限ルトカ、其他此制裁上ニ付イテモ相当ナル規程ヲ設ケナケレバナラヌ訳デゴザイマス、又多数ノ当業者ガ寄ツテ居リマスルノヲ、之ヲ打ツテ一団トシテ其弊ヲ矯メヤウト云フコトニ於テハ、ドウシテモ法律ノ力ヲ大体ノ上ニ於テ要スルノデゴザイマス、ソレカラ第三ハ魚ノミヲ取締ツテ、外ノ即チ青物鳥獣類ハドウスルノカト云フコトノ御尋、是ハ先刻木村君デゴザイマシタカノ御尋ニ大体御答ヲシタ積リデゴザイマス、固ヨリ其他ノモノモ取締ヲシナイト云フ訳デハナイノデアリマス、是ハ取引ノ状態、現状ナリ、若クハ此物品ノ種類ナリニ依ツテ其取締ニ付イテ自然ト緩急ガアラウト考ヘマス、ソレデ各地方庁ノ中デ二十三県バカリハ取締規則ヲ出シテ居ルガ、其他ハ出シテ居ナイノダガ、ソレニ全体ヲ斯ウ云フ風ニ取締ヲスルノハドウ云フ訳カト云フ御尋デアリマシタ、是ハ取締ガ出来テ居ナイノガ甚ダ遺憾ダト考ヘルノデゴザイマス、固ヨリ是ハ唯取締ダケデゴザイマシテ、今度ノ法律案ノ趣旨ハ取締ノミナラズ、営業ノ組織取引ノ方法等モ是ハ改善シタイト云フ訳デゴザイマス、ソレカラ第四ニハ、神奈川県其他ニ於テ今市場ガアル、其市場ノ持主ハ数人デアツテ、サウシテ営業
 - 第56巻 p.475 -ページ画像 
シテ居ル者ハ又数人アツテ、其処デハ青物魚鳥類共ニヤツテ居ル、ソコラノ処分ハドウスルカ、是等ハ実際ノ問題ト致シマシテハ、建物ハ建物、市町村ガ之ヲ大体スルカドウカ、又会社デ之ヲ経営スルカト云フヤウナ問題ニ依ツテ、夫等ノ事ハ決セラレヤウト考ヘルノデゴザイマス、大体サウ云フ御質問ト考ヘマスル、尚外ニ何カ御尋ガゴザイマシタカ
○七十五番(小山健三君) 御面倒デゴザイマスガ大体ノコトニ付テ伺ヒタイト思ヒマス、魚市場ノ大市場ノコトガ書イテアリマスガ、ドノ辺ノ程度マデ行キマスカ、御調ベニ依リマスルト東京ガ二千万円ノ取扱ヒ、大阪ガ二千万円、跡ハ大分数額ガ減ジテ参ル、此二千万円ト云フ市場ハ余程利害関係ガ大キイヤウデゴザイマスガ、此法律ニ於テ従来二百万三百万位ノモノガ余程……ノコトヽ存ジマス、段々伺ヒマスルト生産者ノ利益ヲ欲セラルヽト云フヤウニモ聞エマス、又一面カラ申シマスト消費者ノ方ノ便宜ヲ図ル、生活費モ幾ラカ減ジヤウ、安イ魚ヲ市民ニ食ハセヤウト云フ方ノ御趣意モ大分アルヤウデ、生活問題ニ余程関係アルヤウニ思フ、又大分衛生問題ガ這入ツテ居ルヤウデアリマス、其衛生問題モ、警察規則ニ依リ孰レノ所デモ腐ツタ魚ハ売ルコトハナラヌト云ツテ相当取締モ附イテ居ルヤウニ考ヘラレマス、ソコデ此法律、御規定ノ御趣意ヲ段々拝察致シマスルト、市町村ガ市場ヲ持ツカ、若クハ市町村ガ持タヌ場合ニハ株式会社ガ持ツト云フコトニナツテ居リマスヤウデ、トコロガ市町村ガ持ツト云フコトハ困難ナコトデ、従来ノコトカラ比較シマシテモ容易ニ行ハレナイコトヽ考ヘル、殊ニ一般ノ消費者ガ此市場ニ買ヒニ行ツテ――サウシテ笊ヲ提ゲテ行キマシテ、サウシテ魚ヲ買フテ行ク、サウシテ各々用ヰルト云フコトニナレバ、随分市町村ガヤルト云フノハ余程適切ニナツテ参リマスガ、今ノ市場ノ御規定ニナリマシタトコロデモヤハリ問屋ガ塊ツテヤハリ問屋営業ノ大キナモノガ出来ルト云フ有様ニ見エル、サウスルト市内ノ各町ノ魚屋ハ、ヤハリ買出シニ行ツテ方々駈ケ歩イテ売ツテ廻ハルト云フヤウナ有様デ、従来ノ分配ノトコロト余リ著シイ変化ガナイヤウデ、ソコヘ持ツテ行ツテ株式会社ト云フモノガ販売スルト云フコトニナルト、其株式会社ナルモノハ必ズ営利的ノモノデアリマスカラ、株式会社其モノヽ利益ヲ欲スルト云フコトモ必ズ一面ニ生ジテ来ルコトハ免レヌコトデアルト思ヒマス、サウスルト如何デアリマセウカ、ソレ等ノ株式会社ニ配当サレル利益ト云フモノハ、ヤハリ消費者ノ方ニ転嫁サレルト云フコトニナリハシナイカ、サウシマスルト生活費ヲ安クスルト云フコトハ却テ転ジテ高イモノヲ一般ノ消費者ニ食ハセルト云フ結果ガ生シテ来ハシナイカ、現在ノ此株式取引所ナドノ状態ヲ見マスルト、有価証券ノ公定ノ取引ト云フコトハ必ズ利益ノアルコトニ相違ナイガ、其一般ノ有価証券ノ取引売買スルト云フコトハ所謂取引所其モノヽ株ノ売買ガ過半ヲ占メテ居ルト云フコトガ事実デアリマス、又弊害モソコニアルダラウ、或ハ市場ノ株式会社ガ一転シテ却テ弊害ノ源ニナツテ、取引ノ目的物ニナルト云フヤウナ虞レハナイデアリマセウカ、随分将来ノ経済状態ノ上ニ非常ナ影響ヲ与ヘハシナイカト思ヒマス、其辺ノトコロノ御見込ヲ一応伺ヒタイ
