デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.2.21

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
1款 生産調査会
■綱文

第56巻 p.491-525(DK560121k) ページ画像

大正元年11月26日(1912年)

是月二十五日ヨリ、農商務省会議室ニ於テ、当会第五回会議開カル。是日、栄一出席シ、議長トナリテ議事ヲ司リ、且ツ魚市場法制定ニ関スル特別委員会委員長トシテ、委員会審議ノ経過及ビ結果ヲ報告ス。

右ハ委員長報告ノ通リ可決セラレ、十二月二日、農商務大臣牧野伸顕ニ答申セラル。


■資料

竜門雑誌 第二九四号・第七二頁 大正元年一一月 魚市場法案に関する特別委員会(DK560121k-0001)
第56巻 p.491 ページ画像

竜門雑誌  第二九四号・第七二頁 大正元年一一月
○魚市場法案に関する特別委員会 農商務省に於ける生産調査会の宿題となれる魚市場法制定に関する特別委員会は、十月十六日午後一時より農商務省内の会議室に於て開会、委員長青淵先生及び豊川良平・牧朴真其他在京委員諸氏参集し、道家水産局長も列席して審議を尽したれども、未だ決定を見るに至らずとなり。


竜門雑誌 第二九五号・第六九頁 大正元年一二月 ○生産調査会の経過(DK560121k-0002)
第56巻 p.491 ページ画像

竜門雑誌  第二九五号・第六九頁 大正元年一二月
    ○生産調査会の経過
○魚市場法案 曩に反対の議多く遂に委員附託となりたる魚市場法案は、十一月十四日青淵先生・阪谷市長・中野武営氏等が道家水産局長と協議の結果兎に角再議に附する事となり、翌十五日午前十時より農商務省にて特別委員会を開き、先決問題として同法制定の可否を問ひしに、多数にて制定を可とすと決して正午散会し、翌十六日午前十時より前日に引続き開会し、農商務省提出の原案に付て逐条審議に附せしかど、何分にも議論多く決了に至らずして散会し、越えて二十五・二十六日の両日午後一時より本会を開きて審議の結果、魚市場法案は可決確定せられたる由。


生産調査会録事(第三回)《(第五回)》 (其ノ二)・第一三六―一六六頁 大正二年三月刊(DK560121k-0003)
第56巻 p.491-501 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第五回)》  (其ノ二)・第一三六―一六六頁 大正二年三月刊
    大正元年十一月二十六日(火曜日)午後一時五十分開会
○議長(男爵渋沢栄一君) 満場ノ諸君、今日ハ会長ガ会議ノ為ニ此処ニ出席ガ出来マセヌ、デ私ガ代理ヲ致シマスルデゴザイマス、甚ダ不
 - 第56巻 p.492 -ページ画像 
慣デゴザイマスカラ、ドウゾ成丈ケ御小言ノ少ナイヤウニ御願申上ゲマス、マダ御着席ノナイ方ガゴザイマスガ、モウ定足数デゴザイマスカラ是ヨリ開会イタシマス、昨日ノ議事ノ都合ニ依リマシテ、魚市場法制定ニ関スル件ガ特別委員長カラ玆ニ御報道申上ゲテ置ク筈ニナツテ居リマス、私ガ誤ツテ委員長ヲ勤メテ居リマスノデ、甚ダ略儀ナガラ此席カラ御報道イタシテハ如何カト思ヒマスガ、満場ノ御異議ガゴザイマセネバ此席デ一人デ両役ヲ勤メルノデゴザイマスガ、委員会ノ経過ヲ御報道イタシタウゴザイマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 魚市場ノ特別委員会ハ数回開キマシテゴザイマス、九月二十六日第一回委員会ノ会議ニ本会ニ質問ガアツテ、其末二十七日・八日ニ段々特別委員ノ会議ヲ致シマシテ、十月ノ十六日ハ在京ノ委員ニテ、研究会ヲ開キマシテゴザイマス、更ニ本月ニ至ツテ十五日・十六日ト引続イテ審議ヲ重ネマシテ、結局玆ニ修正イタシタ案ガ諸君ノ御手許ニ提出サレタト云フ、特別委員会ノ会議ノ経過デゴザイマス、此法案ニ就テ大体ノ内容ヲ申上ゲマスト、特別委員ハ余リ此事柄ニ熟知ガナカツタモノデスカラ、ソコデ、第一ニ手続ヲ処置スルト云フコトガ、相当ナ時日ヲ要シマシタノデゴザイマス、事柄ニ於テハ東京市ノ如キハ、最モ魚市場ハ何トカシナケレバナラヌト云フコトハ、世間ニモ伝ツテ居ツタ事柄デアリマスケレドモ、甚ダ其実務ヲ詳カニシテ居ナカツタ人ガ多カツタノデゴザイマス、為ニ東京ニ大阪ニ、又其他各地ノ事情ヲ知ルニ於テ先ヅ相当ナル特別委員会ノ調査ヲ致シタ、ソレカラ又立法ノ精神ニツキ、其条項ニ就テ質問ヲ致シタ為ニ、今申上ゲタ如ク以上六回ホド特別委員会ヲ開キマシタガ、詰リハ稽古中大勢多クノ時日ヲ要シタノデゴザイマス、其初ノ会議ヲ申スト、サウ云フモノデアルカラ是非相当ナル法制ヲ要スルト思フ、殊ニ東京ノ如キハ何トカシナケレバナラヌト云フコトハ輿論ノ認ムルトコロデアル、独リ東京ノミナラス各地ニ於テモサウ云フ有様ハ誰ノ耳ニモ聞エテ居ルケレドモ、併ナガラ斯ノ如キ細カイ事業ヲシテ法律ノ制定ニ拠ラナケレバナラヌト云フコトハ如何ナモノデアラウカト云フコトハ、特別委員一同ノ先ヅ第一ノ疑デゴザイマシタ、種々当局者、若ハ其他ノ事態ヲ質問シ、又研究シマシタトコロデ、特別委員会ノ多数ハドウモ已ムヲ得ズ法律ニ拠ラナケレバナルマイ、但シ原案デハ全ク窮窟ニ過ギテアル、是ハ少シ緩メタ方ガ宜カラウ、特ニ其中ニ主張シテ、尤モ之ニ準ズル法人ノ如キモノガヤル場合ハ他ノ成立ツテ居ルモノモ尚ホ奪ヒ得ルト云フ権能ノ如キハ、余リ一方ニ偏シ過ギテ、良イ会社ノ成立ヲ初カラ妨ゲルヤウニナリハシマイカ、此等ハドウシテモ原案ヲ修正スル必要アリト云フコトデ、既ニ御覧ノ通リ修正意見ガ加ツテ居リマス、其他或ハ場合ニ依ツテ他ノ品物モ加ヘ得ルト云フコトデ、余ホド法文ヲ明カニシテ置イタ法《(方)》ガ宜カラウト云フコトデ修正ヲ加ヘマシタノデゴザイマス、十五人ノ委員中一二御欠席ガゴザイマシタガ、今申上ゲタ方々ニ就テモ、亦全体ノ法律案ト、ソレヲ非トスル御意見モ沢山アリマシテ、種々討論ノ末多数ハ前ニ申上ゲマシタヤウニ決定イタシタノデ、即チ玆ニ案ガ提出サレマシタガ、其中ニモ最モ
 - 第56巻 p.493 -ページ画像 
主ナル条文デ一地区一箇所、一営業ト云フコトハ種々討論ガゴザイマシタガ、結局総ベテノ法ヲ設ケル以上ハ、サウシテヤツタ方ガ寧ロ当業者ヲ保護スルト云フ法デナクテ、生産者・消費者ニ利益デアルデアラウト云フコトニ多数ハ一致イタシテ、即チ其原案ハ討論ハ段々トゴザイマスガ、一地区、一箇所、一営業者ハ原案ニ同意ヲ表スルニ相成リマシテゴザイマス、委員会ノ経過ハ長イ間継続シマシタカラ、マダ申上ゲレバ細カイ廉ガゴザイマスガ、大要其辺デゴザイマシテ、玆ニ成案ガ御手許ニ廻ルヤウニ相成ツタ次第デゴザイマス、但シ修正ノ意見トシテ此案ニ反対ノ御考ガ特別委員中ニ四名カイラツシヤイマシタ其四名ノ中ノ御一人ガ反対意見ニ就テ御申述ガアル筈デゴザイマスカラ、ソレハ其御方カラ御聴取リヲ願ウヤウニ致シタウゴザイマス、反対意見トシテ少数意見ヲ佐野君カラ御申述ガアリマス
○法学博士佐野善作君 只今、特別委員長渋沢男爵ヨリ委員会ノ経路ヲ御報告ガゴザイマシタ、本員ハ少数意見ヲ御報告イタシマス、特別委員中原案ニ反対セラレマシタノハ、只今委員長ヨリ御話ノアリマシタ通リ四名居リマシテ、岡崎君・小橋君・松山君ト並ニ本員デゴザイマス、ソレデ本員ハ僭越ナガラ此四名ヲ代表イタシマシテ反対意見ノ要領ヲ申上ゲマス、吾々少数委員ハ本案ニ対シテ、次ノ三点ヨリ反対ノ意見ヲ有スルモノデゴザイマス、即チ其一ハ商業政策上ノ主義ノ上カラノ反対意見デアリマス、第二ハ本案ノ内容ニ就テノ反対意見デゴザイマス、第三ハ本案実施ノ暁ニ生ズベキ弊害ヲ察シテノ反対意見デゴザイマス、是ヨリ順ヲ逐フテ其大要ヲ申述ベマス、其一ハ商業政策上ノ主義トシテノ反対説デゴザイマスルガ、吾々少数委員ハ法律ヲ以テ商業ノ自由ヲ拘束スルコトノ不可デアルト云フコトヲ信ズル者デアリマス、即チ商業交通ノ進歩発達ヲ図ル為ニハ、国家ハ積極的ニ之ニ必要ナル施設ヲナスト同時ニ、消極的ニ之ガ弊害ヲ為スベキモノヲ取除クベキハ勿論デゴザイマスガ、其大方針ト致シマシテハ商業交通ノ自由ヲ尊重スルヲ以テ原則トシナケレバナリマセヌ、今度更ニ窮屈ナル法律ヲ設ケテ企業ヲ抑ヘ、形式カラ言ヘバ取引ノ方法等ニ至ルマデ巨細ニ渉ツテ之ヲ律定シテ、拘束ヲ加ヘルト云フヤウナコトハ甚ダ不可デアリマス、唯国民経済上特ニ必要ナル場合、若ハ之ヲ人民ノ自由ニ放任イタシマスルトキハ公益ヲ害シ、社会ノ安寧秩序ヲ紊ル虞アル場合ニ限リテ、即チ弊害ニ限リテ法律ヲ制定スルヲ可ナリト信ズルモノデゴザイマス、ソコデ吾々少数委員ハ魚市場ノ商売ノ如キハ……特ニ商売ト申シマス、何トナレバ本案ハ魚市場ノ商売ヲ独占セシムルト云フコトガ其主義デゴザイマスカラ、此魚市場商売ノ如キハ右孰レノ場合ニモ当ラナイモノトナリマシテ、之ニ関スル特別法ノ制定ハ必要ナシト断ズルモノデゴザイマス ○中略 其二ハ本案ノ内容ニ関シテノ反対意見デゴザイマス、此点ニ就キマシテハ反対論者ガ沢山ゴザイマシタガ、今其主ナルモノダケ御報告イタシマスルト、先ヅ第一ニ本案ハ主トシテ魚市場ノ売買ヲ律定スベキ目的ヲ以テ起草セラレタモノデゴザイマスルガ、元来食料品ノ如キハ単ニ其売買取引ノミナラズ、衛生・警察・宗教等ニ渉リマシテ重大ナル関係ヲ有スルモノデゴザイマスルガ故ニ、魚市場ノ設立並ニ監督ノ如キハ農商務省ト内務省ト共同シテ
 - 第56巻 p.494 -ページ画像 
事ニ当ル必要アルモノト信ジマス、然ルニ本案ハ唯農商務省ノ見地カラノミ立案セラレテ、市場ノ監督、市場ノ設立ト云フコトニ関シテハ単リ農商務大臣ノ権能ノミヲ認メテ、少シモ内務大臣ノ存在ヲ認メテ居ラナイト云フ嫌ヒガゴザイマス、是レ本案ノ内容ニ対シテ吾々少数委員ノ反対スル点デゴザイマス、第二ニハ本案ノ魚市場ト申シマスルノハ、魚ノ売リ手ト買ヒ手ヲ一ケ所ニ集メテ、サウシテ売買ヲ為サシムルトコロノ場所ヲ申スノデハナイ、此点ガ重要ナル点デアリマス、魚ノ売リ手、買ヒ手双方ヲ一ケ所ニ集メテ売買取引ヲ為サシムル場所其設備ヲ供給スル所デハナイ、魚市場ト云フモノハ問屋業者デアリマス、本案ニ謂フトコロノ魚市場ト云フノハ、徹頭徹尾問屋業者ヲ云フノデアリマス、而シテ本案ハ其問屋業者タル魚市場ヲ、一地区ノ営業者ト限リマシテ法律ノ力ヲ以テ之ニ独占権ヲ附与シタモノデアリマスルガ、抑モ此魚ノ問屋業ノ如キモノハ独占事業トスル必要ガ何処ニアリマセウカ、吾々少数委員ハ其必要ヲ認ムルコトヲ得ナイモノデゴザイマス、一ケ所ニ多数ノ問屋ガ居リマシテ魚ノ委托販売ヲ為スト云フコトハ、少シモ差支ナイコトデアルノミナラズ、其間ノ競争ニ依ツテ荷主ヤ消費者ト云フモノハ利益ヲ得ルノデアリマス、尤モ問屋ノ数ガ多ウ過ギマシテ、其間ニ所謂自殺的競争ト云フヤウナモノガ行ハレテ弊害ノ生ズルト云フコトハゴザイマスガ、斯ル場合ニハ監督官庁ハ、或ハ当業者ノ資格ヲ律定スル、或ハ合併ヲ勧誘スルトカ其他適当ナル方法ニ依ツテ其数ヲ減ゼシムレバ宜イノデゴザイマス、何モ法律ヲ以テ強制的一営業者ニ問屋業ヲ独占サセナケレバナラヌト云フ必要ガナイト思ヒマス ○中略 第三ニ本案ハ法律ヲ以テ魚類委托販売業者デアルトコロノ魚市場並ニ其附属仲買人ニ独占権ヲ与ヘテ、荷主及消費者ノ利益ヲ無視シタモノデゴザイマス、凡ソ本案ノ如キ法律ヲ制定スルニ当リマシテハ、立法者ト云フモノハ最モ慎重ナル考慮ヲ要スル点ハ、生産者ノ利益、消費者ノ利益及仲継商人ノ利益ノ三点デゴザイマス、法律ハ公平無私ニ頗ル各階級ノ利益ヲ保護シテ偏頗ノ結果ヲ生ゼザルヤウニ力メナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ本案ハドウカト云フニ法律ヲ以テ魚問屋、並ニ仲買業ヲ独占事業トシテ大ニ其地位ヲ鞏固ニシテ、売買競争上、荷主及消費者ノ利益ヲ比較的薄弱ナラシメタモノデアリマシテ、彼等ヲシテ独占業者ノ魚市場及仲買人ノ命ニ唯維従ハザルノ已ムヲ得ザルニ出デタル不公平ナル立法デゴザイマス、チヨツト考ヘマスルト、魚市場ハ委托販売ヲ業トスルモノデアリマスカラ、荷主ノ代理者デアル、サレバ専ラ荷主ノ利益ヲ図ルモノデアラウト云フヤウニ見エマス、又仲買人ハ魚市場カラ魚類ノ卸売ヲ受ケル買手デゴザイマス故ニ、イクラカ魚市場ト利害ヲ異ニ致シテ、又其人数ハ多数デゴザイマスカラ、其間ノ競争ニ依ツテ小売人ニ対シテ廉価ニ魚ヲ売ル気ニナリマシテ、従ツテ消費者ノ利益モ進メラルヽヤウニ見エマスルノデアリマスルガ、実際的ニ就テ之ヲ見マスルト云フト、魚市場ヲ設立スル人ハ誰デアルカ、市町村ガ之ヲ設立スル場合ノ外ハ、従来魚問屋及仲買人デアリマス、彼等ハ魚市場会社ノ株主トナリマシテ、其設立ノ暁ニハ附属仲買人トナツテ仲買業ヲ営ミマスカラ、畢竟魚市場仲買人ト云フモノハ卸手デアル、此二ツノモノガ共同ノ利益ヲ以テ
 - 第56巻 p.495 -ページ画像 
一面ニ於テ荷主ニ対シ、他面ニ於テハ消費者ニ対シテ暴威ヲ逞ウスルト云フコトハ、想像スルニ難カラヌコトデアリマス、即チ本案ハ極メテ不公平ナル立法デゴザイマシテ、其結果縦令本案ノ実行ニ依ツテ、従来ノ彼ノ不健全ナル競争ヲ防止シ、消費濫費ト云フモノヲ節約シ得ルトシテモ、其節約ヨリ生ズルトコロノ利益ハ専ラ魚商人ノ占有スルトコロトナリマシテ、生産者並ニ消費者ハ之ニ浴スルコトガ出来ナカラウト考ヘルノデゴザイマス、即チ本案ハ消極的利益ト云フモノヽ、分配ヲ不公平ナラシムルトコロノモノト言ハナケレバナラヌ、第四ニ本案ハ魚市場ヲ公立及私立ノ二種ト致シマシテ、其設立ノ場合ニ於ケル企業ノ形式ト云フモノヲ株式会社ト限定イタシタモノデゴザイマス元来市町村其他ノ公法人ガ魚類委托販売業者トシテ適任デアルカドウカト云フコトハ、論ヲ要セヌトコロデアリマスカラ、此法律ニ依ルト魚市場ハ事実上必ズ株式会社ノ経営スルトコロトナルノデアリマス、ソコデ吾々少数委員中ノ或者ハ、魚市場ハ何ガ故ニ株式会社デナクテハナラヌカ、地方ノ必要ニ応ジ時ノ宜キニ従ツテ他ノ形式ニ依ツテ、例ヘバ合名、合資、株式合資等ニ致シテモ一向差支ナイデハナイカ、 ○中略 第五ハ魚市場ノ監督デゴザイマスガ、本案ノ魚市場ハ独占事業デアリマスルカラシテ、競争ニ依ルトコロノ当業ノ相互ノ牽制ト云フコトハ最早之ヲ望ムコトハ出来ナイノデアリマス、魚市場ノ監督ノ任ニ当ル者ハ唯行政官庁ノ吏員ノミデゴザイマス、而シテ地方庁ナドノ吏員ガ能ク大会社デアルトコロノ魚市場ノ監督ノ実ヲ挙ゲ得ベキヤ否ヤト云フコトハ、自ラ明デゴザイマシテ、到底出来ナイコトハ他ノ事業ノ経験ニ照ラシテモ明カデゴザイマス、又本案ニハ監督ノ方法ト致シマシテ、市場ノ禁止停止ナドノ規程ガゴザイマスガ、斯ル制裁ハ市内唯一ノ日常必要食料品ノ一般ニ向ツテ行フコトガ出来マセウカ、之ヲ行ヒマスレバ市民ハ其日カラシテ魚ヲ食フコトガ出来ナイト云フコトニナリマスカラ、畢竟斯ル規程ハ法文ノ体裁ヲ飾ルトコロノ死物デゴザイマシテ、何モ実効ナキモノト言ハナケレバナラヌノデアリマス、以上ハ本案ノ内容ニ関スル修正意見ノ反対論ノ主ナルモノデゴザイマスガ、最後ニ第三ノ反対意見、即チ本案実施ノ暁ニ生ズベキ弊害ヲ察シテ反対意見ヲ簡単ニ御報告イタシマス、前ニ申述ベマシタ通リ、本案ハ法律ヲ以テ魚市場ニ於ケル委托販売業ノ独占ヲ認メ、一地区、一ケ所、一営業者トシテ大ニ其利益ヲ保護シタモノデゴザイマスカラ、之ガ設立ノ許可ヲ得ルモノハ非常ナル利益ヲ得ルコトヽナリマス、ソレハ目下魚商人共ガ或ハ全国魚市場聯合会トカ、或ハ魚市場法期成同盟会ト云フヤウナ組織ヲシマシテ、熱心ニ本会ニ於ケル本案ノ通過ヲ希望シテ、盛ンニ運動ヲ致シテ居リマスカラ、アノ事実ニ照ラシテモ明白デアリマス、儲カルカラ彼等ハ騒イデ居ルノデアル、ソコデ此法律適用ノ区域ト云フモノハ勅令ニ委任シテゴザイマスカラ、如何様ニ定メラレマスルカ、恐ラクハ全国ニ三十ケ所位ノ独占ノ魚市場ト云フモノヽ設立ヲ見ルコトヽナリマセウ、而シテ此法律ノ制定セラレマシタ暁ニ、全国各地方ニ魚市場設立ノ許可ヲ得ントテ種々ノ運動ガ起リマシテ、或ハ聞クニ忍ビザルトコロノ醜行ヲ敢テスルモノヲ出シマセウ、又市町村ガ自ラ魚市場ノ設立者ニ対シマシテハ在来ノ市場ヲ買収
 - 第56巻 p.496 -ページ画像 
スルニ就テ、又市町村ノ設立セル魚市場ヲ一会社ニ請負ハシメ、若ハ払下グルヤウナ場合ニハ、其報償価額ニ就テ種々ノコトガ起リマシテ遂ニハ実業界或ハ政治界ノ腐敗ヲ馴致スル虞ガアル、此点ハ吾々少数委員ハ大ニ憂フルトコロデアリマス、而已ナラズ本案ノ末尾ニ掲ゲテゴザイマスル規程ニ依リマシテ、従来ノ魚市場ノ問屋共ガ新タニ一ノ株式会社ヲ組織シ、若ハ従来一地区ニ二ケ所以上ノ魚市場ト云フモノガアリマシタ場合ニ之ヲ合同セシメテ、一ノ株式会社ト為スニ至リマシテハ、必ズヤ関係者間ニ供托物件ノ評価ニ就テ紛擾ヲ惹起スデゴザイマセウ ○中略 以上少数意見ノ大体ニ就テ述ベタト信ジマス、要スルニ吾々少数委員ハ第一ニ商業ノ自由ヲ尊ブト云フ主義ヨリ、魚市場委托販売業ノ如キハ、法律ヲ以テ強制的ニ独占セシムル性質ニアラズト信ジマス、第二ニ本案ノ内容ハ余リニ大胆デアツテ且ツ近眼的ト認メマス、第三ニハ本案ノ実施ニ対シテ弊害ノ恐ルベキモノガアルト云フコトヲ信ジマシテ原案ニ反対ヲ致シマシタ次第デゴザイマス
○議長(男爵渋沢栄一君)  魚市場法ノ制定ニ対スル案ハ今御報告ヲ致シマシタガ、昨日ノ御相談ノ模様デハ、是ヨリシテ工業ノ発達助長ニ関スル件ニ移ルカノヤウニナツテ居リマシタガ、此議事ノ進行ヲ如何イタシマセウカ
○岡崎邦輔君 私ハ議事ノ進行上ニ就テ申上ゲタイト思ヒマス、昨日ハ今御宣告ノ如ク議場ノ模様ハ決シテ居リマシテゴザイマス、サリナガラ一体議事ノ習慣上斯様ナ面白イ形式ハナイダラウト思フ、委員長ノ報告ガアリマシテ、或ハ少数意見ノ発表ガアリマシテ、サウシテ議事ヲ他日ニ延バシマシテ、其間ニ外ノモノヲ挟ムト云フコトハ一体議事ノ習慣ニ変リマシタヤリ方ト心得マス、強イテ御差支ガナケレバ矢張リ引続キテ本案ヲ議題ニ致シマシテ、サウシテ議スルコトガ当然ダラウト思ヒマス、無論之モ凡ソ定マツタ問題デアリマスルカラ、極メテ簡単ニ決スルコトデアラウト思ヒマス、ドウゾ私ハ昨日ノ御定メニハ違ウカ知リマセヌガ、矢張リ此問題ヲ引続イテ議題トサレンコトヲ望ミマス、強テ御意見ガアルマイト思ヒマスガ一応御諮リヲ願ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 今岡崎君ノ御動議ニ御異議ゴザイマセヌケレバ、此案ヲ議シテハ如何デゴザイマスカ
  〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○山本悌二郎君 矢張リ昨日ノ決定通リ進行ヲ願ヒタイト本員ハ考ヘマス
○岡崎邦輔君 私ハ強ヒテ争ヒマス必要ハアリマセヌガ、山本君ニ御相談シタイ、左様ニ奇態ナコトヲ御主張ニナラヌデ矢張リ之ヲ並ミニヤツテハ如何デゴザイマス
○野田卯太郎君 報告ニナツテカラ中止スルト云フノハ変ダ、私共ハ此問題ハ後ニナルモノト信ジテ居ツタ、報告ヲシテ中止スルト云フノハ普通ノ議事ニアルベカラザルコトデス
○中略
○議長(男爵渋沢栄一君) 別ニ議事ヲ、此ヲスルカ、彼ヲスルカト云フダケデゴザイマスカラ、オ難ヅカシクゴザイマセヌケレバ魚市場案ヲ議題ニ致シタウゴザイマス
 - 第56巻 p.497 -ページ画像 
  〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○会長《(議)》(男爵渋沢栄一君) ソレデハ魚市場案ヲ議題ト致シマス、答申書ヲ議題ト致シマシテ、ソレカラ止メニ相成ツテ居リマス重要規定事項ト云フノト、ソレニ対スル説明ト、説明ノ矢張リ一種ニ属シテ居リマスノデ、共ニ議題トセナケレバナルマイト思ヒマス
○田川大吉郎君 少数意見ハ此案ノ廃案意見デアラウト思ヒマス、故ニ此廃棄説ヲ容レルヤ否ヤト云フコトノ御採決ヲ先ヅ御願シタウゴザイマス
○中野武営君 モウ討論イタシテ宜シウゴザイマスカ
○議長(男爵渋沢栄一君) 宜シウゴザイマス
○中野武営君 此法律案決定ニ就キマシテ委員長ヨリ御報告ガアリマスシ、又少数意見ノ御報告モアリマシテ、大要皆サン御承知ニナツテ居ルコトデゴザイマセウガ、私共モ本案ノ委員トナリマシテ、最初ニ於テハ成ベク法律ニ拠ルヨリハ何カ取締モ出来、又此法律ガ望ンデ居ルトコロノ注意ガ実地ニ行ハレルコトガアリハセヌカ、先ヅ実地ノモノヲ一ツ作ツテ見テ、ソレカラ他ニ及ボシテ行クト云フコトニナルノガ一番適当ナ順序デハナイカ、ソレニハ此事ヲ前ニ論ジテハイケナイ実地ノコトヲ前ニ研究シ、又容レ物ニ此物ヲ容レルニハ如何ナル方法ヲ作ルカ、斯ウ云フ仕方ニスレバ之ガ成立ツテ行クト云フコトヲ研究スルノガ、此法案ヲ議スルニ就テノ第一ノ仕方デアルト存ジテ、第一委員会ニ於テハ直チニ此方ガ可ナリ、非ナリト云フコトハ私ハ言フコトハ出来ナイ、実地ヲ調ベテ見ナケレバナラヌト云フコトヲ申シタノデアル、ソレカラ差向キ此東京市ニ於テハ魚市場ト云フモノハ、我ガ東京市ニ就テドウシタラ之ガ治マリガツクカ、調ベタノデゴザイマス第一ニハ魚市場ノ悪イト云フモノハ如何ニ反対スル御方デモ、此儘デハイカヌト云フコトハ皆一致ナノデ、唯法ヲ以テスルノニ論コソゴザイマスルガ、実際此儘デハイカナイ、唯其弊害ガ帰着スルトコロハドウ云フモノデアルカト言ヘバ、取引ノ不完全、不埒ナル為方ヲシテ居ルガ為ニ、之ヲ需要スル消費者ト云フ者ガ、不当ナル魚ヲ買フテ居ルノデアル ○中略 此点ニ就テハ論ハナイノデゴザイマス、唯之ヲ実際ニ如何ニシタラバ宜イカト云フ論デゴザイマスカラ、実際問題カラ調ベナケレバナラヌ、ソレデ私ハ先ヅ東京市ガ差向キ此問題ニ差迫マツテ居ルノデゴザイマスカラ、ヂツトシテハ居ラレナイ当業者ノ位地ニナツテ居リマス、又一般ノ人モ之デハイカヌト云フテ居ルノデアルカラ、之ヲ一ツ整理シテ見ヤウ、第一玆ニ勝手ニハナラヌケレドモ、法律ニ於テ曩ニ取調ベテ此法律ヲ立テル時ノ標準ガ玆ニ出来テ、仮ニ之ヲ手本トシテ斯ウ云フモノハ法律ニ拠ラズシテ何トカ実際ニ行ハレル途ハナイカト云フコトヲ、私ハ取調ベテ見タノデゴザイマス、ソレヲシマスルニハ、私ガ当業者ノ意見ノミヲ聞イテ論ズルコトハ出来ナイノデゴザイマス、故ニ先ヅ第一此法案ニアルガ如ク、之ヲ実施イタシテ、サウシテ不正ナ競争ノ為ニ物ノ価ヲ高クシテ、消費者ヲ困ラシテ居ル如キ弊ヲ除キ、種々ナル点ニ就テ実際調ベマスルニハ、此局ニ当ル人ハ誰カト云フト、東京デ言ヘバ東京市長、市ノ自治体ニ第一覚悟ガナケレバナラヌ、第二ニハ此当業者ト云フモノハ如何ニ覚悟スルモノデ
 - 第56巻 p.498 -ページ画像 
アルカ、市ト当業者トノ外ニ一般ノ局外カラ見タル人ガ互ニ判断ヲスルモノデアルガ、之ヲ三項ニ亘ツテ取締ラナケレバナラヌノデゴザイマシテ、私ハ市長ニモ屡々会見ヲ致シマスシ、又当業者ノ意見モ聞キマシタ、併ナガラ結局是ハ公平ニ判断ヲサセテ見タイト思ヒマスカラ従来数百年日本橋デヤツテ居ル魚市場ノ習慣モアリ、種々ナル利弊モアルコトデゴザイマスカラ、一番日本橋所在ノ人ガ能ク此実地ヲ知ツテ居ルカラ、ソコデ日本橋区会――此区会ニ私ハ諮ツタノデゴザイマス、区会議長ト相談ヲ致シテ、区会ニ於テドウ云フ考ヲ有ツテ居ルカト云フコトヲ調ベテ貰ヒマシテ、区会ハ之ニ対シテ、委員ヲ設ケマシテ、長ク此委員ガ取調ベマシテ、ソレデ斯ウシタラ行クダラウ、斯ウスルヨリ外仕方ガナイト云フ意見書ヲ出サレタノデアリマス、ソコデ前申シタル通リ、中ニ這入ルトコロノ器物ハ斯ウスレバ出来ル、四角ナモノトカ、八角ノモノトカ云フモノハ斯ウシタラ形造ツタモノガ出来ルカ知レマセヌガ、サテ当然出来ルガ、斯ウ云フ調ヲ行ヒマスル場合ニ於テ、今日ノ儘デヤツテ見ロト云ツテモヤリヤウガナイト云フコトニ至ツタノデゴザイマス、ソレハ東京市ダケト致シマシテモ、兎モ角今日ノ如キコトデナク、一ツノ市場ヲ設ケルト云フコトニナレバ東京市ガ之ヲ経営致ストシマシテモ、三百万、四百万ト云フ金ヲ掛ケナケレバナラヌノデアリマス、先ヅ日本橋区会ナドノ考ハ廉イ方法デ、四百万円ハ掛カラウト云フノデゴザイマスガ、場所ニ依ツテハ六百万円モ掛ルノデゴザイマス、之ヲ唯偶然ト東京市ガ是ダケノ金ヲ市債ヲ起シテ斯ウ云フコトヲシマスルノガ何等拠リ所モナイ、唯行政官ガ斯ウ云フコトヲシタラドウカト言ハレル位ノ事柄ニ対シテ、先々ノ確固タル安心ガ出来ナイト云フノニ、東京市ノ自治体ガ四百万円ノ金ヲ出シテ魚市場ヲ造ルト云フコトハ、是ハ出来ナイコトデ、定マリノ着キヤウガゴザイマセヌ、又一方ニ当業者ト致シマシテモ、是マデ立派ニ営業ヲ祖先ヨリ致シテ居リマスモノガ、之ヲ打捨テヽ仕舞ツテ、一ノ弾丸トナシテ、サウシテ株式会社ナラ株式会社ニ依ツテ経営スルト云フ、マルデ形ノ違ウタモノヲ致スノニソレダケノ苦心ヲ致スニ何等拠所ガナクテ、折角ソレヲヤツタハ宜イガ、横ノ方カラ勝手次第ナコトヲシテ、年来イロイロナ関係ヲ以テ今日マデ来テ居リマスル事柄ヲ、直グニ他ニ奪ハレテ仕舞ウト云フヤウナ危キコトハ、サウ云フ決心ハ出来ナイノデゴザイマス、一心協力シテヤルト云フ堅固ナル意志ガ定マラヌ、ソレカラ細カシイコトハ申シマセヌガ、彼等ノ段々ヤツテ見マスルトコロガ、何カ法律デ箱ヲ拵ヘテ下ダスツテ、ソレデ算当シテ行クトコロノ基ガゴザイマセヌケレバ、之ヲ実地ニ行フト云フコトハ殆ド云フベクシテ行ハレヌ、私共即チ商業会議所ニ於テ尽力シテヤラサウト思ヒマシテモ、其点ニ至テマアソレデヤツテ見タラ宜イデハナイカト云フダケデハドウシテモイカヌ、又向フノ云フ所モ無理ハナイノデゴザイマス、又区会ニ於テモ是ダケノ決心ニナリ、相当ナ法律制定ヲ必要トスル意見デゴザイマス、然ラバ法律ニ及バヌカラ其儘捨テ措クカト云フト、従前ノ儘捨措イテ置クヨリ外ナイノデゴザイマスガ従前ノ儘ニシテ置クト云フコトハ出来ヌノデゴザイマス、益々魚ノ価ハ高クナルノデゴザイマス、ナゼトナラバ何処ニ売ルト言ツテモ問屋
 - 第56巻 p.499 -ページ画像 
ト云フモノハ競争スルモノデアリマスガ、此処デイケナケレバ隣リニ行クト云フコトニナルノデ、其事ヲ申合セヲシテ防グコトガ出来ヌ、サウシテ其問屋ハ残ラズ其損ヲ諦メレバ宜イノデゴザイマスガ、サウ云フコトハ商売トシテ出来ヌノデアリマスカラ、其損ヲ盛リカケテイツテ、漸クニシテイクコトニナルノデゴザイマスカラ、是カラ先ニナレバ尚ホ其弊害ガヤブレカブレノ為方ヲ致シテ、其及ブトコロハ消費者ノ皆迷惑ニナルノデゴザイマスカラ、何トカ是ハセナケレバナラヌノデゴザイマスガ、此儘捨テ措ク事ハドウシテモイケナイ、法律ナクシテ之ガ出来得ラルヽト云フナラ、私共斯ウ云フコトニ法律デナクシテ出来ルヤウニシタイト云フコトヲ初カラ申シテ居リマシタガ、如何セン申上ゲル如キ事柄ヲ致シ、段々思ヒツイテ之ヲ標準ニシテ見ヤウト云フガ如キコトデ、此莫大ナル金、又年来ヤツテ居リマスルコトヲサウ激変ヲサセルト云フコトハ、是ハシタクモサセラレヌコトデゴザイマスカラ、已ムヲ得ズ法律ヲ立テヽ之ヲ整理シテ此弊害ヲ矯メルト云フコトカラ、已ムヲ得ズ法律ニ需メナケレバナラヌト云フ時機ニ当篏ツテ来タノデゴザイマス ○中略 何事モ独占ノ事業ト云フコトハ、弊害ヲ生ズルト云フコトデゴザイマスケレドモ、此法ヲ立テヽ制裁スルコトハイロイロナ箇条ニ就テアルノデゴザイマス、又之レガ隠レテモノヲスルノデハナイノデゴザイマスカラ、此積極論ノ如キモノニハナラヌ、之ヲ矯正スルニ就テ相当ノ途ハ立ツモノデアルト思ヒマス ○中略 ドウモ今日ノ場合ハ法律ヲ立ツルノ已ムヲ得ナイ場合デアルト、斯ウ云フコトヲ実地ノ上カラ私ハヤツテ見ヤウト思ツテ掛ツタノデゴザイマシテ、此事ニツキマシテハ独リ私等ガ気付イテ致シタノデナイ、市長モ其心持デアリ、又渋沢男爵モ委員長トシテヾナク、即チ東京市ニゴザルトコロノ実業者ノ先輩デアルカラ、此人ニモ相談ヲシ、又利害ニ就テハ水産局長ノ取調ベタルトコロヲ参考ニセナケレバナラヌカラ、此等ノ人ト寄合セマシテ、此点ハドウダ、是ハ法律デナクテモ出来ル此点ハ防ゲハセヌカト云フコトヲ研究シテ見タノデゴザイマスケレドモ、詰リ当業者ナリ、又市ナリノ言フコトガ漠トシタコトニナル、ソレホドノ重イコトガ出来ナイト云フコトニ帰着シテ仕舞ツタノデゴザイマスカラ、私ハ此法律ハ已ムヲ得ヌ必要ナラ致方ガナイト云フ意見デ、委員会ニ於テ之ニ賛成ノ意ヲ表シマシタ
○議長(男爵渋沢栄一君) 田川君ノ反対意見カラ決ヲ採リマス、今少数意見ガ御発表ニナリマシテ御聴キノ通リデゴザイマス、少数意見ニ御同意ノ方ノ御起立ヲ願ヒマス
  起立者 少数
○議長(男爵渋沢栄一君) 少数デアリマス、ソレデハ本案ニ依ツテ議事ヲ進メマス、是ハ如何ニイタシタラ宜ウゴザイマセウカ、矢張リ二様ニ原案ガナツテ居リマス、此規定事項ト云フノト説明ト云フノト二ツゴザイマス、是ハ相関聯シテゴザイマスケレドモ一緒ニ纏メテ議スルト云フト妙デゴザイマスカラ、魚市場法重要規定事項ヲ議シテ、ソレカラ次ニ説明ニ移ツテ行ツタ方ガ宜カラウト思ヒマス
○男爵田健治郎君 私ハ今ノ御話ニ就テ経路ヲ述ベタウゴザイマス、詰リ行政上重要規定事項トゴザイマシテ要領ガ挙ゲテアツテ、ソレカ
 - 第56巻 p.500 -ページ画像 
ラ又別ニ施行ノ説明ハゴザイマスガ、併ナガラ之ヲ見マスルト、説明ヲマルデ見ズニ議決ガ出来ナイ規定ガアルノデゴザイマス、ソレデ委員会デモ説明マデ見ナケレバ、本文ダケ直シタノデハ意味ガ分ラヌト云フ為ニ、説明マデモ直ツテ居ルノデゴザイマスカラ、説明ノ方ニハ本文ノ関係ガ出来テソレニ説明ガ着クデゴザイマスカラ、此場合ニ於キマシテハ矢張リ便宜ノ為ニ説明ト云フ方ヲ議題トシテ御議決下スツタナラバ、矢張リ精神ガ判然リトナツテ宜カラウト思ヒマス
○野田卯太郎君 総テ集メテヾ宜シウゴザイマスカラ一緒ニ願ヒマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 野田サンハ一緒ニ議題ニシテ仕舞ハウト云フノデゴザイマスカ
○野田卯太郎君 総テ一括シテ……
○議長(男爵渋沢栄一君) 余リ荒ツポシ過ギハシマセヌカ、サウ云フ聡明ナ御方バカリ多ク居レバ或ハ便利カモ知レマセヌガ、如何デゴザイマス、議事ノ普通順序トシテ議場ニ御相談シマスガ、田君ノ御説ハ説明ト云フノヲ議題トシテ議シテ行ツタラ、説明ガ定マレバ本案ハ此修正デ宜イトカ、斯ウナルトカ、寧ロ趣意ハ説明ニアルノダカラ説明ノ方ヲ議題ニシタイト被仰ルノデスガ……
○浅田徳則君 私ハ議長ノ御裁量ニ任カシテ普通ノ議事ノ例ニ依ツテ第一条ヨリ第何項ニ至ルト云フコトヲ議題ニ供セラルヽガ相当ト考ヘマス
○議長(男爵渋沢栄一君) シマスト矢張リ規定事項カラ議スレバ宜イト云フコトニナリマスナ
○浅田徳則君 サウ希望イタシマス
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ此議シ方ノ評議ノ為ニ時ヲ費ヤス虞ガアリマスカラ、今浅田君ノ御説ニ依ツテ、総則カラ議題トシテ御議シニナルヤウニ願ヒマス、一カラ十マデヲ一ツヾ議題ト致シマス、原案ヲ朗読イタサセマセウカ、御手許ニゴザイマスカラ宜シウゴザイマスカ
  〔「省略」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 一ハ別ニ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 二、設立、是ハ一、二、三、四、五、其五ハ廃案ニナリマシテ、六、七ニ修正箇所ガ三ケ所ゴザイマス、此設立ノ項目ニ就テ別ニ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 三ガ組織、組織ハ一カラ四マデニ分レテ居リマシテ、第三ニハ修正ガゴザイマス
○大谷嘉兵衛君 第一ニ就キマシテ「其他之ニ準ズベキモノ」ト云フノハドウ云フモノデアリマスカ
○道家水産局長 只今ノ御尋ネハ、第一ノ「市町村其他之ニ準ズベキモノ」ト云フノハ、ドウ云フモノヲ云フノカト云フ御尋ネノヤウニ承ハリマシタ
○大谷嘉兵衛君 市町村ハ宜イガ、其他ノ市町村ニ準ズベキト云フ意味デアリマセウカ、其準ズベキモノハ何デゴザイマス
 - 第56巻 p.501 -ページ画像 
○道家水産局長 御答イタシマスガ、是ハ例ヘバ北海道デハ区民ト云フモノハ一ノ自治団体ニナツテ居リマス、又沖縄デモ斯ウ云フモノガゴザイマス、ソレデ市町村ト申シマスルト此等ガ省ケマスルカラ、ソレデ此等ニ準ズベキモノト書キマシタ
○議長(男爵渋沢栄一君) 組織ニハ別ニ御異議ゴザイマセヌケレバ第三ハ決定イタシマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 四デゴザイマス、此四ノ売買ハ三ツニ分レテ居ツテ、其三ヲバ修正上削リマシテ、一ガ競売ト云フコトヲ糶売ト直シマシタ、御異議ゴザイマセヌケレバ次ニ移リマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 今度ノ五ハ仲買人及附属小売人、是ハ唯一項デゴザイマス、是ハ別ニ御異議ゴザイマセヌケレバ、六ノ取締
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレカラ七ガ監督デ行政官庁ノ権限デゴザイマス、是ハイ、ロ、ハ、ニ、ホ、五ツニ分レテ居リマス、糶売人ト云フ字ガ附加ハリマシタ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 八ガ罰則
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 九ガ適用範囲、是ハ勅令ヲ以テ定ムト云フ修正ガ加ハツテ居リマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 十ガ経過規定、是ハ一、二、三ニ分レテ居リマス、別ニ修正ハゴザイマセヌ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ規定事項ハ之デ議了イタシマシタ続イテ事項ノ説明ニ移リマス
○田川大吉郎君 今ノ重要規定事項ヲ議了イタシマスレバ、此事項ノ説明ノ内容ニ這入ツテ議事ヲ願ハヌデモ宜カラウト存ジマス、只今ノ処ニ於テ此魚市場法案ナルモノガ議定セラレタコトニ御運ビヲ願ヒタウゴザイマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 是ハ議事ニ附サヌデモ全会一致ト認メテ宜シウゴザイマスカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 尚ホ別ニ御異議ゴザイマセヌケレバ、規定事項ノ説明ハモウ既ニ既定事項《(規)》ガ決定シテ居レバ、差支ナカラウト云フ御動議ガゴザイマスガ、御異議ゴザイマセヌケレバ、全部議了ト致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ此案ハ決定、全会一致ヲ以テ修正案ノ通リ決定イタシマシタ