 - 第56巻 p.476 -ページ画像 
○番外(道家水産局長) 只今ノ御尋ニ御答致シマスニ先立チマシテ、御趣意ガ能クチヨツト了解シ兼マシタガ、先ヅ大体自分ガ斯ウデアラウト思フ点ニ付テ御答ヲ致シタイト思ヒマス、尚ホ遺漏ガゴザイマスレバ御尋ヲ願ヒタイ、是ハ大都会ノ市場ニ先ヅ適用シタイト云フ考ヘナノデゴザイマス、ソレデ其程度ハ何処デアルカト云フ御尋ノヤウニ承リマシタガ、先ヅ只今ノ見込デハ、大体百万円以上取引ノアル市場ニ適用シタイ、又或ハ必要ニ依リマシテ其程度ヲ少シ下ゲテモ宜イカモ知レヌガ、大体サウ云フ考ヘデゴザイマス、ソレハ約二十箇所モゴザイマセウ、ソレカラ生産者ト消費者トノ双方ノ利益ヲ図ルヤウニ出来テ居ルガ、主トシテ生産者ヲ保護スルヤウニ見ヘル、斯ウ云フ御尋デアルヤウデゴザイマス、成程先刻モ申上ゲマシタ通リニ、無論其生産者ヲ即チ漁業者ガ得タトコロノモノ、即チ之ガ汗水滴ラシテ得タトコロノモノニ対シテ相当ナル利益ヲ与ヘサセタイト云フノガ趣意デアリマス、只今ノ此魚市場ノ状態ト致シマシテハソレガ十分ニ発揮セラレテ居ラヌヤウデゴザイマスカラ、無論此生産者ヲ保護スル趣意ニ相違ナイ、併シナガラ、又一面ニ此生産者バカリヲ保護スルト云フコトニナレバ、結局又消費者ハ大変高イモノヲ買ハナケレバナラヌト云フコトニモナリマスカラ、即チ其調和ヲ取ルニハ、ドウシテモ魚市場ト云フ市場ノ組織、並ニ取引如何ト云フコトニ最モ重大ナル関係アル次第デアリマス
デアリマスカラ、此法律案ト致シマシテハ其点ニ付重キヲ措イテ、取引組織ト云フモノヲ成ルベク完全ニ致シタイ、サウシテ又一面ニ於キマシテハ、現在ノ魚ノ販売ノ状態ト言ヒマスルノハ、皆サマ能ク御承知デモゴザイマセウガ、小売商人之ガ大体ハ仲買カラ魚ヲ買ヒマシテソレヲマア銘々ニ売ツテ歩ルク、或ハ又市中ニ店舗ヲ設ケテソレヘ皆買ヒニ行ク、ト云フノガ皆小売人デアリマス、此小売人ト云フモノヲ省クコトガ出来ルカ、若クハ此今日ノ状態ニ於テ仲買ト云フモノノヲ省クコトガ出来ルカ、之ヲ省クコトガ一段デモ出来マスレバ、必ズ其間ニ於テ魚ハ安クナル訳ト考ヘルノデアリマス、所ガ此仲買ト云フモノヲ第一ニ廃スルト云フコトハ、中々従来ノ習慣上、又魚類ナドト云フ腐敗シ易イ物ニシテ、迅速ノ処分ヲ要スルモノ故ニ、ドウモ已ムヲ得ヌ中間機関ダト思フノデアリマス、然ラバ此小売人ヲ全然廃メルコトガ出来ルカト申シマスト、是亦中々実際ニ於テ困難ダト思ヒマス、ソレハ従来ノ習慣モゴザイマスシ、皆得意先ヲ小売人ガ廻ルノデアリマス、ソレヲ欧米ノヤウニ買ヒニ往クトカ云フヤウナ― 銘々ノ家デ市場ニ買ヒニ往クト云フコトハ中々実際ムヅカシイ、然ラバ此二ツノ中間機関ヲ省クコトハ出来ナイ、困ツタコトデアリマカラ、ソレ故ニ其調和ヲ図ル為ニ大都会ニ於キマシテハ、成ルベク多数ノ小売市場ト云フモノヲ設ケサセル、ソレハ総テ中央市場ノ一ノ設備トシテ義務トシテヤラセル積リデゴザイマス、其場所ハ適当ナル場所、必要ナル場所ニ応ジテ数十箇所設ケル、例ヘバ東京ニ在ツテハ一区ニ三ツ、或ハ四ツ、或ハ附設スル所モゴザイマセウガ、サウ云フ風ニ個々ニ設ケサシテ、其所ヘ中央デ卸売ヲ受ケタ即チ仲買ノ位置ニ立ツ者ガ、小売市場ノ附属人トナツテ、其所デ仲買人ノ競落シタ値段ニ幾分カノ利益ヲ
 - 第56巻 p.477 -ページ画像 
見テ、サウシテ其所デ売ル、是ハマア今度ノ考デハ競売デヤラセル積リデゴザイマスカラ、自ヅト其価モ公正ナル価ガ出ル訳デアリマス、ソレニ依ツテ大概卸売幾ラニナツタト云フコトガ分リマスカラ、ソレニ幾ラ値段ヲ掛ケテ、サウシテ此小売市場ニ売ラセル、市民ガ勝手ニ其所ヘ往ツテ買ヘルト云フ便利ヲ図リマシタナラバ、一面ニ於テハ直接ニ一方ノ中間機関ヲ省イテ、又其結果ト致シマシテ従来ノ小売人ト云フモノガ高ク売ツテ居ルヤウナコトハ自ヅト制セラルヽコトガ出来ヤウト考ヘルノデアリマス、ソレカラ之ヲ株式会社ニシタナラバ、其利益ガアツテ其株式ノ売買ヲ主トスルヤウニナリアシナイカ、斯ウ云フ御尋ノヤウデゴザイマガス、是ハ大体ニ於キマシテ、株式会社ニ致シマシテモ、其手数料ト云フヤウナモノハ、無論是ハ監督官庁ニ於テハ相当ノ取締ヲシテ、多額ノ手数料ハ取ラセナイヤウニ致シタイノデアリマス、従ツテ此会社ノ利益ト云フモノモ格段ナル利益ヲ得サセナイヤウニスルコトガ出来ヤウト考ヘルノデアリマス、併ナガラ此会社ノ株式ガ出来マスカラ、ソレノ売買ノ起ルコトハソレハドウモ已ムヲ得ヌコトカト考ヘルノデアリマス