生産調査会録事(第三回)《(第五回)》 (其ノ二)・第八―二二頁 大正二年三月刊(DK560121k-0004)
第56巻 p.501-507 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第五回)》  (其ノ二)・第八―二二頁 大正二年三月刊
 - 第56巻 p.502 -ページ画像 
    魚市場法制定ニ関スル件
諮詢案魚市場法制定ニ関スル重要事項別紙ノ通修正スルヲ可ナリト認ム
右本会ノ決議ニ依リ玆ニ答申候也
  大正元年十二月二日
                      生産調査会々長
    農商務大臣宛
      魚市場法重要規定事項
一、総則
 (一)魚市場ニ於テ取扱フ魚類ハ食用ニ供スル鮮魚介トシ、主務大臣必要ト認ムルトキハ、塩乾魚、其ノ他ノ水産動植物、若ハ水産製品ヲ指定スルヲ得ルコト
二、設立
 (一)魚市場ノ設立ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルコト
 (二)設立許可期間ハ二十年以内トシ、其ノ更新ヲ出願シ得ルコト
 (三)魚市場ハ一地区一箇所一営業者トシ、主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ分場ヲ設置スルヲ得ルコト
 (四)魚市場ノ設備ニ要スル土地又ハ水面ハ、土地収用法ノ規定ニ依リ収用又ハ使用スルヲ得ルコト
 (五)市町村其ノ他之ニ準スヘキモノカ魚市場ヲ設立シタルトキハ、其営業ヲ請負ハシムルコトヲ得ルコト、但シ其ノ料金ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘキコト
 (六)魚市場ニハ附属小売場ノ設置ヲ命シ、一般食料品小売人ニ貸付セシムルヲ得ルコト
三、組織
 (一)魚市場ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノヽ設立ニ係ル場合ノ外、株式会社組織タルヘキコト
 (二)魚市場ニ於テハ、其ノ魚市場ノ仲買人及附属小売人ニ対シテノミ卸売ヲ為スコト
 (三)魚市場ハ自ラ買付ヲ為シ、又ハ買付委託ヲ受クルヲ得サルヲ原則トスルコト
 (四)魚市場ノ業務規程ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘキコト
四、売買
 (一)魚市場ニ於ケル売買ハ糶売ヲ原則トスルコト
 (二)魚市場ハ其ノ仲買人及附属小売人ヲシテ証拠金ヲ納付セシメ得ルコト
五、仲買人及附属小売人
 (一)魚市場ハ其ノ仲買人及附属小売人ヲシテ身元保証金ヲ納付セシメ得ルコト
六、取締
 (一)魚市場ニ於テハ法令ノ制限禁止ニ牴触シ、又ハ衛生上有害ノ水産物ト認ムルモノヽ販売ヲ禁止スルコト
 (二)魚市場ニ於テハ場内取締人ヲ選任スヘキコト
 (三)魚市場ハ禁制品ヲ市場外ニ搬出又ハ廃棄スルコトヲ得ヘク、又秩
 - 第56巻 p.503 -ページ画像 
序維持ノ為メ入場ノ拒絶又ハ退場ヲ命シ得ルコト
七、監督
 (一)行政官庁ハ監督上左ノ事項ニ付権限ヲ有スルコト
  (イ)臨検、検査、捜索又ハ差押
  (ロ)設立許可ノ取消、業務停止若ハ制限
  (ハ)場屋其ノ他ノ建物ノ位置、構造、設備ノ変更
  (ニ)市場業務規程ノ変更、役員及場内取締人及糶売人ノ選任解任ノ認可若ハ改任ノ命令
  (ホ)魚市場設立ノ拒否、取消又ハ業務ノ停止、若ハ制限ノ処分ニ対シ訴願又ハ行政訴訟ヲ提起シ得ルコト
八、罰則
 (一)法令ノ違反ニ対シ相当ノ罰則ヲ設クルコト
九、適用範囲
 (一)法律ハ勅令ヲ以テ定ムル地区ニ之ヲ適用スルコト
 (二)主務大臣必要ト認ムルトキハ、指定地以外ノ地ニ法律ノ一部ヲ適用シ得ルコト
十、経過規定
 (一)従来ノ魚市場ニ於ケル魚問屋カ法律ノ規定ニ依リ、株式会社組織ノ魚市場ヲ設立セムトスル場合ニ於ケル相当ノ便宜規定ヲ設クルコト
 (二)従来ノ魚市場カ一地区ニ二以上アルトキハ、法律ノ規定ニ依ル魚市場ヲ設立スル為、協議会ヲ開カシムルヲ得ルコト
 (三)従来ノ魚市場ハ、法律施行後一定ノ期間営業ヲ継続スルヲ得ルコト
      魚市場法重要規定事項ノ説明
一、総則
 (一)魚市場ニ於テ取扱フ魚類ハ食用ニ供スル鮮魚介トシ、主務大臣必要ト認ムルトキハ、塩乾魚、其ノ他ノ水産動植物、若ハ水産製品ヲ指定スルヲ得ルコト
     従来魚市場ニ於ケル取扱物ハ、鮮魚・塩乾魚ヲ始メトシ、其ノ他ノ水産動植物、又ハ水産製品ヲ包含ス、特ニ大市街地ニ於テハ塩乾魚専門市場ノ存スルアリ、故ニ単ニ塩乾魚ノミヲ取扱フ市場、又ハ特殊ノ水産動植物、若ハ水産製品ノミヲ取扱フ市場ニ対シテ、本法ヲ適用スルノ必要アリヤ否ヤノ問題ヲ生スヘシ然ルニ鮮魚ト塩乾魚ハ、商品トシテ其ノ性質並取扱上ノ慣習ヲ異ニスルヲ以テ、塩乾魚市場ハ之ヲ鮮魚市場ト全然同一ノ規定ノ下ニ規律スルノ必要ヲ認メサルモノアルト共ニ、特殊ノ水産動植物、或ハ水産製品ニ関スル市場ノ如キハ、又必スシモ魚市場トシテ之ヲ規律スルノ必要ナキモノアルヘシ、依テ魚市場ニ於ケル取扱魚類ハ、食用ニ供スル鮮魚介ヲ主トシ、其ノ他ハ主務大臣ニ於テ必要ト認メタル場所ニ之ヲ指定スルコトヲ得セシメムトス、但シ取扱魚類ノ意義ヲ定ムルハ、是等ノ魚類ヲ取扱フ市場ヲ魚市場トシテ規律スルノ趣旨ニシテ、其ノ魚市場ニ於ケル取扱物ヲ限定スルノ趣旨ニ非ス、故ニ当該魚市場ニ於テ特
 - 第56巻 p.504 -ページ画像 
ニ指定シタル場合ノ外、塩乾魚又ハ其ノ他ノ水産動植物、若ハ水産製品ヲ販売スルコトハ敢テ之ヲ禁止スルノ要ナシ、恰モ家畜市場法ニ於テ家畜ノ種類ヲ限定シタルト同主意ナリ
二、設立
 (一)魚市場ノ設立ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルコト
     一定ノ地区範囲ニ於テ自由競争ヲ制限スルト共ニ、諸種ノ施設ヲ要求シ、又其取引行為ニ付各種ノ規定ヲ設クルヲ以テ、之カ実施ニ当リテハ設立者ノ資格其ノ他ノ用件ヲ精査シ、若又多数出願者ノ競合アルトキ之ヲ限定スルノ要アリ、之レ許可制度ヲ必要トスル所以ナリ
 (二)許可期間ハ二十年以内トシ、其ノ更新ヲ出願シ得ルコト
     期間ハ二十年ヲ相当ト認メタルモ、更新ノ出願ニ対シテハ之ヲ許可シ得ルノ途ヲ開ケリ
 (三)魚市場ハ一地区一箇所一営業者トシ、主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ分場ヲ設置スルヲ得ルコト
     魚市場ハ市町村ノ区域内ニ一箇所若ハ数箇所アルヲ常トシ、各市場多クハ独立ノ魚問屋ノ集合ナリ、而シテ取引上ノ弊害ハ結局彼等同業者間ノ分立競争ニ原因セサルモノナシ、之レ市場ノ合同、即チ一地区一箇所制ト営業ノ合同、即チ一営業者組織ヲ必要ト認ムル所以ナリ、蓋シ同業者分立競争ノ結果ハ、荷主ニ対シ回収困難ナル漁業資本ノ貸付ヲ拒否スル能ハサルコト、仲買人ノ勘定ノ遅延又ハ不払ヲ強制スル能ハサルコト、売買方法一定セス正確ヲ失スルコト、高価ノ相場ヲ通信シテ荷主ヲ誘惑スルコト、其他営業上ノ統一ナキカ故ニ、荷造又ハ容器ノ改良若ハ運輸上ノ利便ヲ図ル能ハサル等ノ弊害、又ハ欠点ハ往ク所トシテ有ラサルナシ、是等ノ弊ニ堪エスシテ一地区一営業者ノ実ヲ挙ケタル魚市場ハ、現ニ十数箇所ニ達シ孰レモ好果ヲ呈シツヽアリ
 (四)魚市場ノ設備ニ要スル土地又ハ水面ハ、土地収用法ノ規定ニ依リ収用又ハ使用スルヲ得ルコト
     魚市場ノ設備ニ対シテ土地収用ノ途ヲ開カムトスル所以ハ、其ノ位置カ海陸ノ運輸ト購買者ノ便宜ヲ計ルノ要アルト共ニ、一般交通及衛生上ニ重大ノ関係ヲ有スルカ故ニ、適当ノ場所ヲ選択セサルヘカラスト雖モ、其ノ土地買収ニ付テハ困難ナル問題ヲ生スルコトアルヘキヲ以テナリ
 (五)市町村其ノ他之ニ準スヘキモノカ魚市場ヲ設立シタルトキハ、其ノ営業ヲ請負ハシムルコトヲ得ルコト、但シ其ノ料金ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘキコト
     市町村ヲシテ市場ヲ設立シ営業者ニ貸付スルコトヲ得セシムルハ、市町村カ設立者トシテ権義ニ任スルノミナラズ諸般設備上ノ完全ヲ期スルコトヲ得テ、営業者ヲシテ多額ノ固定資本ヲ投ズルノ不利ヲ避ケシメ得ヘケレハナリ、尚料金ノ認可ヲ必要ト認メタルハ、金額其ノ当ヲ得サルトキハ生産者・消費者ノ負担ヲ大ナラシムル結果ニ陥ルヘキヲ以テナリ
 - 第56巻 p.505 -ページ画像 
 (六)魚市場ニハ附属小売場ノ設置ヲ命シ、一般食料品小売人ニ貸付セシムルヲ得ルコト
     邦人ノ常食タル魚類ノ価格ノ低廉ヲ図ルハ最モ緊要ノコトニ属ス、而シテ魚類小売価格ノ現状ヲ見ルニ、其ノ卸売価格ニ比シ非常ナル差異アルハ畢竟小売機関ノ宜シキヲ得サルニ帰セサルヲ得ス、依テ魚市場ニ附属ノ小売場ヲ設ケシメ、市場監督ノ下ニ卸売価格ヲ標準トシテ、可成的廉価ニ消費者ニ供給セシメムトス
三、組織
 (一)魚市場ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノヽ設立ニ係ル場合ノ外、株式会社組織タルヘキコト
     私人経営ノ場合ニ株式会社組織ニ拠ラシムルハ、固定資本ノ多額ヲ要スルコト、売買ノ公正ヲ期スルコト、信用程度ヲ確カナラシムルコト等、最モ適当ノ組織ナルト、一営業者制ハ事実多クハ合同ノ問題ニ属シ、合同ノ成立ハ株式組織ニ依ルヲ最モ便宜ト認ムルニ依ル
 (二)魚市場ニ於テハ、其ノ魚市場ノ仲買人及附属小売人ニ対シテノミ卸売ヲ為スコト
     鮮魚ノ如キ迅速ノ販売ヲ要スルト一時ニ多量ノ供給アルモノハ自ラ中間介立者ヲ要スルヲ免カレス、卸売ヲ仲買人ニ限レルハ従来ノ慣習ノ止ムヲ得サルモノアルヲ認ムルニ依ル、尚ホ附属小売人ニ対シ同様卸売ヲ為サシムルハ、附属小売人ハ附属小売場ニ於テ小売販売ヲ為スモノナルカ故ニ原料ノ購買ニ便宜ヲ与ヘ、小売価格ヲシテ低廉ナラシメムトスルノ趣旨ニ外ナラス
 (三)魚市場ハ自ラ買付ヲ為シ、又ハ買付委託ヲ受クルヲ得サルヲ原則トスルコト
     魚市場カ生産者及消費者ノ上ニ超然トシテ売買ノ公正ヲ維持スルニハ、純然タル委托販売ノ地位ニ立ツヲ可トス、自ラ魚類ノ買付ヲ為スカ如キハ、専ラ収利ノ念ニ駈ラレ如上ノ主義ニ反スルノ虞アルカ故ナリ
 (四)魚市場ノ業務規程ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘキコト
     業務規程ニ規定セシムヘキ主タル事項左ノ如シ
      一  市場ノ開閉、又ハ休場ニ関スル事項
      二  荷受及販売方法ニ関スル事項
      三  売上代金授受ニ関スル事項
      四  販売手数料、又ハ場代ノ率、並其ノ授受ニ関スル事項
      五  歩戻ニ関スル事項
      六  帳簿ニ関スル事項
      七  仲買人附属小売人、及小売人ノ加入脱退ニ関スル事項
      八  身元保証金及証拠金ニ関スル事項
      九  購買数量及価格公示ニ関スル事項
      十  小売場ニ関スル事項
      十一 取締其ノ他業務執行ニ必要ナル事項
      十二 違反者ノ処分ニ関スル事項
 - 第56巻 p.506 -ページ画像 
 以上ノ事項ハ魚市場ニ於ケル取引事実ニ関シ最モ重要ノ関係アルヲ以テ、予メ主務大臣ノ認可ヲ受ケシムルモノトス
四、売買
 (一)魚市場ニ於ケル売買ハ糶売ヲ原則トスルコト
     従来魚市場ニ於ケル売買方法ハ、糶売又ハ相対ヲ常トスルモ、相対売買ハ価格ヲ曖眛ニシ、糶売方法ト雖モ符牒ヲ用フルモノノ如キハ又公正ヲ期スルノ方法ニアラサルヲ以テ、糶売方法ニ依ラシムルト共ニ、其ノ金額ヲ明言セシメムトス、然レトモ魚類カ極メテ僅少ナルカ、又ハ頗ル多量ナルカ、其ノ他特別ノ事情ニ依リテ糶売方法ニ依ルヲ不便トスル場合ハ、之カ除外例ヲ設ケムトス
 (二)魚市場ハ其ノ仲買人及附属小売人ヲシテ証拠金ヲ納付セシメ得ルコト
     仲買人ハ従来代金ノ遅延、又ハ不払ヲ生スルコト頻々タリ、然レトモ営業者カ双互競争上之ヲ強制スル能ハサルヲ奇貨トシ、営業者間ニ転々シテ一方ノ不払ヲ糊塗シ、他方ト取引ヲ為ス如キ通弊アリ、一営業者制ヲ採ルノ結果ハ、其ノ制裁ヲ厲行シ得ヘキモ、尚ホ予メ売買ノ担保トシテ一定ノ証拠金ヲ納付セシメ其ノ金額ニ応シテ取引高ニ制限ヲ付シ、一面現金払若ハ極テ短期日ノ支払日限ヲ定メ、荷主ニ対シテハ魚市場ヲシテ責任ヲ有セシメ、以テ従来ノ弊風ヲ矯正セムトス
五、仲買人及附属小売人
 (一)魚市場ハ其ノ仲買人及附属小売人ヲシテ身元保証金ヲ納付セシメ得ルコト
     身元保証金ヲ納付セシムルハ資格上ノ一制限タラシムルト共ニ証拠金ト同様取引上ノ担保タラシムルヲ得レハナリ
六、取締
 (一)魚市場ニ於テハ法令ノ制限禁止ニ牴触シ、又ハ衛生上有害ノ水産物ト認ムルモノヽ販売ヲ禁止スルコト
     法令ノ禁制品ヲ販売シタルトキハ、当該法令上相当ノ制裁アリト雖モ、魚市場トシテハ一層違反行為ヲ取締ル必要アルカ故ニ魚市場法上ノ制裁ヲモ加ヘムトス
 (二)魚市場ニ於テハ場内取締人ヲ選任スヘキコト
     場内取締ハ監督権ノ作用ニ依ルヲ得ルコト勿論ナリト雖モ、市場内ノコトハ自治的ニ取締ヲ講セシムルコト最モ該切ノ事項ニ属ス、之レ次項ニ記スルカ如キ一定ノ権限ヲ有スル場内取締人ノ制ヲ設クル所以ナリ、而シテ其ノ選任・解任ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受ケシメ、其ノ適任者ヲ得セシムルト共ニ事ノ苟且ナラサラムコトヲ期ス
 (三)魚市場ハ禁制品ヲ市場外ニ搬出又ハ廃棄スルコトヲ得ヘク、又秩序維持ノ為メ入場ノ拒絶又ハ退場ヲ命シ得ルコト
     場内取締上ノ必要ニ出テタルモノニシテ其ノ処置ハ場内取締人ノ権限ニ属セシメムトス
七、監督
 - 第56巻 p.507 -ページ画像 
 (一)行政官庁ハ監督上左ノ事項ニ付権限ヲ有スルコト
     (イ)乃至(ホ)ノ監督事項ハ主務大臣又ハ地方長官ニ於テ臨機之ヲ為サシメムトス
八、罰則
 (一)法令ノ違反ニ対シ相当ノ罰則ヲ設クルコト
     罰ハ罰金又ハ科料ヲ課スルヲ以テ至当ト認ム
九、適用範囲
 (一)法律ハ勅令ヲ以テ定ムル地区ニ之ヲ適用スルコト
 (二)主務大臣必要ト認ムルトキハ、指定地以外ノ地ニ法律ノ一部ヲ適用シ得ルコト
     魚市場トシテ其ノ影響ノ最モ重大ナルハ取引高ノ多額ナル大市場ニシテ、地方ノ小市場ニアリテハ之ヲ同律ニ規スルノ必要ヲ認メス、故ニ法ハ取引高ヲ標準トシテ其ノ適用範囲ヲ定メ、尚ホ禁制品其ノ他衛生・交通・警察等ニ関スル如キ規定ハ、之ヲ一般市場ニ適用シ得ルモノトナスヲ適当ト認ム
十、経過規定
 (一)従来ノ魚市場ニ於ケル魚問屋カ法律ノ規定ニ依リ、株式会社組織ノ魚市場ヲ設立セムトスルトキハ、相当ノ便宜規定ヲ設クルコト
     一地区一営業ノ実際問題ノ一ハ、従来ノ魚市場ニ於ケル多数問屋業者ノ合同ナリ、全ク関係ナキ新規企業者ノ出現ハ固ヨリ有リ得ヘシト雖モ、従来ノ営業者ヲ保護スル為ニハ相当便宜ノ手段ヲ与フルヲ穏当トス、即チ此等ノ者カ法律ノ規定ニ依リ魚市場ヲ設立セムトスルトキハ、主務大臣ノ認可ヲ得テ創立総会ヲ開キ、市場創立ニ必要ナル事項ヲ決議シ、其ノ創立アリタルトキハ之ニ認可ヲ与フルカ如キ一種ノ優先権ヲ認ムルノ規定ヲ設ケムトス
 (二)従来ノ魚市場カ一地区ニ二以上アルトキハ、法律ノ規定ニ依ル魚市場ヲ設立スル為メ、協議会ヲ開カシムルヲ得ルコト
     一地区一営業ノ実際問題ノ一ハ、二以上ノ魚市場ノ合同ナリ、法律カ一営業者制ヲ採ルノ結果、此等ノ市場ハ其ノ合同ヲ企図セサル限リ廃業ヲ余儀ナクセラルヽヲ免カレス、故ニ合同問題ノ解決ヲ助クル為メ、協議会ヲ開催セシメ、場合ニ依リテハ其ノ協議ニ関シ主務大臣之カ裁決ヲ与ヘムトス
 (三)従来ノ魚市場ハ、法律施行後一定ノ期間営業ヲ継続スルヲ得ルコト
     法律施行ノ場合、本法ニ依ル魚市場設立迄ニハ多少ノ時日ヲ要スルヲ以テ、一定期間内従来ノ営業ノ継続ヲ認メ、魚市場成立ト同時ニ之ヲ廃止セシメムトス