○中略
○五十六番(小寺謙吉君) チヨツト御尋ネシマスガ、此魚市場ノ設備ニ必要ナル水面デアリマス、此ノ水面ノ中ニハ生洲ハ当然入ルノデアリマスカ、是ダケハ全ク別物デアリマスカ
○中略
○番外(道家水産局長) 唯今ノ御尋ハ水面ト云フコトニ生洲ガ入ルカドウカト云フコトデアリマスガ、ソレハ場合ニ依リマスノデゴザイマスガ、併シ此法律ノ趣意デゴザイマスレバ、土地ナリ、水面ナリヲ収用ガ出来マスルカラシテ、ソレハ実地問題トシテドチラノ中ニシマシテモ、収用法ヲ適用シテ目的ヲ達セラレル積リデゴザイマス
○中略
○六十六番(志村源太郎君) 私モチヨツト御尋シタイト考ヘマス ○中略 若シ生産者ガ高ク委託販売ヲ要求致シマシタトキニハ、如何ナル御取締ノ方法ガアリマスルノデアリマスカ、又若シ、廉価ナル委託売買者ガアリマシテモ、此魚市場ガ其委託販売ヲ取扱ハヌト致シマシタ場合ニ於テハ、強イテ之ヲ取扱ハセヤウ、即チ一方ニ高イモノヲ始終取扱ハシテ居ツテ、安イモノガ其委託販売ヲ申込ンダ場合ニソレヲ拒絶スルコトノナイヤウニスルニハ、如何ナル取締ノ途ガ立ツカ、尚ホ一応言ヒマスレバ、高イ値段ヲ以テ委託販売ヲ申込ミマシタ時分ニハ、仮令手数料ヲ御制限ナスツテモ、消費者ナドニハ高ク当リマスガ、其強イテ高イ値段ヲ申込コトガ許サナイト云フ御取締ニナツテ居ルノデアリマスカ ○中略 其場合ニ於キマシテ消費者ノ利益ヲ図ルタメニ如何ナル監督ノ方法ヲ御用ヰニナツテ、強イテ高イ値段ヲ以テ販売ヲサセナイノデアリマスカ、又ソレトモウ一ツハ朝鮮ナリ、九州・四国ナリ、其辺ノ安イ生産者カラ低価ヲ以テ売出スト云フ場合ニ於キマシテ、此東京ナラ東京ノ魚市場ガ其取扱ヒヲ拒絶シナイト云フコトハ、斯ウ云フ取締ノ途ガアルカ、其二点ヲ伺ヒタイ
○番外(道家水産局長) 御答致シマス、此魚市場ノ取扱ヒマスル手数
 - 第56巻 p.478 -ページ画像 
料ニ対シマシテハ、大体制限スル積リデゴザイマス、ソレカラ生産者即チ荷主ノ側カラシテ高イ値段デ売レト云フタ場合ニハドウスルカト云フ御尋ノヤウデゴザイマスガ、是ハ先刻来モ申上ゲマシタ通リニ、是ハ委託販売ヲサセル積リデアリマスカラ、サウシテ此市場ニ於キマシテハ大体ハ競リ売ヲ原則ト致シマスルノデアリマス故ニ、高イ指値デ申シテ参リマシテ、競争サセテ、其値ニ達シナケレバ売ルコトガ出来ナイト思ヒマス、指値ニ達シナカツタナラバ是ハモウ受託者ノ方ノ責任ハソコデ済ムノデアリマス、売ラナイダケデアラウト思ヒマス、併シナガラ魚類ノコトデアリマスカラ、成ルタケ之ニ対シテハ鄭寧ニ取扱ハネバナラヌカラシテ、サウ云フ場合ニハ保管ヲ致シマスルタメニ、或ハ冷蔵庫ナリ氷蔵庫ナリヲ設ケサセテ、ソレニ暫ク入レテ置クト云フコトニシテ、或ハ荷主ノ方トノ相談ヲ致シマシテ、安イ値デモ宜イト云フコトニナルナラバ売ツテヤルト、斯ウ云フコトニナラウト考ヘマス、ソレカラモウ一点ハ能ク伺ヒ得ナカツタノデアリマスガ
○中略
○一番(佐藤昌介君) 一ツ御尋ヲ致シテ置キタウゴザイマス、魚市場ガ設定ニナリマスルト致シマスト、若シ事情ガ許シマスレバ、漁港ノ設備ガ之ニ伴ヒマシテ、生産業者モ伴ツテ殊ニ便宜ヲ感ズルコヽト思ヒマス、年来御調査ニナツテ居リマスル遠洋漁業者等ニ取リマシテハ若シ漁港ノ設備ガゴザイマスレバ、漁獲ヲ致シマシタ鮮魚ノ水揚等其他幾多ノ便宜ヲ得マスル次第デゴザイマス、大市場ニ御適用ニナル目的デゴザイマスル以上ハ、左様ナ漁港ノ設備ヲナサルヤウナ目的デアラウト思ヒマスガ、将来漁港ニ関スル何等カ御計画ガゴザイマスカ如何デゴザイマスカ、一応伺ツテ置キタイト思ヒマス
○番外(道家水産局長) 唯今ノ御尋ハ漁港ニ付イテノ何カ計画ガアルカナイカト云フ御尋ノヤウニ承リマシタ、是ハ漁業発達ノ上カラ申シマシテ、殊ニ今日ノ遠洋漁業ヲ奨励致シテ居リマスル上カラ申シマスレバ最モ必要ナコトデゴザイマシテ、是ガ我国ニ於テハ欠ケテ居ル一大欠点ダト考ヘテ居リマス、之ニ付キマシテハ二・三年前カラシテ其漁港ヲ是非ヤラナケレバナラヌト云フ考デ、全国ノ漁港ニ適スベキ場所並ニ其計画等ハ調査ヲ致シテ居リマス、デ唯今ノトコロデハ其調査即チ踏査デゴザイマス、大体ノ調ガ略ボ出来マシタノデゴザイマスカラ、是カラ愈々其実行ノ方法ヲ如何ニシテヤルカト云フコトノ計画ヲ定メタイ考デ、目下ソレハ取調ベテ居リマス、是ハ誠ニ漁業トシマシテハ必要ナルコトデゴザイマシテ、現ニ各地方ニ於テモ此漁船ノ大キクナリ、発達致シマスル上カラシテ是非是ハヤラナケレバナラヌ、是ガナイガタメニ甚ダ不便ヲ感ズルノミナラズ、折角造ツタ船モ或ハ暴風雨ノタメニ破壊ヲシ、人命ヲ損フノミナラズ十分ニ遠洋的漁業ノ発達スルコトガ出来ナイト云フコトヲ、実際ニ於テ各地方ノ之ニ従事スル者ガ感ジテ居リマス、既ニ地方ニ於キマシテハ種々計画ヲ致シテ、現ニ其計画ニ着手シテ居ル所モ段々ゴザイマス、是等ノ点ニ付テハ無論是カラ調査致シマシテ其方針ハ定メラレルコトヽ考ヘマス
○六十一番(根津嘉一郎君) 本案ニ付キマシテ大体質問モ尽キタト認メマスカラ、委員ニ付託セラレムコトヲ希望致シマス、而シテ委員ノ
 - 第56巻 p.479 -ページ画像 
数及ビ指名ハ議長ニ一任致シマス
  〔「賛成々々」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵牧野伸顕君) 委員付託ニ御賛成デスカ
  〔「賛成々々」「異議ナシ異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵牧野伸顕君) ソレデハ委員付託ニ決シマス、員数ハ十五名トシテ今御姓名ヲ朗読致シマスカラ、ドウゾ御引受ケ下サルヤウニ願ヒマス
○番外(織田幹事) 特別委員ノ姓名ヲ読上ゲマス
                  男爵 渋沢栄一君
                  男爵 田健治郎君
                     田中芳男君
                     牧朴真君
                     早速整爾君
                     日高栄三郎君
                     岡崎邦輔君
                     田川大吉郎君
                     小橋一太君
                法学博士 佐野善作君
                法学博士 松崎蔵之助君
                     松山忠二郎君
                     豊川良平君
                     中野武営君
                     片岡直温君


生産調査会録事(第三回)《(第四回)》 第一六五―一七九頁 大正元年一一月刊(DK560119k-0003)
第56巻 p.479-485 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第四回)》  第一六五―一七九頁 大正元年一一月刊
    大正元年九月二十五日(水曜日)午後二時二十分開議
○上略
○五十四番(山本悌二郎君) 私ハ此処ニ一ノ建議案ヲ提出致シタイノデゴザイマシテ、既ニ規定以上ノ賛成者モゴザイマスノデスガ、唯書類ノ手続ガ間ニ合ヒマセヌノデ、本議場ニ於テ建議案ヲ朗読致シマシテ、同時ニ簡単ニ其説明ヲ致シタイト思ヒマスノデ、如何デゴザイマセウカ
○議長(男爵牧野伸顕君) 唯今御聴キノ通リ、五十四番ヨリ建議ガ致シタイ、其書類ガ間ニ合ハヌカラ此席デ朗読シテ直ニ説明ガシタイト云フコトデアリマスガ、御異議ガナケレバ許シテ宜カラウカト考ヘマスガドウデセウ、御諮リ致シマス
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○五十四番(山本悌二郎君) ソレデハチヨツト朗読致シマス
    生産調査会ニ関スル建議案
 帝国経済上ノ発達ハ、之ヲ他ノ制度ニ比シ、又更ニ進テ他ノ強大国ニ比シテ大ニ後レタルモノアルハ、果シテ何等ノ原因ニ帰スヘキヤ法規備ハラザルニアラズ、制度欠ケタルニアラズ、要ハ国民ノ努力発奮ニ足ラサル所アルハ勿論ナリト雖モ、亦施政ノ方針上、産業ニ重キヲ置クニ於テ遺憾ノ点アルノミナラズ、各行政官衙ノ間、動モ