生産調査会録事(第三回)《(第五回)》 (其ノ二)・第一六六―一八〇頁 大正二年三月刊(DK560121k-0005)
第56巻 p.507-512 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第五回)》  (其ノ二)・第一六六―一八〇頁 大正二年三月刊
    大正元年十一月二十六日(火曜日)午後一時五十分開会
○上略
○議長(男爵渋沢栄一君) 議場ニ御諮リシマスガ、織物消費税改正ニ関スル建議案ガ小山健三君ヨリ御提出ニナツテ居リマス、御本人ノ御
 - 第56巻 p.508 -ページ画像 
請求ハ今日此案ノ建議ヲ致シタニ就テ説明ヲ致シタイト御申出デニナツテ居リマスガ、工業助長ニ関スル案ガ今ノ魚市場ノ次ニ議スベキノガ順序ニナツテ居リマスガ、御本人ノ御請求ガアリマスカラ、別ニ御異議ゴザイマセヌケレバ織物消費税改正ニ関スル建議案ヲ此際議シテハ如何デス
○野田卯太郎君 昨日決議ニナツテ居リマスカラ、臨時ノ御希望ヨリ宿題ニナリ居ルモノカラヤツテハ如何デゴザイマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 然ラバ工業発達助長ニ関スル件、此答申書ニ就テ御議シヲ願ヒマス、昨日益田君カラ御提出ニナツタ工業法ニ関スル建議ハ撤回ニナリマシテゴザイマスカラ、ドウゾ左様御承知下ダサイ、蓋シ工業助長ノ方ニ自ラ現ハレテ出ルノデゴザイマセウ、工業助長法ニ就テ特別委員長カラ御報道ガゴザイマス
○男爵武井守正君 工業ノ発達助長ニ関シマスル委員会ノ前回ニ於テ中間報告ヲ致シタノデゴザイマスルガ、其節ニ何分広汎ナ問題デゴザイマスルカラ、十九名ノ委員ガ各々意見ヲ集メマシタル所ガ多数ノ問題ニナリマスルカラ、小委員ヲ組ミマシテ其中選ビマシタノガ十五件ニ纏リマシタ、其十五件ヲ尚ホ三部ニ分ツテ六名宛ノ小委員ヲ組ミマシテ議スルコトニ致シテ、其主査ヲ選挙シタト申スマデヲ御報告申シテ置キマシタ、其十五ノ箇条ノ中ニ委員会デ段々議事ヲ進メマスルニ従ツテ加除削挿ヲ致シマシタカラ、前ニ御手許ニ廻シテ置キマシタノト今度御手許ニ廻ツテ居リマスルノト違フ所ガゴザイマスカラ其事ヲ先ヅ以テ御報道ヲ申上ケマス、第一部ノ第三ノ「工業教育工業試験所ニ関スル件」ト申ス其「及模範工場」ト云フ字ヲ削除ヲ致シマシタ、従ツテ工業教育及工業試験所ニ関スル件ト改メマシタノハ、其次ノ第四ノ「機械製造ノ発達奨励ニ関スル件」ノ中ニ模範工場ヲ入レルガ相当ト認メマシタガ故ニ、此処カラ省キマシタノデゴザイマス、ソレカラ其次ノ第五ニ「工業上ノ改良発明奨励云々」トゴザイマシタノヲ、「意匠・図案・発明・奨励及功労表彰ニ関スル件」ト改メマシタ、其次ニ第一項ヲ加ヘマシテ第六ト致シマシマシテ、工業用材料及重ナル商品云々ト云フ一件ヲ之ニ挟ミマシテゴザイマス、ソレカラ第二部ノ第三ニ「重要輸出品又ハ輸入防遏品ノ選択助成ニ関スル件」ト云フノガ第三ニ置イテゴザイマシタノデゴザイマスガ、是ハ工業ノ発達助長以外ノ件デゴザイマスルカラ、爰カラ省キマシテ、委員ノ一人ガ建議トシテ之ヲ提出スルコトニナリマシテ、即チ先刻御手許ニ廻リマシタ案ニ改マリマシタ、更ニ第五ヲ置キマシテ「工場用地ヲ保留スル件」ト云フ、斯ウ云フ一件ヲ之ニ加ヘマシテ、ソレカラ第三部ノ「同業組合及労働者ニ関スル件」トゴザイマシタノヲ、「組合及職工ニ関スル件」ト改メマシタ、ソレハ同業組合ト申シマスルコトハ、即チ同業組合法ナドガゴザイマシテ紛ハシウゴザイマスカラ、単ニ組合ト直シマシタ、ソレカラ労働者ヲ職工ト改メマシタノハ、労働者ト申シマスルト甚ダ卑下シタヤウナ聞エニナリマシテ、三河町ノ立ン坊マデ即チ労働者デアリマスルカラ、左様ナ者マデ包括シタ文字ヲ使フヨリハ此場合ハ職工ノコトデゴザイマスルカラ、職工ト改メタ方ガ穏当デアルト申スノデ、労働ノ文字ヲ職工ニ改メマシタ、先ヅ以テ前ニ御報道イタ
 - 第56巻 p.509 -ページ画像 
シマシタノト変リマシタ点ヲ申上ゲ置キマス ○中略 第一ノ製造用原料ニ関スルコト、是ハ冒頭ニ書キマシタ通リ、或ハ其製造者カラ申シマスルト製品デアツテ、其製品ヲ又製造スル上ニ於キマシテハ原料トナルト云フガ如キモノハ是ハ多数ニゴザイマスルカラ、仮スニ日子ヲ以テ調査スル上デアリマセヌト、ハキトシタ適切ナル論断ヲ下スコトハ出来マセヌカラ、先ヅ単純ナルモノニ付テ申シマスルト、即チ内地産ニ関スルモノデハ或ハ陶器ノ原料ノ粘土ノ如キモノガアル、是ハ何処ニモアル訳デナクシテ、或地区ノ一部ニ良イモノガアル、ソレヲ採掘ヲシマスノデゴザイマスルガ、兎角数量ヲ殖サムガ為メニ混同サシテ物ヲ殖スト云フヤウナ弊ガアリマスルカラ、従ツテ製造品ガ粗悪ニナリマスルカラシテ、其濫採ヲ防止シ、又混同ヲセヌヤウニ取締ヲシナケレバナラヌト存ジマス、又其地区ニ限リマスルカラ所謂足許ヲ見テ非常ナ暴利ヲ貪ルヤウナ弊ガゴザイマスルカラ、是等モ矯正ヲシナケレバナラヌト申スノデゴザイマス、輸入品ニ付キマシテハ鉄・棉・羊毛ニ関スルコトデゴザイマスガ、是ガ重立ツタモノデゴザイマスカラ、鉄ノ需要ハ年々増シマシテ尚ホ増加ノ勢デアリマスルニ、其原料ハ内地ニ無イデハゴザイマセヌケレドモ、或ハ僻地ニアツテ出スニ困難デアリ、又港ガ不完全ナ為メニ積ムニ困難デアルト云フヤウナコトカラシテ、終ニ内地産ノミヲ以テ需給スルト云フコトハ甚ダ困難デアル、強ヒテ之ヲ内地産ノ需給ニ仰ギマスルトキニハ其原料ガ高価ニ上ツテ致方ガナイ、是ハ内外ニ俟ツノ外ハナイノデゴザイマスルガ、兎ニ角輸入品ニ致シマシテモ其原料ヲ潤沢ニシテ、成ベク製品デ海外ヨリ這入ラヌヤウニ努メテ往カナケレバナラヌト存ジマスル、ソレカラ棉、此物ガ近年非常ニ発達ヲ致シマシテ、昨年ノ如キハ一億五千万円近イ金ヲ出シテ原料ヲ求メマシタ、尤モ其中製品ガ八千万円バカリハ輸出ニナリマシタケレドモ、尚ホ半数ハ内地デ使用ヲシタ訳デアリマシテ本年ノ如キハ二億ニモ近イ原料ガ這入ラウト申スコトデゴザイマス、是ハ一ニ原料ヲ海外ニ仰イデ居ルノデアリマスルカラ、内地デ出来ヌカト申シマスルト、今試作中ダサウデアリマスル、ケレドモ朝鮮及ビ台湾ノ如キハ気候及ビ其土質ニ対シテ出来得ヌデハナイ塩梅デゴザイマスカラ、宜シク調査ヲシテ成ベク内地産ヲ以テ其幾部ヲ補フト云フヤウニ努メルコトガ今日ノ急務デアラウト存ジマス、羊毛、是モ内地ニハ何程モゴザイマセヌデ、総テ輸入ヲ仰イデ居リマスルノデゴザイマスルガ、是モ年々需要ガ殖エマシテ、モウ一千万円以上ニ及ンデ居リマスノデアリマスルカラ、是等ハ成ベク内地デ羊ヲ飼養スルヤウニ致サセル方法ヲ宜シク政府ニ於テ講ズルノガ今日ノ必要デアラウト存ジマス、次ニハ工業用ノ食塩デアリマスルガ、機械工業等ニ対シマシテハ曹達ガ必要デアル、曹達工場ハ二十六・七年末カラ始マリマシテ段々工場モ殖エツヽアリマシタモノヲ、三十八年ニ食塩ノ専売法ガ立チマシタノデ、其専売法デ塩ガ高クナリマシタ結果トシテ折角出来掛ツテ居リマシタ工場ガ廃業ヲシテ今日ハ僅ニ二工場シカ存在シテ居ラヌト申スコトデアリマス、斯ク工業ノ発達ニ伴フテハ此曹達ノ必要ガアリマスルノデゴザイマスルカラ、成ベク食塩ヲ廉ク之ニ供給シテ、海外ノ曹達ヲ俟タズシテ内地ノ製造デ間ニ合ハセルヤウニシナケレバ
 - 第56巻 p.510 -ページ画像 
ナラヌ訳デゴザイマスルカラ、塩ノ専売ニ対シマシテモ工業用ハ値ヲ段々軽廉ニハサレマスケレドモ、今尚ホ高イノデゴザイマスルカラ、特別ノ方法ヲ設ケテ一層便利ヲ与フルヤウニサセナケレバナラヌト存ズルノデゴザイマス、原動力ニ関スルコト、此原動力ハ石炭ト水デアリマスルガ、水ヲ利用ヲ致シマスレバ炭ヲ焚キマスルヨリハ価ノ廉イト云フコトハ論ヲ俟タナイノデゴザイマス ○中略 第三ノ工業教育及ビ工業試験所ニ関スル件、工業教育ヲ奨励シマシテ、兎ニ角仕事ヲスルノニハ人物ガ先デゴザイマスカラ、人物ヲ養成スルコトヲ努メナケレバナラヌト思ヒマス ○中略 第二ニ工業試験所ニ関スルコト、材料又ハ製品等ノ検定証明ヲ与ヘマスルコトハ最モ今日必要デアリマスルカラ、サウ云フコトヲ官立又ハ公立ノ工業試験所ヲ拡張シマシテ宜シク検定シ証明シテ世人ノ信頼スルヤウニスルコトガ是亦必要デアルト存ジマスソレカラ新規ニマダ仕馴レマセヌ仕事ヲ企テヤウト存ジマスルノニ一向安心《(出脱)》ガ来マセヌカラ、奮発シテ金ヲ投ジテ試験的ニ工業ヲ始メヤウト云フ人ガアリマセヌカラ、サウ云フ場合ニ於キマシテハ試験所ニ於キマシテ実地ヲ調査シマシタリ、斯ウスレバ宜イト云フ利害ノ岐ルヽコトヲ指示スガ如キハ、即チ投資シテ業ヲ始メヤウト云フ者ニ向ツテハ最モ必要ト存ジマス ○中略 ソレカラ意匠・図案・発明奨励及功労表彰ニ関スルト申シマスルノハ、意匠・図案ガ今日ハソレ程重ク視テ居ラヌト見エマシテ、大会社デハ意匠・図案家等ヲ聘用シテ居ル所モアリマスルケレドモ、多クハ図案家ヲ聘シテ居ルナドヽ申スコトガ少イ為メニ製品ガ千遍一律デ、トント変リガアリマセヌカラ、海外ヘモ左程出ナクナリツヽアル、是等ハ余程奨励スルコトガ今日ノ急務デアラウト存ジマス、又発明ニ付キマシテモ懸賞募集等ヲ致シマシタナラバ、是レ又余程工夫ヲシマシテ新ナ事ヲ考ヘル人モ出マセウカラ、今日ソレモ必要デアラウト存ジマス ○中略 ソレカラ第二部ノ工業資金ニ関スルコト、工業ニ資金ノ必要アルコトハ言フマデモアリマセヌガ、其資金供給ノ方法ト致シマシテハ普通銀行ニ不動産又ハ工場財団ヲ担保トシテ融通ヲ為サシメルヤウニ致シタイ、普通銀行ガ不動産又ハ財団ヲ担保ト致シマシテ長期ノ貸付ヲ致シマシテハ事態困ル訳デアリマスルカラ、是ハ中央金融機関――是ハ勧業銀行、興業銀行ヲ指シマスルノデゴザイマス、ソレ等ヨリ更ニ之ヲ再担保トシテ金融ヲサセルヤウニシタナラバ資金ノ供給ガ出来テ宜カラウト存ジマス
○添田寿一君 チヨツト発言ヲ御許シ下サイマセヌカ
○議長(男爵渋沢栄一君) 今発言中デスカラ……
○添田寿一君 ソレニ付キマシテ……其事柄ナノデス……私ハ議場ニ御諮リシタイノハ、一々説明ヲ下サイマセヌデ、質問ニ取掛ツテハ如何デゴザイマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 半分バカリヤツタノデスカラ、御進行ニナツタラ如何デゴザイマセウ
○男爵武井守正君 ソレデハ極ク略シテ申スコトニ致シマス、第二ノ新航路ヲ開クト申スコトハ説明ニモ書イテアリマスル通リニ、北海道上海間ト申スモノハ、殆ド北海道ノ物産ハ上海ガ消費地デアルノデゴザイマスカラ、接続船ニ依ルヤウナコトヲシテハ商機ヲ逸スルカラ、
 - 第56巻 p.511 -ページ画像 
却テ定期航路ヲ開クガ宜イ、神戸・青島間ノ航路ヲ開クノハ此ノ間ハ独逸ガ近頃鋭意開発スルニ付キマシテ段々繁栄ヲ来シ、天津其他ノ市場ノ繁栄モ此ノ青島ニ移ルデアラウト人ガ皆認メテ居ルコトデアリマスカラ是等ノ航海ヲ開クモ今日又急要デアラウ、ソレカラ「パナマ」ノ運河ガ開通イタシマシタ暁ニハ、是レ亦欧米デ既ニ設計シツヽアルノデアリマスカラ、香港ヲ基点トシテ紐育ニ到ル定期航海ヲ開クコトガ必要デアルト存ズルノデス、斯ク言ツテ参リマスルト非常ニ長クナリマスルカラ、今添田君ノ御注意モアリマスカラ説明ヲ略スルコトニ致シマス、此第二部ノ五ノ次ニ新ニ第六ヲ置キマシテ、益田君ガ撤回ニナリマシタ工業法案ヲ玆ニ差加ヘルコトニ致シマス、第三部ハ総テ略シマスルガ、第五ノ第三ノ官庁用品ハ成ベク内国品ヲ用フル、是ハ大ニ力メテ貰ヒタイト存ジマスルカラ特ニ此事ヲ玆ニ一言イタシテ置キマス、ソレカラ第五官業ノ整理工業補助ニ関スル件ト申シマスル、前ノ添田君ノ御提出ノ官業ニ関スル建議案ガアリマシタノヲ特別委員ノ工業ノ発達助長ノ方ニ入レテ仕舞ツタラ宜カラウト云フノデアチラニ移サレマシタノデアリマス、即チ此案ガ移サレテ議サレタ案デゴザイマス、ソレカラ第一部ノ原動力ニ関スル件、是モ前ニ水力ニ関スル件ニ付テ建議案ガ日比谷平左衛門君カラ御提出ニナツテ、是モ委員会ニ移シタガ宜カラウト云フノデ移サレタノガ、即チ原動力ニ関スル件ト云フノデ玆ニ現ハレテ居ルノデゴザイマス、此段御報告イタシマス
○野田卯太郎君 私ハ当局者ニチヨツト御尋ネヲ致シマス、是ハ無論諮問案デアラウト私ハ途中カラ這入リマシタカ確メマシタ、諮問案ニ対スル答申デアラウト思ヒマスガ、此中ニハ採ルベキコトモアリ、採ラザルベキコトモアルト云フコトハ農商務大臣トシテ必ズアルコト、総テ之ヲ採用サルヽト云フコトハ真逆アルマイ、アレバ宜イケレドモアルマイト思フ、此中ノモノヲ見レバ是ハ世ノ中ニ公表シテ、斯云ウフコトハ良イトカ悪イトカ、此ノ如クセネバナラヌトカ云フコトハ新聞紙上ニ打出シテ、サウシテ発表シタラ公益ニナラウト思フ、之ヲ議会ニ一々出サルヽトシテモ俄ニ我々ハ賛成ハ出来ナイ、沢山銭ノイルコトデスカラ、事柄ハ皆賛成シマスガ、財政上如何ト考ヘル点ハ多々アル、又財政ニ関係ノナイコトデ宜イコトモアル、願クハ本員ハ此中総《(テ)》アトハ言ヒマセヌガ、此答申書ハ公ニサレムコトヲ希望シマス
○豊川良平君 是ハ事柄ハ大変良イガ、金ノイルコトガナカナカ多イ……(聴取シ難シ)是ハ助成金ナシデヤレト云フ考デゴザイマセウカ又航路ヲ日本カラ紐育マデ開ク、或ハ浦塩マデ開クト云フコトハ必要デスガ、ソレニ対シテハ政府ガ航海奨励法ニ依ツテ、航海補助法デ大ニ金ヲ貰ツテヤルト云フ御趣意デスカ、唯自然ノ発達ニ任シテヤルト云フ奨励スル方デゴザイマスカ…… ○中略
○男爵武井守正君 御答ヲ致シマス、定期航海ヲ開カセマスニハ幾ラカノ補助ヲ貰ハナケレバ開ケヌ訳デゴザイマスカラ、ソレハ無論補助ハアル積リデ書キマシタノデゴザイマス
○中略
○法学博士桑田熊蔵君 議事ノ順序ニ付キマシテチヨツト皆サンノ御賛成ヲ得タイノデゴザイマス、何シロ広汎ナル答案デゴザイマスルカ
 - 第56巻 p.512 -ページ画像 
ラ、質問多岐ニ亘ツテ、一部・二部・三部ト各々ニ質問ガ沢山アラウト思ヒマス、ソレデ質問ノ順序ヲ分ケマシテ、第一部ノ先ヅ質問ヲ終ツテ、二部・三部ト斯ウ質問ノ順序ヲ分ケテ為サレムコトヲ希望イタシマス
○田川大吉郎君 私モ議事ノ順序ト云ヒマスカ、進行ノ方法ニ付テ希望ガアリマス、要スルニ特別委員長ノ詳細周密ナル御報告ヲ伺ヒマシタガ、其網羅サレテ居ル事項ノ甚ダ多々ナル為メニ、質問モ議論モ極メテ多カラウト存ジマス、ドウゾ此際ニ於キマシテハ本日ノ此答申案ニ関スル議事ヲ之ニ止メテ、我々ニ一日ノ思考ノ猶予ヲ与ヘラレムコトヲ希望シマス
  〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 別ニ皆サンニ今田川君ノ御動議ニ御異議ゴザイマセヌケレバ、今日ハ此案ハ是デ止メテ置イテ明日ノ議事ニ議題ニシタラ如何デゴザイマセウ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハサウ致シマス
   ○答申案ハ参考トシテ後掲。