 - 第56巻 p.480 -ページ画像 
スレハ統一ヲ失シ、甚シキハ民業ノ発達ヲ阻害スルノ場合アルニ職由ス、苟モ此等ノ病根ニシテ一掃セラレザル限リ真正ナル産業ノ発達、生産ノ増殖ハ決シテ望ムヘカラス、此大目的ヲ達センカ為メニハ宜シク全力ヲ殖産興業ニ傾注スヘキハ勿論、独リ産業行政ノミナラズ汎ク内政・外交・軍事・教育・交通・財政就中税制幣制ニ渉リ刷新ヲ加フヘキモノ殆ド枚挙ニ遑ナカラントス、随テ其方策ノ攻究ハ各省所管ノ事務ニ関聯シ、単ニ一省一官衙ノミニ限ルヘキニアラス、仍テ希クハ産業政策一新ノ第一着手トシテ、生産調査会ニ於ケル調査ノ範囲ヲ拡張シ、同時ニ調査会ヲシテ継続的常置機関タラシメ、以テ調査ノ周到ト産業行政上ノ統一トヲ期シ、併セテ国家カ重キヲ産業ニ置クノ決意ヲ明ニセラレンコトヲ
 右建議ス
  大正元年九月二十五日
                提出者    山本悌二郎
                賛成者    益田孝
                同      大岡育造
                同   男爵 渋沢栄一
                同 法学博士 添田寿一
                同      野崎広太
                同   男爵 近藤廉平
                同      佐竹作太郎
                同      小寺謙吉
                同      志村源太郎
                同      大野亀三郎
是ハ簡単ニ申シマスルト、此末ニ申シマスルトコロノ調査会ヲ継続的ニシテ調査ヲ継続サセルコトニスルト云フコト、ソレカラ調査ノ範囲ヲ拡メタイ、斯ウ云フコトノ二ツノ点ニ帰着致シマスル、此調査ノ範囲ト云フコトニ付イテハ、昨日モ問題ガアリマシタガ、内地ノミナラズ帝国全体ニ渉ツテ調査ヲスルト云フコトガ必要デアラウト思ハレマス、是ハ地域ノ上カラ申シマスルト左様ニナリマスルシ、又其内容ノ上カラ申シマスルト、独リ狭キ意味ニ於ケルトコロノ産業デナクシテ其産業ニ関聯スルトコロノ各種ノ唯今此建議案ノ中ニモ申述テアリマスルトコロノ、交通、財政、税制等ニモ関聯シナケレバナラナイ事柄ガ起ツテ来マスカラシテ、ソレデ内容ニ於キマシテモ、亦其地域ニ於キマシテモ、調査会ニ於テ調査スルトコロノ範囲ヲ拡メルヤウニ致シタイ、ソレカラ第二ノ点ハ継続的ノ調査ト云フ意味ハ、兎角今迄ノ経過ニ徴シテ見マスルト云フト、一年ニ一度位開会サレテ、其期間ト云フモノガ而モ僅五日トカ、或ハ一週間ト云フ短時日デアリマスノデ、是ダケノ歴々ノ御顔触ヲ揃ヘテ居リナガラ、十分ニ国家ノ産業ノ為ニ審議ヲ尽ストコロノ暇ガナイ、是ハ甚ダ折角此機関ヲ設ケテ置キナガラ遺憾千万ナコトダト考ヘマスノデ、此調査ト云フモノヲズツト継続シテヤリマスルコトニナリマスレバ、各種ノ重要ナ問題モ其調査ニ重キヲ置クコトニナリマシテ、結果ハ官民ノ間ニ重大ナル産業上ノ問題ニ付イテノ意思ノ疏通ヲ完カラシメル上ニ付イテモ、非常ナル効果ガ
 - 第56巻 p.481 -ページ画像 
アラウカト考ヘマス、斯様ナ次第デ此建議案ヲ提出致シタ訳デゴザイマス、ドウゾ御審議ノ上御賛同アランコトヲ希望致シマス
○五番(田川大吉郎君) 今ノ山本君ニ御尋シマスガ、生産調査会ノ現在ノ性質ハ諮問機関トナツテ居リマス、其諮問機関ト云フ性質ニ何等カノ変更ヲ加ヘヤウト云フ御趣意デアリマスカドウカ
○五十四番(山本悌二郎君) 諮問ノ機関デナクシテ、寧ロ進ンデ自働的ニ調査ヲスル機関ニスレバ尚ホ更ラ私ノ建議ノ目的ハ達セラルヽノデアリマスガ、左様ニシテ然ルベキデアルカ、或ハ現在ノ儘ニシテ、調査ト云フ設備ハ其組織カ例ヘバ建議等ノ形式ニ依テ致シテ宜シイカソレ等ハ孰レ委員会ニテモ付託サレルヤウナコトガアリマスレバ、其際ニ於テ御審議ヲ願ツテ宜シカラウト思ヒマス、私ニ於テハ何方ラト云フ決定シタ意思ハ持ツテ居リマセヌ