生産調査会録事(第三回)《(第五回)》 (其ノ二)・第一八〇―一八八頁 大正二年三月刊(DK560121k-0006)
第56巻 p.512-513 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第五回)》  (其ノ二)・第一八〇―一八八頁 大正二年三月刊
    大正元年十一月二十六日(火曜日)午後一時五十分開会
○上略
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハサウ致シマス、併シ玆ニ外ニ一・二ゴザイマスルカラ……
○奥繁三郎君 チヨツト小山サンノ御提出ノ建議ニ付テ御尋ネシタイコトガゴザイマス
○議長(男爵渋沢栄一君) 小山サンガマダ御報道ガアリマセヌカラ、ソレヲ願ツテカラニ致シタラ宜シウゴザイマセウ、ソレデハ玆ニ織物消費税改正ニ関スル建議案……
  〔朗読〕
    織物消費税改正ニ関スル建議案
 織物消費税ニ対シ現行法ハ絹綿毛ノ各物均シク一割ヲ課税スト雖モ其創設セラレタルハ戦時財政切迫ノ際ニ在リテ、之ヲ平時ニ続行スルハ経済及社会政策上当ヲ得タルモノニアラス、抑絹織物ハ比較的富裕者ノ消費ニ属シ、殊ニ輓近都鄙挙テ奢侈ニ流レ質実ノ気風地ヲ払ハントスルノ傾向ヲ生シ、絹糸ノ濫費セラルヽハ掩フヘカラサル事実ニシテ、今ニ於テ之カ矯正ノ途ヲ講スルト共ニ、内国ノ消費ヲ抑ヘ、之ヲ海外ノ輸出ニ転スルノ方法ヲ求ムルハ国家ノ急務ト謂ハサルヘカラス、翻テ労働者生活ノ状態ヲ察スルニ、日用必需品ノ価益々騰進シ頗ル困厄ノ境遇ニ在リ、然ルニ彼等ノ日用必需品タル綿織物ニ課税スルハ断シテ当ヲ得タルモノニアラス、依テ政府ハ税法ヲ改正シ、絹織物消費税ノ増率ヲ行ヒ、其増収ヲ以テ綿織物消費税ヲ全廃スルノ財源ニ充当シ、一挙両得ノ施設アランコトヲ切望ス、但絹織物消費税増率ニ対シ、絹綿交織品ノ如キ又稍々実用ニ属スルモノヽ如キ課税ノ標準ヲ定ムルニ多少ノ障碍ヲ免カレサルモ、之ヲ
 - 第56巻 p.513 -ページ画像 
調節スルノ方法ナキニアラサルヘク、又此等ノ煩アルノ故ヲ以テ躊躇スルノ理由トナスニ足ラスト信ス
 右建議ス
  大正元年十一月二十六日
                提出者   小山健三
                賛成者   益田孝
                      ○外一四名氏名略ス
○小山健三君 兎モ角モ理由書ニ大要ガ上ゲテアリマスカラ、余リ詳シク申上ゲマスト、ソレガ為メニ賛成ヲ失フヤウニナリマスカラ簡単ニ申上ゲマス、併ナガラ只一言申上ゲナケレバナラヌコトガ玆ニ書イテゴザイマセヌカラ、一言イタシテ置キタイト存ジマスルノハ、近来輸入超過、海外ノ貿易ハ非常ニ不均衡ニナツテ居リマシテ、其輸入ノ夥シイコトハ殆ド一般ノ認ムル所デゴザイマシテ、工業助長案ノ諮問セラレマシタルノハソレニ対スル方針モ第一ニ建議案ニ出テ居リマスルガ、均シク貿易ノ逆勢ヲ挽回スルニハ如何ニスルヤト云フコトニ外ナラヌト存ジテ居リマス、然ルニ之ニ付キマシテ議論ハ種々ニ試ミラレ、又注意トシテハ余程良イ注意ガ段々出テ居ルヤウデゴザイマスガ要スルニ今日ハ議論ノ時期ニ非ズシテ実行ノ時期デアラウト存ジマス議論ヲ闘ハセルコトハ是ハ随分名論卓説ガ必ズシモ難キニ非ズト存ジマスルガ、此実行ノ方法トシテ一ヲ得レバ、一ヲ行フト云フコトガ今日ノ急務デナイカト思ヒマス、今日消費税ノ課税ヲ為ス場合ニ、織物ノ税法ハ世間ガ悪税ト称ヘテ居リマス ○中略 唯ソレ等ノ一・二ノ事情ノ為メニ全般ノ方針ヲ誤ルノハ遺憾ナコトデゴザイマスカラ、政府ニ於キマシテハ此大方針即チ贅沢品ヲ抑ヘ、一面ニハ輸入ヲ輸出ニ転ゼシムル所ノ方針ト、ソレカラ一般ノ中以下ノ国民ニ対シテ日用品ノ贅沢費ヲ制限スルト云フ、社会政策上ノ根本観念ヲ以テ、多少ノ難事ハ排除サレテ、是等ヲ実行セラルヽコトガ今日ノ財政ヲ立テル上ニ於キマシテモ、実行上ノ問題トシテ私ハ急務デアラウト存ズルノデゴザイマス、唯是ハ議論デナク、寧ロ実行ノ出来ル案デゴザイマス ○中略
○野田卯太郎君 是ハ委員附託ヲ希望シマス
  〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 此問題ニ付キマシテ委員附託論ガ出テ居リマスガ、別ニ御異議ガゴザイマセヌケレバ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 委員ノ選挙ハ議長ニ御任セニナリマスカ
○野田卯太郎君 御任セ申シマス
  〔朗読〕
 仲小路廉君 上埜安太郎君 早速整爾君 橋本圭三郎君 浜岡光哲君 奥田正香君 小山健三君 中沢岩太君 田川大吉郎君


生産調査会録事(第三回)《(第五回)》 (其ノ二)・第一八九―一九六頁 大正二年三月刊(DK560121k-0007)
第56巻 p.513-516 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第五回)》  (其ノ二)・第一八九―一九六頁 大正二年三月刊
    大正元年十一月二十六日(火曜日)午後一時五十分開会
○上略
○議長(男爵渋沢栄一君) 今一ツ建議ガゴザイマス、「パラフヰン・
 - 第56巻 p.514 -ページ画像 
ワックス」無税範囲拡張ニ関スル建議案、朗読イタシマス
  〔「朗読省略」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 朗読ハ省略シテ宜シウゴザイマスカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
  〔参考ノ為左ニ掲載ス〕
    「パラフヰン・ワックス」無税範囲拡張ニ関スル建議案
 明治四十三年法律第四十三号関税定率法輸入税表中「パラフヰン・ワックス」ノ融解点摂氏四十二度ヲ超エサルモノ無税トアルヲ、更ニ其範囲ヲ拡張シ、融解点摂氏四十五度ヲ超エサルモノ無税ト改正セラレンコトヲ望ム
 右建議ス
      理由
 抑モ「パラフヰン・ワックス」ハ燐寸ヲ製造スルニ欠クヘカラサル原料ノ一ニシテ、我カ政府ハ国産保護、輸出奨励ノ為メ去ル明治三十二年ニ於テ、其融解点摂氏五十度未満即チ燐寸原料専用ノモノニ関シ輸入関税ヲ免除セラレ、当業者ハ其恩典ニ浴シ来リシモ、同四十二年ニ至リ本邦木蝋業者カ「パラフヰン・ワックス」ノ融解点摂氏五十度未満ノモノハ蝋燭ノ原料ニ使用スルモノアリトシテ、木蝋トノ価格平衡ヲ保ツノ必要ニヨリテカ輸入課税ヲ請願シタル結果、融解点摂氏四十二度ヲ超エサル迄ニ其範囲ヲ減縮セラルヽニ至レリ当時当業者ハ優ニ融解点ノ低度ナルモノヽ供給ヲ受ケツヽアリテ何等支障ナキタメ、漫然之ヲ看過シタリキ、然ルニ本年二月末日紐育スタンダード・オイルコンパニー」ヨリ日本燐寸同業組合ニ対スル通報ニ依レハ、燐寸「ワックス」ノ生産地タル米国「ペンシルベニヤ」州ニ於テ近来融解点ノ低度ナル即チ摂氏四十二度以下ノモノヲ製出スベキ原油全ク欠乏シ、之カ製造ヲ廃止スルノ余儀ナキコトヽナリシニ依リ、之ニ代フルニ現ニ有税ナル融解点摂氏四十三度乃至四十五度迄ノモノヲ燐寸原料用トシテ輸入スルノ外途ナキニ立チ至レリト、又其他英吉利製ニシテ融解点摂氏四十二度以下ノモノ現ニ輸入サレツヽアルモ、極メテ少量ニシテ僅カニ一部ノ需用ヲ充タスニ過キサルノミ
 ○中略 本邦燐寸カ累年漸進シテ東洋市場ヲ独占シ得タル所以ノモノハ唯々品質ノ割合ニ比シ低廉ナル価格ニ依リテ勁敵ト戦ヒ惨澹タル苦酸ヲ嘗メタル結果ニ外ナラサルニ、今ヤ著シク諸物価ノ暴騰ニ伴ヒ労銀其他内地産出ノ諸原料モ昂騰シ、従テ製品価格ヲ騰貴セシメ所謂本邦燐寸ノ特長タル価格ノ低廉ヲモ維持スル能ハサルニ至リシニ近年支那各地ニ勃興スル燐寸工場カ比較的低廉ナル労銀ニ依リテ製出スル燐寸ト競争セサルヘカラサル等、前途酷タ多事ナルノ秋ニ際シ、燐寸「ワックス」ニ対スル輸入関税ヲ負担センカ、当業者ノ困苦ソレ果シテ如何ソヤ、仮リニ当業者カ忍ンテ之ヲ負担スルモ自然製品ノ粗悪ニ陥リシ事実ハ過去ノ経歴ニ徴シテ明カナレハ、結局本邦燐寸工業経営上顧慮スヘキ問題ナルニ、徒ラニ之ヲ等閑ニ付シ去リテ課税品ヲ使用センカ其影響スル所蓋シ鮮少ナラサルヘシ
 ○中略
 - 第56巻 p.515 -ページ画像 
 上来叙述スルカ如キ理由ナルヲ以テ、今尚ホ国産貿易ノ発展ニ資スル為メ燐寸工業ヲ保護スルノ必要ハ敢テ昔日ト異ナラサルノミナラス、却テ此際之レカ保護ヲ忽諸ニ付スヘカラサルコトハ玆ニ弁明ヲ要セサルニ依リ「パラフヰン・ワックス」ノ無税範囲ヲ昂上シ、従前ノ如ク輸入課税ヲ免除セラレンコトヲ特ニ悃望ニ堪ヘサルナリ
 ○中略
  大正元年十一月二十六日
                 提出者   滝川弁三
                 賛成者   益田孝
                       土居通夫
                    男爵 武井守正
     生産調査会々長 男爵 牧野伸顕殿
○議長(男爵渋沢栄一君) 提出者ハ滝川君デス、滝川君此趣意ニ付テ御説明ガアリマスカ
○滝川弁三君 説明ハ随分詳シク書キマシタ積リデゴザイマスガ、抑抑燐寸ト申シマスルモノハ御承知ノ如ク明治八・九年カラ始マリマシテ、漸ク二・三年間経チマシテ輸出ヲスルヤウニナリマシテ……漸ク一千万円ニ達シマシタノハ数年前デゴザイマス、然ルニ其以来追々支那デ製造ガ出来テ来、或ハ……
  〔此時議場私語スル者多シ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 説明中デス、ドウゾ御討論ハ御止メヲ戴キタウゴザイマス
○滝川弁三君 最初ハ上海方面ニ輸出ヲ致シマシテ、追々進ミマシテ香港ニ行キ、新嘉坡・南洋諸島、近来ハ印度方面ニマデ行ツテ居リマス、ケレドモ此輸出ノ金額ヲ考ヘマスルト、既往六年以前ニ一千万円ニ達シマシタガ、昨年マデ五箇年間ヲ計算イタシマシテ矢張リ平均ガ一千万円ヲ超ヘテ居ラヌト云フノハ、印度辺ニ参リマスルト欧羅巴製ノ物ト非常ナ競争ガアリ、尚ホ追々製造所ガ出来ルト云フヤウナ次第カラ、余程当業者ハ苦心惨憺ノ有様デアリマス、然ルニ政府ハソレヲ保護セムガ為メニ重ナル輸入原料ハ総テ免税ニナツテ居ル、即チ「パラフヰン・ワックス」モ免税ニナツテ居リマス、然ルニ是ガ四十二年ニ五十度以下《(四十二)》ノモノニ限ツテ免税ニナツテ居リマス ○中略 ソレデ愈々明年カラハ、百斤三円四十五銭ノ課税ニナルノデ、燐寸一箱ニ付テ僅々二十銭―二十円近イモノデ二十銭位ノモノハ何デモナイヤウナモノデゴザイマスガ、今日此競争ノ激シイ時ニ、是マデ一千万円マデ進ミナガラモ、将来ハトント其以外ニ超過スルコトガ出来ヌヤウニナル、此二十銭ト云フモノハナカナカ容易ナラヌモノデゴザイマス、金額ニ致シマシタナラバ多少四十二度以下ノモノモ参リマセウカラ一箇年ニ十万円カ十万円余リノモノデゴザイマセウカ、ソレガ燐寸業者ニ取リマシテハ非常ナコトニ感ジマス、之ヲ新ニ免税ニシテ貰ヒタイト云フ訳デハゴザイマセヌ、将来此儘デアレバ課税サレヌモノヲ、ドウカモウ僅ニ三度丈ケノ税ヲ許シテ貰ヒマシテ、無税デ従来ノ通リニシテ戴キタイト云フ丈ケノ考デゴザイマス、ドウカ此案ハ速ニ委員附託ニデモナリマスレバ御決議ニナリマシテ、何卒御賛成ヲ願ヒタイノデゴザイ
 - 第56巻 p.516 -ページ画像 
マス
○男爵田健治郎君 委員附託賛成
○議長(男爵渋沢栄一君) 本案ニ付テ委員附託ノ御動議ガゴザマイス御異議ゴザイマセヌケレバ委員附託ニ致シマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
  〔朗読〕
 男爵田健治郎君 勝田主計君 大野亀三郎君 岡崎邦輔君 和田維四郎君 土居通夫君 滝川弁三君 松山忠二郎君 工学博士高松豊吉君