○十六番(大岡育造君) 私ハ今ノ建議ニ賛成ノ意ヲ表シタイト思ヒマス、実ハ此生産調査会モ昨年ハ御都合ニ依ツテ一回ノ開会ヲ見ルコトモ得ナカツタノハ甚ダ遺憾ニ存ジテ居リマシタトコロデアリマス、幸ヒニシテ当局大臣御熱心此会ヲ御開キニナツテ、此会ニ重キ望ミヲ嘱セラルヽ意味モ会長ノ御演説ニ拝聴シ、尚昨日ハ総理大臣ノ親シク此席ニ臨マレテノ御演説モ傾聴致シマシタ、洵ニ本懐ノ至リニ堪ヘヌ次第デアリマス、只今ノ建議ノ趣意ノ朗読ヲ承リマシテ、略其要領ハ尽サレテ居ルヤウデアリマスガ、如何ニモ同感ノ至リニ堪ヘヌ次第デアリマスカラ、政府ニ於テモ鋭意行政財政ノ整理ニ御努メニナリ、此国家ノ発展ノタメニ貢献セントセラルヽコトニ付キマシテハ、国民ノ挙ゲテ感謝スルトコロト信ジテ居リマス、行政ノ整理財政ノ整理誠ニ大切ナコトデアリマスガ、尚ホ当面ノ事務ノ処理タルコトヲ免レマセヌ永久ニ亘ツテ国家ノ基本ヲ培養スルト云フコトニ至リマシテハ、別ニ又方法手段ヲ講ゼラレナケレバナラヌコトハ、今度ノ諮問案ニ於テ工業ノ発展ノ助長ニ関スル方法手段ヲ御尋ニナツタ意味ニ於テモ私ノ了解スルトコロデアリマス、然ルニ斯ル重大ナル問題ヲ御諮リニナリナガラ、会期ハ僅ニ五日間、如何ニモ今日ノ天下ノ名士ガ玆ニ御集リニナツテ居リマスカラ、其賢明ハ如何ナル問題モ直ニ決セラルベキ程ノ信用ヲ置カレテアリマスルト云フコトハ信ジテ居リマスケレドモ、事実ハ又左様ニ速カニ決セラルヽモノトモ思ハレマセヌ、単ニ此一問題ヲ決スルニモ五日間ト云フ時間ハ如何ニモ短キニ失スルノ感ハ誰ニモ実ハアラウカト考ヘマス、見渡ストコロ孰レモ緊急ナル要務ヲ帯ビテ居ラルヽ諸君ニシテ、此ノ如ク御欠席ナク此席ニ御努メニナルトコロヲ以テ見レバ、国家生産ノ発達ニ御熱心ナルコトモ見得ラレルノデアリマス、会長ニ於カレテ此審査ノ期限ヲ十五日トカ若クハ二十日トカ云フ位ニ御延ベニナルナラバ、或ハ今ノ建議ハモウ少シ熟考シテ貰ツテモ宜イカモ知レマセヌガ、唯ダ工業ノ振作助長ノミデモ足リマスマイト思ヒマス、各般ノコトニ付テ有ユル智識ヲ集メナガラ、之ヲ国家ニ貢献スル途ヲ開クニハ尚ホ足ラザルトコロガアリマス、或ハ常設トスルト云フコトニ付テハ多少ノ反対モアルカモ知レヌ、今此生産調査会ノ規則ヲ見マスルノニ敢テ会期ニ制限等モ付シテナイヤウデアリマス、之ヲ半継続的ニ総員残ラズガ遠方カラ御出勤ニナツテ居ル御方モ
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アリマセウカラ一々ノ御勤メハ御迷惑ノ御方モアラウト考ヘマス、常設ノ――半常設ノ委員ヲ置クトカ、或ル方法手段ヲ講ジテ今少シ生産調査会ヲシテ国家ニ貢献スルコトノ大ナラシムルヤウナ方法ヲ講ジテ見タイト云フ意思ハ熱心ニ持ツテ居ルノデアリマス、只今ノ案ヲ相当御質問ノ末ニ委員ニ付託シテ、諸君ノ御熱心御一定ノ報道ヲドウカシテ程能ク議題ニシテ、又農商務省モ現ニ執務ノ事項ガ多イコトデアリマスカラ、此執務ニハ余リニ妨ゲヲ為サヌ程度ニ於テ双方程ノ宜イ方法手段ヲ研究スルタメニ此案ヲ採用シテ、先ヅ委員ニ付託サレルヤウナコトニナリタイト云フ意味ヲ以テ賛成ノ意ヲ表シテ置キマス
○二十九番(木村艮君) ○中略
○五十四番(山本悌二郎君) 私ハチヨツト私ノ建議案ニ補足ヲ致シマスガ、単リ此会期ハ従来ノ慣例上短クシテ審議スル暇ガナイト云フノミナラズ、第一是ハ当局者ノ手心上ノコトカモ知レマセヌケレドモ、本年ノ召集ノ時期ノ如キハ少シ遅レテ居リハセヌカト思フ考ガアルノデ、斯様ナ工業助長ナドノ問題ニナリマスルト云フト、事ニ由リマスルト云フト国庫ノ経費ニ関聯シタ問題ガ起ラヌトモ限ラヌノデ、若シサウデアリマスレバ、予算ト云フモノニ直ニ影響ヲ及ボシマス、少ナクトモ予算編制ニ先チ或期間ニ於テ其以前ニ御諮問ニナリ開会ヲナサルト云フコトガ適当デアツタラウト考ヘラレル、左様ニ考ヘテ見マスルト云フト、本会ノ開期ノ如キハ少シク遅レテ居リハセヌカト云フ考ヲ私共ハ有ツテ居リマス、デ之ヲソレハ併シ当局者ノ考ヘ次第デドツチニデモナルヂヤナイカト仰シヤルカモ知レマセヌケレドモ、当局ガ之ヲ極言シテ見マスレバ、生産調査ト云フモノニ余リ重キヲ置イテ居ラレルカドウカト云フコトノ結局疑ヲ懐クコトニ私共ナツテ来ハセヌカ……(「ヒヤヒヤ」ト呼ブ者アリ)左様ナ次第デゴザイマスカラ、詰リ此生産調査会ト云フモノヲ折角斯様ニ組織ニナリ、斯様ナ顔触ヲ揃ヘテ居リマスル以上ハ、モウ少シ之ヲ利用シ活用ヲスルト云フコトニシタイ、斯ウ云フノデアリマス、其方法ハ如何ニスベキヤト言ヘバ詰リ調査ノ範囲ノ広イ、ソレカラ同時ニ此継続調査ヲスルト云フコト其継続調査ト云フコトハ、即チ此諮問モ農商務省ガ度々セラレ、又会員カラモ建議案ヲ沢山出シテ貰ツテ、サウシテ必要ガアレバ特別委員ヲ其問題毎ニ設ケテ、絶エズ此大イナル問題ニ付イテ研究ヲシテ見タイ、斯ウ云フ精神デアリマシテ、唯今二十九番カラ御話ノ所ニ依リマスルト、是デ十分デアルト云フ意味ノヤウデゴザイマスケレドモ、私ハ之ヲ以テ十分トハ考ヘテ居リマセヌ、詰リ其見方次第ノ是ハ問題ダラウカト思ヒマス
○二十九番(木村艮君) 私ノ意味ヲ山本サンハ少シ誤解シテ居ラレルヤウデアリマス、私ハ今日ノ生産調査会ノ現状ニ満足イタシテ居ルノデハナイノデアリマス、唯ダ今御建議ノヤウナコトハ別ニ角立テヽ建議シナクテモ宜イト云フダケデアリマス、ソレハソンナラドウスルカト云ヘバ、従来此会議ト云フモノハ時々切レ又続クト云フ風ニナツテ居リマスケレドモ、委員ヲ置カレマシタ以上ハ必ズ連続的ニヤツテ居ルノデアリマス、ソレデ今山本サンノ御希望ニ依リマスレバ何カ玆ニ重要ナル問題ガアレバ是ハ必ズシモ諮問ニ限ラヌト思フノデアリマス
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建議案ヲ提出サレテソレガ継続的ニ研究ノ必要ガアルト云フコトナラバ其問題ハ矢張リ継続シテ参リマス、決シテ此儘デ宜イト云フ訳デハアリマセヌ、特ニサウ云フ風ニスルト云フヨリハ兎ニ角今マデヤリ来リツヽアリマスノガ問題ニ依ツテ継続シ得ラレル先例ガアル限リ、態態常設ニシナクテモ、半常設的ニ出来テ居ルノデアリマス、ソレデ特別ニ建議ノ要ガアリマスマイト云フコトヲ申述ベマシタノデアリマス
○三十番(片岡直温君) 唯今ノ建議ノ御趣旨ハ承ツタヾケデ詳細ヲ拝見シマセヌカラ、間違ヒガアルカモ知レマセヌガ、大体ニ於テハ機宜ニ適シタ必要ナル事柄デアルニ相違ゴザイマセヌト存ジマス、併ナガラ事極メテ広汎ニ渉ルコトデアリマシテ、漠然ト玆ニ継続委員ヲ拵ヘテ調ベテ往クト云フガ如キコトモ、言葉ニハ易イコトデアリマスガ、実際ニ於テハ中々其纏メ方ガ困難ノモノデアラウト考ヘルノデアリマス、且ツ其結局スルトコロ、総テ行政上ノ事柄デ、新タニ設ケ、或ハ既住ノ事柄ノ修正改良スルト云フコトニ渉ルコトヽ考ヘマス、而シテ現在ノ内閣即チ政府ハ、制度調査ヲシテ大イニ改良ヲスルト云フコトヲ標榜サレテ居ルノデアリマス、其行政整理ト云ヒ税制整理ト云フトコロノ中ニハ、必ズ今ノ建議者ノ趣旨ノ如キモノモ含蓄シテ居ル分ガ多カラウト思ヒマス、然ラバ先ヅ此政府ノヤリ方ノ結局ヲ見テ、而シテ後ニ本会ノ如キモノニ於テソレヲ為ス必要ガ起ルカモ知レヌト考ヘル、ソレ故ニ唯今ノ場合ニ於テハ此建議案ヲ其儘宿題トシテ存セラレテ、追テ可否ノ意見ヲ問ハレルコトヽ致シタイト私ハ考ヘル
○二十九番(木村艮君) モウ一応私ノ愚見ヲ補足イタシテ置キマスガ詰リ従来為シツヽアルコトトテ態々建議イタスヨリハ、具体的ニ何等カノ問題ニ付イテ御建議ガ出来マスレバ、矢張リ連続的ニ往キ得ラレルト云フ意味デヤツタノデアリマスカラ、決シテ此儘デ結構デアルトカ、将来ドウデモ宜イト云フノデハナイト云フコトヲ言明イタシテ置キマス
○五十番(和田維四郎君) 此建議ニ私モ賛成イタシマス、其趣意ハ具体的ニ承知シマセヌガ、大体ノトコロ生産調査会其モノヽ権限ガ働キヲ為サヌダラウト思フ、実際ニ於テ殖産興業ノ甚ダ範囲ガ狭イコトヽ考ヘル、昨日モサウ思ツタ、ドナタカラデアリマシタカサウ云フ意味ガアリマシタガ、私ハ仮リニ鉱業ニ付イテ一例ヲ申上ゲマスガ、内地ニ於テハ鉱業法ト云フモノニ支配サレ、台湾ハ台湾デ台湾ノ方ノ鉱業法ニ支配サレ、朝鮮ハ朝鮮政府時代ノ法律ニ支配セラレル、又樺太ニ対シテハ大キナモノハアリマセヌガ、是モ法律ヲ異ニシテ居ル、関東州モ其ノ通リ、サウシテ見マスト、其各地ノ鉱業ノ奨励ノ上ニ於テハ余程違ツテ居ル、而シテ其地方ノ鉱業ハドウデアルト云フト、矢張リ内地ノ人ガ往ツテ鉱業ヲヤル、其上ニ付イテ法律制度ガ違ツテ居ル、又奨励ノ方法モ違ツテ居ル、斯ノ如クニ他ノ事ニ於キマシテハ無論新領土ニ対シテ総督ガ取締ヲスル必要ガアラウト考ヘマスガ、此殖産興業ニ於キマシテハ相共ニ帝国ノ殖産興業ヲ進メルコトガ私ハ当然デアラウト思ヒマス、然ルニ此生産調査会ノ組織ヲ見マスルト新領土ハ度外ニ置イテアル、ト云フノハ既ニ政府カラ任命サレタ委員ヲ見マシテモ、新領土ノ役人ハ一人モ委員ノ中ニ入ツテ居ラナイ、又新領土ニハ