生産調査会録事(第三回)《(第五回)》 (其ノ二)・第一九六―一九九頁 大正二年三月刊(DK560121k-0008)
第56巻 p.516-517 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第五回)》  (其ノ二)・第一九六―一九九頁 大正二年三月刊
    大正元年十一月二十六日(火曜日)午後一時五十分開会
○上略
○議長(男爵渋沢栄一君) 今一ツ玆ニ建議ガゴザイマス、大分時ガ経チマシタケレドモ、此提出者ハ子爵三島弥太郎君デスガ、今日ハ御病気デ欠席ニナツテ居リマス、併シ賛成者ノ中ノ添田寿一君ガ充分説明ノ資格ガアリ、且ツ其任ニ当ルト云フコトデゴザイマスカラ、ドウカ此案丈ケヲ一ツ御議シヲ願ヒマス
  〔「朗読省略」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) 朗読ハ省略イタシマス
  〔参考ノ為左ニ掲載ス〕
    重要輸出品及輸入防遏品ノ選択助成ニ関スル建議案
 明治三十七八年戦役以後国債ノ急激ナル増加ニ因ル多額ノ利払及外国貿易ニ於ケル連年ノ輸入超過ニ依リ、正貨ノ流出スルモノ甚タ巨額ニシテ、国民上下此形勢ヲ憂慮シ、之カ匡正ヲ努メ苦心経営スル所アリト雖モ、未タ其効果ヲ挙クル能ハス、今ニシテ速ニ之カ対策ヲ講スルニアラスンハ国家ノ前途真ニ寒心ニ堪ヘサルモノアラン、而シテ此逆勢ヲ挽回シ正貨ノ流出ヲ防遏セントセハ、先ツ我産業ヲ助長シ輸入ノ減少ヲ図ルト共ニ輸出ノ増加ニ努メサルヘカラス、是レ何人ト雖モ異議ナキ所ナランモ、政府従来ノ方針ノ如ク各般ノ産業ニ対シ各種ノ品目ニ付奨励ヲ施サントセハ、我国ノ現状ニ於テハ其周到ヲ期シ難ク、奨励徒ラニ多岐ニ亘リテ結局其効果ヲ奏スルコト頗ル困難ナルヘシ、故ニ将来一定ノ方針ヲ樹立シ、重要輸入品数種ヲ選定シテ之ヲ産出シ、又ハ之カ代用品ヲ求ムルト共ニ、最モ有望ナル輸出品数種ノ産出ヲ助長スルコトヽシ、其品目ニ付テハ現在産出ノ状況ト将来発展ノ余地トヲ斟酌シテ慎重ニ之ヲ決定シ、之ニ対シテ国家ノ努力ヲ集注スルコトトセハ、歳月久シキニ亘ラスシテ外国貿易ノ順潮ヲ恢復シ、国本ノ基礎ヲ確実ナラシムルコトヲ得ヘク、誠ニ当今ノ至務ト謂フヘシ、依テ此主旨ニ基キ産業奨励ノ方針ヲ樹立センコトヲ望ム
 右建議ス
  大正元年十一月二十六日
               提出者 子爵 三島弥太郎
               賛成者    益田孝
 - 第56巻 p.517 -ページ画像 
                      ○外九名氏名略ス
○法学博士添田寿一君 ソレデハ説明モ省略イタシマス、此案ハ申スマデモナク皆サン御賛成ト思ヒマスカラ、ドウカ即決ヲ願ヒマス
  〔「賛成」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ満場ニ諮リマスガ、即決デ異議ガゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○議長(男爵渋沢栄一君) ソレデハ是ハ委員附託ニ及バズ直グ此案ノ通リニ決定イタシマス、今日ハ是テ終リニ致シマス、ソレデハ明日モ午後一時カラ開キマス
  (午後四時三十分閉会)


生産調査会ノ経過及成績 第一六二―一六三頁 大正八年三月刊(DK560121k-0009)
第56巻 p.517 ページ画像

生産調査会ノ経過及成績  第一六二―一六三頁 大正八年三月刊
    第十二 重要輸出品及輸入防遏品ノ選択助成ニ関スル建議
○中略
右本会ノ決議ニ依リ建議ス
  大正元年十二月二日
             生産調査会々長 男爵 牧野伸顕
    農商務大臣 男爵 牧野伸顕宛
    大蔵大臣     山本達雄宛
   ○建議文ハ前掲ノ建議原案ト同一ニツキ略ス。



〔参考〕生産調査会録事(第三回)《(第五回)》 (其ノ二)・第二二―六八頁 大正二年三月刊(DK560121k-0010)
第56巻 p.517-525 ページ画像

生産調査会録事(第三回)《(第五回)》  (其ノ二)・第二二―六八頁 大正二年三月刊
    工業ノ発達助長ニ関スル件
工業ノ発達助長ヲ期図スル為別紙ノ通ノ方針ヲ執ルヲ必要ナリト認ム右本会ノ決議ニ依リ答申候也
  大正元年十二月四日           生産調査会々長
    農商務大臣宛

      第一部
第一 製造用原料ニ関スル件
 工業場裡ニ於テ原料ト称スルモノヽ中ニハ天産ノ儘ナル物品ニ止マラス種々ナル程度ノ製造品アリ、故ニ同一物品ヲ以テ或ハ原料ト称シ、或ハ製品ト唱フル場合少シトセス、例ヘハ生糸ノ如キ製糸業者ニハ製品ナレトモ、機業者ニハ原料トナルカ如シ、即チ同一物品ニシテ場合ニ依リ原料トナリ製品トナルモノ其数極メテ多キヲ以テ、若シ一方ニ有利タラシメントスレハ自然他方ノ不利ヲ醸スコト稀ナリトセス、故ニ此種類ノ物品ニ関シテ事業発達ノ助長ヲ慮リ、補助便益ヲ与ヘントスルニハ各種ノ物品ニ亘リテ産出製造ノ情況ト之ヲ使用スル事業ノ進運トニ考ヘ、更ニ製作ヲ完了シタル物品ノ需用如何ヲ詳査スルニアラサレハ適切ナル論断ヲ下スコト能ハサルナリ
 左ニ前陳ノ関係少ナキ場合ニ限リテ希望ヲ述ヘントス
 一、内地産ニ関スル物品
 - 第56巻 p.518 -ページ画像 
  (イ)天産地ニ於ケル原料品ノ発掘採取ニ就テハ其濫採ヲ防止シ、有用ナル原料ノ品位ヲ濫リニ混同セシメサルハ勿論、土地ノ就業者カ之ニ由リテ暴利ヲ貪ルカ如キコトナカラシムヘキ適当ノ取締ヲ行フコト
  (ロ)多少人工ヲ加ヘタル原料品、若ハ副産物ニシテ天産ニ等シキ取扱ヲ行フヘキモノハ、前項ト同一ノ取締奨励ヲ行フ事
 二、輸入品
  (イ)本邦内ニ産出セサル物品ハ勿論多少ノ産出アルモ、尚ホ需用ノ一小部分ヲ補フニ過ギサル物品ニシテ天産品若ハ之ニ類似セルモノニ対シテハ、関税ヲ低減シテ之ヲ原料トスル製造業ニ便益ヲ与フルコト
  (ロ)漸次本邦ニ於テ製造品ノ数量ヲ増加シ、之ニ依リテ輸入ヲ防遏シツヽアル原料品ノ製造ニ対シテハ、其産額ノ多少ニ由リ適当ノ保護ヲ与フルコト
 三、鉄・棉及羊毛ニ関スルコト
  現時本邦ニ於ケル鉄類ノ需要高ハ七十万噸内外ニシテ、今後諸工業ノ発達ニ伴ヒ、其ノ量ノ百万噸ニ達スルハ蓋シ数年ヲ出テサルヘシ、而シテ需要高ノ約四割ハ内地ニ於テ生産シ、残六割ハ輸入ニ待ツノ有様ナリ、然レトモ将来製鉄業ノ進歩ヲ図リ、需要ノ全部ヲ自給セントスルモ現況ニ於テハ鉄鉱ノ供給之ヲ許サヽルモノアリ、故ニ将来国ノ内外ヲ問ハス其供給ヲ潤沢ナラシメ、以テ我製鉄事業ヲ拡張スヘシ
  我カ国ニ於ケル綿製品ノ需要ハ逐年増加シ、原料綿ノ輸入年額一億数千万円ニ達セリ、固ヨリ之ニ依リテ製スル綿糸・綿布ノ一部ハ輸出セラルヽモ、其ノ大部分ハ内地ノ消費ニ供セラルヽニ依リ将来ニ於ケル多大ノ需要ニ対シテハ其ノ栽培ヲ奨励スルニアラサレハ経済上甚タ不利ナリトス、依テ内地・朝鮮及台湾ニ於ケル将来ノ供給ニ付、充分ナル調査ヲ遂ケ積極的施設ヲ進ムルノ必要ヲ認ム
  毛織物モ亦其原料ヲ一ニ外国ヨリ輸入シ、其金額千百万余円ニ上リ、其需要逐年増加スルヲ以テ政府ハ羊ノ飼育ヲ研究奨励シ、以テ羊毛供給ノ途ヲ計ルヲ要ス
 四、政府専売品ニシテ製造用原料トナル場合ニハ、其用途ニ依リテ除外法ヲ設ケラレタキコト
  此ノ一項ハ主トシテ食塩ニアリ、之ヲ使用スル事業ハ多々アルヘケレトモ、就中曹達製造ト銀銅鉱ノ製煉ニ供スル原料及材料トシテノ価格ハ、工業発達ノ助長ニ関シ特ニ考究スヘキ問題ナリトス蓋シ曹達ハ再ヒ原料トシテ多数ノ化学工業ニ使用セラレ、化学工業ノ発達ハ各種曹達ノ供給如何ニ基クモノ多キヲ以テナリ、従来輸入セラルヽ各種曹達ノ価格ハ一箇年弐百余万円ノ多キヲ算シテ尚増加スルノ情況ヲ呈スルニ拘ハラス、本邦ニ於テ斯業ノ尚未タ振ハサルハ主トシテ其原料品タル食塩ノ価格充分低廉ナラサルニ由ルナリ、本製造業ハ去ル明治十八年創立後漸次発達シテ内地ニ数工場ノ設立ヲ見ルニ至リシカ、偶々明治三十八年食塩専売法ノ
 - 第56巻 p.519 -ページ画像 
発布ニ際シ、一時食塩ノ価格騰貴シ事業ノ経営頗ル困難ニ陥リタルヲ以テ、当業者ヨリハ時々陳情書ヲ提出シ、政府ニ於テモ工業用食塩ノ価格ヲ漸次低減セラレタレトモ尚充分ナル効果ヲ収ムルコト能ハス、転業又ハ廃業スルモノヲ出シ、現今内地ニ於テ僅ニ二工場ヲ残スノミニ至レリ、右ノ状況ナルヲ以テ今後政府ニ於テ工業用食塩ニ関シ特別ノ規定ヲ設ケ、以テ尚一層工業用食塩ノ価格ヲ低減シ、其供給手続ヲ便ナラシメ、依テ以テ曹達工業ノ基礎ヲ確実ニシ、化学工業全般ノ発達助長ニ資セラレンコトヲ希望ス
 五、内地産ト輸入品トヲ問ハス更ニ希望スル事項左ノ如シ
  (イ)原料品ハ其品質数量共ニ一定ノ制度ニ依リテ取引セシメ、需要者ヲシテ不測ノ損害ヲ免レシムルコトヲ要ス
  (ロ)原料品ノ運搬ニハ賃金ノ低減ヲ図ルコトヲ要ス
  (ハ)運搬上取扱ノ手続不便ナル原料品ニ対シテハ、適当ナル方法ヲ攻究シ之カ取扱ヲ可成簡易敏活ニシ、需要者ノ便宜ヲ図ルヘシ
第二 原動力ニ関スル件
 我国ノ工業ハ比年長足ノ進歩ヲ為シ、昨年ノ関税改正ハ更ニ此機運ヲ促進セムトス、此秋ニ当リ最モ枢要ナル問題ハ如何ニシテ経済的生産ヲ為シ得ルヤ否ヤニ在リ、而シテ経済的生産ヲ為スニハ資本・原料等ノ関係アリト雖モ動力ノ関係モ亦一大要素タルヲ失ハス
 我国ノ動力ハ従来主トシテ火力ニ依リシモ、近時水力電気事業ノ勃興ト共ニ漸ク水力ニ依ラムトスルノ傾向アリ、農商務省ノ調査ニ拠レハ目下工業用動力トシテ使用サルヽモノハ、火力四十一万実馬力水力九万実馬力ナリト云フ(別紙第一号表参照)サレハ水力ハ未タ遠ク火力ニ及ハサルカ如シト雖モ、水力ニ関スル逓信省ノ調査ニ依レハ現在利用セラレツヽアル発電水力ハ理論馬力数三十万馬力(電気事業用・灯火用ヲモ含ム)ニシテ、外ニ未開業ノモノ百九十二万理論馬力アリ、此ノ外既ニ実地踏査ヲ終リタルモノ二百七十万理論馬力アリト云ヘリ(別紙第二号表参照)、果シテ然ラハ将来我国ニ利用シ得ラルヘキ水力ハ実ニ四百六拾弐万理論馬力ニ達スルノ予定ナリ、然レトモ以上ノ調査ハ只我国ニ水力ノ存在ヲ示シタルノミニシテ、確実ニ幾干ノ能率ヲ以テ利用シ得ルヤヲ知ルコト能ハサルヲ以テ、該調査ニ依リ直チニ事業ニ着手セムコトハ聊カ早計ノ嫌ナキニアラス
 更ニ火力動力ノ資源タル石炭ニ就テ見ルニ、四十四年度ニ於ケル我国石炭ノ採掘高ハ概算一千四百七十九万噸ニシテ、是ヲ消費スル額ハ八百九十二万余噸ナリ(別紙第三号表参照)、此内約五百万噸ヲ動力用トシ、他ハ工業用其他ノ燃料トシテ使用セラルヽモノトス、而シテ我国ニ於ケル石炭採掘ノ状態ハ内地ニ於テハ九州・北海道等ニ於テ前途望ヲ嘱スルニ足ルヘキ炭坑アリ、尚ホ清国ニ於テハ撫順開平等(別紙第四号表参照)ノ炭坑アリト雖、石炭ハ有限ナルヲ以テ、将来石炭ノ節用ニ対シテハ工業家ノ細心ノ注意ヲ要スヘシ
 然リ而シテ我国ノ工業ハ今後益々発達スヘキコトハ、四囲ノ情況ニ於テ必然ノ事ニ属シ、動力ノ需用愈々増加スヘキハ瞭々トシテ火ヲ睹ルヨリモ明ナリ、此際工業家カ発電水力ヲ利用セムトスルニ当リ
 - 第56巻 p.520 -ページ画像 
テハ、勗メテ経済的利用ニ適スルヤ否ヤヲ考慮セサルヘカラス、例ヘハ都市及之ニ密接スル場所ハ動力ニ多大ノ経費ヲ要シ、従テ其ノ使用料モ巨額ニ達スルヲ以テ、成ルヘク低廉ナル水力ヲ確実ニ利用シ得ヘキ地域ニ於テ事業ヲ企テムコトヲ勧メ、火力ノ場合ニハ蒸汽瓦斯・石油等ノ如キ適当ナル火力機関ノ使用ニ依リ、石炭ノ節約ヲ慫慂セムト欲ス(別紙第五号表参照)
 又水力企業ノ申請ニ対シテハ、現ニ各府県庁ニ於テ規定セラレタル出願手続ヲ劃一ニシ、煩瑣ナル取扱ヲ排除シ敏活ニ事業ノ進行ヲ計ラシムルコトヲ要ス、且水力使用年限ノ如キモ期限アルモノアリ期限ナキモノアリ、期限アルモ長短殆ムト一定セス、為メニ企業者ニ於テ苦痛ヲ感スルコト多シ、故ニ電力ニ関スル法律ヲ制定シ、種種ノ障礙ヲ排除シ、特ニ水力使用年限ニ就テハ、許可期限ノ満了ノ場合ニ於テ政府若ハ公共団体カ之ヲ買収セサル限リ更ニ年限ヲ延長スルノ意義ヲ明ニシ、投資者ヲシテ其投資ニ対スル安全ヲ計ルヘシ
 如上ノ方法ニシテ幸ヒニ実行スルコトヲ得ム乎、我国ノ工業家ハ経済的動力ヲ使用シ生産費ヲ節約スルコトヲ得テ、工業ニ貢献スル所蓋シ尠少ナラサルヘキヲ信ス
   ○別紙第一―五号表略ス。
第三 工業教育及工業試験所ニ関スル件
 一、工業教育ヲ一層奨励スルコト
  工業ノ発達助長ヲ図ラントスルニハ物質的補助ノ方法ヲ考査スルト同時ニ、苟モ事業上ノ改進ヲ図ル以上ハ夫ノ新ラシキ経営ヲ誤ラサル人物ノ養成ヲ盛ニシ、倶ニ共ニ進路ヲ開発スルニ勉ムヘキナリ、然ラサレハ真ノ効果ヲ奏スルノ難キ内外ノ趨勢ニ鑑ミ疑フ所ナカラン、依テ左ノ事項ヲ実施スルコトヲ要ス
  (イ)工業補習教育ヲ奨励スルコト
○中略
  (ロ)職工ノ講習会ヲ開催スルコト
○中略
  (ハ)高等工業学校ニ製紙科・製糖科・工業彫刻科・紡績科・製革科製油科等特種工業ニ関スル学科ヲ増設スルコト
○中略
 二、工業試験所ニ関スルコト
  官立及公立ノ工業試験所ヲ拡張スルト同時ニ、各其ノ事業ノ整理ヲ行フコト
  (イ)官立工業試験所ハ主トシテ工業上ノ国家的利害ヲ調査研究シ、一般ノ事業進歩ニ資スルヲ目的トシ、左ノ事項ヲ施行スルコト
     (一)材料原料又ハ製品ノ検定及証明
○中略
     (二)新規有要ナル工業品ノ製造方法ノ研究
○中略
     (三)製造ノ固有方法ニ付テハ其ノ改良ヲ加フヘキ学術上ノ研究
○中略
  (ロ) 公立工業試験所ハ府県若クハ一地方ニ於ケル特種ノ工業ヲ発達
 - 第56巻 p.521 -ページ画像 
セシムルヲ主眼トシ、左ノ事項ヲ行フコト
     (一)使用材料若クハ原料ノ鑑定及作用ノ品評及製造上改良方法ノ指教
○中略
     (二)新設工場ノ設計及在来工場ノ修補考案
○中略
  公立ノ工業試験所ハ如上ノ目的ヲ有スルニ由リ成ルヘク実業ノ中心点ヲ選ンテ之ヲ設立シ、其ノ職員ハ平素当業者ニ近接シ、善ク実業場裡ノ実情ニ通シ、以テ工業ノ指導者タル責務ヲ完ウシ、当業者ヲシテ自ラ旧慣ヲ捨テヽモ新規開発ノ道ニ誘導セラルヽニ至ランコトヲ期スヘシ ○中略
第四 機械製造ノ発達奨励ニ関スル件
 家内的工業ヨリ漸次工場組織ノ工業ニ進ミツヽアル今日ニ於テ、機械化学電気等各種ノ工業何レモ機械製造ノ発達ニ待タサルモノナシ故ニ左記方法ニヨリ之カ奨励ヲ為サムトス
 一、模範工場ヲ設ケ左ノ施設ヲ為スコト
  (イ)優秀ナル外国師範職工若干名ヲ置テ技術ノ授業ニ任セシメ、優良ナル職工ヲ養成スルコト
  (ロ)官民ノ工場又ハ其他ヨリ良工ヲ選抜シテ、師範職工ニ就キ技術ノ練習ヲ為サシメ、兼ネテ必要ナル学科ヲ修メシムルコト
  (ハ)機械製造上ノ操作及工場経理ニ関シ科学的研究ヲ為シ、他ノ模範タルヲ期スルコト
  (ニ)機械製造若クハ購入等ニ関シ、広ク質問ニ対シ成ルベク調査応答スルコト
 二、同一種類ノ機械ニ就キ時々展覧会ヲ開催シ、以テ民間機械製造業者相互ノ競争ヲ促シ、該業ノ発達ヲ奨励スルコト
 三、工業博物館ヲ枢要ノ地ニ設ケ、各種ノ工業用機械器具等ヲ陳列シ、陳列品ニ手ヲ触レシメサルノ禁ヲ撤廃シ、実際機械ヲ運転シテ、工業者ノミナラス一般人ノ研究ニ資スルコト
○中略
第五 意匠・図案・発明・奨励及功労表彰ニ関スル件
 一、意匠・図案及発明ノ奨励ニ関スルコト
  (イ)意匠・図案ハ官設図案展覧会ヲ開キ、又ハ之カ懸賞募集ヲ為シ優良ナル図案ノ製出ヲ促シ、兼ネテ図案家ト製造家トノ聯絡ヲ図ルコト
○中略
  (ロ)発明ニ付テモ懸賞募集ノ方法ヲ以テ之ヲ奨励シ、発明品特許中有用ト認ムルモノニ対シテハ、其ノ効果ヲ明確ニスル為必要ナル費用ヲ官ヨリ補給シ、又ハ官ニ於テ直接之ヲ実験シ其ノ利用ヲ普及セシムルコト
○中略
 二、功労表彰ニ関スルコト
  工業上特ニ功労アル人士ニ対シ叙勲ノ範囲ヲ拡大ニスルコト、及下級工業者ニ対シテハ別ニ褒賞ノ制ヲ設定スルコト
 - 第56巻 p.522 -ページ画像 
○中略
第六 工業材料及重ナル商品ヲ成ル可ク統一スルカ為、政府ニ於テ特ニ調査機関ヲ設ケラレタキ件
○中略