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ソレゾレ適当ナ役人ガ居リハ致シマセウガ、恐クハ彼ノ領土ニ於テハ内地ノ如ク智識ノ発展ハナイト思ヒマス、故ニ私ハ少ナクモ此生産調査会ニ於テ此儘新領土ノ殖産興業モ併セテ一ツニスルト云フコトガ必要デアラウト考ヘマスカラ、其意味ニ於テ此建議案ヲ賛成致シマス
○五十六番(小寺謙吉君) 唯今ノ建議案ハ余程慎重ニ審議シナケレバナラヌト思ヒマスカラ、是ハ特別委員ニ付託シテ御定メヲ願ヒタイ、サウシテ其委員ノ数及ビ指名ハ議長ニ御委託ヲ致シマス
○議長(男爵牧野伸顕君) 委員付託ノ動議ガ大分出テ居リマスガ外ニ御賛成ガアリマスカ
  〔「賛成々々」ト呼ブ者アリ〕
○五十三番(田中芳男君) 唯今ノ委員付託ノ御説ハ成立ツタノデゴザイマスカ、承リタイ
○議長(男爵牧野伸顕君) マダ成立シテマセヌ
○五十三番(田中芳男君) 是ハ反対ノ御方モアルヤウデゴザイマスカラ、起立ニ御問ヒ下スツテハ如何カト考ヘマス
○議長(男爵牧野伸顕君) 田中サンノハ委員付託ノ説ヲ起立ニ採ツテ貰ヒタイト云フコトデスカ
○五十三番(田中芳男君) 左様デゴザイマス
○十二番(男爵渋沢栄一君) 起立ニ求メナサル前ニ私ハ賛成ノ意見ヲ一言申述ベテ置キタウゴザイマス、今ノ建議案ハ御朗読ダケデゴザイマスカラ、十分ニ文意ガ会得シ兼ル所モゴザイマスガ、自分等ノ感ズルトコロデハ、此生産調査会ガ一昨年モ多分一ツ議案ガ出マシテ、此節柄ドウシテモ此事業ノ進ミヲ実ニ重キヲ置キタイ、ソレニ付イテハ此行政上強イ意思ヲ以テ此事業ノ発達ニ力ヲ注ギタイ等ノ希望ノ建議モアツタヤウニ覚ヘテ居リマス、ソレニモ拘ハラズ、斯ル機関ガ極ク完全ナ働キヲ為シテ居ルカト云フコトハ満場ノ皆様ハ御満足ニ思召シテゴザルカ知ラヌガ、私共ニハ少シ物足ラヌヤウニ感ズルノデアリマス、偶々議案ガ出マシテ討議シテ議ガ決シマシテモ、其結末ガ此間御願ヒヲシテ御報告ヲ得マシタケレドモ、汗ヲ流シテ議シタ程ニ深ク徹底シテ居ルヤ否ヤヲ疑フ位デゴザイマス、故ニ畢竟此建議者ノ御意思モ、此生産調査会ガ此節ノ如キ事業ノ拡張ヲ図ル時機ニ於テ、極ク必要ナ時機ニ必要ノ務ヲシタイ、シタイニハ此姿デハドウモ満足ガ出来ヌカラ、モウ少シ重キヲ置カレルヤウニシタイト云フ趣意ニ外ナラヌト思ヒマス、或ハ此組立ニ付イテ今ノ法律ニ照シテ多少此建議ガ適当セヌ嫌ガゴザイマスナラバ、委員付託ニ依ツテ今一層法律ニ妨ゲナク重キヲ得セシムル方法トナラウカト自分等ハ思ヒマス、故ニ此第一ニ議案ニゴザイマシタ通リ、此節柄此実業上ノ進歩ノ他ノ比較ニ遅レテ居ルト云フコトガドウモ事実デアリ、是モ亦盛ニセネバナラヌト云フ希望ガ頗ル尤モデアル、其遅レテ居ルノヲ盛ニシヤウト云フニ於テハ必要ノ機関タルモノト若シ生産調査会ヲ思フナラバ、其生産調査会ガ今一層働ケルヤウニシタイト云フ大体ノ希望ト私ハ思ヒマスカラ、サウ云フ意味ニ於テハドウシテモ一ツ委員付託ニナツテ、十分今一層ノ重キヲ置カセ得ルヤウナモノニシタイト希望シマス、故ニ此原案ニ賛成致シマス
 - 第56巻 p.485 -ページ画像 
  〔「委員付託説カラドウゾ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵牧野伸顕君) 委員付託ニ賛成ノ御方ノ起立ヲ願ヒマス
  起立者 多数
○議長(男爵牧野伸顕君) 多数ト認メマス、――チヨツト申シマス、此委員会ノ会期ノコトニ付イテ、或ハ誤解アルカモ知レマセヌガ、開会ノ御通知書ニ五日以内ト云フコトガアリマス、併ナガラ此委員会ノ経過如何ニ依ツテハ必シモ五日以内ト云フコトハ期シテ居ラヌノデアリマスカラ、其処ハ委員諸君ニ念ノタメニ御断リ致シ置キマス、――ソレカラ唯今ノ山本君ノ建議ニ付キマシテ特別委員諸君ノ御人名ハ後カラ申上ゲマス、是デ今日ハ散会致シマス
  午後四時三十分散会