      第二部
第一 工業資金ニ関スル件
 一、外資輸入ノ途ヲ開クコト
  (理由) ○略ス
 二、長期ノ資金供給ノ途ヲ講スルコト
  (理由) ○略ス
第二 運輸交通ニ関スル件
 一、鉄道ヲ漸次広軌ニ改築スルコト
  (理由) ○略ス
 二、必要ナル新航路ヲ開クコト
  (イ)北海道・上海・浦塩間ニ定期航路ヲ開クコト
  (理由) ○略ス
  (ロ)神戸・青島間航路ヲ開クコト
  (理由) ○略ス
  (ハ)香港ヨリ日本・桑港ヲ経由シテ紐育又ハ南米ニ到ルノ定期航路ヲ開クコト
  (理由) ○略ス
第三 税法ニ関スル件
 一、営業税法ニ於テ新設事業ノ課税免除期間三ケ年トアルヲ延長シテ、三ケ年乃至七ケ年トスルコト
  (理由) ○略ス
 二、増資拡張ノ場合ニ於テ営業税ノ徴収三ケ年乃至七ケ年ノ猶予期限ヲ附スルコト
  (理由) ○略ス
 三、合併ノ際整理ノ為メ減資スル場合ニ適用スヘキ規定ヲ明記スルコト
  (理由) ○略ス
 四、職工傭役者ノ救済基金其他之ニ類スル積立金ノ課税ヲ免除スルコト
  (理由) ○略ス
 五、資本金ノ課税標準ヲ算定スルニ当リテハ欠損金ヲ控除スルコト
  (理由) ○略ス
 六、煙突ヲ課税ノ目的物以外ニ置クコト
  (理由) ○略ス
 七、従業者ニ対スル課税標準ヲ前年中ノ日割平均トスルコト
  (理由) ○略ス
 八、特定ノ製品ヲ輸出スル場合ニ於テ輸出奨励金交付ノ制ヲ設クルコト
  (理由) ○略ス
 - 第56巻 p.523 -ページ画像 
 九、輸出品ニ対スル消費税払戻ノ手続ヲ簡便ニシ、又消費税ヲ払ヒタル原料ヲ以テ製出シタル物品ニ対シテハ、輸出ノ際直ニ之ヲ払戻スコト、附払戻金額ニ不当ノ制限ヲ付セサルコト
  (理由) ○略ス
 十、輸出製品ニ対スル原料輸入税払戻ノ範囲ヲ拡大スルコト
  (理由) ○略ス
 十一、地租条例中田畑及ヒ宅地ノ外ニ、工場用地ヲ別種ノ地目ト認メ、其地価ヲ低クシ漫ニ更訂セサルコト
  (理由) ○略ス
 十二、不当ナル町村費賦課ヲ為サシメサル様地方庁ヲシテ監督セシムルコト
  (理由) ○略ス
第四 工業ノ種類ニ依ル特種事項及副業ニ関スル件
 一、特種事項ニ関シテハ各事項ニ付詳細ニ調査スルコトヲ要ス
○中略
 二、副業奨励ニ関スル施設ヲ為スコト
○中略
第五、工場用地ヲ保留スルノ件
 工場設置ニ適当ナル地域ヲ限リ、既設業者ヲシテ拡張其ノ他必要ノ場合ニ其ノ隣接地ノ先買権ヲ保留セシメ、或ハ場合ニ依リテ土地収用法ノ規定ニ準スルヲ得セシムル規定ヲ設クル必要ヲ認ム
  (理由) ○略ス
第六 工業法制定ニ関スル件
 製造工業ノ発達助長ヲ企図スルハ、国力発展上刻下ノ急務ニシテ、工業振興ノ根本政策ヲ確立スルハ実ニ最大ノ国是ト謂フヘキナリ、依テ政府ハ殊ニ力ヲ玆ニ致シ、以テ其振興ヲ計ラサルヘカラス、然ルニ一般法令ノ改正ニ依リ製造工業ニ対シ特殊ノ考慮ヲ加ヘントスレハ他ノ事業トノ権衡ヲ失スルノ虞アルヲ以テ、前記第三及第五ニ列記セル事項ヲ基礎トシ、別ニ工業法ヲ制定シ、以テ工業ノ発達ニ全力ヲ尽サレンコトヲ望ム

      第三部
第一 組合及職工ニ関スル件
 甲、組合ニ関スルコト
 一、同業組合ソノモノニ関シテハ同業組合法改正特別委員ノ調査報告ニ譲ル
 二、各種産業組合ヲ増設シ其活動ヲ促スコト
○中略
 三、信用組合ノ普及ヲ図リ貯蓄ヲ奨励シ勤勉ノ美風ヲ涵養スルコト
○中略
 乙、職工ニ関スルコト
 一、職工ノ養成ヲ力ムルコト
○中略
 二、職工ノ地位ヲ昂進シ徳義ヲ涵養スルコト
 - 第56巻 p.524 -ページ画像 
○中略
 三、労力ノ効果ヲ増進スルコト
○中略
  (イ)簡易実業的工業教育ノ普及ヲ図ルコト
○中略
  (ロ)工場法ノ実施ヲ速カナラシムルコト
○中略
  (ハ)職工ノ衛生ニ重キヲ置クコト
○中略
  (ニ)向上慰安ノ途ヲ開クコト
○中略
 四、職業紹介所ヲ設置スルコト
○中略
 五、労働保険ノ制ヲ設クルコト
○中略
 六、徒弟ノ制ヲ改善スルコト
  我国古来家内工業ノ発達セシ所以ノモノヲ考フルニ、徒弟ノ制与テ力アリシヤ疑ヲ容レス、徒弟ハ幼年ノ頃ヨリ其業ヲ習得スルモノナルヲ以テ能ク其作業ノ真髄ヲ会得スルコトヲ得ヘシ、故ニ熟練セル職工ヲ養成スルノ方法トシテ大ニ利用スルヲ要ス、而シテ多少ノ弊害ナキニアラサルヲ以テ相当取締ル所アルヘキナリ、例ヘハ雇主ヲシテ徒弟ノ職業教育ヲ施スノ義務ヲ負ハシムルカ如キハ最モ必要ナルヘシ
○中略
 七、賃銀ノ暴騰ヲ禦クコト
○中略
 八、資本家ト融和ノ策ヲ講スルコト
○中略
 九、善行アリ又ハ永年勤続セル職工ノ功労ヲ表彰スルノ制ヲ設クルヲ必要トス
 十、小公園及公私託児所ノ設備ヲ普及改善スルコトモ亦必要ナリト認ム
第二 生活費ニ関スル件
 一、日用品ノ供給ヲ潤沢ナラシメ其低廉ヲ図ルコト
○中略
 二、公設長屋ノ制ヲ設クルコト
○中略
 三、交通政策上職工ニ特別ナル制ヲ設クルコト
○中略
 四、貯蓄機関ノ設備ヲ完全ニシ質屋ノ取締ヲ厳ニスルコト
○中略
 五、力メテ物価ノ低廉ヲ期スルコト
第三 海外工業ノ状況調査ニ関スル件
 一、当業者及職工長等外国視察奨励ノコト
 - 第56巻 p.525 -ページ画像 
○中略
 二、重要技術員ヲ海外ニ派遣スルコト
○中略
 三、外国ニ於ケル工業製作品ニ関スル組合其他ノ実況ヲモ調査スルコト
○中略
 四、内外製品交換陳列ノ途ヲ開キ機械陳列館ヲ公開スルコト
○中略
第四、行政上其他ノ障害除去ニ関スル件
 一、行政上成ルヘク無用ノ干渉ヲ省キ実際ノ取扱ヲ簡便敏速ナラシムルコト
○中略
 二、企業者ニ対スル不当ノ妨害ヲ取締ルコト
○中略
 三、工業用水ノ権利ヲ確認スルコト
○中略
第五 官業ノ整理及工業補助ニ関スル件
 甲 官業ノ整理ニ関スルコト
 一、漸次官業ノ区域ヲ縮少スルコト
○中略
 二、官業ヲ以テ民業ト競争シ又ハ之ヲ圧迫セサルコト
○中略
 三、官庁用品ハ成ヘク内国品ヲ用フルコト
○中略
 乙 工業補助ニ関スルコト
 一、新奇ノ器械無料貸与ヲ一層拡張スルコト
○中略
 二、新設又ハ試験中ノ工業ニハ相当期間中補助ノ途ヲ開クコト
○下略
   ○当会官制ハ大正二年六月十三日廃止セラル(「索引政治経済大年表(年表篇)」東洋経済新報社編ニ拠ル)。